胃潰瘍の症状と原因 治療法は?

胃潰瘍の症状と原因 治療法

胃潰瘍の主な特徴
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定義

胃の粘膜が損傷し、粘膜筋板より深く欠損した状態

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主な症状

上腹部痛、胸やけ、吐き気、食欲不振など

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治療法

薬物療法、生活習慣の改善、原因除去など

胃潰瘍の症状:上腹部痛と消化器系の不快感

胃潰瘍の最も一般的な症状は、上腹部痛です。この痛みは、みぞおちや胃の周辺に感じられることが多く、その性質や発生のタイミングには特徴があります。

  • 痛みの性質:鈍い、焼けるような、あるいは刺すような痛み
  • 発生タイミング:食後60~90分後に起こりやすい
  • 持続時間:持続的な痛みが多い

上腹部痛以外にも、以下のような消化器系の不快感が現れることがあります:

  1. 胸やけ:胸のあたりに焼けるような不快感
  2. 呑酸(どんさん):酸っぱい液体が口まで上がってくる症状
  3. 吐き気・嘔吐:胃の不調による不快感や嘔吐反射
  4. 食欲不振:胃の状態悪化による食欲低下
  5. 膨満感:胃に食べ物が長時間残ることによる不快感

これらの症状は、胃酸の過剰分泌や胃の運動機能低下、胃から十二指腸への通過障害などが原因で起こります。

胃潰瘍の症状:出血と貧血のリスク

胃潰瘍が進行すると、潰瘍部位からの出血が起こる可能性があります。この出血は、以下のような症状として現れることがあります:

  • 吐血:黒褐色や赤色の血液を吐く
  • 下血:黒色のタール便(メレナ)が出る
  • 貧血症状:めまい、立ちくらみ、息切れ、頻脈など

特に注意が必要なのは、非ステロイド性抗炎症薬NSAIDs)を使用している患者さんです。NSAIDsには鎮痛作用があるため、胃潰瘍の痛みを感じにくくなり、気づかないうちに出血が進行してしまう可能性があります。

日本消化器病学会による消化性潰瘍診療ガイドライン2020

このガイドラインでは、NSAIDs起因性潰瘍の特徴や対策について詳しく解説されています。

胃潰瘍の症状:無症状の場合と合併症のリスク

胃潰瘍の患者さんの中には、明確な症状が現れないケースもあります。研究によると、約70%の患者さんが無症状であるという報告もあります。しかし、無症状だからといって安心はできません。症状がなくても、以下のような合併症のリスクがあります:

  1. 穿孔:潰瘍が胃壁を貫通し、腹腔内に胃の内容物が漏れ出す
    • 症状:激しい腹痛、腹部の硬直、発熱など
    • 緊急手術が必要な場合あり
  2. 狭窄:潰瘍の治癒過程で瘢痕組織が形成され、胃の出口が狭くなる
    • 症状:食後の膨満感、嘔吐、体重減少など
    • 内視鏡的拡張術や手術が必要な場合あり
  3. 大量出血:潰瘍が血管を侵食し、大量の出血が起こる
    • 症状:ショック症状(冷や汗、血圧低下など)、大量の吐血や下血
    • 緊急の内視鏡的止血術や輸血が必要な場合あり

これらの合併症は生命に関わる可能性があるため、定期的な検診や症状がある場合の早期受診が重要です。

胃潰瘍の症状:背部痛や腰痛との関連性

胃潰瘍の症状として、意外かもしれませんが背部痛や腰痛が現れることがあります。これは、胃の解剖学的位置と神経支配の特性によるものです。

  • 関連痛(れんかんつう):内臓の痛みが体表面の別の部位に投射される現象
  • 胃の位置:背中側(後腹膜)に近い
  • 神経支配:胃と背中の一部が同じ神経支配を受けている

背部痛や腰痛が胃潰瘍の症状として現れる場合、以下のような特徴があります:

  1. 痛みの位置:左右どちらかの肩甲骨の下あたり、または腰の上部
  2. 痛みの性質:鈍痛や灼熱感、時に刺すような痛み
  3. タイミング:食事との関連(食後に悪化するなど)

ただし、背部痛や腰痛は様々な原因で起こり得るため、これらの症状だけで胃潰瘍と断定することはできません。他の胃潰瘍の症状と併せて総合的に判断する必要があります。

胃潰瘍の症状:ストレスと心身相関の影響

胃潰瘍の発症や症状の悪化には、ストレスが大きく関与していることが知られています。ストレスと胃潰瘍の関係について、以下のポイントを押さえておきましょう:

  1. ストレスによる胃酸分泌の増加
    • 交感神経系の活性化→胃酸分泌の促進
    • コルチゾールの分泌増加→胃粘膜防御機能の低下
  2. 心身相関による症状の増悪
    • 不安やうつ状態→痛みの閾値低下
    • ストレスによる生活習慣の乱れ→胃の状態悪化
  3. ストレス管理の重要性
    • リラックス法の実践(深呼吸、瞑想など)
    • 適度な運動や趣味の時間確保
    • 必要に応じて心理カウンセリングの利用

日本消化器内視鏡学会雑誌:ストレスと消化管疾患

この論文では、ストレスと消化器疾患の関連について詳細な解説がなされています。

胃潰瘍の症状は、単に身体的な問題だけでなく、心理的な要因も大きく影響します。そのため、治療においては薬物療法だけでなく、ストレス管理や生活習慣の改善など、総合的なアプローチが重要となります。

以上、胃潰瘍の症状について詳しく解説してきました。胃潰瘍は適切な治療と生活習慣の改善により、多くの場合で改善が見込めます。しかし、症状が長引く場合や、出血などの重篤な症状が現れた場合は、速やかに医療機関を受診することが大切です。自己判断で症状を放置せず、専門医の診断を受けることをおすすめします。

胃の健康は、私たちの日々の生活の質に大きく影響します。胃潰瘍の症状について理解を深め、早期発見・早期治療につなげることで、より健康的な生活を送ることができるでしょう。定期的な健康診断や、気になる症状がある場合の早めの受診を心がけ、胃の健康管理に努めましょう。