結石の薬の一覧:排石促進から痛み止めまで完全ガイド

結石薬一覧

結石治療薬の主な分類
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排石促進薬

結石の自然排出を促進し、溶解や発育を予防する薬剤

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溶解薬

尿のpH調整により特定の結石タイプを溶解する薬剤

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疼痛管理薬

結石による激痛を和らげる鎮痛薬や鎮痙薬

結石排出促進薬の種類と効果

結石排出促進薬は、腎臓や尿管にできた結石の自然排出を助ける重要な治療薬です。最も代表的な薬剤がウロカルン錠(ウラジロガシエキス225mg)で、主成分はウラジロガシという生薬から抽出されたエキスです。

ウロカルンの臨床効果は非常に印象的で、尿管結石に対する有効率は72.9%(510例中700例で効果判定)、腎結石では20.9%(55例中263例で効果判定)という実績があります。この薬剤は単に排石を促進するだけでなく、結石の溶解や新たな結石の発育を予防する三重の効果を持っています。

排石促進薬として使用される他の薬剤には以下があります。

  • 猪苓湯:利尿作用のある漢方薬で、尿量を増やして排石を促進
  • α1ブロッカー(ハルナール、ユリーフ)前立腺肥大症治療薬だが、尿道を弛緩させて排石を促進
  • カルシウムブロッカー:尿管の平滑筋を緩めて痛みを緩和し排石を助ける

これらの薬剤は医師の判断により単独または併用で処方され、結石のサイズや位置、患者の状態に応じて選択されます。ただし、α1ブロッカーは血圧降下作用があるため、降圧薬を複数服用している患者では注意が必要です。

結石溶解薬の使い分けポイント

結石溶解薬は結石の成分によって使い分けが重要で、特に尿酸結石とシスチン結石に対して高い効果を発揮します。

尿アルカリ化薬(ウラリット) は結石溶解の中核を担う薬剤です。クエン酸カリウムとクエン酸ナトリウムの配合薬で、尿のpHを6.0-6.5程度にアルカリ化することで尿酸結石の溶解を促進します。尿酸結石に対しては、水分摂取量の増加と併用してカリウム含有の経口アルカリ化薬を20mEq(20mmol/L)、1日2回投与することが推奨されています。

高尿酸血症治療薬 も重要な役割を果たします。

これらの薬剤は血液中の尿酸値が7.0mg/dLを超える高尿酸血症患者に使用され、体内での尿酸生成を抑制することで尿酸結石の形成を防ぎます。

シスチン尿症治療薬(チオラ) はシスチン結石に特化した薬剤です。シスチン尿症は腎近位尿細管のアミノ酸輸送異常により、難溶性のシスチンが尿中に大量排泄される疾患で、酸性尿では特に結石が形成されやすくなります。

ただし、尿の過度なアルカリ化(pH7.5以上)はリン酸結石の形成リスクを高めるため、適切なモニタリングが不可欠です。医師による定期的な尿pH測定と薬剤調整が治療成功の鍵となります。

結石の痛み止め薬の選び方

結石による激痛は患者にとって最も辛い症状であり、適切な疼痛管理が治療の重要な要素となります。

NSAIDs非ステロイド性抗炎症薬 が第一選択薬として位置づけられています。

  • ロキソプロフェン(ロキソニン):内服薬、坐薬ともに高い鎮痛効果
  • ジクロフェナク(ボルタレン):強力な抗炎症・鎮痛作用
  • セレコキシブ:胃腸障害のリスクが比較的低いCOX-2選択的阻害薬

特にロキソニンの坐薬は結石痛によく効くとされていますが、15分以上経過後に出てしまった場合は薬剤が吸収されているため再挿入は不要です。

代替薬剤 として以下が使用されます。

漢方薬・鎮痙薬 も効果的な選択肢です。

  • 芍薬甘草湯:骨格筋や平滑筋の痙攣を抑制
  • フロプロピオン(コスパノン):尿管の痙攣を和らげる
  • チメピジウム(セスデン)コリン作用による鎮痙効果

使用時の注意点として、NSAIDsは連続使用により胃腸障害や腎障害のリスクがあるため、最低4時間の間隔を空けて使用し、空腹時の服用は避けることが重要です。また、妊娠中の女性やアスピリン喘息の既往がある患者では使用禁忌となるため、医師への申告が必須です。

結石予防薬の長期使用法

結石の再発予防は治療において極めて重要な側面で、適切な予防薬の長期使用により再発率を大幅に減少させることができます。

サイアザイド系利尿薬 は高カルシウム尿症患者の第一選択薬です。尿中カルシウム排泄量を低下させることでシュウ酸カルシウムとの尿中過飽和を予防し、作用時間の長いサイアザイド系利尿薬の使用により結石再発予防効果が期待できます。

酸化マグネシウム(マグミット) は意外な予防効果を持ちます。主に下剤として知られていますが、尿中のシュウ酸カルシウムと結合し排石を促すことでシュウ酸結石の予防効果があり、結石予防目的では0.2~0.6g/日の少量投与が行われます。

ただし、腎障害や心疾患患者では高マグネシウム血症のリスクがあり、特に高齢者では長期間または大量投与を避ける必要があります。また、牛乳やカルシウム製剤、ニューキノロン系・テトラサイクリン系抗生剤との相互作用にも注意が必要です。

クエン酸製剤 の長期使用は多様な結石タイプに有効です。シュウ酸カルシウム結石、リン酸カルシウム結石、尿酸結石、シスチン結石のすべてに抑制効果があり、結石予防の基本薬剤として位置づけられています。

注意すべき薬剤 として以下があります。

  • ビタミンD・カルシウムサプリメント:尿中カルシウム排泄増加により結石リスク上昇
  • 尿酸排泄促進薬(ベネシッド、ユリノーム):尿pH不良時に尿酸結石形成促進
  • ビタミンC大量摂取:体内でシュウ酸に代謝され結石リスク増加

長期予防療法では定期的な血液検査、尿検査による効果判定と副作用モニタリングが不可欠で、医師・薬剤師との密接な連携が治療成功の鍵となります。

原泌尿器科病院の結石治療薬に関する詳細な解説

https://harahospital.jp/koramu/koramu01/20210903.html

結石治療における新薬SGLT2阻害薬の可能性

近年の研究により、SGLT2阻害薬が結石治療の新たな選択肢として注目を集めています。これは従来の糖尿病治療薬が、予想外の結石形成抑制効果を示したという画期的な発見です。

臨床研究データ では驚くべき結果が報告されています。日本人の大規模患者データベース(約153万人の糖尿病患者)を解析した結果、SGLT2阻害薬を処方された男性患者(約10万人)の尿路結石有病率は2.28%で、処方されていない患者の2.54%と比較して統計学的に有意に低いことが判明しました。

作用機序の解明 により、この効果のメカニズムが明らかになりました。従来予想されていた利尿作用ではなく、抗炎症作用が主要な機序であることが動物実験で証明されています。SGLT2阻害薬の原型であるフロリジンをラットに投与した実験では、尿量増加は認められない一方で炎症マーカータンパク質の有意な低下が観察され、腎結石形成量が有意に抑制されました。

国際的な臨床試験 も開始されており、世界的に注目度が高まっています。

期待される応用範囲 は広範囲に及びます。現在、カルシウム含有腎結石に対する予防薬・治療薬は存在しないため、SGLT2阻害薬が糖尿病、慢性心不全慢性腎臓病に続く4番目の適応症となる可能性があります。

ただし、現時点での限界 も認識すべきです。今回の研究では結石形成抑制は示されましたが、既存結石の溶解効果までは実証されていません。また、糖尿病患者以外での安全性や効果についてはさらなる研究が必要な段階です。

将来展望 として、研究チームは「SGLT2阻害薬が腎結石に対する有効な治療アプローチとなる可能性がある」と結論づけており、日本でも今後臨床研究が必要になると予想されています。この新薬の登場により、結石治療の選択肢が大幅に拡大する可能性があり、特に糖尿病を併存する結石患者にとって一石二鳥の治療効果が期待されます。

SGLT2阻害薬の結石形成抑制に関する最新研究

https://answers.ten-navi.com/pharmanews/24463/