心窩部痛症候群薬と胃酸抑制薬運動機能改善薬漢方薬

心窩部痛症候群と薬

この記事で押さえる要点
🩺

心窩部痛症候群の位置づけ

心窩部痛症候群(EPS)は機能性ディスペプシア(FD)の病型の一つで、器質的疾患を除外したうえで症状と病態から薬を組み立てる。

💊

薬の基本戦略

まずは胃酸分泌抑制薬を軸に、症状の重なり(PDS要素・不安/抑うつ・睡眠)に応じて運動機能改善薬や漢方薬、神経修飾薬を段階的に検討する。

🔎

見逃しを防ぐ

警告徴候、年齢、検査歴、ピロリ菌感染の有無をセットで評価し、必要時は内視鏡や追加画像で「EPSに見える別疾患」を除外する。

心窩部痛症候群と機能性ディスペプシアの定義

 

心窩部痛症候群(EPS)は、Rome IVでいう機能性ディスペプシア(FD)の病型の一つで、「心窩部痛」や「心窩部灼熱感」を主とするパターンを指します。

日本消化器病学会のFDガイドラインでは、ディスペプシアを逆流症状(胸やけ等)を含めず、「心窩部痛や胃もたれなどの心窩部を中心とした腹部症状」として整理しており、症状の原因となる器質的・全身性・代謝性疾患がないのに慢性的に続く状態をFDと定義しています。

現場ではEPSとPDS(食後愁訴症候群)が重なる患者も多く、「痛み=酸」「もたれ=運動」の単純二分では説明しきれないため、症状の頻度・誘因(空腹時/食後/夜間)と、治療反応を踏まえて病態仮説を更新する姿勢が重要です。

心窩部痛症候群と酸分泌抑制薬(PPI・H2受容体拮抗薬)

EPSでまず検討しやすいのが酸分泌抑制薬で、ガイドラインのフローチャートでも一次治療として「酸分泌抑制薬」が位置づけられています。

患者向けガイド(JSGE)でも、最初に使われる薬の一つとして「胃酸が出るのを抑える薬(プロトンポンプ阻害薬、ヒスタミンH2受容体拮抗薬)」が提示されており、胃酸への感受性が関与する場合に症状改善が期待される、という説明がなされています。

処方設計の実務では、以下を「EPSの薬選びの質問」として診察室で確認すると、無駄な薬変更が減ります。

・痛みの質は「焼ける」「しみる」か、鈍い圧迫感か

・食後で悪化か、空腹時で悪化か

・夜間痛で覚醒するか

・NSAIDs/低用量アスピリン使用はあるか(薬剤性胃粘膜障害の鑑別)

注意点として、酸分泌抑制薬で改善が乏しい場合、EPSそのものの病態が「酸」ではなく、知覚過敏・ストレス・微小炎症・運動異常の寄与が大きい可能性があるため、漫然と同系統を延長しない判断が必要です。

心窩部痛症候群と運動機能改善薬(アコチアミド)

FD治療では、一次治療の柱として「運動機能改善薬(アコチアミド)」が挙げられており、特に胃排出遅延や胃の貯留能(適応性弛緩)の異常が疑われる場合に組み込みやすい薬剤です。

ただしアコチアミドは、臨床的にはPDS(早期飽満感、食後膨満感)に寄りやすい患者で手応えが出やすく、EPS優位例では酸分泌抑制薬を先に試し、重なりが強いときに併用・切替を検討する、という組み立てが現実的です(EPSとPDSのオーバーラップは珍しくありません)。

薬剤反応を評価する際は、患者が訴える「胃痛」の中に、実は「食後のもたれ」「少量で満腹」「げっぷの増加」などPDS的訴えが混じっていないかを言語化してもらうと、アコチアミドを足す根拠が作れます。

実務上のコツとして、症状日誌(食事量・時間・痛みスコア・便通・睡眠)を2週間だけでも付けてもらうと、EPS単独か、PDS混在か、ストレス・睡眠がトリガーかが見えやすく、薬を“増やす”より“当てにいく”方向へ転換できます。

心窩部痛症候群と漢方薬(六君子湯)

FDの一次治療として、患者向けガイドでは「漢方薬(六君子湯)」が、酸分泌抑制薬・アコチアミドと並んで提示されています。

六君子湯は「胃の動きをよくする」だけでなく「精神的な不安も改善することがわかっている」と説明されており、症状の背景に不安・抑うつ・睡眠不良が絡む患者で、治療への納得感を作りやすい選択肢になります。

EPS優位でも、(1)食欲低下や体重減少“ではなく”食べられない感じ(早期飽満)を併発、(2)日内変動が大きい、(3)ストレスで増悪、のような文脈があると六君子湯の出番が生まれます。

臨床コミュニケーションとしては、「痛み止め」ではなく「胃の働きと感じ方の過敏さを整える」という枠組みで説明すると、患者は“胃薬が効かない=異常があるはず”という不安から離れやすくなります(ガイドラインでも“説明と保証”が重要とされます)。

心窩部痛症候群の独自視点:ピロリ関連ディスペプシアと除菌後タイムラグ

意外と見落とされやすいのが、「ピロリ菌陽性のディスペプシアは、厳密にはFDではなく“ピロリ関連ディスペプシア”として扱う」という整理です。

ガイドラインでは、H. pylori除菌後に6か月〜1年経って症状が消失または改善した場合にH. pylori関連ディスペプシアと診断する、という考え方が示されており、除菌“直後”に症状が残っていても、それだけで治療失敗と決めつけない視点が重要です。

ここが独自視点として臨床的に効くポイントで、患者が「除菌したのに治らない=重病かも」と不安に傾いた瞬間に、薬の追加より先に“時間軸の説明”が症状の固定化を防ぐことがあります(除菌後も炎症が落ち着くまでに時間がかかるため、半年〜1年で評価するという説明が患者向けガイドにも記載されています)。

実務に落とすなら、ピロリ陽性のEPS様症状では、(1)除菌の適応確認→(2)除菌後のフォロー計画(いつ何を評価するか)→(3)その間の対症薬(PPI/H2・六君子湯など)を“仮の支え”として位置づける、の順に組むと、薬の迷走が減ります。

胃痛・みぞおち症状の定義、一次治療(酸分泌抑制薬・アコチアミド・六君子湯)、ピロリ関連ディスペプシアの考え方、検査の考え方がまとまっている(治療パート、Q4〜Q7が特に有用)。

日本消化器病学会 機能性ディスペプシアガイド2023(患者さんとご家族のための)

FD診療のフローチャート(警告徴候、ピロリ評価、一次治療〜二次治療、治療変更の目安4〜8週、除菌後6か月〜1年での判断)が確認できる(フローチャートの注釈が臨床で役立つ)。

日本消化器病学会 機能性消化管疾患診療ガイドライン2021―機能性ディスペプシア(FD)

【指定医薬部外品】楽養生 歯の衰え 腰痛 肩こり 血流改善 疲労回復 肩 首 腰 膝の不調 歯槽膿漏 予防 骨 身体抵抗力の維持 改善 90錠