ボノピオンパック 販売中止と肝機能障害の関連性

ボノピオンパックと販売中止の経緯

ボノピオンパックの基本情報
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成分構成

ボノプラザンフマル酸塩・アモキシシリン水和物・メトロニダゾールの3剤からなるヘリコバクター・ピロリ除菌薬

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主な用途

プロトンポンプインヒビター、アモキシシリン水和物及びクラリスロマイシンの3剤投与による除菌治療が不成功の場合の二次除菌

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安全性懸念

肝機能障害などの重大な副作用が報告され、厚生労働省による使用上の注意改訂指示が出されている

ボノピオンパックの薬剤構成と効能

ボノピオンパックは、武田薬品工業が製造販売するヘリコバクター・ピロリ菌の二次除菌治療薬です。一般名は「ボノプラザンフマル酸塩・アモキシシリン水和物・メトロニダゾールシート」で、1シートあたりの薬価は452.6円となっています[5]。

本剤は、プロトンポンプ阻害薬(PPI)であるボノプラザンフマル酸塩(タケキャブ)と、抗生物質のアモキシシリン水和物、そしてメトロニダゾールの3剤から構成されています。一次除菌(ボノサップパックなど)で除菌できなかった場合の二次除菌治療として用いられます。

通常、成人にはボノプラザンとして1回20mg、アモキシシリン水和物として1回750mg(力価)、メトロニダゾールとして1回250mgの3剤を同時に1日2回、7日間経口投与します[5]。この組み合わせにより、一次除菌で失敗したピロリ菌に対しても高い除菌率を示すことが臨床的に確認されています。
埼玉協同病院薬剤科の調査によると、ボノピオンパック400による二次除菌の成功率は100%と報告されており[3]、臨床現場での高い有効性が示されています。

ボノピオンパックの肝機能障害リスク

厚生労働省は2018年6月5日に「使用上の注意」の改訂について通知を発出し、ボノピオンパックを含むメトロニダゾール配合剤に関して、肝機能障害のリスクを警告しました[1]。
特に重要な点として、肝機能障害が現れることがあり、死亡に至った患者も報告されています。そのため、定期的な肝機能検査を行うなど、患者の観察を十分に行い、異常が認められた場合には、本剤の投与中止等の適切な処置を行う必要があるとされています[1]。
具体的には、「重要な基本的注意」の項目に「肝機能障害が現れることがあり、定期的に肝機能検査を実施するなど、患者の状態を十分に観察する」旨が追記され、「重大な副作用」として「肝機能障害(コケイン症候群患者で重度の肝毒性・急性肝不全が発現し死亡に至ったとの報告あり)」が追加されました[1]。
また、2020年の報告では、肝機能障害関連症例が41件報告され、ボノプラザンフマル酸塩で死亡4件が確認されましたが、同剤との因果関係が確認された症例はなかったとされています[2]。

ボノピオンパックのショック・アナフィラキシーリスク

厚生労働省は2020年10月6日、武田薬品のプロトンポンプ阻害剤「ボノプラザンフマル酸塩」(販売名:タケキャブ錠10mg、同20mg)、「ボノプラザンフマル酸塩・アモキシシリン水和物・クラリスロマイシン」(ボノサップパック400、同800)、「ボノプラザンフマル酸塩・アモキシシリン水和物・メトロニダゾール」(ボノピオンパック)について、添付文書の「使用上の注意」を改訂するよう製造販売業者に指示しました[2]。
この改訂では、「重大な副作用」の項目にショック、アナフィラキシー、肝機能障害を追記することが求められました。直近3年間の国内症例の集積状況によると、ショック、アナフィラキシー関連症例が計18件報告され、このうちボノプラザンフマル酸塩で因果関係が否定できない症例が1件報告されていました[2]。

これらの重篤な副作用リスクが明らかになったことで、医療現場ではボノピオンパックの使用に際して、より慎重な患者モニタリングが求められるようになりました。特にアレルギー歴のある患者や肝機能障害の既往がある患者への投与については、リスク・ベネフィットを十分に検討する必要があります。

ボノピオンパックの代替治療オプション

ボノピオンパックの安全性懸念が高まる中、医療機関では代替となる二次除菌レジメンの検討が進められています。

現在、日本ヘリコバクター学会のガイドラインでは、一次除菌失敗後の二次除菌として、PPI+アモキシシリン+メトロニダゾールの組み合わせが推奨されています。ボノピオンパックに代わる選択肢としては、以下のような組み合わせが考えられます:

  1. ラベプラゾール+アモキシシリン+メトロニダゾール(ラベファインパック)
  2. ランソプラゾール+アモキシシリン+メトロニダゾール(ランピオンパック)
  3. エソメプラゾール+アモキシシリン+メトロニダゾール(個別処方)
  4. ラベプラゾール+シタフロキサシン+メトロニダゾール(三次除菌レジメン、保険適用外)

これらの代替レジメンを選択する際は、患者の既往歴、アレルギー歴、併用薬、肝機能状態などを総合的に評価し、最適な治療法を選択することが重要です。

また、ピロリ菌除菌治療においては、薬剤の選択だけでなく、服薬アドヒアランスの向上、副作用モニタリング、除菌判定の適切なタイミングなども治療成功のために重要な要素となります。

ボノピオンパック販売中止の医療現場への影響

ボノピオンパックの販売中止や使用制限が実施された場合、医療現場には様々な影響が予想されます。特に、二次除菌治療のオプションが限られることで、臨床医の処方選択肢が狭まる可能性があります。

医療機関での対応としては、以下のような取り組みが考えられます:

  1. 処方プロトコルの見直し:二次除菌レジメンの標準処方を見直し、代替薬への切り替えを円滑に行うためのプロトコルを整備する
  2. 患者教育の強化:代替薬に変更する際の服薬指導や副作用モニタリングの方法について、患者への説明を強化する
  3. 薬剤師との連携強化:処方変更に伴う相互作用チェックや副作用モニタリングについて、薬剤師との連携を強化する
  4. 除菌成功率のモニタリング:代替レジメンへの変更後も、除菌成功率を継続的にモニタリングし、治療効果を評価する
  5. 診療報酬への影響対策:処方変更に伴う診療報酬への影響を評価し、必要に応じて対策を講じる

医療機関によっては、すでにボノピオンパックからラベファインパックやランピオンパックなどの代替薬への切り替えを進めているケースもあります。埼玉協同病院の例では、ボノピオンパック400の二次除菌成功率が100%と高い効果を示していたため[3]、代替薬への切り替えによる除菌率への影響も慎重に評価する必要があります。
また、製薬企業の対応としては、ラニチジン(ザンタック)の回収事例のように、代替薬剤費や再診料、交通費などの補償を行うケースも考えられます[4]。医療機関としては、こうした製薬企業の対応情報も把握しておくことが重要です。

ボノピオンパック使用時の安全対策と患者モニタリング

ボノピオンパックを含むピロリ菌除菌薬の使用に際しては、副作用リスクを最小化するための安全対策と患者モニタリングが重要です。特に肝機能障害やショック、アナフィラキシーなどの重篤な副作用に注意が必要です。

治療前の評価と準備

  • 肝機能検査(AST、ALT、γ-GTP、ALP、総ビリルビンなど)の実施
  • アレルギー歴の詳細な聴取
  • 併用薬のチェックと相互作用の評価
  • 患者への服薬指導と副作用症状の説明

治療中のモニタリング

  • 定期的な肝機能検査の実施(特に治療開始後1-2週間)
  • アレルギー症状(発疹、掻痒感、呼吸困難など)の観察
  • 消化器症状(腹痛、下痢、嘔吐など)のモニタリング
  • 神経症状(頭痛、めまい、しびれなど)の確認

治療後のフォローアップ

  • 除菌判定は治療終了後60日以上空けることが推奨[3]
  • 抗体法による判定の場合は6ヶ月以上空けることが望ましい[3]
  • 除菌判定前のPPI(タケキャブを含む)は少なくとも14日以上前から中止する[3]

また、ボノピオンパックに含まれるメトロニダゾール(フラジール)は飲酒との相互作用により、腹痛・嘔吐・ほてりなどの症状が出現するリスクが高まるため、治療中は飲酒を避けるよう指導することが重要です[3]。
さらに、喫煙は胃血流量を低下させることで薬剤の胃粘膜濃度を下げ、除菌率を低下させる可能性があるため、治療中は禁煙を推奨します[3]。

医療機関では、これらの安全対策と患者モニタリングを標準化したプロトコルを整備し、医師、薬剤師、看護師など多職種で連携して患者の安全確保に努めることが重要です。特に高齢者やコケイン症候群患者、肝機能障害の既往がある患者などハイリスク患者に対しては、より慎重な対応が求められます。

これらの対策を適切に実施することで、ボノピオンパックの使用に伴うリスクを最小化し、安全かつ効果的なピロリ菌除菌治療を提供することが可能となります。

ボノピオンパックの臨床データと有効性評価

ボノピオンパックの臨床的有効性については、複数の医療機関からデータが報告されています。埼玉協同病院薬剤科の調査によると、ボノピオンパック400による二次除菌の成功率は100%と報告されており[3]、高い有効性が示されています。
一方、一次除菌薬であるボノサップパックの除菌成功率は89.1%(90/101人)で、従来のラベキュアパック400の77.2%(122/158人)と比較して高い除菌率を示しています[3]。性別による差も見られ、男性では93.5%、女性では85.5%の除菌成功率が報告されています。

ボノピオンパックの高い除菌率の背景には、以下の要因が考えられます:

  1. ボノプラザンの強力な酸分泌抑制作用:従来のPPIと比較して、ボノプラザン(タケキャブ)はより強力かつ持続的な胃酸分泌抑制作用を持ち、抗菌薬の効果を高める環境を作り出します。
  2. メトロニダゾールの抗菌スペクトル:一次除菌で使用されるクラリスロマイシンに耐性を持つピロリ菌に対しても、メトロニダゾールは有効性を示すことが多いため、二次除菌での高い成功率につながっています。
  3. 服薬アドヒアランスの改善:パック製剤により服薬管理が容易になり、アドヒアランスが向上することで、治療効果が高まる可能性があります。

しかし、これらの高い有効性と並行して、安全性の懸念も報告されています。2020年の報告では、ボノプラザンフマル酸塩関連の肝機能障害症例が41件報告され、死亡例も4件確認されています(ただし因果関係は確認されていない)[2]。また、ショックやアナフィラキシー関連症例も18件報告されています[2]。

これらの安全性データと有効性データを総合的に評価し、個々の患者におけるリスク・ベネフィットバランスを慎重に検討することが、臨床現場での適切な判断につながります。特に、肝機能障害のリスク因子を持つ患者や、アレルギー歴のある患者では、代替治療の検討や、より慎重なモニタリングが必要となります。

また、除菌判定の方法やタイミングも治療評価において重要です。検査方法は主に便検査で実施され、除菌判定時期は4週間以上(理想的には60日以上)空けることが推奨されています[3]。抗体法を用いる場合は、除菌後の陰性化に時間を要するため、6ヶ月以上空けることが望ましいとされています[3]。

これらの臨床データと評価方法を理解し、適切な治療選択と患者モニタリングを行うことが、ピロリ菌除菌治療の成功率向上と安全性確保につながります。

ボノピオンパック販売中止に関する最新情報と今後の展望

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