イーライリリー製品一覧:医薬品治療領域別適応症解説

イーライリリー製品一覧医薬品治療領域

イーライリリー主要製品概要
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糖尿病領域

インスリン製剤、GLP-1受容体作動薬など革新的な治療薬を提供

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精神神経科領域

ADHD治療薬、抗精神病薬、片頭痛治療薬の幅広いラインナップ

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オンコロジー領域

抗がん剤から免疫療法まで、がん治療の最前線を支援

日本イーライリリーは、1875年に設立された米国イーライリリー・アンド・カンパニーの日本法人として、日本の医療現場に革新的な医薬品を提供し続けています。同社は世界125ヵ国以上で事業展開し、日本市場は米国に次ぐ売上を誇る重要な拠点となっています。

イーライリリー糖尿病治療薬製品特徴

糖尿病領域では、イーライリリーは長年にわたり治療薬開発のパイオニアとして位置づけられています。1923年に世界初のインスリン製剤「アイレチン」を発売して以来、糖尿病治療に革命をもたらしてきました。

主要なインスリン製剤

  • ヒューマログ注(インスリンリスプロ):薬価968円(300単位1筒)
  • ヒューマリン注(ヒトインスリン):速効型インスリン製剤
  • インスリン グラルギン BS注「リリー」:持効型インスリン製剤

GLP-1受容体作動薬

マンジャロ(チルゼパチド)は、週1回投与の持続性グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)受容体及びグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体作動薬として、2型糖尿病治療に新たな選択肢を提供しています。この薬剤は、従来のGLP-1受容体作動薬とは異なり、GIP受容体とGLP-1受容体の両方に作用する点が特徴的で、より効果的な血糖コントロールが期待されています。

開発中の糖尿病治療薬

現在開発中の製品として、LY3209590(Insulin Efsitora Alfa)皮下注製剤が開発後期段階にあります。また、LY3502970(orforglipron)は経口投与可能な2型糖尿病治療薬として注目されており、これまで注射でしか投与できなかった薬剤の経口化により、患者の利便性向上が期待されています。

糖尿病治療における血糖コントロールの重要性が高まる中、イーライリリーの製品群は、患者の生活の質を向上させながら、長期的な合併症予防に寄与する重要な役割を果たしています。

日本糖尿病学会の注射製剤一覧表における位置づけ

https://www.jds.or.jp/uploads/files/education/insulin_glp-1_list_2024.pdf

イーライリリー精神神経科領域製品効果

精神神経科領域において、イーライリリーは多様な治療薬を提供しており、患者の症状改善と生活の質向上に貢献しています。

ADHD治療薬

ストラテラ(アトモキセチン塩酸塩)は、日本で承認されている数少ないADHD治療薬の一つです。内用液0.4%(薬価65.10円/1mL)とカプセル製剤(5mg:薬価90.70円)が利用可能で、小児から成人まで幅広い年齢層の患者に使用されています。

アトモキセチンは選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害薬として作用し、中枢神経系のノルアドレナリン濃度を高めることで、注意力の改善や衝動性の抑制効果を発揮します。従来の刺激薬とは異なる作用機序を持つため、刺激薬が適応とならない患者にも選択肢を提供しています。

片頭痛治療薬

エムガルティ(ガルカネズマブ)は、片頭痛発作の発症抑制に使用される抗CGRP抗体製剤です。月1回の皮下注射により、片頭痛の発作頻度を有意に減少させることが臨床試験で証明されています。

開発中の製品として、LY2951742(ガルカネズマブ)の小児用量製剤が開発後期段階にあり、小児の片頭痛治療における新たな選択肢として期待されています。

その他の精神神経科製品

  • 抗精神病薬「ジプレキサ」:統合失調症治療の主力製品
  • 抗うつ薬「サインバルタ」:うつ病治療における重要な選択肢
  • 骨粗鬆症治療薬「フォルテオ」:骨形成促進作用を有する製剤

これらの製品群は、精神科医療において重要な位置を占めており、患者の症状改善と社会復帰を支援する重要な役割を果たしています。

イーライリリーオンコロジー製品適応症

オンコロジー領域では、イーライリリーは多様ながん種に対する治療薬を提供しており、がん患者の予後改善に貢献しています。

抗がん剤

アリムタ(ペメトレキセドナトリウム水和物)は、悪性胸膜中皮腫や非小細胞肺がんの治療に使用される代謝拮抗剤です。100mg製剤(薬価21,113円)と500mg製剤(薬価85,680円)が利用可能で、他の抗がん剤との併用療法でも頻繁に使用されています。

ペメトレキセドは葉酸代謝を阻害することで、がん細胞のDNA合成を抑制し、細胞死を誘導します。特に非扁平上皮非小細胞肺がんにおいて、維持療法としても使用され、患者の無増悪生存期間の延長が期待されています。

分子標的薬

  • ラムシルマブ(遺伝子組換え):血管新生阻害薬として胃がん治療に使用
  • セルペルカチニブ:RET融合遺伝子陽性がんに対する分子標的薬

開発中のオンコロジー製品

イムルネストラント(LY3484356)は、乳がん治療薬として開発後期段階にあり、乳がんの術後補助化学療法での適応も検討されています。この薬剤は、ホルモン受容体陽性乳がんに対する新たな治療選択肢として期待されています。

また、ドナネマブ(LY3002813)は、プレクリニカル期アルツハイマー病治療薬として開発が進められており、神経変性疾患治療の新たな可能性を示しています。

オンコロジー領域における治療成績の向上は、複数の薬剤を組み合わせた集学的治療により実現されており、イーライリリーの製品群は、がん治療の標準的な治療プロトコルにおいて重要な役割を担っています。

がん情報サービスにおける薬物療法情報

https://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/drug_therapy/index.html

イーライリリー筋骨格系製品薬価情報

筋骨格系疾患の治療において、イーライリリーは関節リウマチや骨粗鬆症などの疾患に対する革新的な治療薬を提供しています。

関節リウマチ治療薬

オルミエント(バリシチニブ)は、JAK阻害薬として関節リウマチの治療において重要な位置を占めています。従来の生物学的製剤とは異なる作用機序を持ち、経口投与が可能な点が特徴です。

バリシチニブは、全身型若年性特発性関節炎への適応拡大も検討されており、小児の関節リウマチ類似疾患に対する新たな治療選択肢として期待されています。また、円形脱毛症に対する小児用量の開発も進められており、自己免疫疾患の幅広い治療への応用が期待されています。

炎症性腸疾患治療薬

オンボー(ミリキズマブ)は、潰瘍性大腸炎の治療に使用される抗IL-23p19抗体製剤です。静注製剤と皮下注製剤の両方が利用可能で、患者の病状や治療継続性に応じて選択することができます。

現在、潰瘍性大腸炎とクローン病の小児用量についても開発が進められており、小児の炎症性腸疾患治療における新たな選択肢として期待されています。

骨粗鬆症治療薬

エビスタ(ラロキシフェン塩酸塩)60mg錠は、薬価51.40円で閉経後骨粗鬆症の治療に使用されています。選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)として作用し、骨密度の維持・改善効果を発揮します。

薬価改定の影響

2024年度の薬価改定では、多くの製品で薬価の見直しが行われました。特に長期収載品については、後発医薬品の普及促進策により薬価の引き下げが実施されています。一方、革新的な新薬については、その有用性が評価され、適切な薬価設定が行われています。

医療従事者にとって、薬価情報は治療選択における重要な要素の一つであり、患者の経済的負担と治療効果のバランスを考慮した処方選択が求められています。

日本イーライリリー製品コード・薬価一覧

https://medical.lilly.com/jp/answers/212806

イーライリリー開発中新薬承認状況

イーライリリーは、「研究開発こそ企業の魂である」という創業以来の理念の下、継続的な新薬開発を行っています。現在、31の新薬候補が開発中で、その多くが開発後期段階に到達しています。

アルツハイマー病治療薬

ドナネマブ(LY3002813)は、プレクリニカル期アルツハイマー病治療薬として開発後期段階にあります。この薬剤は、脳内のアミロイドβプラークを除去する抗体医薬品として、認知症の根本的治療に新たな可能性を提供する可能性があります。

また、remternetug(LY3372993)も早期アルツハイマー病治療薬として開発が進められており、静注製剤と皮下注製剤の両方の剤形が検討されています。さらに、mevidalen(LY3154207)は経口投与製剤として開発中で、アルツハイマー病治療における利便性の向上が期待されています。

心血管疾患治療薬

muvalaplin(LY3473329)は、心疾患治療薬として開発中期段階にあり、心血管イベントの予防において新たな治療選択肢を提供する可能性があります。

神経障害性疼痛治療薬

mazisotine(LY3556050)は、神経障害性疼痛に対する経口投与製剤として開発中期段階にあります。慢性疼痛の管理において、新たな治療選択肢として期待されています。

規制当局との連携

日本における新薬承認プロセスでは、医薬品医療機器総合機構(PMDA)との綿密な連携が重要です。イーライリリーは、日本国内での研究開発に注力し、オープンイノベーションを実践することで、承認申請に必要なデータの収集と評価を効率的に進めています。

将来の展望

製薬業界では、新薬開発のハードルが年々高くなっており、開発コストの増大と成功確率の低下が課題となっています。イーライリリーは、この課題に対応するため、他社との協業や研究機関との連携を強化し、革新的な治療薬の開発を継続しています。

特に、日本市場は米国に次ぐ重要な市場として位置づけられており、日本での売上成長率は製薬業界3位以内を6年連続で達成しています。この実績を背景に、今後も日本の医療ニーズに応える新薬の開発と承認取得が期待されています。

医薬品医療機器総合機構(PMDA)の承認審査情報

https://www.pmda.go.jp/review-services/drug-reviews/review-information/p-drugs/0001.html