びらん性胃炎 原因 症状 内視鏡 治療

びらん性胃炎 症状 原因 治療

びらん性胃炎:臨床で迷わない要点
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まず疑う場面

心窩部痛・悪心・黒色便、または「無症状だが貧血」の背景に潜むことがある。

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診断の軸

上部消化管内視鏡で、発赤・点状出血・浅い陥凹(びらん)を確認し、必要なら生検で鑑別。

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治療の優先順位

誘因除去(NSAIDs/飲酒など)+酸分泌抑制。出血があれば内視鏡的止血と全身管理を同時進行。

びらん性胃炎 症状:無症状・吐血・黒色便まで

 

びらん性胃炎は、症状がはっきり出る例(心窩部痛、悪心、嘔吐、胃もたれ)もあれば、軽症では症状が乏しいこともあります。特に臨床で重要なのは「上部消化管出血が最初の徴候」になり得る点で、吐血・黒色便、あるいは検査で偶発的に見つかるケースを想定しておく必要があります。MSDマニュアルでは、典型的には急性で出血がみられ、吐血や黒色便が初発となる場合があること、診断は内視鏡で行うことが明記されています。

現場でありがちな落とし穴は、「胃部不快感=機能性」と決め打ちしてしまい、抗血栓薬内服、高齢、腎機能低下、既往の潰瘍など“出血リスク”の情報収集が薄くなることです。びらん性胃炎は“浅い傷”という語感から軽視されがちですが、深い潰瘍が合併すると大出血に至り得るため、黒色便や貧血、バイタル変化の有無で緊急度を層別化します。出血が疑われる場合、輸液・輸血、内視鏡的止血、必要時に外科的介入へ切り替えるといった出血対応の原則は、びらん性病変でも同様に意識しておくべきです。

参考:出血(吐血・黒色便)や診断・対応の基本(医療者向け、詳細)

MSDマニュアル プロフェッショナル版:びらん性胃炎

びらん性胃炎 原因:NSAIDs・ピロリ菌・ストレス

原因は大きく「粘膜防御の低下」と「攻撃因子(胃酸など)の相対的優位」に分けて考えると整理しやすく、実臨床では薬剤(NSAIDs/低用量アスピリン等)とピロリ菌、そして急性増悪因子としてストレスや飲酒が頻出です。クリニック解説でも、ピロリ菌感染と長期NSAIDs使用が主要な原因として挙げられ、生活習慣(飲酒、喫煙、ストレス)も誘因になり得るとされています。NSAIDsではプロスタグランジン産生抑制により粘膜保護が弱まり、びらん・潰瘍が生じやすくなるという機序が説明されています。

「ストレス」の扱いは抽象的になりがちですが、急性胃粘膜病変(AGML)という枠組みで見ると、心理的・身体的ストレスが胃酸分泌増加、粘膜血流低下、防御機構低下を介してびらんや出血を起こす、という説明がされています。AGMLの病型の一つとして「急性びらん性胃炎」が位置づけられ、上腹部痛・悪心・嘔吐などの症状や、出血を伴うタイプ(出血性胃炎)では重症化しやすい点も整理されます。ICUや術後、熱傷、重症感染など“身体的ストレス”が強い場面では、既存の薬剤歴(NSAIDs、ステロイド、抗血栓薬)と合わせて、びらん性病変の出現を予測する視点が役立ちます。

参考:AGMLとストレス、急性びらん性胃炎の位置づけ

大垣中央病院:急性胃粘膜病変(AGML)

びらん性胃炎 内視鏡:びらん・発赤・点状出血

診断の中心は上部消化管内視鏡で、びらん性胃炎では粘膜の発赤や、浅い陥凹、点状出血を伴う“びらん”を直接確認します。専門医向けの解説では、胃カメラで「発赤」「びらん(点状出血)」を確認して診断することが明確に述べられています。また、別の医療機関の解説でも、びらんは赤く、わずかに陥凹して見えるとされ、必要に応じて生検(組織検査)を行う流れが示されています。

医療従事者向けに強調したいのは、内視鏡で「びらん=良性」と短絡しないことです。びらん性胃炎と似た形態をとる病変が存在し得るため、病変の分布、境界、易出血性、背景粘膜(萎縮や腸上皮化生の程度)、そして臨床経過(体重減少、貧血進行、治療抵抗性)を合わせ、必要なら狙撃生検で“鑑別の手順”を踏むのが安全です。実際、びらん性胃炎と胃潰瘍の鑑別、さらに初期胃がんとの鑑別に注意が必要とする解説もあり、特に出血例では止血と同時に原因検索の設計が重要になります。

参考:内視鏡での「発赤・びらん(点状出血)」所見

上田胃腸クリニック:表層性胃炎・びらん性胃炎

びらん性胃炎 治療:原因除去+酸分泌抑制+止血

治療は「原因の除去」と「粘膜障害の進行を止める」ことを同時に行います。医療機関の解説では、ピロリ菌が原因なら除菌、NSAIDsが原因なら可能であれば中止または代替薬へ変更、加えて胃酸分泌抑制薬を用いるという基本方針が示されています。軽症では原因除去(ストレス、飲酒など)と内服治療で改善を目指し、重度の出血がある場合は内視鏡的止血を行うという整理も提示されています。

薬剤性(特にNSAIDs関連)では「再発予防」が臨床価値の中心になります。新潟市医師会の解説では、H2ブロッカー、PPI、さらにミソプロストール併用が胃粘膜病変の防止に有効とされた報告に触れており、患者リスクに応じた予防戦略の裏づけとして使えます。さらに学術資料(J-Stageの総説PDF)では、ミソプロストールがNSAIDsによる上部消化管障害(出血・穿孔・閉塞)のリスクを低下させることが知られている、といった具体的記載があり、選択肢としての位置づけを再確認できます(ただし副作用や禁忌、服薬アドヒアランスの課題は別途検討が必要です)。

出血を伴う場合は、薬物療法だけでなく全身管理が優先されます。MSDマニュアルでは、重度では輸液や輸血が必要になり得ること、内視鏡的止血を試み、コントロール不能なら外科に切り替えることが記載されています。医療チーム内では、①循環動態の安定化、②抗血栓薬/NSAIDsなどの休薬・代替、③原因検索(ピロリ、併存潰瘍、背景疾患)、④再発予防の処方設計、の順でタスクを割り振ると混乱が減ります。

参考:NSAIDs治療と酸分泌抑制薬・ミソプロストール(医師会の解説)

新潟市医師会:NSAIDs治療の諸問題~酸分泌抑制薬による薬物療法~

びらん性胃炎 独自視点:薬剤性の見落とし防止チェック

検索上位でよく見かける「原因=NSAIDs」「治療=PPI」といった枠組みは重要ですが、実臨床では“薬剤性の見落とし”が再発や遷延の最大要因になりやすい点を、あえて独立した視点として押さえます。びらん性胃炎の原因としてNSAIDsが強調される一方、患者側はNSAIDsを「痛み止め」「市販薬」「貼り薬(外用)」という認識で申告しないことがあります(薬歴聴取で拾いにくい)。そこで、医療従事者向けに使えるチェック項目を用意しておくと、診療の質が安定します。

✅ 聴取の具体例(外来/救急でそのまま使える)

  • ロキソニン」「イブ」「バファリン」など市販薬を含む鎮痛薬の使用頻度(週に何回、連日か)。
  • 低用量アスピリン、抗血小板薬抗凝固薬の有無(服薬手帳・お薬アプリ・家族同伴で確認)。
  • ステロイド、SSRIビスホスホネートなど、粘膜障害や出血リスクに影響し得る薬剤の併用(併用は“出血の引き金”になり得るためセットで確認)。
  • 飲酒(量よりも“空腹時飲酒”や“連日”のパターン)と、喫煙の継続状況。
  • 直近の強い身体的ストレス(手術、感染症、熱傷、外傷)や摂食不良の有無(AGMLの観点で拾う)。

📝 内視鏡所見とのすり合わせ(記録のコツ)

  • 病変が多発か、線状か、点状か。
  • 胃体部〜穹隆部優位か、前庭部優位か(ストレス関連/薬剤性を想起する助け)。
  • 凝血塊の付着や活動性出血の有無(止血の必要性と入院判断に直結)。
  • 背景粘膜の萎縮(ピロリ既感染/現感染の示唆)を記載し、後日の除菌適応判断につなげる。

最後に、ピロリ菌が関与する可能性がある場合は、除菌の意義を“再発予防”と“将来リスク低減”の両面で説明し、検査・治療につなげるのが実務的です。日本ヘリコバクター学会のガイドライン(2016改訂版)では、H. pylori感染胃炎に対して除菌が強く推奨され、炎症改善や萎縮の改善、腸上皮化生の進展抑制、胃がん予防効果が期待される旨が記載されています。びらん性胃炎という目の前の病変だけで終わらせず、背景因子への介入まで診療を完結させることが、チーム医療のアウトカムに直結します。

参考:H. pylori感染の診断と治療のガイドライン(日本語PDF、適応と推奨の根拠)

日本ヘリコバクター学会:H. pylori感染の診断と治療のガイドライン2016改訂版

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