プロテカジンとガスターの違い
プロテカジンとガスターの基本情報と作用機序の違い
プロテカジン(一般名:ラフチジン)とガスター(一般名:ファモチジン)は、いずれもヒスタミンH2受容体拮抗薬(H2ブロッカー)に分類される胃酸分泌抑制薬です 。医療現場では、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、逆流性食道炎などの治療に広く用いられています 。これらの疾患は、胃酸の過剰な分泌が主な原因の一つと考えられており、両剤は胃壁細胞にあるヒスタミンH2受容体をブロックすることで、胃酸の分泌を効果的に抑制します 。
主な作用機序は共通していますが、両者には明確な違いが存在します。最も大きな違いの一つが、プロテカジンに特有の「胃粘膜保護作用」です 。プロテカジンは、H2受容体拮gG作用に加えて、カプサイシン感受性知覚神経を介して胃粘液の分泌を促進し、胃粘膜の血流を増加させる作用を持っています 。これにより、攻撃因子である胃酸から胃粘膜を保護する防御因子増強作用が期待できます。一方、ガスターにも胃粘膜血流増加作用は認められますが、プロテカジンのような積極的な胃粘液増加作用は報告されていません
参考)https://www.phamnote.com/2017/10/blog-post_2.html
このように、プロテカジンは胃酸分泌抑制と胃粘膜保護という2つの側面から消化性潰瘍にアプローチする特徴的な薬剤と言えるでしょう。
以下に、プロテカジンとガスターの基本情報の比較表を示します。
| 項目 | プロテカジン(ラフチジン) | ガスター(ファモチジン) |
|---|---|---|
| 分類 | H2ブロッカー | H2ブロッカー |
| 主な作用 | 胃酸分泌抑制、胃粘膜保護 | 胃酸分泌抑制 |
| 胃粘液増加作用 | あり | なし |
| 胃粘膜血流増加作用 | あり | あり |
プロテカジンとガスターの効果の強さと副作用の比較
プロテカジンとガスターの臨床効果における最も顕著な違いは、胃酸分泌抑制作用の強さです。各種データから、ガスターはプロテカジンよりも強力な胃酸分泌抑制作用を持つことが示されています 。ある資料によると、プロテカジンの胃酸分泌抑制作用はガスターの約0.1倍とされており、臨床試験においてもガスターの方が強力な効果を示す傾向にあります 。このため、特に強力な胃酸抑制が求められる重度の逆流性食道炎や、症状が強い患者さんに対してはガスターが選択されることが多いです。
一方で、副作用に関してはどうでしょうか。H2ブロッカーに共通する副作用として、頭痛、めまい、便秘、下痢などが報告されています。また、特に高齢者においては、せん妄や意識障害といった中枢神経系の副作用のリスクも指摘されています 。これは、薬剤が血液脳関門を通過し、脳内のH2受容体をブロックしてしまうことが原因と考えられています。プロテカジンとガスターを比較した場合、添付文書上では दोनोंに同様の副作用が記載されており、その発現頻度に明確な差があるというデータは限定的です。
しかし、薬剤の体内動態、特に代謝経路の違いは副作用のリスクを考える上で重要です。ガスターは主に腎臓から排泄されるため、腎機能が低下している患者さんでは血中濃度が上昇しやすく、副作用のリスクが高まる可能性があります 。これに対し、プロテカジンは主に肝臓で代謝されるため、腎機能障害を持つ患者さんでも比較的安全に使用できると考えられています 。
主な副作用(共通)
臨床現場では、効果の強さと患者さんの背景(年齢、腎機能など)を総合的に判断し、薬剤を選択することが極めて重要です。
腎機能障害や高齢者への投与におけるプロテカジンとガスターの注意点
プロテカジンとガスターを使い分ける上で、腎機能と年齢は非常に重要な判断基準となります。特に、日本の高齢化社会において、腎機能が低下した高齢者への薬剤投与は慎重に行う必要があります。
腎機能障害患者への投与
前述の通り、ガスター(ファモチジン)は主に腎臓から排泄される薬剤です 。そのため、腎機能が低下している患者(CKD患者など)に通常量を投与すると、薬剤の排泄が遅れて血中濃度が意図せず上昇し、副作用(特に意識障害などの精神神経症状)のリスクが増大します。実際に、ガスターの添付文書では、クレアチニンクリアランス(Ccr)値に応じて投与量を減量するよう明確に規定されています 。例えば、Ccrが30mL/min未満の場合、1日1回10mgへの減量や投与間隔の延長が推奨されています 。
一方、プロテカジン(ラフチジン)は主に肝臓で代謝され、未変化体の尿中排泄率は約10%と低いため、腎機能障害があっても血中濃度への影響は少ないとされています 。このため、腎機能が低下している患者さんに対しても、原則として用量調節は不要です 。この特性から、透析患者や腎機能が不安定な高齢者において、H2ブロッカーを選択する際にはプロテカジンが第一選択となるケースが多く見られます。
高齢者への投与
高齢者では、生理機能の低下(特に腎機能)により、薬剤の副作用が出やすい状態にあります。H2ブロッカーに特徴的な副作用として、せん妄、錯乱、幻覚といった中枢神経症状が知られていますが、これは高齢者でより顕著に現れます 。
プロテカジンとガスターのどちらが高齢者にとって安全かについては、一概には言えません。しかし、腎排泄性のガスターは、気づかぬうちに腎機能が低下している高齢者において血中濃度が上昇しやすいリスクをはらんでいます。その点、腎機能の影響を受けにくいプロテジンの方が、高齢者に対してはより安全な選択肢と考えることもできるでしょう。
臨床医は、高齢者にH2ブロッカーを処方する際には、定期的な腎機能のモニタリングと共に、精神神経症状の発現に注意深く観察することが求められます。
プロテカジンに特有の胃粘膜保護作用とNSAIDs潰瘍への応用
プロテカジンが持つユニークな特徴として、H2受容体拮抗作用に加えて胃粘膜保護作用を併せ持つ点が挙げられます 。この作用は、他の多くのH2ブロッカーには見られない、プロテカジン(ラフチジン)の大きなアドバンテージです。
この胃粘膜保護作用のメカニズムは、カプサイシン感受性知覚神経を介するものと考えられています。プロテカジンがこの神経を刺激することで、カルcitonin gene-related peptide(CGRP)などが放出され、その結果として胃粘膜の血流が増加し、さらに胃粘液の分泌が促進されます 。胃粘液は、胃酸やペプシンといった攻撃因子から胃壁を守る重要な防御因子です。つまり、プロテカジンは胃酸分泌を抑制する「攻撃抑制作用」と、胃粘膜の防御機能を高める「防御因子増強作用」の二つの作用を併せ持っているのです。
この特性は、特に非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)による消化性潰瘍の予防や治療において臨床的な意義を持つ可能性があります。NSAIDsは、プロスタグランジンの産生を抑制することで、胃粘膜の血流低下や粘液分泌の減少を引き起こし、潰瘍を誘発することが知られています。プロテカジンは、NSAIDsによって損なわれた防御因子を補強する作用が期待できるため、NSAIDs潰瘍のリスクが高い患者にとって、より合理的な選択肢となるかもしれません。
実際に、ラフチジンがNSAIDs服用患者の消化管障害を抑制したという研究報告も存在します。例えば、関節リウマチ患者を対象とした研究では、ラフチジン併用群が非併用群に比べて、上部消化管のびらんや潰瘍の発生率が有意に低かったことが示されています。
もちろん、現在ではプロトンポンプ阻害薬(PPI)がNSAIDs潰瘍の第一選択薬とされていますが、副作用や相互作用の観点からPPIが使用しにくいケースも存在します。そのような場合に、胃粘膜保護作用を併せ持つプロテカジンは、有用な治療選択肢の一つとなり得ると考えられます。
参考論文。
- Lafutidine, a new H2-receptor antagonist, reduces upper gastrointestinal mucosal injury induced by acetylsalicylic acid in healthy subjects. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11792138/
こちらのリンクでは、ラフチジンがアセチルサリチル酸(アスピリン)によって誘発される上部消化管粘膜障害を軽減することを示した臨床研究の詳細な内容が記載されています。
プロテカジンとガスターの薬価と患者背景に応じた使い分けまとめ
これまで見てきたように、プロテカジンとガスターは同じH2ブロッカーでありながら、作用の強さ、代謝経路、そして胃粘膜保護作用の有無という点で明確な違いがあります。これらの特性と薬価を考慮し、個々の患者背景に応じた適切な使い分けを行うことが、効果的かつ安全な薬物治療につながります。
薬価の比較
まず、薬剤費の観点から見てみましょう。薬価は改定されるため一概には言えませんが、ジェネリック医薬品の普及により、両剤ともに比較的安価に処方することが可能です。2024年現在、代表的な規格の薬価(ジェネリック)は以下のようになっています。
- ラフチジン錠10mg(プロテカジンGE): 約10円
- ファモチジン錠20mg(ガスターGE): 約10円
後発医薬品で比較すると、両者の薬価に大きな差はないと言えます そのため、薬剤選択においては薬価以外の要因、つまり臨床的な特性がより重要になると考えられます。
患者背景に応じた使い分け
以下に、具体的な患者像と推奨される薬剤選択の考え方をまとめます。
- とにかく強力な酸分泌抑制が必要な場合
- 推奨: ガスター(ファモチジン)
- 理由: 胃酸分泌抑制作用がプロテカジンよりも強力であるため、重度の逆流性食道炎や症状のコントロールが難しいケースで有効です 。
- 腎機能が低下している患者、透析患者の場合
- 推奨: プロテカジン(ラフチジン)
- 理由: 主に肝代謝であり、腎機能低下による用量調節が原則不要なため、血中濃度上昇のリスクが低く、安全性が高いと考えられます 。
- 高齢者の場合
- 推奨: プロテカジン(ラフチジン)を第一候補に
- 理由: 高齢者は生理的に腎機能が低下していることが多く、腎排泄性のガスターは血中濃度が上昇しやすいリスクがあります。そのため、腎機能への影響が少ないプロテカジンがより安全な選択肢となる場合があります。ただし、いずれの薬剤でも中枢神経系の副作用には注意が必要です。
- NSAIDsを長期服用している患者の場合
- 推奨: プロテカジン(ラフチジン)
- 理由: 胃酸分泌抑制作用に加え、胃粘膜保護作用を併せ持つため、NSAIDsによる消化管粘膜障害の予防・治療において合理적인選択と言えます 。
まとめ
| 特徴 | プロテカジン(ラフチジン)を推奨 | ガスター(ファモチジン)を推奨 |
|---|---|---|
| 作用の強さ | – | 症状が強い場合、強力な抑制が必要な場合 |
| 腎機能 | 腎機能低下例、透析患者 | 腎機能が正常な場合 |
| 高齢者 | 第一選択肢として考慮 | 腎機能を確認の上、慎重に投与 |
| NSAIDs服用者 | 予防・治療に合理的 | – |
| 薬価 | 差はほとんどない | 差はほとんどない |
このように、プロテカジンとガスターはそれぞれの長所と短所を持っています。薬剤の特性を深く理解し、患者一人ひとりの病態、背景、そして合併症を総合的に評価した上で、最適な一剤を選択することが、医療従事者に求められる重要な役割です。

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