エヌセイズ一覧と特徴解説
エヌセイズ主要薬剤一覧と分類
エヌセイズ(NSAIDs:Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs)は、非ステロイド性抗炎症薬の総称で、医療現場で最も頻繁に使用される薬剤群の一つです。化学構造により複数の系統に分類され、それぞれ異なる特徴を持っています。
サリチル酸系エヌセイズ
- アスピリン(アセチルサリチル酸):バファリンなど
- エテンザミド:ノーシン、新セデスなど
- サリチルアミド:複合製剤に配合
プロピオン酸系エヌセイズ
- ロキソプロフェン:ロキソニンなど
- イブプロフェン:イブなど
- アルミノプロフェン:市販薬に配合
酢酸系エヌセイズ
- ジクロフェナク:ボルタレンなど
- インドメタシン:インダシンなど
その他の系統
- メフェナム酸:ポンタールなど
- セレコキシブ:COX-2選択的阻害薬
ピリン系として分類される薬剤には、スルピリン(メチロン)やイソプロピルアンチピリン(セデス・ハイ)があり、これらは非ピリン系と区別して使用されます。
エヌセイズ副作用プロファイル比較
エヌセイズの副作用は、その作用機序であるシクロオキシゲナーゼ(COX)阻害に起因します。主要な副作用には以下があります。
消化器系副作用
- 胃粘膜障害:最も頻度の高い副作用
- 胃潰瘍・十二指腸潰瘍:重篤な合併症
- 消化管出血:抗血小板作用による
腎機能への影響
- 腎血流量減少
- 急性腎不全
- 慢性腎疾患の悪化
循環器系への影響
- 血圧上昇
- 心不全の悪化
- 血栓リスクの変化
その他の副作用
- 肝機能障害
- 薬疹・皮膚症状
- 喘息発作の誘発
- 血管性浮腫
アスピリンの抗血小板作用は7-10日間持続するため、手術前の休薬期間の設定が重要です。一方、他のエヌセイズの抗血小板作用は比較的短時間で消失します。
エヌセイズ処方時の注意点
エヌセイズの適切な処方には、患者の病態と薬剤特性の理解が不可欠です。特に以下の状況では慎重な判断が求められます。
禁忌・慎重投与の対象
- 消化性潰瘍の既往がある患者
- 腎機能障害患者
- 心不全患者
- 喘息患者(アスピリン喘息)
- 妊娠後期の妊婦
薬物相互作用への配慮
- 抗凝固薬との併用:出血リスク増加
- ACE阻害薬との併用:腎機能悪化
- 利尿薬との併用:効果減弱
- メトトレキサートとの併用:毒性増強
特殊な病態での使用制限
デング熱などの出血性疾患では、エヌセイズの抗血小板作用により出血リスクが増加するため、使用を避けることが推奨されます。インフルエンザ感染時も、特にジクロフェナクはインフルエンザ脳炎・脳症のリスクを高める可能性があるため注意が必要です。
エヌセイズとアセトアミノフェン使い分け
アセトアミノフェンは、厳密にはエヌセイズに含まれない解熱鎮痛薬ですが、臨床現場では重要な選択肢となります。
アセトアミノフェンの特徴
- 抗炎症作用がほとんどない
- 胃腸障害が少ない
- 腎機能への影響が軽微
- 妊娠中・授乳中でも使用可能
- 小児にも適応
使い分けの基準
状況 | 推奨薬剤 | 理由 |
---|---|---|
炎症性疼痛 | エヌセイズ | 抗炎症作用が必要 |
消化性潰瘍既往 | アセトアミノフェン | 胃腸障害リスク回避 |
腎機能障害 | アセトアミノフェン | 腎機能への影響軽微 |
妊娠・授乳期 | アセトアミノフェン | 安全性が確立 |
小児の発熱 | アセトアミノフェン | 安全性プロファイル良好 |
カロナール(アセトアミノフェン)は、ロキソニンなどに比べて鎮痛作用は穏やかですが、インフルエンザ時にも比較的安全に使用でき、小児や妊婦にも適応があります。
エヌセイズ禁忌症例と代替療法選択
エヌセイズが使用できない患者に対する代替療法の選択は、医療従事者にとって重要な判断となります。
主要な禁忌症例
- アスピリン喘息:COX-1阻害による気管支収縮
- 重篤な心不全:水分貯留の悪化
- 重篤な腎不全:さらなる腎機能悪化
- 活動性消化性潰瘍:出血リスク
- 妊娠後期:胎児への影響
代替療法の選択肢
🔸 アセトアミノフェン
軽度から中等度の疼痛に対する第一選択。肝機能正常であれば安全性が高い。
🔸 オピオイド系鎮痛薬
中等度から重度の疼痛に対して使用。依存性や呼吸抑制に注意が必要。
🔸 局所麻酔薬
限局性疼痛に対する神経ブロックや局所浸潤麻酔。
🔸 抗けいれん薬
神経障害性疼痛に対するガバペンチン、プレガバリンなど。
🔸 トピカル製剤
外用のエヌセイズ製剤(湿布、ゲル剤)は全身への影響を最小限に抑制。
がん性疼痛における位置づけ
WHO方式3段階除痛ラダーにおいて、エヌセイズやアセトアミノフェンは第1段階に位置し、がん性疼痛に対しては基本的に定期・定時投与で使用されます。頓用ではなく、持続的な疼痛管理が重要となります。
エヌセイズが使用できない場合でも、適切な代替療法を選択することで、患者の疼痛管理は十分に可能です。個々の患者の病態、疼痛の性質、併存疾患を総合的に評価し、最適な治療選択を行うことが医療従事者に求められています。