NANDA-I看護診断一覧と活用方法
NANDA-I看護診断の3つの診断タイプと特徴
NANDA-I看護診断は、患者の状態を適切に評価し、看護計画を立案するための重要な基盤となります。この診断システムには3つの主要な診断タイプがあり、それぞれ異なる状況に対応しています。
- 実在型看護診断(問題焦点型看護診断)
- 現在患者が抱えている問題に焦点を当てた診断
- 「症状・関連因子」の2つの指標を用いて診断
- 問題の症状と関連因子の因果関係を明確にすることが重要
- NANDA-Iでは「診断指標」として表される確認可能な症状・徴候がある
- リスク型看護診断
- 現在は問題が発生していないが、今後発生する可能性がある状態を診断
- 「危険因子」の存在に基づいて診断
- 予防的な看護介入を計画するための基盤となる
- 症状・徴候は見られないが、問題を引き起こす原因が存在している
- ヘルスプロモーション型看護診断
- 患者の健康状態をさらに向上させるための診断
- 現在の健康状態を維持・促進するための介入を計画
- 問題解決ではなく、健康増進に焦点を当てる
これらの診断タイプを適切に使い分けることで、患者の現在の問題だけでなく、潜在的なリスクや健康増進の可能性も含めた包括的な看護計画を立案することができます。特に実在型看護診断では、症状と関連因子の明確な関連付けが重要であり、これにより効果的な看護介入の方向性が決まります。
NANDA-I看護診断の13領域分類と活用法
NANDA-I看護診断は13の領域に分類されており、各領域は患者の健康状態の異なる側面を評価するためのものです。この分類システムにより、看護師は患者の状態を体系的に評価し、適切な看護診断を選択することができます。
NANDA-I看護診断の13領域
領域番号 | 領域名 | 主な内容 |
---|---|---|
領域1 | ヘルスプロモーション | 健康意識、健康管理行動に関する診断 |
領域2 | 栄養 | 摂取、代謝、水分電解質バランスに関する診断 |
領域3 | 排泄と交換 | 排泄機能、ガス交換に関する診断 |
領域4 | 活動/休息 | 睡眠、活動、エネルギー、セルフケアに関する診断 |
領域5 | 知覚/認知 | 注意、定位、感覚、認知に関する診断 |
領域6 | 自己知覚 | 自己概念、自尊心に関する診断 |
領域7 | 役割関係 | 介護役割、家族関係、社会的役割に関する診断 |
領域8 | セクシュアリティ | 性的機能、生殖に関する診断 |
領域9 | コーピング/ストレス耐性 | ストレス対処、危機対応に関する診断 |
領域10 | 生命原理 | 価値観、信念、倫理的決断に関する診断 |
領域11 | 安全/防御 | 感染、身体損傷、暴力に関する診断 |
領域12 | 安楽 | 身体的、環境的、社会的快適さに関する診断 |
領域13 | 成長/発達 | 成長と発達の遅延に関する診断 |
これらの領域は、さらに複数のクラスに細分化されており、各クラスには具体的な看護診断が含まれています。例えば、領域2「栄養」には、「栄養摂取消費バランス異常:必要量以下」や「嚥下障害」などの診断が含まれています。
看護診断を活用する際は、まず患者の情報収集とアセスメントを行い、問題点や健康課題を特定します。次に、その問題点に最も適した領域とクラスを選択し、具体的な看護診断を決定します。この過程で、NANDA-I看護診断の定義と診断指標(実在型の場合)または危険因子(リスク型の場合)を参照し、患者の状態が診断基準に合致するかを確認することが重要です。
最新のNANDA-I看護診断(2024-2026年版、原書第13版)では、56の新しい看護診断が追加され、123の看護診断が改訂されています。これにより、より現代的な医療ニーズに対応した診断が可能になっています。
NANDA-I看護診断と看護過程の展開方法
NANDA-I看護診断は看護過程の展開において重要な役割を果たします。看護過程は一般的に以下の5つのステップで構成されており、NANDA-I看護診断は特に2番目のステップで活用されます。
- アセスメント
- 患者の情報を収集し、分析する段階
- 身体的、心理的、社会的、霊的側面から患者を包括的に評価
- 情報のクラスタリング(パターンの把握)を行い、看護診断の候補を特定
- 看護診断(問題の明確化)
- NANDA-I看護診断を用いて患者の問題を明確化
- 診断の定義と診断指標/危険因子を確認し、患者の状態と照合
- 類似した診断の識別と優先順位づけ
- 計画立案
- 看護診断に基づいて期待される成果(NOC)を設定
- 具体的な看護介入(NIC)を計画
- 実施
- 計画した看護介入を実行
- 評価
- 介入の効果を評価し、必要に応じて計画を修正
NANDA-I看護診断を効果的に活用するためのポイントは以下の通りです:
- 適切なアセスメントが基本:看護診断は「選ぶ」のではなく、適切なアセスメントによって「浮かび上がる」ものです。アセスメントなしでは、正確な看護診断はできません。
- 定義と診断指標/危険因子の確認:看護診断を特定する際は、必ずその定義と診断指標(実在型)または危険因子(リスク型)を確認し、患者の状態と照合します。
- 診断の優先順位づけ:複数の看護診断が特定された場合は、患者の状態や緊急性に基づいて優先順位をつけます。
- NOC・NICとのリンケージ:NANDA-I看護診断はNOC(看護成果分類)とNIC(看護介入分類)とリンクしており、これらを一体として活用することで、より効果的な看護計画を立案できます。
看護過程の展開においてNANDA-I看護診断を活用する際は、単に診断名を選ぶのではなく、患者の個別性を考慮した上で、その診断が本当に適切かどうかを慎重に判断することが重要です。また、看護診断は固定的なものではなく、患者の状態の変化に応じて見直し、修正していくことが必要です。
NANDA-I看護診断の最新版(2024-2026)の変更点
NANDA-I看護診断は定期的に改訂され、最新の医療ニーズや看護研究の成果を反映しています。2024-2026年版(原書第13版)では、大幅な更新が行われました。この最新版の主な変更点を理解することで、より現代的で効果的な看護診断を活用することができます。
主な変更点
- 新しい看護診断の追加
- 56の新しい看護診断が追加され、より多様な患者ニーズに対応可能に
- 新しい医療技術や社会的変化に対応した診断が含まれている
- 既存の看護診断の改訂
- 123の看護診断が改訂され、より明確で使いやすい定義に更新
- 診断指標や関連因子/危険因子の見直しと更新
- 文化的適用性の向上
- より多様な文化的背景を持つ患者に適用できるよう改良
- グローバルな視点を取り入れた診断基準の見直し
- エビデンスレベルの強化
- 各看護診断のエビデンスレベルが見直され、より科学的根拠に基づいた診断が可能に
- 「診断提出時のエビデンスレベル判定基準 改訂版」が含まれている
- 診断タイプの定義の明確化
- 問題焦点型看護診断(実在型)、リスク型看護診断、ヘルスプロモーション型看護診断の定義がより明確に
これらの変更により、NANDA-I看護診断はより現代的な医療環境に適応し、多様な患者ニーズに対応できるようになっています。特に、文化的適用性の向上は、グローバル化が進む現代の医療現場において重要な進歩と言えるでしょう。
また、エビデンスレベルの強化は、看護実践のエビデンスベース化を促進し、より質の高い看護ケアの提供につながることが期待されます。看護師は最新版のNANDA-I看護診断を活用することで、より科学的根拠に基づいた看護計画を立案することができます。
NANDA-I看護診断とNIC-NOCの連携活用術
NANDA-I看護診断は単独で使用されるものではなく、NIC(看護介入分類)とNOC(看護成果分類)と連携して活用することで、より効果的な看護過程の展開が可能になります。この三者の連携は「NANDA-NOC-NIC」リンケージと呼ばれ、看護診断から成果、介入までの一貫したプロセスを提供します。
NANDA-NOC-NICリンケージの基本
分類 | 役割 | 特徴 |
---|---|---|
NANDA-I看護診断 | 問題の特定 | アセスメントに基づいて看護問題を明確にする |
NOC(看護成果分類) | 期待される成果の設定 | 看護介入の効果を測定するための指標を提供 |
NIC(看護介入分類) | 具体的な看護介入の計画 | 問題解決のための具体的な看護行為を示す |
連携活用のステップ
- NANDA-I看護診断で問題を特定
- アセスメントに基づいて適切な看護診断を選択
- 診断の定義と診断指標/危険因子を確認
- NOCで期待される成果を設定
- 選択した看護診断に対応するNOC成果を特定
- 成果指標を用いて現状のレベルを評価し、目標レベルを設定
- 例:「便秘リスク状態」の診断に対して「排便」というNOC成果を選択し、5段階評価で現状と目標を設定
- NICで具体的な看護介入を計画
- 看護診断とNOC成果に基づいて適切なNIC介入を選択
- 具体的な看護活動を計画
- 例:「便秘リスク状態」に対して「排便管理」というNIC介入を選択し、水分摂取促進や運動促進などの具体的活動を計画
- 実施と評価
- 計画したNIC介入を実施
- NOC成果指標を用いて効果を評価
- 必要に応じて計画を修正
連携活用のメリット
- 一貫性のある看護過程:問題特定から成果設定、介入計画までが体系的に連携
- 標準化された言語の使用:共通の専門用語を用いることで、チーム内のコミュニケーションが円滑に
- エビデンスに基づく実践の促進:三者のリンケージは研究に基づいて開発されており、科学的根拠のある看護実践を支援
- 看護の可視化:看護の成果を具体的な指標で示すことができ、看護の価値を明確に
NANDA-NOC-NICの連携活用は、看護過程の質を高め、より効果的な患者ケアを提供するための強力なツールです。特に、NOCによる成果の数量化は、看護介入の効果を客観的に評価することを可能にし、継続的な質の改善につながります。
また、この連携システムは電子カルテなどの情報システムとの統合も進んでおり、より効率的な看護記録と情報共有を実現しています。看護師はこれらのツールを効果的に活用することで、エビデンスに基づいた質の高い看護ケアを提供することができます。
NANDA-I看護診断の臨床での具体的な活用例
NANDA-I看護診断を臨床で効果的に活用するためには、理論的な理解だけでなく、実践的な適用が重要です。以下に、具体的な活用例を示します。
事例:食欲不振のある高齢入院患者
- アセスメント
- 患者情報:80歳女性、脳梗塞後遺症で入院中
- 症状:食事摂取量が半量程度
- 関連因子:身体活動量低下、便秘、環境の変化、誤嚥への不安、嚥下食の味付けが好みに合わない
- 看護診断
- NANDA-I診断名:「栄養摂取バランス異常:必要量以下」
- 診断タイプ:実在型看護診断
- 診断指標:食事摂取量の減少、食事に対する興味の欠如
- 関連因子:嚥下困難、不安、環境の変化
- 看護計画(NOC-NIC連携)
- NOC(期待される成果):
- 栄養状態
- 食事摂取量
- NIC(看護介入):
- 栄養管理
- 嚥下障害管理
- 不安軽減
- 具体的な看護介入
- 食事摂取量の観察と記録
- 嚥下機能に適した食事形態の提供
- 食事環境の調整(姿勢、食器、雰囲気など)
- 患者の好みに合わせた味付けの調整
- 誤嚥予防の指導と不安軽減のための説明
- 適度な運動の促進と便秘対策
- 評価
- NOC指標を用いて定期的に評価(例:1週間ごと)
- 食事摂取量の増加
- 栄養状態の改善(体重、血液検査値など)
- 患者の食事に対する満足度
- NOC(期待される成果):
この事例では、NANDA-I看護診断を用いることで、患者の問題を明確に特定し、それに基づいた具体的な看護計画を立案しています。NOCとNICを連携させることで、期待される成果と具体的な介入方法が明確になり、効果的な看護ケアの提供が可能になります。
また、この活用例では以下の点が重要です:
- 患者の個別性を考慮した診断と計画立案
- 多職種連携(栄養士、言語聴覚士など)の必要性の認識
- 定期的な評価と計画の修正
NANDA-I看護診断を臨床で活用する際は、単に診断名を選択するだけでなく、患者の全体像を把握し、個別性を重視した看護計画を立案することが重要です。また、定期的な評価と修正を行うことで、より効果的な看護ケアを提供することができます。
NANDA-I看護診断の教育現場での活用と学習方法
NANDA-I看護診断は、看護教育において重要な位置を占めています。学生が効果的にNANDA-I看護診断を学び、臨床で活用できるようになるためには、以下のような教育方法と学習アプローチが有効です。
- 基礎知識の習得
- NANDA-I看護診断の構造(13領域、診断タイプ、構成要素)の理解
- 各診断名の定義、診断指標、関連因子/危険因子の学習
- 事例分析演習
- 架空の患者事例を用いたグループワーク
- 情報の整理、アセスメント、適切な看護診断の選択練習
- ロールプレイング
- 患者役と看護師役に分かれての模擬面接
- 情報収集とアセスメントスキルの向上
- 電子カルテシミュレーション
- NANDA-I看護診断を組み込んだ電子カルテシステムの操作練習
- 診断から計画立案、評価までの一連のプロセスの体験
- 臨地実習での活用
- 実際の患者に対するNANDA-I看護診断の適用
- 指導者のフィードバックを受けながらの実践的学習
- 事例検討会
- 実習で経験した事例を用いたグループディスカッション
- 診断の妥当性や介入の効果についての批判的思考の育成
- 最新版の学習
- NANDA-I看護診断の定期的な改訂内容の学習
- 新しい診断名や変更点の理解
- NOC-NICとの連携学習
- NANDA-I看護診断とNOC(看護成果分類)、NIC(看護介入分類)の統合的な学習
- 診断から成果設定、介入計画までの一貫したプロセスの理解
- 文献検討
- NANDA-I看護診断を用いた研究論文の読解
- エビデンスに基づいた診断と介入の重要性の理解
- 自己学習ツールの活用
- オンラインクイズやアプリを用いた自主学習
- 診断名や診断指標の暗記と理解の促進
これらの学習方法を組み合わせることで、学生はNANDA-I看護診断を理論的に理解するだけでなく、実践的に活用する能力を養うことができます。教育者は、学生の理解度や臨床経験に応じて、これらの方法を適切に選択し、段階的に学習を進めていくことが重要です。
また、NANDA-I看護診断の学習は、批判的思考力や臨床推論能力の向上にも寄与します。学生が単に診断名を暗記するのではなく、患者の全体像を把握し、適切なアセスメントに基づいて診断を選択する能力を養うことが、教育の最終目標となります。