穿孔性胃潰瘍 とは 診断 治療 症状 手術

穿孔性胃潰瘍 とは

穿孔性胃潰瘍 とは:急性腹症で最優先に疑う病態
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定義(何が起きているか)

胃潰瘍が全層に進展し、胃壁に穴(穿孔)が生じて胃内容が腹腔内へ漏出し、腹膜炎〜敗血症へ進み得る緊急病態。

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診断の核(まず何を見るか)

画像で腹腔内遊離ガス(free air)と腹水の評価。CTは少量のfree airも拾いやすく、治療方針決定に直結する。

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治療の大原則

原則は緊急手術。ただし、限局性腹膜炎・全身状態良好など条件が揃えば保存的治療が成立することがある。

穿孔性胃潰瘍 とは:症状と腹膜炎の所見

 

穿孔性胃潰瘍は、胃内容が腹腔内に漏れて化学性〜細菌性腹膜炎へ進展し得るため、臨床像は「急性腹症」の典型をとります。

初発は突然の強い上腹部痛で、短時間で全腹部へ波及し、腹膜刺激症状反跳痛、筋性防御、板状硬など)が前面に出ます。

嘔気・嘔吐、冷汗、頻脈、血圧低下などショック徴候を伴うこともあり、ここまで進むと時間勝負で蘇生と外科介入の優先順位が上がります。

医療者が注意したいのは、「痛みが一旦軽くなったように見える時間帯」があり得る点です。

参考)胃・十二指腸潰瘍穿孔|病気症状ナビbyクラウドドクター

穿孔直後の激痛(化学性腹膜炎)→一時的な軽快→細菌性腹膜炎で再増悪、という経過があり、問診での痛みの推移が診断のヒントになります。

高齢者では初期症状が乏しいことがあるため、腹部所見が弱くてもバイタル、炎症反応、画像所見の整合性で判断します。

穿孔性胃潰瘍 とは:診断とCT・遊離ガス

診断は、臨床像で穿孔性腹膜炎を疑い、画像で腹腔内遊離ガス(free air)を確認するのが基本です。

腹部CTは上部消化管穿孔でのfree air検出率が高く、少量のfree airや腹水、穿孔部位・原因の推定、腹膜炎の程度評価に有用とされています。

胸部単純X線で横隔膜下遊離ガスが見えることもありますが、少量だと見逃すため、疑った時点でCTへ進める判断が安全側です。

意外と役に立つのが超音波です。肝表面に移動した微量のfree airを多重反射として捉えられることがあり、救急外来のベッドサイドで「穿孔を疑う根拠」を補強できます。

参考)https://www.teramoto.or.jp/teramoto_hp/kousin/sinryou/gazoushindan/case/case74/index.html

一方で、被覆穿孔(穿孔部が大網などで塞がる)では、遊離ガスが目立たない・見えないケースがあり、CT所見は「胃壁の陥凹」や「周囲脂肪織濃度上昇」など間接所見も合わせて読みます。

参考)連断腹部 連続断層画像ケーススタディ【腹部疾患】

「free airが少ない=軽症」と短絡せず、腹水量、所見の進行、全身状態と合わせて治療方針を決めることが重要です。

参考)https://www.jmedj.co.jp/blogs/product/product_19297

穿孔性胃潰瘍 とは:治療(手術と保存的治療の適応)

穿孔性胃潰瘍の治療は原則として緊急手術で、穿孔閉鎖や腹腔内洗浄・ドレナージが中心になります。

ただし、限局性腹膜炎で全身状態が比較的保たれ、穿孔が閉鎖傾向にある場合などは、絶食・補液・抗菌薬・胃管減圧・酸分泌抑制薬を組み合わせた保存的治療が選択され得ます。

保存的治療の適応は報告により条件設定が異なりますが、画像で腹水が少量・限局していること、全身状態が良好であることなどを基盤にし、上部消化管造影で造影剤漏出がない(または限定的)ことを加えて選別する運用が紹介されています。

現場運用として押さえたいのは「保存を選んだら、再評価の期限を先に決める」ことです。

参考)https://www.sasappa.co.jp/online/abstract/fij/1/059/html/0610590302.html

保存治療が奏功する症例では、数日以内に腹膜刺激症状や炎症反応が改善傾向を示す、という後ろ向き検討があり、改善が乏しければ外科へ早期移行する判断が合理的です。

特に胃潰瘍穿孔は十二指腸潰瘍穿孔より保存的治療の奏功率が低い可能性が示唆されており、同じ“穿孔”でも胃か十二指腸かで期待値を変える視点が実務上役立ちます。

穿孔性胃潰瘍 とは:原因(NSAIDs・H. pylori)と再発予防

消化性潰瘍の大きなリスク因子としてH. pylori感染とNSAIDs使用が挙げられ、これらは合併症リスク(出血・穿孔)にも関係します。

薬物性潰瘍の文脈では、NSAIDsは粘膜障害(直接作用)に加え、COX阻害→プロスタグランジン低下により粘膜防御が弱くなる機序が整理されています。

さらに、NSAIDsとH. pyloriは相加的に上部消化管出血リスクを高めることが示されており、穿孔性胃潰瘍を扱う際も「薬剤歴+感染背景」をセットで評価する姿勢が必要です。

穿孔治療後は、単に穴を塞いで終わりではなく、再発予防が重要です。

臨床では、原因に応じてピロリ除菌や酸分泌抑制薬(PPI等)を組み合わせ、NSAIDsが必要な患者ではリスク層別化と胃粘膜保護策(PPI併用など)を検討します。

参考)https://clinicalsup.jp/jpoc/contentpage.aspx?diseaseid=240

「ピロリ陰性・NSAIDs陰性」の潰瘍(いわゆる特発性潰瘍)が増加していることも指摘されており、原因が見えにくい症例では背景疾患・併用薬・全身状態まで掘って再発予防を設計します。

――参考リンク(消化性潰瘍の標準的な診療方針・薬物性潰瘍の考え方の根拠に有用)

日本消化器病学会:消化性潰瘍診療ガイドライン2020(PDF)

――参考リンク(NSAIDs/H. pyloriの相加的リスクなど、薬物性潰瘍の機序と予防戦略の根拠に有用)

Mindsガイドライン:薬物性潰瘍(PDF)

観点 ポイント(臨床判断)
疑う契機 突然の上腹部痛+腹膜刺激症状、ショック兆候の有無を同時に評価。
画像 free airの確認が基本だが、少量/被覆穿孔では間接所見も読む。
治療選択 原則は緊急手術。条件が揃えば保存的治療も選択肢だが再評価期限を明確に。
再発予防 NSAIDs・H. pylori評価を軸に、除菌やPPIなどを組み合わせる。
  • ✅現場の実装Tip:問診では「痛みのピーク→軽快→再増悪」の推移と、NSAIDs(市販薬含む)・抗血栓薬・ステロイド等の併用を必ず拾う。
  • ✅見落とし回避:高齢者・免疫抑制・鎮痛薬使用では腹膜刺激が典型的でないことがあるため、バイタルと画像を優先し“様子見”を短くする。
  • ✅独自視点(上位記事に出にくい):被覆穿孔でfree airが乏しいケースでは「胃壁/周囲脂肪の変化」や「腹水の分布」が情報量になるため、放射線科読影に“穿孔疑い”を明示して所見の視点を合わせる。


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