目次
ハイリスク薬と算定できない薬の一覧
ハイリスク薬の定義と特定薬剤管理指導加算1
ハイリスク薬とは、副作用や相互作用のリスクが高く、特に慎重な管理が必要な医薬品のことを指します。日本薬剤師会が定めた「薬局におけるハイリスク薬の薬学的管理指導に関する業務ガイドライン」によると、ハイリスク薬は以下の3つに分類されます。
1. 厚生労働科学研究で定義された「ハイリスク薬」
2. 診療報酬改定で定められた薬剤管理指導料の「2」に関わる「ハイリスク薬」
3. 各医療機関が独自に指定した「ハイリスク薬」
特定薬剤管理指導加算1は、これらのハイリスク薬のうち、特に安全管理が必要な医薬品について、服薬状況や副作用の有無等を確認し、必要な薬学的管理及び指導を行った場合に算定できる加算です。
ハイリスク薬で算定できない薬剤の一覧
特定薬剤管理指導加算1の算定対象となるハイリスク薬であっても、以下の薬剤は算定できません。
1. 免疫抑制剤
- 副腎皮質ステロイド外用薬のうち、以下の薬効分類に属するもの
- 131「眼科用剤」
- 132「耳鼻科用剤」
- 225「気管支拡張剤」
- 264「鎮痛、鎮痒、収斂、消炎剤」
- 関節リウマチの治療薬のうち、以下の薬剤
- 金チオリンゴ酸ナトリウム
- オーラノフィン
- D-ペニシラミン
- サラゾスルファピリジン
- ブシラミン
- ロベンザリット二ナトリウム
- アクタリット
2. 血液凝固阻止剤
- イコサペント酸エチル
- 塩酸サルポグレラート
- ベラプロストナトリウム
- リマプロストアルファデクス
- 解熱鎮痛を目的として投与されるアスピリン
3. 精神神経用剤
- 薬効分類112「催眠鎮静剤、抗不安剤」に属する医薬品
ハイリスク薬の算定可否判断のポイント
ハイリスク薬の算定可否を判断する際には、以下のポイントに注意が必要です。
1. 薬効分類
- 同じ成分でも、薬効分類が異なる場合があります。例えば、スルピリド50mg錠は232「消化性潰瘍用剤」に分類されるため、精神神経用剤としての算定はできません。
2. 処方目的
- 同じ薬剤でも、処方目的によって算定可否が変わる場合があります。例えば、アスピリンは血液凝固阻止目的で長期間服用する場合は算定可能ですが、解熱・鎮痛目的の場合は算定できません。
3. 剤形
- 外用剤は一般的に算定対象外となります。特に、ステロイド外用薬は注意が必要です。
4. 投与量
- 一部の薬剤では、投与量によって算定可否が変わる場合があります。
5. 併用薬
- 特定の併用薬がある場合に限り、算定可能となる場合があります。
算定できない薬剤の理由と背景
特定薬剤管理指導加算1の算定対象外となる薬剤が存在する理由には、以下のような背景があります。
1. リスクの程度
- 外用剤は一般的に全身作用が弱く、内服薬や注射薬に比べてリスクが低いため、算定対象外となることが多いです。
2. 使用目的
- 同じ薬剤でも、使用目的によってリスクが異なる場合があります。例えば、アスピリンの場合、血液凝固阻止目的での長期使用は出血リスクが高まるため算定対象となりますが、解熱・鎮痛目的での短期使用はそのリスクが低いため算定対象外となります。
3. 薬効分類の特性
- 薬効分類112「催眠鎮静剤、抗不安剤」は、薬効分類117「精神神経用剤」と比較して、一般的に副作用リスクが低いとされているため、算定対象外となっています。
4. 医療費適正化
- 医療費の適正化の観点から、特に慎重な管理が必要な薬剤に限定して加算を認めている面もあります。
ハイリスク薬の算定漏れを防ぐためのチェックポイント
ハイリスク薬の算定漏れを防ぐために、以下のようなチェックポイントを設けることが効果的です。
1. 薬剤マスタの整備
- 薬剤マスタに算定可否情報を登録し、調剤システム上で自動的にチェックできるようにします。
2. 処方箋の確認手順の標準化
- 処方箋受付時に、ハイリスク薬の有無と算定可否を確認する手順を標準化します。
3. 疑義照会の徹底
- 処方目的が不明確な場合は、積極的に疑義照会を行い、算定可否を確認します。
4. 定期的な勉強会の実施
- ハイリスク薬や算定要件に関する最新情報を共有するための勉強会を定期的に開催します。
5. レセプトチェックの強化
- 算定漏れや誤算定がないか、レセプト請求前に再度確認する体制を整えます。
ハイリスク薬の適切な管理と患者指導の重要性
ハイリスク薬の算定可否に関わらず、これらの薬剤の適切な管理と患者指導は非常に重要です。以下のポイントに注意して、患者さまの安全を確保しましょう。
1. 服薬指導の充実
- 副作用のモニタリング方法や対処法について、患者さまにわかりやすく説明します。
- 服用のタイミングや注意点を具体的に指導します。
2. 患者情報の収集と活用
- アレルギー歴、副作用歴、併用薬などの情報を丁寧に聴取し、記録します。
- 収集した情報を基に、個々の患者さまに適した指導を行います。
3. 多職種連携
- 医師や看護師と連携し、患者さまの状態変化や副作用の早期発見に努めます。
- 必要に応じて、処方の適正化や用量調整の提案を行います。
4. 継続的なフォローアップ
- 定期的に服薬状況や副作用の有無を確認し、必要に応じて指導内容を見直します。
- 長期服用患者さまの場合、薬物療法の効果や副作用の経過を慎重に観察します。
5. 患者教育の実施
- ハイリスク薬に関する患者向けの教育資材を作成し、活用します。
- 服薬カレンダーや薬剤情報提供文書を工夫し、患者さまの理解を深めます。
ハイリスク薬の中には算定できない薬剤が存在することを理解し、適切な算定と患者さまの安全確保の両立を目指すことが重要です。薬剤師として、常に最新の情報を収集し、正確な知識を持って業務にあたることが求められます。
また、算定の可否に関わらず、ハイリスク薬を服用する患者さまに対しては、特に丁寧な服薬指導と継続的なフォローアップが必要です。患者さま一人ひとりの状況に応じた、きめ細やかな対応を心がけましょう。
最後に、ハイリスク薬の管理は薬剤師の重要な責務の一つです。算定の有無にとらわれすぎず、患者さまの安全と薬物療法の質の向上を第一に考え、専門性を発揮していくことが大切です。日々の業務の中で、これらの知識を活かし、より良い薬学的管理を実践していきましょう。
薬局におけるハイリスク薬の薬学的管理指導に関する業務ガイドラインの詳細はこちらを参照
以上の内容を踏まえ、ハイリスク薬の適切な管理と算定、そして患者さまの安全確保に向けて、日々の業務に取り組んでいただければ幸いです。薬剤師の皆さまの専門性と努力が、医療の質向上と患者さまの健康に大きく貢献することを忘れずに、これからも研鑽を重ねていきましょう。