テビペネム ピボキシル小児感染症治療効果と注意点

テビペネム ピボキシル小児感染症治療

バルプロ酸服用中の小児には投与できません

この記事の3つのポイント
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世界初の経口カルバペネム系抗菌薬

ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)やアンピシリン耐性インフルエンザ菌を含む難治性感染症に対して、小児専用の経口投与可能な最終治療薬として位置づけられています

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併用禁忌と特有の副作用リスク

バルプロ酸との併用でてんかん発作が再発するリスク、3歳未満で34.6%に下痢・軟便が発現、ピボキシル基による低カルニチン血症に伴う低血糖に注意が必要です

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投与期間と食後投与の徹底

投与期間は7日間以内が目安で、耐性菌発現防止のため必要最小限にとどめること、食後投与で吸収が安定するため投与タイミングの遵守が重要です

テビペネム ピボキシルの基本特性と小児適応

 

テビペネム ピボキシル(商品名:オラペネム小児用細粒10%)は、2009年に世界で初めて承認された経口投与可能なカルバペネム系抗菌薬です。小児の肺炎、中耳炎副鼻腔炎の3疾患に適応が限定されており、成人への使用経験はありません。

これは意外ですね。

カルバペネム系抗菌薬は本来、注射剤として使用される最終治療薬の位置づけですが、本剤は経口投与を可能にしたプロドラッグとして開発されました。消化管から吸収された後、活性本体であるテビペネムに変換され、細菌の細胞壁合成を阻害することで強力な殺菌作用を発揮します。ペニシリン結合蛋白(PBP)への親和性が極めて高く、特にペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)の変異したPBP1A、2X、2Bに対しても他の経口β-ラクタム系抗菌薬より優れた結合能を示すことが特徴です。

臨床試験では、肺炎で98.3%、中耳炎で98.0%、副鼻腔炎で80.6%という高い有効率を示しました。

つまり難治性感染症に有効です。

特にPRSPに対しては消失率100%(24株/24株)、アンピシリン耐性インフルエンザ菌に対しても90.9%(20株/22株)の消失率を達成しており、他の抗菌薬で効果が得られなかった症例における切り札的な役割を果たします。

ただし、カルバペネム系の臨床的位置づけを考慮し、他の抗菌薬による治療効果が期待できない症例に限って使用することが求められています。安易な使用は耐性菌の発現を招くリスクがあるため、原則として感受性を確認した上で、疾病の治療上必要な最小限の期間のみ投与することが重要です。

医療用医薬品添付文書(KEGG MEDICUS)

テビペネム ピボキシルのバルプロ酸併用禁忌の重要性

テビペネム ピボキシルの最も重要な注意点は、バルプロ酸ナトリウム(デパケン、バレリンなど)との併用が絶対禁忌であることです。この併用により、バルプロ酸の血中濃度が急激に低下し、てんかん発作が再発する危険性があります。

発現機序は不明です。

カルバペネム系抗菌薬全般にこの相互作用が認められており、パニペネム、メロペネム、イミペネム、ビアペネム、ドリペネム、テビペネムのすべてがバルプロ酸と併用禁忌に指定されています。実際の医療現場では、てんかん患者が感染症を発症した際、主治医と小児科医の間で情報共有が不十分だと、重大な医療事故につながる可能性があります。

てんかん患者に抗菌薬が必要な場合は、ペニシリン系やセフェム系など他のβ-ラクタム系抗菌薬を選択することが基本です。どうしてもカルバペネム系が必要な場合は、バルプロ酸を一時的に他の抗てんかん薬に変更するか、感染症の治療方針自体を見直す必要がありますが、これは慎重な判断を要する対応となります。

処方時には必ず既往歴と併用薬を確認し、電子カルテのアラート機能を活用することが重要です。薬剤師による処方監査でも、この併用禁忌は最優先で確認すべき項目に位置づけられています。患者家族への服薬指導においても、てんかん治療薬を服用している場合は必ず医師に申し出るよう強調する必要があります。

バルプロ酸とカルバペネム系抗菌薬の相互作用(興和株式会社FAQ)

テビペネム ピボキシルの低カルニチン血症と低血糖リスク

テビペネム ピボキシルを含むピボキシル基を有する抗菌薬(セフジトレン、セフカペン、セフテラムを含む)には、特有の重大な副作用として低カルニチン血症に伴う低血糖があります。2歳未満の乳幼児に最も多く報告されており、PMDAの集計では10歳以下に集中し、特に2歳未満が25例と最多でした。

これは重要な情報です。

メカニズムとしては、ピボキシル基の代謝物であるピバリン酸が尿中排泄される際、カルニチンと抱合体を形成して体外に排出されることで、血中カルニチン濃度が低下します。カルニチンは脂肪酸のβ酸化に必須の物質であり、これが欠乏すると空腹時や飢餓状態で脂肪酸からエネルギーを作れず、糖新生も行えないため低血糖を来たします。意識レベルの低下、痙攣などの症状が出現した場合は、直ちに投与を中止し適切な処置が必要です。

投与期間との関係では、短期間(1〜6日)の投与でも低カルニチン血症・低血糖が発生することが報告されています。

意外なことに投与開始数日で起きます。

ある症例では、セフジトレン(メイアクト)を200mg/日に増量した2日後に痙攣が発生したとの報告もあり、用量との関連も示唆されています。

リスク因子としては、乳幼児(特に2歳未満)、栄養状態不良、長期絶食、先天性カルニチン欠乏症などが挙げられます。妊娠後期の妊婦への投与でも、母体と出生児の両方に低カルニチン血症が報告されているため、妊婦は治療上の有益性が危険性を上回る場合のみ投与対象となります。血清カルニチン測定が可能な施設では、投与前後でのモニタリングが推奨されます。

PMDAからの医薬品適正使用のお願い:ピボキシル基を有する抗菌薬(PDF)

テビペネム ピボキシルの年齢別副作用発現率

テビペネム ピボキシルの副作用で最も頻度が高いのは下痢・軟便であり、全体では19.5%(86例/440例)に発現しますが、年齢によって発現率に大きな差があります。承認時のデータでは、3歳未満で34.6%(46例/133例)、3歳以上で13.0%(40例/307例)と、3歳未満では約2.7倍も高い発現率を示しました。

約3人に1人が該当します。

この年齢差は、乳幼児の腸内細菌叢が未成熟であることや、消化管の生理機能が発達段階にあることが関係していると考えられます。カルバペネム系は広域スペクトルを持つため、腸内の善玉菌も含めて殺菌してしまい、腸内細菌バランスが崩れやすくなります。特に3歳未満では腸内環境が不安定なため、下痢が起こりやすいのです。

症状が認められた場合は、症状に応じて対症療法を行い、必要に応じて整腸剤の併用を検討します。水のような下痢が1日4〜5回以上続く場合や、血便を伴う場合は偽膜性大腸炎などの重篤な副作用の可能性があるため、直ちに投与を中止し適切な処置が必要です。保護者には、投与開始前に下痢のリスクについて十分に説明し、症状が出現した際は速やかに連絡するよう指導することが重要です。

その他の副作用としては、発疹(1〜5%未満)、血小板増多(1〜5%未満)、嘔吐(1〜5%未満)などが報告されています。重大な副作用には、ショック・アナフィラキシー、痙攣・意識障害、急性腎障害、重篤な肝障害なども含まれるため、投与中は観察を十分に行うことが求められます。

テビペネム ピボキシルの食後投与と投与期間管理

テビペネム ピボキシルは必ず食後に投与することが用法として定められています。これには薬物動態学的な明確な理由があります。健康成人での試験では、絶食時に比べて食後投与時の血漿中テビペネムのCmax(最高血中濃度)が約60%に低下するものの、AUC(血中濃度時間曲線下面積)すなわち吸収量への影響は小さいことが確認されています。

つまり吸収量は変わりません。

食後投与により吸収速度は遅くなりますが、吸収量は保たれ、むしろ血中濃度が安定的に推移することで副作用リスクを軽減できる可能性があります。乳製品(アイスクリーム、プリン)摂取時でも同様の傾向が認められており、小児が食事を十分に摂れない場合でも、これらの摂取後であれば投与可能です。ただし、毎回同じタイミング(食後)で投与することで、血中濃度の日内変動を一定に保つことが重要です。

投与期間については、7日間以内を目安とすることが明記されています。これは耐性菌の発現を防ぐための重要な設定です。カルバペネム系は最終治療薬としての位置づけであり、長期使用により耐性菌が出現すると、他に使える抗菌薬の選択肢が極めて限られてしまいます。臨床試験でも7日間投与で十分な有効性が確認されているため、必要最小限の期間にとどめることが原則です。

症状が改善しても自己判断で中止せず、処方された期間を完了することが重要である一方、7日を超えて漫然と投与を続けることも避けるべきです。投与3日後に効果判定を行い、臨床症状の改善が見られない場合は、起炎菌の感受性を再確認し、治療方針を見直す必要があります。感受性確認は原則として必須であり、培養結果を待たずに経験的治療として開始した場合でも、結果判明後に適切性を評価することが求められます。

オラペネム小児用細粒の用法・用量に関連する注意(明治製菓ファルマFAQ)

テビペネム ピボキシルの腎機能障害患者への対応

テビペネム ピボキシルは主として腎臓から排泄されるため、腎機能障害患者では血中濃度が上昇し、副作用リスクが高まります。成人での試験データでは、クレアチニンクリアランス(Ccr)が30mL/min未満の高度腎障害患者では、腎機能正常者と比較してAUCが約7.5倍に増加し、半減期(T1/2)も4.11時間と約4.7倍に延長しました。

これは顕著な違いです。

小児においては腎機能障害時の詳細な薬物動態データが限られていますが、高度腎障害のある患者ではテビペネムの排泄が遅延するため、痙攣や意識障害などの中枢神経系副作用のリスクが高まります。カルバペネム系抗菌薬は全般的に中枢神経系への移行性があり、特に血中濃度が高い状態が持続すると、てんかん等の痙攣性疾患の既往がある患者や中枢神経障害のある患者では発作を誘発する可能性があります。

軽度から中等度の腎障害患者でも慎重投与が必要であり、投与量の調整や投与間隔の延長を検討する必要があります。ただし、小児における具体的な投与量調整基準は確立されていないため、腎機能の程度と臨床症状を総合的に評価し、血中濃度モニタリングが可能な施設では測定を行うことが望ましいです。症状の観察を十分に行い、中枢神経症状の兆候が見られた場合は直ちに投与を中止します。

透析患者への投与方法は設定されていませんが、血液透析による除去性を考慮すると、透析後に投与することで血中濃度の過度な上昇を避けられる可能性があります。いずれにしても腎機能障害患者への投与は、他の治療選択肢がない場合に限定し、最も注意深い観察が必要な状況となります。


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