複合性局所疼痛症候群タイプ1と診断治療リハビリ

複合性局所疼痛症候群 タイプ1

複合性局所疼痛症候群タイプ1:臨床で迷わない要点
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診断は「除外」+ブダペスト基準

痛みの強さだけで決めず、4カテゴリ(感覚・血管運動・発汗/浮腫・運動/栄養)の症状と徴候をセットで評価します。

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治療目標は鎮痛より機能回復

ガイドではリハビリテーションが治療の根幹で、痛みを「消してから動かす」発想は逆効果になり得ます。

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心理は原因でなく、転帰を左右

不安・抑うつは発症要因ではない一方で、痛みの表出や治療意欲に影響するため早期からの説明とセルフマネジメント教育が重要です。

複合性局所疼痛症候群タイプ1の診断基準とブダペスト基準

複合性局所疼痛症候群(CRPS)は「単一の疾患というより病態の集合体」とされ、経時的に病態が変化しうる点が診断を難しくします。

臨床では1994年IASP基準が広く知られますが、特異度が低いという問題があり、その改善として自覚所見と他覚所見を組み合わせる「Budapest Criteria(ブダペスト基準)」が評価されています。

ブダペスト基準(臨床)では、①誘因に不釣り合いな持続痛、②4カテゴリ中3カテゴリ以上で症状が少なくとも1つ、③4カテゴリ中2カテゴリ以上で診察時に徴候が少なくとも1つ、④他疾患でよりよく説明できない、を満たす必要があります。

診断の勘所は「痛みが強い=CRPS」ではなく、感覚(痛覚過敏・アロディニア)、血管運動(皮膚温・色調の左右差)、発汗/浮腫(発汗異常・浮腫)、運動/栄養(可動域低下、筋力低下、振戦、ジストニア、爪・毛・皮膚の栄養変化)を、患者申告(症状)と診察所見(徴候)に分けて拾い上げることです。

また、ブダペスト基準はIASP基準に比べて特異度が改善しうることが検証研究で示されており、過剰診断を減らす意義があります。

複合性局所疼痛症候群タイプ1の鑑別診断と評価(検査・画像)

CRPSの診断は臨床診断であり、同時に「症状を説明できるほかの原因がないこと」を要件に含むため、鑑別の設計が実務上の中心になります。

ガイドでも、CRPSとして後遺症診断や重症度判定を行うと補償や訴訟に影響し得るため慎重に行うべきで、スクリーニング目的と鑑別の厳密さを分けて考える重要性が示されています。

診察で最低限押さえる観点(例)

・🧭 分布:末梢神経支配領域に一致していれば末梢神経障害を疑い、CRPSタイプ1(明確な神経損傷なし)として安易にまとめない。

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC2914601/

・🌡️ 皮膚温・色調:温度左右差や色調変化はブダペスト基準のカテゴリ要素で、繰り返し観察が臨床的に役立ちます。

・💧 浮腫・発汗:腫脹や発汗左右差は「炎症」「血管運動」「自律神経」を横断するサインになり、同時に感染・深部静脈血栓なども除外対象になります(部位・熱感・全身症状をセットで確認)。

補助検査は「確定」ではなく「裏付け・除外」

CRPSはゴールドスタンダード検査がないため、画像や生理検査は“診断を確定する”より“他疾患を除外し、臨床像を補強する”位置付けになります。

海外文献では、CRPS type 1の診断補助として三相骨シンチ(three-phase bone scan)が使われ、診断基準と整合する画像基準の検討が行われています。

Diagnostic Performance of Three-Phase Bone Scan for CRPS Type 1

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4043051/

複合性局所疼痛症候群タイプ1の治療:薬物療法と神経ブロック

治療は単独療法で完結しにくく、ガイドでも「複数の治療法が同時に導入される」「質の高いRCTが少ない」ことを前提に、合理的で副作用リスクの少ない方法を病態に合わせて選ぶべきとされています。

そして最重要の原則として、治療目標は「痛みの緩和より機能回復を重視」し、リハビリテーションが治療の根幹と明記されています。

薬物療法(ガイドの要点)

・💊 ステロイド:皮膚温上昇や浮腫など炎症機転が関与する症例では短期投与が推奨される一方、長期投与の有効性は不明で漫然投与を避ける、と整理されています。

・💊 ビスホスホネート:CRPSに対する有効性が複数RCTで示され、骨萎縮だけでなく痛み・浮腫・アロディニア抑制効果も言及され、骨萎縮を伴う例では早期投与が推奨されています。

・💊 NSAIDs:急性期の炎症機転が疑われる場合は合理的だが、無効報告もあり効果がない場合は中止する、とされています。

・💊 Ca2+チャネルα2δリガンドガバペンチンは有効性報告があるがエビデンスは弱く副作用に注意、プレガバリンはCRPSへのエビデンスがない、と記載されています。

神経ブロック(ガイドの要点)

ガイドでは、星状神経節ブロックは発症早期の上肢CRPSで有効性報告があり、胸部交感神経節ブロックも上肢CRPSで発症早期の施行が推奨される、とされています。

腰部交感神経節ブロックはエビデンスに乏しいが、交感神経関与が疑われる下肢CRPSで施行を考慮、とされています。

さらに、末梢神経ブロックや硬膜外ブロックは「リハビリとの併用が重要」で、効果が一時的な場合に2カ月以上漫然と続けない、といった運用上の注意も示されています。

「意外と見落とされやすい」実務ポイント

・🧩 交感神経ブロックは“痛みをゼロにする手段”というより、“運動時痛を軽減して活動性を上げる補助”として位置付けると、リハビリ中心の方針と整合しやすいです。

・🧪 グアネチジンなど交感神経遮断薬投与は有効ではない、と明記されています(昔のイメージで処方選択を誤らないための注意点)。

複合性局所疼痛症候群タイプ1のリハビリテーションと鏡療法

ガイドは、CRPSでは早期診断・早期の集学的治療が重要で、リハビリテーションが治療の根幹と明確に述べています。

理学療法・作業療法は、発症1年以内の痛みを軽減し活動性を回復する、と整理され、TENSは機能回復効果が限定的だが痛みと浮腫を軽減する、とされています。

さらに鏡療法は、脳卒中後の上肢CRPSで痛み軽減と機能回復を示したRCTがあるとして、実施を考慮する、と記載されています。

臨床で組み立てる際のコツ(実装寄りの視点)

・🏁 目標設定:疼痛スコアだけでなく、ROM、荷重、ADL(更衣・書字・つまみ動作等)を短いスパンで再評価し、「機能の小さな成功体験」を積み上げます(治療目標が機能回復であるというガイドの思想に一致)。

・🔥 物理療法の使いどころ:理学療法前に温熱刺激、温冷交代浴、低反応レベルレーザー等を行い、痛み緩和や筋弛緩を図る、という“前処置”的な使い方がガイドに書かれています。

・🪞 鏡療法・GMI:レビューではCRPS type 1でGMIやミラーセラピーにより疼痛改善が得られうる一方、研究規模が小さく異質性もあり他治療より優先して推奨できるほど十分ではない、という限界も示されています(患者説明の透明性に役立つ論点)。

Update on the effects of graded motor imagery and mirror therapy

参考)Update on the effects of grade…

複合性局所疼痛症候群タイプ1の独自視点:ギプス固定と不動化のリスク管理

ガイドでは、橈骨遠位端骨折後において「ギプス固定の圧」とCRPS発症に因果関係があるとし、固定中に浮腫が出現し痛みを伴う場合はギプス抜去または修正が必要、と明確に述べています。

さらに、長期間の不動化もCRPSの原因となる、と記載されており、「痛いから動かさない」「腫れているから固定を強める」といった日常診療の判断が悪循環を作り得ます。

この視点は検索上位で一般的に語られる“診断基準と治療の総論”よりも、現場の初期対応(外傷後・術後・固定中)の安全設計に直結するため、医療従事者向け記事として差別化しやすいポイントです。

具体策(現場での運用例)

・🧷 固定後フォロー:固定部位の皮膚温・色調・浮腫・疼痛の変化を「左右差」で記録し、悪化兆候があれば早期に固定の見直し。

・📣 患者教育:発症早期に「不動化の悪影響、活動の重要性、治療に対するセルフマネジメント」を教育することが強く推奨される、とガイドに明記されています。

・🧠 心理面の扱い:心理的問題は発症要因ではないが、不安や抑うつ等は痛みの表出や治療意欲に影響するため病歴聴取と配慮が治療効果に影響する、とされています(“心因”扱いして関係性を崩すリスクを避ける)。

鑑別・説明・同意の文言に使える注意点

CRPSの医学的判定と労災等の基準は別であることを明記し患者に説明しておくことが、その後の問題発生防止に重要、とガイドで述べられています。

この一文は、医療安全(認識齟齬の予防)と診療継続(通院中断の予防)の両面で効きやすく、医療者向け記事ならではの実務的価値になります。

有用:日本のペインクリニック指針(CRPSの病態、判定指標、神経ブロック、薬物療法、リハビリ、心理的アプローチまでまとまっている)

日本ペインクリニック学会:Ⅳ-C 複合性局所疼痛症候群(CRPS)