乾癬性関節炎 治療 ガイドライン
乾癬性関節炎の治療 ガイドラインに基づく診断と重症度評価(CASPAR・付着部炎・指趾炎)
乾癬性関節炎(PsA)は、乾癬に関節症状を伴う慢性炎症性疾患で、診断や治療が遅れると不可逆的な関節破壊・変形に至りうるため、早期の診断と治療開始が重要です。
診断の現場では、研究登録用に作られたCASPAR分類基準が実務上の“よりどころ”になりますが、分類基準=診断確定ではない点(偽陰性・偽陽性があり得る)を理解したうえで、鑑別(RA、OA、痛風、SpA他)を丁寧に行います。
PsAらしさを拾うコツは、滑膜炎だけに目を奪われず「付着部炎」と「指趾炎」を必ず確認することです。
医療従事者向けに実務的な確認ポイントを整理します。
・末梢関節炎:DIP関節が罹患しやすい点はRAとの鑑別で役立ちます。
・付着部炎:踵部(アキレス腱付着部・足底腱膜付着部)や膝周囲、骨盤周囲が典型で、荷重や微小外傷が関与する病態として説明されます。
・指趾炎:指全体がソーセージ様に腫脹し、足趾では痛風と誤認されることがあるため注意が必要です。
・爪病変:爪母周囲の炎症(付着部炎の波及)を反映する可能性があり、PsAの手がかりになり得ます。
重症度・活動性評価では、PsAが「末梢関節炎、体軸病変、付着部炎、指趾炎、爪病変、皮膚病変」という複数ドメインの組合せで病像が形成されるため、“単一のスコア”で取り切れない点が実臨床の難しさです。
このためガイドライン本文でも、PsAに特化した指標としてDAPSAや、より包括的な複合評価指標(CPDAI、PASDASなど)が紹介され、治療成績判定・目標設定に用いられます。
意外と見落とされやすい点として、炎症マーカー(CRPなど)が上がらない患者が一定数いることが示されており、「CRPが低い=軽い」と短絡しない姿勢が重要です。
参考リンク(ガイドラインの目次構造、CQ、評価項目の全体像の確認に有用)
Minds:乾癬性関節炎診療ガイドライン2019(目次、CQ一覧、公開情報)
乾癬性関節炎の治療 ガイドラインに沿う薬物療法(NSAID・MTX・JAK阻害薬・生物学的製剤)
乾癬性関節炎診療ガイドライン2019では、薬物療法を「生物学的製剤以外(NSAID、MTX、PDE4阻害薬、JAK阻害薬、ステロイド等)」と「生物学的製剤(TNF阻害薬、IL-12/23、IL-23、IL-17等)」に分け、Clinical Question(CQ)として有用性が整理されています。
医療従事者向けに重要なのは、薬剤名の暗記よりも「どのドメインの活動性を、どの安全性制約の下で抑えたいか」という設計思想です。
またガイドライン本文には、国内外エビデンスを踏まえつつも、保険適用外使用(未承認薬)を含み得る点、添付文書・最新安全性情報に基づく運用が必要な点が明記されています。
実務で迷いやすい局面別に、考え方を整理します。
・疼痛が前景で、炎症性病変の程度が軽い:NSAIDは選択肢になりますが、腎機能・消化管・心血管リスク、併用薬(抗凝固薬など)を踏まえた個別判断が必要です。
・末梢関節炎が主体で、関節破壊リスクが疑われる:csDMARDとしてMTX等が論点になりますが、肝障害・妊娠関連・感染リスク、皮膚症状との兼ね合いを含め総合的に判断します。
・複数ドメインが中~高活動性、または機能障害が進行:生物学的製剤や標的合成DMARD(例:JAK阻害薬)が治療の中核になり得ます。
生物学的製剤については、ガイドライン本文のCQでTNF阻害薬、IL-12/23、IL-23、IL-17阻害などが個別に整理されています。
国内の実装イメージを掴む資料として、日本リウマチ学会の薬剤ガイド(例:IL-17阻害薬の用法用量や注意点)が公開されており、外来運用(導入・維持・評価時期)の確認に有用です。
参考)https://www.ryumachi-jp.com/jcr_wp/media/2025/06/guide_IL-17_PsA_AS_nr-axSpA_2025.pdf
意外な臨床の落とし穴として、皮膚症状が軽くても関節症状が進行する患者が一定数いる点が挙げられます。
「皮膚が落ち着いているから関節も大丈夫」とは限らないため、皮膚スコアと関節評価を分けて追う設計が安全です。
参考リンク(IL-17阻害薬の実務:用法用量、禁忌・注意事項の確認に有用)
乾癬性関節炎の治療 ガイドラインで重視されるTreat to Target(MDA・DAPSA)と評価の実際
乾癬性関節炎診療ガイドライン2019では、PsAの疾患活動性を客観的に評価し、治療目標(寛解、MDA、LDAなど)に向けて調整するT2T(Treat to Target)の考え方が述べられています。
具体的な評価法として、疼痛VAS・患者全般評価・腫脹関節数・圧痛関節数・CRPを用いるDAPSAが紹介され、算定の実務性が比較的高い指標として位置づけられます。
一方で、付着部炎や指趾炎、皮膚症状などを含めて把握したい場合は複合評価指標(CPDAI、PASDASなど)も選択肢となり、外来の運用負荷と必要性のバランスが論点になります。
医療従事者が“回しやすい”運用案を、ガイドラインの枠組みに沿って提案します。
✅ 初診~導入期(例:0~3か月)
・ドメインの棚卸し:末梢関節炎/体軸病変/付着部炎/指趾炎/爪/皮膚をチェックし、主訴以外も記録します。
・ベースライン:関節所見(腫脹・圧痛)、CRP、疼痛VAS、患者全般評価、機能(HAQ等)を最低限揃えます。
✅ 評価・調整期(例:3~6か月)
・「反応が不十分」を感覚で語らず、DAPSAやMDAの達成状況で共通言語化します。ryumachi-jp+1
・皮膚科/整形外科/リウマチ科の連携が必要な例(体軸病変疑い、画像評価、手指機能低下、強い皮膚症状など)を早めに同定します。
✅ 維持期(例:6か月以降)
・寛解/低活動性の“維持”と同時に、併存症(メタボ、心血管リスク)と感染症リスクを定期的に再評価します。
意外な実務ポイントとして、PsAは「関節破壊(びらん)」と「骨新生(骨棘・靭帯骨棘)」が同居し得る疾患として説明されており、画像所見の“読み方”がRAとズレることがあります。
そのため、治療反応を「痛みが減った」だけで判断すると、構造的進行の見逃しにつながるリスクがある点は、医療者間で共有しておく価値があります。
乾癬性関節炎の治療 ガイドラインに基づく併存症管理(感染症・心血管・肥満)
乾癬性関節炎診療ガイドライン2019では、PsAが全身性炎症性疾患として、メタボリック症候群や心血管系イベント、ぶどう膜炎、炎症性腸疾患などの併存症を伴い得る点がまとめられています。
国内データとして、日本乾癬学会の単年度調査では、高血圧、高脂血症、肥満、糖尿病などメタボ関連の併存が一定頻度で報告されています。
したがって、関節・皮膚のコントロールだけでなく、生活習慣病管理(体重、血圧、脂質、血糖)を治療計画に組み込むことが合理的です。
感染症については、免疫調整薬(生物学的製剤、JAK阻害薬など)を選ぶ時点で、既往・ワクチン・スクリーニング(例:結核、B型肝炎等)と“中断基準”をチームで共有することが安全性の要です(施設プロトコルに統合すると運用が安定します)。
また、国内の関連学会サイトでは、生物学的製剤等の禁忌として重篤な感染症が挙げられ、感染症治療を優先し軽快後に投与する旨が記載されています。
参考)乾癬性関節炎(PsA)、強直性脊椎炎(AS)および X線基準…
この「感染を見つけたら止める」ではなく「感染を前提に運用設計する」という視点は、外来・病棟連携で特に効きます。spondyloarthritis+1
意外な点として、PsAではぶどう膜炎や炎症性腸疾患など“皮膚・関節以外”の炎症が絡むことがあり、症状聴取(眼痛・羞明、下痢・血便など)が薬剤選択の安全性・有効性の両面に影響し得ます。
患者が「関節の薬」と捉えている治療が、実際には全身炎症の制御と併存症リスク低減にも関係することを説明できると、アドヒアランス改善につながります。
参考リンク(投与禁忌と感染時の優先順位:臨床判断の根拠確認に有用)
日本脊椎関節炎学会:ガイドライン(投与禁忌:重篤な感染症など)
乾癬性関節炎の治療 ガイドライン検索上位に少ない独自視点:早期発見を左右する“爪”と“微小外傷”の説明設計
ガイドライン本文では、PsAの病態として「付着部の微小トラウマ(機械的刺激)に対する炎症」が重要で、これが付着部炎、指趾炎、体軸病変、さらに爪病変とも関連する可能性が述べられています。
つまり、“関節が痛い”という訴えが出たとき、関節だけを診るよりも「どこに負荷がかかっているか(踵、膝周囲、手指DIP周辺)」「爪に所見があるか」をセットで拾うと、早期診断の精度が上がります。
検索上位の一般向け解説では「皮膚+関節」と平面的に説明されがちですが、医療従事者向けには「皮膚・爪・付着部・骨新生」という立体的なつながりで説明するほうが、鑑別と患者説明の両方で有利です。
患者説明で使える、短いメッセージ例(説明の一貫性を作るための型)
・🦶「踵や腱の付け根が痛むのは、関節そのものというより“付着部”の炎症が関係していることがあります。」
・💅「爪の変化は、指先の付着部の炎症と関連して起きることがあり、関節の病気のヒントになります。」
・🧰「痛み止めで一時的に楽になっても、炎症が続くと関節の変形が進むことがあるので、活動性を数値で見ながら治療を調整します。」
さらに“意外性”のある補足として、ガイドラインにはPsA発症のリスク因子として「外傷」などの環境因子が関連した研究報告が引用されており、微小外傷・負荷の視点は診療の問診にも応用できます。
具体的には、「いつから痛いか」だけでなく「仕事・スポーツ・体重増加・靴・立ち仕事・手作業」など、付着部に負荷がかかる背景を聞くことで、診断の仮説が立ちやすくなります。
この視点は治療そのもの(薬の選択)だけでなく、再燃予防のセルフケア指導(負荷調整、体重管理、運動療法の導入判断)にもつながります。
