手根管症候群の手術と入院期間
手根管症候群の手術における入院期間の実際
手根管症候群の手術は、多くの医療機関で日帰り手術として実施されています。局所麻酔で行われる手根管開放術の場合、手術時間は20~30分程度で、術後すぐに歩いて帰宅することが可能です。ただし、医療機関によっては1泊入院や術後3日程度の入院を設定している場合もあり、患者さんの状態や希望、手術方法によって入院期間は異なります。
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全身麻酔で手術を行う場合や、母指対立再建術など複雑な手術が必要な場合には、約1週間程度の入院期間が設定されることがあります。入院期間が長くなるケースでは、術後のリハビリテーションをより綿密に行ったり、全身状態の管理が必要な患者さんへの対応が含まれます。日帰り手術を選択できる場合でも、自宅での安静が確保できない方や、遠方から来院される方には短期入院を勧めることもあります。
参考)手根管症候群
手根管症候群の手術方法による違い
手根管症候群の手術には、大きく分けて直視下手根管開放術と鏡視下(内視鏡)手根管開放術の2種類があります。直視下手根管開放術は、手のひらに1.5~2cm程度の切開を加えて、肉眼または拡大鏡で確認しながら横手根靱帯を切開する方法です。一方、内視鏡を使用する鏡視下手根管開放術は、手首と手のひらに約1cm程度の小さな切開を入れ、内視鏡で観察しながら靱帯を切開します。
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内視鏡手術のメリットとして、傷が小さく術後の痛みや違和感が少ないこと、生活や仕事への早期復帰が可能なことが挙げられます。手術時間は10分程度と短く、出血もほとんどありません。ただし、内視鏡手術には一定の技術習熟が必要であり、横手根靱帯の切り残しなどのリスクも指摘されています。どちらの手術方法も保険適用となっており、3割負担の場合、手術から抜糸までで約39,000円程度が目安となります。
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手根管症候群の再発リスクと手術技術の関係について詳しく解説した医学論文(日本整形外科学会)
手根管症候群の術後回復と固定期間
手根管開放術の術後は、傷の保護と安静のため約1週間ほど手術部位をギプスやシーネで固定します。この固定期間中は、傷の治癒を促進するため極力安静を保つことが重要です。母指対立再建術の場合は、約1カ月程度の固定期間が必要となり、手根管開放術よりも長い安静期間を要します。
参考)手 手根管症候群 手根管開放術|入院・手術のご案内|患者さん…
固定が外れた後は、徐々に手指の動きを回復させるためのリハビリテーションが開始されます。リハビリでは、まず手首のストレッチから始め、それぞれの動作を10秒程度保持しながら関節の可動域を広げていきます。術後の痛みは個人差がありますが、一般的に3~6カ月程度かけて軽減していきます。しびれの完全な回復には、軽症の場合で術後1~6カ月、重症例ではそれ以上の期間を要することもあります。
参考)手根管症候群の術後回復と痛み – 相模大野駅前タワー整形外科…
手根管症候群の術後における日常生活と仕事復帰
手根管開放術後は、手術翌日から日常生活での軽い使用やデスクワークが可能になります。傷を濡らさないように注意すれば、当日から水仕事に復帰できる場合もあります。軽作業であれば1~2週間程度で仕事復帰が可能ですが、力仕事の場合は約1カ月を復帰の目安とします。
参考)https://www.s-hand.jp/column/syukonkan.html
内視鏡手術を受けた場合、固定が不要なため術後すぐから手を動かすことができ、出血がなければ翌日から仕事が可能なケースもあります。術後の回復期間中は、傷口が開いたり手首に負担をかけたりするような動作は控える必要があります。適切な安静期間を確保することが、術後の早期回復と日常生活への円滑な復帰を可能にします。抜糸は通常、術後2週間前後に行われ、この時期には多くの方が通常の仕事に復帰できるようになります。
参考)手根管症候群
手根管症候群の手術で知っておくべき特殊な状況
透析を受けている患者さんは、アミロイドという物質が手根管内に溜まりやすく、手根管症候群を繰り返し発症するリスクが高いことが知られています。このような患者さんに対しては、内視鏡を用いた手術が多く実施されており、長期透析患者における手術成績も報告されています。再発の原因としては、横手根靱帯の切り残しや正中神経の損傷などがあり、特に内視鏡手術では一定の技術習熟が求められます。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/nishiseisai/73/3/73_529/_pdf
妊娠中や授乳中、更年期の女性に多く発症する傾向があり、これは女性ホルモンの乱れによって腱滑膜炎が起こるためと考えられています。また、骨折による変形が治った後に発症するケースもあります。手術後に万が一症状が改善しない場合や、強い痛みが続く場合には、早めに医師に相談することが重要です。手根管症候群の手術は比較的安全な手術ですが、まれに尺骨神経への影響などの合併症が報告されているため、術後の経過観察が欠かせません。