副腎皮質ステロイド薬の一覧と強さ分類解説

副腎皮質ステロイド薬の一覧と分類

副腎皮質ステロイド薬の基本分類
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内服薬

プレドニゾロン、メドロール、リンデロンなど用量依存的に効果が増加

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外用薬

5段階の強さ分類(strongest~weak)で皮膚症状に応じて選択

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注射薬

パルス療法や重篤な症状に対する急速な効果発現を期待

副腎皮質ステロイド内服薬の種類と薬価一覧

副腎皮質ステロイド内服薬は作用時間により短時間型、中間型、長時間型に分類されます。各薬剤の特徴と薬価について詳細に解説します。

短時間型ステロイド

  • ヒドロコルチゾン(コートリル錠10mg):7.4円/錠
  • 生理的ステロイドに最も近い構造
  • 半減期が短く、副作用が比較的少ない
  • アジソン病などの補充療法に使用

中間型ステロイド

  • プレドニゾロン(プレドニン錠5mg):10.1円/錠
  • 最も汎用される経口ステロイド
  • 抗炎症作用が強く、多くの疾患に適応
  • 各メーカーから多数の後発品が販売
  • メチルプレドニゾロン(メドロール錠4mg):9.6円/錠
  • 鉱質コルチコイド作用が少ない
  • 臓器移植後やパルス療法で選択される
  • プレドニゾロンより副作用が軽減される傾向

長時間型ステロイド

  • ベタメタゾン(リンデロン錠)
  • セレスタミン配合錠形式で多く使用
  • セレスタミン1錠はプレドニン換算で2.5mgに相当
  • 抗ヒスタミン薬との配合により相乗効果
  • デキサメタゾン(デカドロン)
  • 最も強力な抗炎症作用
  • 脳浮腫や重篤な炎症に使用
  • 長時間作用のため隔日投与も可能

興味深いことに、健康な成人の体内では1日約5mgのコルチゾールが分泌されており、これがプレドニゾロン換算の基準となっています。

副腎皮質ステロイド外用薬の強さ分類と選択基準

外用ステロイドは薬効の強さにより5段階に分類され、皮膚症状の重症度と部位に応じて適切に選択する必要があります。

Strongest(最強群)

  • デルモベート(クロベタゾールプロピオン酸エステル)
  • 軟膏・クリーム・ローション剤型あり
  • 難治性皮膚疾患に限定使用
  • 長期使用により皮膚萎縮のリスク
  • ジフラール・ダイアコート(ジフロラゾン酢酸エステル)
  • 軟膏・クリーム剤型
  • 顔面や陰部への使用は避ける

Very Strong(かなり強力群)

  • フルメタ(モメタゾンフランカルボン酸エステル)
  • アンテベート(ベタメタゾン酢酸プロピオン酸エステル)
  • トプシム(フルオシノニド)
  • リンデロンDP(ベタメタゾンシプロピオン酸エステル)
  • マイザー(ジフルプレドナート)

これらの薬剤は成人の体幹・四肢の中等度から重度の炎症に適応され、症状改善後は段階的にランクを下げることが重要です。

Strong(強力群)

  • エクラー(デプロドンプロピオン酸エステル)
  • メサデルム(デキサメタゾンプロピオン酸エステル)
  • リンデロンV(ベタメタゾン吉草酸エステル)

Medium(中等度群)

  • リドメックス(吉草酸酢酸プレドニゾロン)
  • ロコイド(酢酸ヒドロコルチゾン)
  • キンダベート(酢酸クロベタゾン)

Weak(弱群)

  • プレドニゾロン
  • テラ・コートリル(ヒドロコルチゾン)

外用ステロイドの選択において、タクロリムス軟膏(プロトピック)は概ねStrong群と同等の効果を示しながら、皮膚萎縮を起こさない特徴があります。

副腎皮質ステロイド薬の作用機序と糖質・鉱質コルチコイド作用

副腎皮質ステロイド薬の作用機序は、細胞内グルココルチコイド受容体への結合による転写調節が主体となります。

糖質コルチコイド作用(主要な治療効果)

  • 抗炎症作用:炎症性サイトカインの産生抑制
  • 免疫抑制作用:T細胞の活性化阻害
  • 血糖上昇作用:糖新生の促進
  • 蛋白質分解促進:筋肉量減少の原因

鉱質コルチコイド作用(主に副作用として問題)

  • ナトリウム保持作用:浮腫・高血圧の原因
  • カリウム排泄促進:低カリウム血症のリスク
  • 水分貯留:体重増加・心負荷増大

治療において期待されるのは主に糖質コルチコイド作用であり、鉱質コルチコイド作用は可能な限り抑制したい作用です。現在使用される合成ステロイドは、この糖質/鉱質比を改良し、治療効果を保ちながら副作用を軽減する方向で開発されています。

ステロイドが細胞核内に移行後、特定の遺伝子転写を調節することで、抗炎症蛋白質の産生促進と炎症性蛋白質の産生抑制を同時に行います。この機序により、従来の非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)では得られない強力で持続的な抗炎症効果が発揮されます。

副腎皮質ステロイド薬の重要な副作用と対策

ステロイド治療における副作用は、投与量・期間・患者背景により大きく異なりますが、予防可能な副作用も多く、適切な対策が重要です。

感染症関連

  • 易感染性:免疫抑制による日和見感染のリスク
  • 対策:手洗い・うがい・マスク着用、プレドニゾロン20mg以上では予防的抗菌薬投与
  • ニューモシスチス肺炎:特に注意が必要な日和見感染
  • バクタ配合錠などによる予防投与が標準的

代謝異常

  • ステロイド糖尿病:糖新生促進による血糖値上昇
  • 高脂血症:脂質代謝異常による動脈硬化促進
  • 対策:カロリー制限、塩分制限、定期的血液検査

骨・筋肉系

  • 骨粗鬆症:骨形成抑制と骨吸収促進
  • 予防:ビスホスホネート薬の予防投与、カルシウム・ビタミンD補充
  • 大腿骨頭壊死:大量投与時の稀だが重篤な合併症
  • ステロイド筋症:近位筋の筋力低下

消化器系

  • ステロイド潰瘍:胃酸分泌促進と粘膜防御機能低下
  • 予防:プロトンポンプ阻害薬の予防投与

精神神経系

  • ステロイド精神病:多幸症、不眠、うつ状態
  • 発症率:高用量投与で5-18%
  • 多くは可逆性だが、適切な精神科的管理が必要

外観変化

  • 満月様顔貌(ムーンフェイス):脂肪再分布による
  • 中心性肥満:内臓脂肪増加
  • これらは減量により改善するが、患者のQOL低下要因

離脱症候群

  • 急激な中止により副腎不全症状
  • 症状:倦怠感、吐き気、血圧低下、低血糖
  • 予防:段階的減量、ストレス時の増量

注目すべき点として、ステロイド治療中の手術や抜歯などのストレス時には、一時的な増量が必要な場合があり、事前の主治医との相談が重要です。

副腎皮質ステロイド薬の臨床応用における間欠投与法

従来の連日投与に加え、近年注目されているのが間欠投与法です。特にアトピー性皮膚炎の維持療法において、その有効性が実証されています。

間欠投与法の概念

  • 急性期治療後の寛解維持を目的
  • 副作用リスクを最小限に抑制
  • 長期的な疾患コントロールを実現

アトピー性皮膚炎における間欠塗擦療法

クロベタゾールプロピオン酸エステル(デルモベート)を用いた臨床研究では、以下の結果が示されています。

  • 略治達成後、週2日の間欠塗擦を4週間実施
  • 再燃抑制効果:85.7%(18/21例)に有効
  • 治療期間:平均3.2週で略治状態に到達
  • 副作用:毛嚢炎、血清コルチゾール値低下等が軽度に認められたが、投与継続または中止により回復

間欠投与のメリット

  • 視床下部-下垂体-副腎軸の抑制軽減
  • 皮膚萎縮などの局所副作用の軽減
  • 患者のコンプライアンス向上
  • 長期治療における安全性向上

プロアクティブ療法の概念

炎症が完全に治まった後も、定期的にステロイド外用薬を使用することで再燃を予防する治療戦略です。従来のリアクティブ療法(症状出現時のみ治療)と比較して、以下の利点があります。

  • 総使用量の減少
  • 重篤な再燃の予防
  • 患者・家族の心理的負担軽減

この治療法は、ステロイド忌避によって治療が不十分となるケースの解決策としても注目されており、適切な教育と組み合わせることで治療成績の向上が期待されています。

間欠投与法は、ステロイド治療の新しいパラダイムとして、今後さまざまな疾患での応用が検討されており、個別化医療の観点からも重要な治療選択肢となっています。

日本リウマチ学会によるステロイド治療の詳細なガイドライン