胃穿通と胃潰瘍
胃穿通の原因と胃潰瘍とNSAIDs
胃穿通の背景として最も多いのは消化性潰瘍の進行で、胃壁の深部まで潰瘍が及び、周囲組織(膵・肝・脾・横隔膜下など)へ“抜けていく”形になります。
原因因子としてはH. pylori感染とNSAIDs(解熱鎮痛薬)使用が軸で、NSAIDsは胃粘膜保護に関わるプロスタグランジンを抑制して潰瘍を作りやすくし、重篤合併症(出血・穿孔など)のリスクにも関与します。
一方で「潰瘍=良性」と決めつけないのが重要で、胃癌が穿孔(穿通を含む深掘れ病変の背景)に関与することがあるため、急性期を越えたら原因精査(内視鏡での悪性除外、H. pylori評価)を臨床計画に入れておきます。
- 疑うべき背景:H. pylori、NSAIDs、低用量アスピリン、重症ストレス、基礎疾患(高齢・腎機能低下など)。
- 「意外に多い落とし穴」:痛みが強くない/波がある経過でも穿通+膿瘍形成が進むことがある(放置例の報告がある)。
胃穿通の臨床は「薬剤歴の聞き取り」で大きく分岐します。NSAIDsや低用量アスピリンを中止できるか、代替があるか、継続が不可避かで再発予防と退院後の設計が変わるため、初療段階から主治医・薬剤師・原疾患側(整形/循環器など)で合意形成をしておくと実務が崩れにくくなります。
胃穿通の症状と穿孔
穿孔は腹腔内への漏出で急性腹膜炎として強い腹痛・板状硬などを呈しやすいのに対し、穿通は周囲臓器に“ふさがれた”形になり、症状が局所的・遷延的になり得る点が臨床上の違いです。
ただし「穿通だから軽い」ではなく、穿通先で膿瘍形成や出血(穿通部の血管損傷など)に進むと急変し得るため、バイタルと採血(炎症反応、Hb低下)を繰り返し追う姿勢が必要です。
上部消化管の穿孔/穿通の共通点として、突然の上腹部痛、腹膜刺激徴候、肩への放散などが出ることがあり、症状が非典型でも画像での再評価が安全側です。
- 典型所見:上腹部痛、圧痛、腹膜刺激徴候、発熱、悪寒、食欲低下。
- 重症サイン:ショック兆候、意識変容、急速な貧血進行、強い腹膜刺激。
- 注意:疼痛が「1カ月など遷延」してから受診し、膿瘍が見つかる例も報告されている。
医療従事者向けの実務ポイントとして、救急外来や病棟で「穿孔っぽくないから様子見」と判断した場合でも、①炎症反応が高い、②局所圧痛が強い、③画像で周囲脂肪織濃度上昇がある、の組合せがあれば“穿通+膿瘍”の線で再検討する価値があります。
参考)消化管穿孔 – 03. 消化器系の病気 – MSDマニュアル…
胃穿通の診断とCT
上部消化管穿孔では腹部X線のfree airが手がかりになりますが、CTが診断の中心で、穿通でも炎症の広がりや膿瘍、隣接臓器との連続性評価に役立ちます。
胃潰瘍穿通による横隔膜下膿瘍の症例報告では、造影CTで脾周囲膿瘍を認め、内視鏡で胃潰瘍穿通と診断されています。
つまり「free airがない=消化管イベントではない」と早合点せず、局所膿瘍(横隔膜下・脾周囲など)を見たら、消化管(胃)由来の穿通という鑑別をルーチンに入れておくと診断の遅れを減らせます。
- CTで見たい所見:局所の壁肥厚、周囲脂肪織濃度上昇、限局性の液体貯留、膿瘍、隣接臓器との癒着や連続。
- 内視鏡の位置づけ:出血/悪性除外/病変同定に有用だが、急性期は全身状態と穿孔リスクを踏まえ適応判断が必要。
(参考リンク:消化性潰瘍(NSAIDs・低用量アスピリンを含む)や合併症、予防フローチャートなど標準的考え方がまとまっている)
日本消化器病学会 消化性潰瘍診療ガイドライン2020(PDF)
胃穿通の治療とドレナージ
消化管穿孔は原則として迅速な治療介入(多くは手術)を要する一方で、病態や閉鎖傾向によっては保存的治療が選択されることもあります。
穿通に伴う膿瘍形成では「排膿」が治療の軸になり、横隔膜下膿瘍に対しては経皮的や手術的ドレナージが一般的とされる中で、内視鏡的経胃的ドレナージが奏効した報告もあり、解剖学的条件が合えば選択肢になり得ます。
この報告は、胃潰瘍穿通が原因の左横隔膜下膿瘍に対し、透視下内視鏡で診断し、内視鏡下経胃的ドレナージで治癒し得た点を示しており、「ドレナージ経路の発想」が診療の幅を広げます。
- 初期対応(院内共通):絶食、輸液、抗菌薬、疼痛管理、循環動態の安定化、必要時に外科/IVR/内視鏡の同時コンサルト。
- 膿瘍が主体のとき:経皮ドレナージ/手術ドレナージ/(条件が合えば)経胃的ドレナージの検討。
- 再発予防:原因(H. pylori、NSAIDs/低用量アスピリン、悪性)を“確定”させて対策まで完了させる。
胃穿通の独自視点と診療ガイドライン
胃穿通を“イベント”として終わらせず、再発予防を「薬剤安全」と「フォロー計画」の2本立てにすると、退院後の事故が減ります。
消化性潰瘍診療ガイドライン2020には、NSAIDs潰瘍予防や低用量アスピリン潰瘍予防のフローチャートが示され、PPIやボノプラザン、COX-2選択的阻害薬(セレコキシブ)などを含めた考え方が整理されています。
現場での“意外な盲点”は、疼痛管理のためにNSAIDsを再開してしまい、原因を潰し切らないまま同じ轍を踏むことなので、退院時サマリーに「NSAIDs回避(例外条件)」「胃粘膜保護の必要期間」「再診・内視鏡の目的(悪性除外/治癒確認)」を明文化しておくのが安全策です。
- 実務のチェック項目:NSAIDs/低用量アスピリンの継続可否、PPI/P-CABの継続期間、H. pylori検査・除菌計画、内視鏡フォローの目的と時期。
- チームで効く工夫:薬剤師が退院薬説明で「NSAIDs市販薬」も含めて具体的に禁止/例外を伝えると、再発予防が現実的になる。

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