ゲファルナート代替薬の選び方と使い分け

ゲファルナート代替薬の選択と臨床活用

透析患者にアルミニウム含有胃薬を処方すると脳症リスクが上昇します

この記事の3つのポイント
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ゲファルナート販売中止後の選択肢

レバミピド、テプレノン、セトラキサートなど作用機序別に代替薬を整理。患者背景に応じた選択基準を提示します

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透析患者における禁忌事項

アルミニウム含有製剤(スクラルファート等)は透析患者に投与禁忌。アルミニウム脳症・骨症のリスクを理解した処方設計が必須です

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防御因子増強薬の併用エビデンス

PPIと防御因子増強薬の併用では上乗せ効果が示されていない現状と、推奨される治療戦略を解説します

ゲファルナート製剤の販売中止と背景

ゲファルナートは2014年に大日本住友製薬が販売中止を決定した防御因子増強薬です。カプセル、細粒、ソフトカプセルすべての剤形が在庫限りで終了となりました。販売中止の理由は公式には明示されていませんが、同等の効果を持つ後発医薬品の普及や、より新しい作用機序を持つ薬剤の登場が背景にあると考えられます。

ゲファルナートは胃粘膜のプロスタグランジンE2およびI2の生合成を促進することで、胃粘膜保護作用を発揮していました。具体的には胃粘液の分泌促進、胃粘膜血流の改善、粘膜抵抗性の増強といった複数の機序を通じて、急性胃炎慢性胃炎の急性増悪期、胃潰瘍十二指腸潰瘍の治療に使用されていた薬剤です。

販売中止後、医療現場では代替薬の選定に迫られています。薬剤師国家試験第98回問181では、透析患者がゲファルナートを服用していたが在庫がない状況で、適切な代替薬を選択する問題が出題されました。この設問は臨床現場で実際に直面する課題を反映しています。

医療従事者は、ゲファルナートの作用機序を理解した上で、患者の腎機能、併用薬、潰瘍の原因(ピロリ菌感染、NSAIDs起因など)を考慮して代替薬を選択する必要があります。つまり単なる薬剤の置き換えではなく、個々の患者背景に応じた最適な治療戦略の立案が求められているのです。

ゲファルナート代替薬の種類と作用機序

防御因子増強薬には複数の選択肢があり、それぞれ異なる作用機序を持っています。レバミピド(ムコスタ)は胃粘膜の血流改善と粘液分泌増加を促進し、慢性胃炎や胃潰瘍の治療に広く使用されています。市販薬には含まれておらず、処方薬としてのみ入手可能です。

テプレノン(セルベックス)はレバミピドと類似した性質を持ち、胃粘膜を保護する胃粘液の分泌を増やす働きがあります。テプレノンの大きな特徴は市販薬にも配合されている点で、一般用医薬品として入手可能です。効果や副作用の頻度においてレバミピドとの大きな違いはありません。

スクラルファート(アルサルミン)は胃の酸性環境で粘着性のゲル状になり、傷ついた粘膜に直接張り付くことで保護膜を形成します。ただしアルミニウムを含有するため、透析患者には投与禁忌です。長期投与によりアルミニウム脳症、アルミニウム骨症、貧血などのリスクがあるためです。

セトラキサート塩酸塩(ノイエル)はゲファルナートと同様にプロスタグランジンの生合成を促進し、胃粘膜微小循環を改善する作用を持ちます。重要なのは、セトラキサートはアルミニウムを含有しないため透析患者にも使用可能という点です。薬剤師国家試験の問題で正解とされたのもこの理由によります。

ソファルコンもプロスタグランジン増加作用により胃粘膜を保護する薬剤で、胃粘膜修復促進作用を持っています。ゲファルナートと作用機序が近い選択肢の一つです。

これらの薬剤は、胃酸分泌を抑制するPPIやH2ブロッカーとは異なるアプローチで胃粘膜を守ります。攻撃因子を減らすのではなく防御因子を強化するという点が共通しています。

ゲファルナート代替薬の透析患者への適応

透析患者にアルミニウム含有製剤を投与すると、アルミニウムが体内に蓄積し深刻な合併症を引き起こします。具体的にはアルミニウム脳症、アルミニウム骨症、貧血といった状態が報告されています。アルミニウム脳症では認知機能障害や構音障害が出現し、骨症では骨の石灰化障害により骨折リスクが上昇します。

スクラルファート水和物乾燥水酸化アルミニウムゲルは、防御因子増強薬および制酸薬として有効性が確立していますが、いずれもアルミニウムを含有するため透析患者には禁忌です。添付文書にも明確に「透析療法を受けている患者には投与しないこと」と記載されています。

一方、レバミピド、テプレノン、セトラキサートはアルミニウムを含有しないため、透析患者にも使用可能です。ただしレバミピドについては、腎機能障害患者では健康成人に比べて血漿中濃度の上昇および消失半減期の延長が認められています。透析患者での使用経験は限定的であるため、投与する場合は慎重な経過観察が必要です。

透析患者にゲファルナートの代替薬を選択する際の優先順位としては、一にセトラキサートが推奨されます。作用機序がゲファルナートと類似しており、透析患者への使用制限もないためです。第二の選択肢としてレバミピドやテプレノンが考えられますが、腎機能障害時の薬物動態変化を考慮する必要があります。

医療現場で透析患者の処方を確認する際は、お薬手帳から服用歴を把握し、アルミニウム含有製剤が処方されていないかチェックすることが重要です。もし含有製剤が処方されている場合は、速やかに医師に疑義照会を行い、代替薬への変更を提案しましょう。

ゲファルナート代替薬とPPI・H2ブロッカーの併用

防御因子増強薬と酸分泌抑制薬の併用については、エビデンスが限定的です。消化性潰瘍診療ガイドライン2020では、PPIと防御因子増強薬の併用に関して「胃潰瘍治癒の上乗せ効果が示された併用療法はまだない」と記載されています。

つまり現時点では併用は推奨されていません。

1997年の非ランダム化研究では、ランソプラゾールと防御因子増強薬との併用で上乗せ効果は認められませんでした。PPIが強力に胃酸分泌を抑制する以上、防御因子増強薬を追加しても治癒率の有意な向上は期待できないということです。

一方、H2ブロッカーと防御因子増強薬の併用については、一部の組み合わせで胃潰瘍治癒の上乗せ効果が示されています。ただしすべての組み合わせで効果が実証されているわけではなく、エビデンスに基づいた選択が必要です。

重要なのは、PPIとH2ブロッカーの併用は原則として認められないという点です。両者とも胃酸分泌抑制という同じアプローチであり、併用による相加効果は乏しい一方、医療費の増加を招きます。

保険診療上も原則として認められていません。

臨床では、まず酸分泌抑制薬(PPIまたはH2ブロッカー)を選択し、それで十分な効果が得られない場合や、患者背景によっては防御因子増強薬の追加を検討するという段階的アプローチが実践的です。ただし併用の上乗せ効果は限定的であることを理解しておく必要があります。

ゲファルナート代替薬のNSAIDs潰瘍予防における位置づけ

NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)起因性潰瘍の予防において、防御因子増強薬の有効性は限定的です。2006年の調査では、NSAIDs服用患者の96%に防御因子増強薬が投与されていましたが、62%の患者に胃粘膜傷害が認められ、予防効果が不十分であることが示されました。

NSAIDs潰瘍の予防においては、PPIが第一選択薬として推奨されています。消化性潰瘍診療ガイドライン2020では、潰瘍歴のある患者や高リスク患者におけるNSAIDs潰瘍の一次予防にPPIの使用を推奨しています。H2ブロッカーも一定の予防効果がありますが、PPIよりも効果は劣ります。

ゲファルナートを含む防御因子増強薬については、NSAIDs潰瘍予防のエビデンスが不十分です。ガイドラインでも「ゲファルナートはシメチジンファモチジン、塩酸ラニチジンよりも潰瘍治癒率が低い」と記載されており、NSAIDs継続下での潰瘍治療や予防には推奨されていません。

ただし小腸潰瘍に関しては、防御因子増強薬の有効性を示す報告が出てきています。NSAIDsによる小腸粘膜傷害は胃潰瘍とは異なるメカニズムで発生するため、防御因子増強薬が一定の役割を果たす可能性があります。レバミピドについては小腸病変への効果を示唆する研究もあります。

NSAIDs潰瘍のリスク因子としては、潰瘍の既往歴、高齢(65歳以上)、高用量NSAIDs使用、抗凝固薬抗血小板薬の併用、ステロイド併用などが挙げられます。これらのリスクを持つ患者にNSAIDsを処方する場合は、PPIによる予防投与を検討します。防御因子増強薬単独での予防は推奨されません。

ゲファルナート代替薬の選択における独自視点

医療現場でゲファルナート代替薬を選択する際、薬価差による医療経済的視点も考慮すべき要素です。レバミピド錠100mgの薬価は後発品で1錠あたり約9~15円、テプレノンカプセル50mgは約6~10円程度です。一方セトラキサートカプセル200mgは約20~30円と比較的高めの設定になっています。

1日3回服用で1ヶ月処方した場合、レバミピドは約810~1350円、テプレノンは約1620~2700円(1回2カプセル換算)、セトラキサートは約1800~2700円の薬剤費がかかります。患者負担を考えると、同等の効果が期待できるならレバミピドが経済的な選択肢となります。

服薬アドヒアランスの観点からは、1日の服用回数も重要です。レバミピド、テプレノン、セトラキサートはいずれも1日3回食後投与が基本です。ゲファルナートも同様だったため、代替薬への切り替えで服用タイミングが変わることはなく、患者の混乱を最小限に抑えられます。

市販薬としての入手可能性も考慮点の一つです。テプレノンは一般用医薬品として販売されており、軽症の胃炎症状に対しては薬局で購入可能です。一方レバミピドは処方箋医薬品のみで、セトラキサートも医療用医薬品に限られます。患者が症状改善後も予防的に継続したい場合、テプレノン配合の市販胃腸薬を紹介するという選択肢もあります。

剤形のバリエーションも実務上重要です。レバミピドには錠剤と顆粒があり、嚥下困難な患者には顆粒を選択できます。テプレノンはカプセルが主流ですが、一部に細粒もあります。

セトラキサートはカプセルのみです。

高齢患者や小児では剤形の選択肢が多い薬剤が有利です。

副作用プロファイルの違いも見逃せません。レバミピドでは便秘(1~5%未満)、テプレノンでは便秘や下痢(いずれも頻度不明)が報告されています。セトラキサートは比較的副作用が少ないとされますが、発疹や胃部不快感の報告があります。患者の既往歴や体質に応じた選択が求められます。

妊婦・授乳婦への投与に関しては、いずれの薬剤も「治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合のみ投与」との記載があります。明確な安全性は確立していないため、妊娠可能性のある女性患者では他の治療選択肢も含めて慎重に検討する必要があります。

日本消化器病学会の消化性潰瘍診療ガイドラインでは、非除菌治療における薬剤選択の基準が詳細に解説されています
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