神経障害性疼痛治療薬タリージェの効果と副作用、適正使用のポイント

神経障害性疼痛治療薬タリージェの作用機序と適応疾患

タリージェの最大用量まで増量しないと、約6割の患者で十分な鎮痛効果が得られません。

この記事のポイント
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タリージェの特徴と作用機序

α2δサブユニット結合でカルシウム電流を抑制し、神経障害性疼痛を緩和する新規治療薬

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副作用と安全性管理

傾眠・めまいが20〜26.7%で発現、高齢者は転倒骨折リスクが高く慎重投与が必要

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用量調整と腎機能管理

腎排泄型薬剤のため、CLcr値に応じた用量調整と漸増投与が副作用低減の鍵

タリージェの薬理作用メカニズムと神経障害性疼痛への効果

 

タリージェ(一般名:ミロガバリンベシル酸塩)は、2019年に国内承認された神経障害性疼痛治療薬です。その作用機序は、電位依存性カルシウムチャネルのα2δ-1サブユニットとの高選択的結合を介して、神経終末からの興奮性神経伝達物質の過剰放出を抑制することにあります。神経が損傷を受けると、カルシウムチャネルが過剰に活性化し、痛み信号を送る神経伝達物質が過剰に放出されます。タリージェはこの過剰な神経興奮を鎮めることで、つらいしびれや痛みを和らげるのです。

この薬理メカニズムは、従来のNSAIDsとは根本的に異なります。ロキソニンなどの消炎鎮痛薬が炎症性の痛みに効果を発揮する一方、タリージェは神経そのものの異常な興奮を抑制するため、炎症が原因でない神経障害性の痛みに対して優れた効果を示します。臨床試験では、プラセボ群と比較して統計学的に有意な鎮痛効果が確認されており、特に1回15mg1日2回の最大用量まで増量した群で最も高い効果が得られています。

タリージェの特徴は、リリカプレガバリン)と同じガバペンチノイド系に分類されながらも、α2δ-1サブユニットへの選択性がより高いことです。このため、リリカと比較して副作用の発現頻度が低いという報告があります。ただし、効果の強さについては個人差があり、一概にどちらが優れているとは言えません。

神経障害性疼痛の診断には、神経障害性疼痛診断アルゴリズムに沿った評価が重要です。痛みの範囲が神経解剖学的に妥当であること、体性感覚神経系の病変や疾患が示唆される病歴があること、障害神経の支配領域に感覚障害の他覚的所見があることなどを確認します。これらの基準を満たす場合、タリージェの適応となります。

PMDA公式サイトのタリージェ適正使用ガイド(安全性編)では、投与にあたっての注意事項と副作用管理の詳細が記載されています

タリージェが適応となる神経障害性疼痛疾患の特徴

タリージェは「神経障害性疼痛」という効能・効果で承認されています。具体的には、末梢神経の損傷や機能障害によって生じる痛みやしびれが対象となります。よく処方される代表的な疾患としては、腰部脊柱管狭窄症による足腰のしびれ・痛み、腰椎椎間板ヘルニアによる坐骨神経痛、頸椎症性神経根症による腕や手のしびれ、帯状疱疹後神経痛、糖尿病性末梢神経障害などがあります。

2019年の承認当初は「末梢性神経障害性疼痛」のみが適応でしたが、2022年には「中枢性神経障害性疼痛」にも適応が拡大されました。中枢性とは、脳や脊髄の損傷によって生じる痛みのことで、脊髄損傷後の痛みや脳卒中後の痛みなども治療対象となります。これにより、タリージェは末梢から中枢まで幅広い神経障害性疼痛に対応できる薬剤となっています。

糖尿病性末梢神経障害では、高血糖が持続することで神経自体が損傷を受け、足先のしびれや灼熱感、電気が走るような痛みが出現します。帯状疱疹後神経痛は、帯状疱疹が治った後も3か月以上続く痛みのことで、高齢者に多く、一度発症すると難治性になりやすい特徴があります。いずれの疾患も、一般的な鎮痛薬では効果が得られにくく、神経障害性疼痛に特化した治療薬が必要です。

タリージェによる治療は原因療法ではなく対症療法であることに注意が必要です。つまり薬が効いている間は痛みが和らぎますが、原因疾患そのものを治すわけではありません。そのため、疼痛の原因となる疾患の診断と治療を併せて行い、漫然とタリージェを投与し続けないことが重要です。例えば脊柱管狭窄症であれば、リハビリテーションや必要に応じた外科的治療も検討すべきです。

臨床現場では、患者さんが「痛み止めが効かない」と訴えて受診するケースが多くあります。その際、神経障害性疼痛の要素を含むかどうかを見極めることが、早期に苦痛を緩和する鍵となります。触れたときの感覚障害、しびれの有無、痛みの性質(ピリピリする、電気が走るような、焼けるような)などを丁寧に問診することで、適切な治療薬の選択が可能になります。

タリージェの用法・用量と漸増投与が必要な理由

タリージェの基本的な用法・用量は、初期用量として1回5mgを1日2回経口投与から開始し、その後1回用量として5mgずつ1週間以上の間隔をあけて漸増し、最終的に1回15mgを1日2回経口投与します。つまり、5mg×2回から始めて、10mg×2回、そして15mg×2回へと段階的に増量していくのです。この漸増投与は、投与開始初期の傾眠や浮動性めまいなどの副作用発現の懸念があるため、安全性の確保を考慮して設定されています。

なぜ最大用量まで増量する必要があるのでしょうか。臨床試験のデータによると、プラセボ群の副作用発現率が10.3%だったのに対し、タリージェ20mg/日群(10mg×2回)では18.8%、30mg/日群(15mg×2回)では36.4%でした。確かに用量が増えると副作用リスクは上がりますが、鎮痛効果も用量依存的に向上します。実際、1回15mg1日2回まで増量することで、約60%以上の患者で臨床的に意味のある痛みの軽減が得られたという報告があります。

年齢や症状により1回10mgから15mgの範囲で適宜増減し、1日2回投与することが添付文書に記載されています。つまり、すべての患者で必ず15mg×2回まで増量する必要はなく、10mg×2回で十分な効果が得られ、副作用も問題なければ、その用量で維持することも可能です。患者さんの状態を観察しながら、個別に最適な用量を見極めることが重要です。

漸増のペースは最低でも1週間以上の間隔をあける必要があります。これは、定常状態に達するまでの時間や副作用の発現パターンを考慮したものです。めまいや傾眠などの副作用は投与開始後10日以内に多く認められるため、急速な増量は避けるべきです。焦らずゆっくりと増量することで、副作用を最小限に抑えながら有効用量に到達できます。

OD錠(口腔内崩壊錠)も発売されており、嚥下機能が低下した高齢者や、錠剤を飲み込むのが苦手な患者さんでも服用しやすくなっています。OD錠は水なしでも服用できますが、通常の錠剤と薬効は同等です。患者さんのニーズに応じて剤形を選択できることも、タリージェの使いやすさの一つです。

タリージェの主要副作用とその発現頻度、対策

タリージェの最も頻度の高い副作用は、傾眠(約19.9〜26.7%)と浮動性めまい(約11.8〜12.3%)です。これらは中枢神経系の抑制作用によるもので、投与開始初期や増量時に特に起こりやすい特徴があります。臨床試験のデータでは、副作用として報告されためまいの多くが服用開始後約10日以内に認められており、その後は発現頻度が低下します。つまり初期さえ乗り越えれば、副作用は落ち着いてくる傾向があるということです。

体重増加も注意すべき副作用で、承認時までの臨床試験での発現頻度は4.8%(82例/1,713例)でした。特に投与量の増加や長期投与に伴って認められることがあります。体重増加のメカニズムは明確ではありませんが、食欲増進や代謝変化が関与していると考えられています。定期的に体重を計測し、肥満の徴候が現れた場合は食事療法や運動療法などの適切な処置を行うことが推奨されます。

重大な副作用としては、肝機能障害、腎機能障害、離脱症候群があります。肝機能障害は、AST・ALT上昇などで現れ、全身倦怠感や食欲不振などの初期症状に注意が必要です。腎機能障害では、尿量減少、浮腫、倦怠感などの症状が現れます。離脱症候群は、タリージェの急激な投与中止により、不眠症、悪心、下痢、食欲減退などの症状が出現します。これを防ぐため、投与を中止する場合には徐々に減量するなど慎重に行う必要があります。

視覚障害(霧視、複視など)も報告されています。診察時には眼障害について問診を行い、異常が認められた場合は適切な処置が必要です。その他、浮腫、尿失禁、発疹なども5%未満の頻度で報告されています。

副作用への対策として最も重要なのは、患者教育です。めまいや傾眠が起こる可能性があること、自動車の運転など危険を伴う機械の操作を避けることを事前に説明しておきます。特に高齢者では、めまいや傾眠により転倒し骨折などを起こすおそれがあるため、ご家族にも注意喚起が必要です。転倒による大腿骨頸部骨折は、寝たきりや要介護状態のきっかけになりやすく、QOLの大幅な低下につながります。

副作用が出現した場合の対応としては、まず投与量の減量や投与中止を検討します。軽度のめまいや傾眠であれば、そのまま様子を見ることもありますが、日常生活に支障が出る場合は減量が必要です。漸増のペースを遅くする、増量を一時中断するなどの柔軟な対応も有効です。

タリージェの腎機能低下患者への用量調整と透析患者での注意点

タリージェは主として腎から排泄される薬剤であり、腎機能が低下した患者では血漿中濃度が高くなり副作用が発現しやすくなります。そのため、クレアチニンクリアランス(CLcr)値を参考に投与量および投与間隔を調節する必要があります。腎機能障害の程度に応じた用量調整の基準は、添付文書に詳細に記載されています。

軽度腎機能障害(90>CLcr≧60 mL/min)の場合、初期用量は1回5mg1日2回、推奨用量は1回15mg1日2回です。

つまり通常の用量と同じです。

中等度腎機能障害(60>CLcr≧30 mL/min)では、初期用量1回2.5mg1日2回から開始し、推奨用量は1回7.5mg1日2回となります。重度腎機能障害および血液透析患者(30>CLcr)では、初期用量1回2.5mg1日1回から開始し、推奨用量は1回7.5mg1日1回です。

投与回数も1日1回に減らすことが特徴です。

日本人腎機能障害患者の薬物動態試験では、CLcr値の低下に伴いAUC(血中濃度曲線下面積)の増加が認められました。末期腎不全患者では、正常腎機能者と比較してAUCが約6倍に増加していました。これは、腎排泄が主な消失経路であるタリージェにとって、腎機能低下が血中濃度に大きく影響することを示しています。

血液透析を要する末期腎不全患者では、4時間の血液透析により投与したミロガバリンの15.3%が透析液中に回収されました。つまり透析で一部は除去されますが、完全に除去されるわけではありません。透析日の投与タイミングについては、透析後の投与が推奨されます。透析前に投与すると、透析中に薬剤が除去されてしまい、効果が減弱する可能性があるためです。

特定使用成績調査では、重度腎機能障害患者(末期腎不全患者又は血液透析患者)において、めまい・傾眠関連の副作用発現割合が18.46%と、他の腎機能低下患者群(正常・軽度:6.29%、中等度:6.58%)に比べて高い傾向が認められました。副作用が発現した重度腎機能低下患者はいずれも透析患者であり、副作用の多くは投与初期(投与開始後14日以内)に発現していました。

高齢者は腎機能が低下していることが多いため、漫然と通常用量を投与するのではなく、必ずCLcr値を算出して用量調整を行うことが重要です。高齢者のCLcrは、血清クレアチニン値が正常範囲内であっても低下していることがあります。Cockcroft-Gault式などを用いて推算CLcrを計算し、適切な用量を決定します。

タリージェとリリカの違い、併用注意薬との相互作用

タリージェとリリカ(プレガバリン)は、どちらも神経障害性疼痛治療薬として同じカテゴリーに分類されますが、いくつかの違いがあります。まず、タリージェはα2δ-1サブユニットへの選択性が高いのに対し、リリカはα2δ-1とα2δ-2の両方に結合します。この選択性の違いが、副作用プロファイルの差につながっていると考えられています。

臨床現場での印象として、タリージェの方がリリカより副作用の発症頻度が低いという報告があります。特にめまいや傾眠の程度が軽いと感じる医師が多いようです。一方、痛みを抑える効果についてはリリカの方が強い印象を持つ医師もおり、効果と副作用のバランスを考慮して使い分けることが重要です。

用法の違いも注目点です。リリカは1日2回投与ですが、腎機能正常者では初回から75mg×2回で開始することが多く、最大600mg/日まで増量可能です。タリージェは5mg×2回から漸増し、最大30mg/日(15mg×2回)までです。薬価を考慮すると、ジェネリック医薬品が発売されているリリカの方が経済的負担が少ない場合もあります。

タリージェとリリカの直接比較試験は現時点では実施されていないため、どちらが優れているかを科学的に断言することはできません。患者さんの状態、副作用の耐性、経済的負担などを総合的に判断して選択します。リリカで副作用が強く出た患者さんにタリージェを試してみる、逆にタリージェで効果不十分な場合にリリカに変更するといった切り替えも臨床ではよく行われます。

併用注意薬としては、プロベネシド、シメチジン、ロラゼパム、アルコールがあります。プロベネシドとの併用では、OAT1、OAT3およびUGTの阻害作用により、タリージェの血中濃度が上昇します。シメチジンとの併用では、MATE1およびMATE2-Kの阻害作用により、同様に血中濃度が上昇します。これらの薬剤を併用する場合は、タリージェの作用が増強するおそれがあるため、副作用の出現に注意が必要です。

ロラゼパムやアルコールとの併用では、注意力・平衡機能の低下を増強するおそれがあります。ただし、臨床試験ではミロガバリンとエタノール又はロラゼパムを併用したとき、薬物動態に明らかな影響は認められませんでした。しかし、中枢神経抑制作用の相加的増強の可能性があるため、併用には注意が必要です。患者さんには、タリージェ服用中の飲酒を控えるよう指導することが望ましいでしょう。

その他、中枢神経抑制作用を有する薬剤(抗不安薬、睡眠薬、抗うつ薬など)との併用でも、眠気やめまいが増強される可能性があります。多剤併用の高齢者では、薬剤全体の見直し(ポリファーマシー対策)も視野に入れながら、タリージェの導入を検討することが重要です。

I have gathered comprehensive information about リリカ (Lyrica/Pregabalin) and the ガバペンチン系 (gabapentinoid) class of drugs.


【第2類医薬品】タリオンAR 30錠