crps とは 医療 診断 治療 リハビリ

crps とは 医療

CRPSを臨床で扱う要点(医療従事者向け)
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まず「定義」と「診断枠組み」

CRPSは検査で確定する病名というより、症状・徴候の組み合わせで臨床診断する“病態”として理解すると整理しやすいです(Budapest基準、国内判定指標)。

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治療は「機能回復」を中心に

痛みの軽減だけでなく、可動域・使用行動の回復が転帰を左右します。リハビリが根幹で、薬物・ブロック・心理的介入を病態に合わせて併用します。

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過剰診断と見逃しの両方に注意

IASP旧基準は特異度が低い問題が指摘され、Budapest基準で特異度が改善します。診断名が補償・訴訟に影響する場面は特に慎重さが必要です。

crps とは 医療 定義と病態

 

CRPS(Complex Regional Pain Syndrome:複合性局所疼痛症候群)は、外傷や手術などの組織損傷後に、創傷治癒が進んでも痛みが遷延し、浮腫・皮膚血流変化・発汗異常など自律神経系の徴候や、運動障害・栄養障害性変化(皮膚・爪・毛)を伴い得る病態です。特定の単一疾患というより「多彩で時間経過で変化する病態」と捉えるべきで、病期により所見の出方が変わる点が臨床上の落とし穴になります。特に“難治性になり得る”“QOLを著しく障害する”ため、疑った時点で評価と介入を前倒しする発想が重要です。

日本ペインクリニック学会:ペインクリニック指針(CRPS章)

CRPSは従来、明らかな神経損傷がないものをType I、神経損傷があるものをType IIとして整理されてきました。治療方針の検討では、神経損傷の有無が完全に“治療の成否”を決めるわけではないものの、神経ブロックや末梢神経介入を考える場面で評価の軸になります。また、心理的問題は「発症要因ではない」としつつも、不安・抑うつ・怒りなどが痛みの表出や治療意欲に影響するため、感情面の配慮が治療効果に関わると指針で述べられています。

日本ペインクリニック学会:ペインクリニック指針(CRPS章)

あまり知られていない臨床的ポイントとして、「不動化そのもの」がCRPSの誘因・増悪因子になり得る点があります。とくにギプス固定中に浮腫と痛みが出現した場合、圧迫が発症と因果関係を持つ可能性があり、抜去や修正が必要と記載されています(固定=安静が善、とは限らない)。この“固定を続けるほど悪化し得る”という逆説は、外傷後疼痛を扱う現場で共有しておく価値があります。

日本ペインクリニック学会:ペインクリニック指針(CRPS章)

crps とは 医療 診断とBudapest基準

CRPS診断は基本的に臨床診断で、検査は「支持所見」や「鑑別の除外」を目的に位置づけるのが現実的です。IASPの1994年基準は病態を簡潔に表す一方で特異度が低い問題があり、運動機能などを追加し、自覚所見と他覚所見を組み合わせるBudapest基準が評価されています。さらに日本では、早期治療のためのスクリーニングとして厚生労働省研究班の「判定指標」も整理されています(ただし後遺症認定や補償・訴訟での使用は避けるべき、という但し書きが重要です)。

日本ペインクリニック学会:ペインクリニック指針(CRPS章)

Budapest臨床診断基準の骨子は、(1)誘因に不釣り合いな持続痛、(2)4カテゴリ(感覚・血管運動・発汗/浮腫・運動/栄養)中3カテゴリ以上で症状を訴え、(3)同じカテゴリのうち2カテゴリ以上で診察時に徴候を確認し、(4)他によりよい診断がない、という構造です。ここでの“症状(患者申告)”と“徴候(診察で確認)”を両方求める設計が、過剰診断を減らす方向に働きます。Budapest基準の妥当性検証研究では、IASP基準が感度は高いが特異度が低い(偽陽性が多い)一方で、Budapest臨床基準は感度を保ちながら特異度を改善したと報告されています。

Harden RN, et al. Pain. 2010;150(2):268-274(Budapest基準の検証)

臨床での実装上のコツは、「カテゴリを一つずつ機械的に埋める」ことです。例えば感覚カテゴリはアロディニア/痛覚過敏だけでなく、刺激の種類(触・冷・深部圧・関節運動など)を具体化して確認すると、鑑別(末梢神経障害、根症状、血管障害、感染など)にもつながります。また診察時に徴候が確認できない日もあり得るため、温度差・皮膚色・発汗・浮腫は、診察室に入る前から観察(衣服・装具を外した直後の左右差、靴下跡、皮膚乾燥など)しておくと拾いやすくなります。

Harden RN, et al. Pain. 2010;150(2):268-274(Budapest基準の検証)

crps とは 医療 症状と鑑別(浮腫・皮膚血流・発汗異常)

CRPSの症状は「痛み」だけではなく、自律神経系・運動系・栄養(皮膚/爪/毛)変化が絡み合うため、鑑別を誤ると“別疾患の見逃し”にも“CRPSの過剰診断”にもなります。指針では、IASP基準が求める要素として、持続痛(不釣り合いな痛み、アロディニア、痛覚過敏)に加え、病期のいずれかで浮腫・皮膚血流変化・発汗異常の存在、他の原因がないことを挙げています。ここから逆算すると、感染(蜂窩織炎/骨髄炎)、深部静脈血栓、コンパートメント、血管閉塞、炎症性関節炎、末梢神経絞扼、神経根障害などをまず除外しない限り、CRPS“らしさ”だけで走るのは危険です。

日本ペインクリニック学会:ペインクリニック指針(CRPS章)

鑑別に役立つ臨床の観点を、医療者向けに箇条書きで整理します(入れ子にしません)。

  • 🧪 炎症所見:発熱、CRP上昇、局所熱感が強い場合は感染・炎症性疾患の可能性を優先して評価する。
  • 🩸 血管イベント:急激な腫脹・色調変化・疼痛増悪は血栓/虚血の除外が先(エコー等)。
  • 🧠 神経局在:末梢神経領域や根性パターンに一致しすぎる場合、CRPSより神経障害を疑う(必要なら筋電図など)。
  • 🦴 骨・関節:外傷後であっても、骨癒合不全、関節内病変、装具圧迫など“構造の理由”が痛みを説明していないか再確認する。
  • 🧩 行動・機能:痛み回避行動、使用回避、恐怖回避が強い場合、痛み教育・認知行動的介入が治療要素として浮上する。日本ペインクリニック学会:ペインクリニック指針(CRPS章)

意外と見落とされるのが「ギプス・装具・包帯の“圧”」です。指針では、橈骨遠位端骨折後にギプス固定の圧とCRPS発症に因果関係があること、固定中に浮腫と痛みが出たら抜去/修正が必要と明記されています。外傷初期の強い痛み、閉経後女性、特定の骨折型などがリスク因子として示唆される点と合わせ、整形外科・救急・リハ部門で共有すると「予防的な介入(早期の過度な固定回避、循環・浮腫の観察強化)」に落とし込めます。

日本ペインクリニック学会:ペインクリニック指針(CRPS章)

crps とは 医療 治療(薬物療法・神経ブロック・リハビリ)

CRPS治療は「集学的治療」が原則で、指針でも“早期に診断し集学的治療を行うことが重要”“治療目標は痛みの緩和より機能回復を重視し、リハビリが根幹”と明確に述べられています。つまり、薬やブロックは単独で完結させるより、運動療法・作業療法の実行を可能にする“補助輪”として使う設計の方が臨床では成功しやすいです。また、効果の乏しい治療を漫然と継続しないことも明記されており、評価—中止—切替の意思決定が重要になります。

日本ペインクリニック学会:ペインクリニック指針(CRPS章)

薬物療法について、指針の記載を軸にポイントをまとめます。

神経ブロックは、症例選択とリハビリ併用が鍵です。急性期で浮腫の強い症例に対する静脈内区域麻酔(IVRA)+局所静脈内ステロイド注入は有効とする報告がある一方、プラセボ差なしの報告もあり、過度な期待は禁物です。交感神経ブロック(星状神経節、胸部交感神経節など)は発症早期の上肢CRPSで有効性報告があり、試験ブロックで有効なら高周波熱凝固などを考慮する一方、観血的交感神経切除は侵襲性・不可逆性のため推奨されない、と整理されています。

日本ペインクリニック学会:ペインクリニック指針(CRPS章)

リハビリテーションは第一選択として推奨され、発症1年以内に痛み軽減と活動性回復に寄与するとされます。TENSは機能回復効果は限定的でも痛み・浮腫軽減が期待され、鏡療法は脳卒中後の上肢CRPSで痛み軽減と機能回復を示したRCTがあるため実施を考慮すると記載されています。ここでの実務的ポイントは、痛みが強いから“患肢を使わせない”ではなく、温熱刺激・温冷交代浴などを併用して運動療法に乗せ、段階的に使用経験を増やす設計にすることです。

日本ペインクリニック学会:ペインクリニック指針(CRPS章)

crps とは 医療 独自視点:医療者の説明と合意形成(訴訟・補償リスクも含む)

検索上位の記事は「症状・診断・治療」中心になりがちですが、医療現場で実際に難しいのは“説明”と“合意形成”です。指針でも、CRPSとして後遺症診断や重症度判定を行うと補償や訴訟に影響し得るため慎重に行うべき、また判定指標はその目的(治療方針決定・紹介判断)に限って使うべき、と明記されています。つまり医療者側は、診断名の医学的意味と社会的インパクトを切り分け、カルテ記載と患者説明の整合性を保つ必要があります。

日本ペインクリニック学会:ペインクリニック指針(CRPS章)

臨床で役に立つ“言い方”の工夫を、医療安全の観点も含めて提案します(箇条書き、入れ子にしません)。

“意外な情報”として、診断基準の話は医療者同士の共通言語になるだけでなく、患者説明の透明性にも直結します。Budapest基準は、IASP基準より特異度を改善し、偽陽性(別の神経障害性疼痛などをCRPSと誤る)を減らす方向に働くことが検証研究で示されています。説明の場で、カテゴリ(感覚・血管運動・発汗/浮腫・運動/栄養)という構造を使うと、患者は「何が起きているか」を理解しやすく、治療(リハビリ・セルフマネジメント)への参加も得やすくなります。

Harden RN, et al. Pain. 2010;150(2):268-274

(参考リンク:CRPSの病態・症状・治療と、日本での判定指標や注意書きまでまとまっている)

日本ペインクリニック学会:ペインクリニック指針(CRPS章PDF)

(参考リンク:Budapest診断基準の感度・特異度の検証データが読める)

Validation of proposed diagnostic criteria (the “Budapest Criteria”) for CRPS(Pain. 2010)

The Complete CRPS Daily Tracker: A 90-Day Pain, Symptom & Wellness Journal for Complex Regional Pain Syndrome