回帰性リウマチ治療と検査と関節炎

回帰性リウマチ 治療

回帰性リウマチの診療で押さえる要点
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発作は短いが痛みは強い

数時間でピーク、数日〜1週間で消失する一方、痛みが強いのが特徴。発作時の炎症評価と鎮痛がまず重要。

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検査は「診断」より「予測」に強い

抗CCP抗体やリウマトイド因子はRA移行リスクの層別化に役立つ。発作時のエコー所見も判断材料。

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治療目標は2層構造

①発作の疼痛・機能障害を減らす、②関節リウマチへ移行しうる患者を早期に拾い上げ、見逃さずフォローする。

回帰性リウマチ 治療の前に症状と関節炎を整理

回帰性リウマチ(palindromic rheumatism: PR)は、関節の腫れ・痛み・熱感などの関節炎発作を周期的に繰り返し、発作間欠期には症状が消失して機能障害が残りにくい病態として説明されます。発作は数時間でピークに達し、数日〜1週間程度で消失し、間欠期は数日〜数か月と幅がある点が臨床像の中心です。

また、症状が出る関節は固定されず「移動する」ことが多く、手指関節、手、膝、肩、足の順で多い一方で、脊椎や顎関節はまれとされます。こうした特徴は、患者が「昨日は手首、今日は膝」と訴える形で現れ、問診の質が診断精度に直結します。

長期経過では自然に治癒する例がある一方、一定割合が関節リウマチ(RA)へ移行しうるため、「発作性=良性」と決めつけず、予後の見立てを組み込んだ説明が必要です(KOMPASではRA移行は20〜60%と記載)。

医療従事者向けには、PRを「関節炎エピソードの集合体(症候群)」として捉え、初診の時点で“RAの前段階なのか、別の疾患の発作なのか”を同時並行で検討する姿勢が重要です。

回帰性リウマチ 治療に直結する検査と抗CCP抗体

回帰性リウマチには世界標準の診断基準がないため、実臨床では「典型的な発作パターン」と「画像で骨破壊がないこと」を確認しつつ、痛風・偽痛風・間欠性関節水腫などの除外で診断していくと整理されます。検査は“確定診断の決め手”というより、“鑑別と将来予測”に比重が置かれます。

KOMPASでは、回帰性リウマチ患者の約半数で発作時にリウマトイド因子(RF)が陽性となりうること、白血球増多・赤沈亢進・CRP上昇など炎症反応が一過性に上がりうることが述べられています。ただし、これら単独では「PRの証明」にはならず、発作時に採血できたかどうかで数値が揺れやすい点も現場では注意点です。

一方で、抗CCP抗体は“RA移行の予測因子”として臨床的インパクトが大きい領域です。前向きコホート研究では、PR患者の一部が1年でRAへ移行し、手関節を含む手の関節病変と抗CCP抗体陽性がRA移行を予測したと報告されています(Clin Rheumatol 2014)。

発作が治まっている時でも、関節エコーで滑膜炎が確認される場合があり、症状と客観所見のズレが“見えない炎症”として残ることがあります。PRと診断して経過観察としたい場面でも、抗CCP抗体やエコー所見が揃うと「RAとしての早期介入」を考える土台になります。

論文引用(RA移行予測の根拠):In palindromic rheumatism, hand joint involvement and positive anti-CCP antibodies predict RA development after 1 year of follow-up (Clin Rheumatol. 2014)

回帰性リウマチ 治療の基本:NSAIDsとステロイド内服

発作時治療の中心は、疼痛と炎症を抑え、日常生活動作を守ることです。KOMPASでも、発作時には非ステロイド抗炎症薬NSAIDs)がある程度有効である一方、十分な効果が得られないことも多い、と整理されています。

NSAIDsは「発作を止める」より「痛みを耐えられるレベルに落とす」位置づけになりやすく、患者が“効かない”と感じる理由(腫れは残る/痛みのピークが強すぎる/服薬タイミングが遅れた等)を具体的に言語化して共有すると、次の一手が立てやすくなります。

ステロイド内服は症例によって有効とされますが、発作が短期間で軽快しやすいこと、基本的に関節破壊がないこと、そして副作用(感染、骨粗鬆症、糖代謝悪化など)を合わせて考慮し適応は限られる、とKOMPASでは述べられています。医療者側は“短期で切る”設計(開始条件、最大量、漸減スケジュール、再燃時のルール)をあらかじめ決め、漫然投与を避ける必要があります。

発作時に鑑別で最も重要なのは結晶誘発性関節炎感染性関節炎の見逃しです。特に単関節の強い腫脹・発熱・炎症反応高値では、PRの既往があっても「いつも通り」と判断せず、関節穿刺や画像評価を優先する安全設計が重要です。

回帰性リウマチ 治療の長期戦略:抗リウマチ薬と予後

回帰性リウマチの治療で難しいのは、「繰り返す発作を予防する最良の治療法は確立していない」とされる点です。KOMPASでも、発作が不定周期であるため薬剤効果の評価が困難で、抗リウマチ薬(DMARDs)の効果も明らかではないが症例によって期待できる、と説明されています。

この“エビデンスの空白”は、医療者が「何もしない」ではなく「何を指標に、いつ方針転換するか」を定義する必要があることを意味します。実務的には、発作頻度(例:月何回)、罹患関節数、発作の持続、欠勤・休職、NSAIDs必要量、そして抗CCP抗体・RF・エコー所見などを組み合わせ、経過観察の濃淡を決めます。

予後としては、自然に治癒する割合がある一方で、RAへの移行が一定割合で起こりうることが重要です(KOMPASでは長期的に20〜50%がRAへ移行、近年の20年以上追跡で60例中40例がRAへ移行した報告がある旨の記載)。また少数例ではSLEなど他の膠原病に移行する可能性も述べられており、PRを“単独疾患”というより“分岐点”として捉える視点が臨床的に有用です。

臨床研究では、抗CCP抗体陽性や手の関節病変がRA移行の予測因子になり得るとされ、PR患者を一律に扱うのではなく、ハイリスク群を前提にフォロー間隔や説明内容を変えることが合理的です。患者説明としては「今の発作を抑える薬」と「将来RAへ移行しないかを見張る検査」が別物であることを明確にするだけで、通院中断の抑制につながります。

回帰性リウマチ 治療の独自視点:発作記録と関節エコーで“見えない炎症”を拾う

検索上位の一般的な解説では、NSAIDsやステロイドの話に寄りがちですが、実臨床で差が出るのは「発作の証拠化」です。PRは発作が短く、受診時には腫れが引いていることが多いため、医療者が“診察できる炎症”が不足し、結果として鑑別・評価・治療判断が遅れる構造があります。

そこで有効なのが、患者に発作のセルフ記録(開始時刻、ピーク時刻、持続、関節部位、腫脹の写真、体温、NSAIDsの使用量と効果)を依頼し、受診時に「関節炎の履歴」を再現する方法です。これにより、移動性・反復性というPRらしさが可視化され、痛風や感染など“パターンが違う痛み”が混ざったときも見抜きやすくなります。

さらに、KOMPASが述べるように発作時に関節エコーで滑膜炎が確認されることがあります。発作ピークの数時間〜1日以内にエコー枠を確保できる体制(発作時連絡→当日/翌日エコー)を院内フローとして作ると、患者の「来ても腫れてないから意味がない」という失望を減らせます。

意外に見落とされがちなのは、PRは「骨破壊がない」のが原則とされる一方で、RAへ移行する患者では“骨破壊が始まる前の炎症”がすでに存在している可能性がある点です。つまり、X線が正常でも安心材料にはなっても、免罪符にはなりません。発作記録×抗CCP抗体×エコーを組み合わせ、将来のRAを“先回りして疑う”ことが、PR診療で医療者が提供できる最も価値の高い介入になります。

有用:疾患概要(症状・診断・検査・治療・生活上の注意)が一通りまとまっている参考リンク:回帰性リウマチ(palindromic rheumatism: PR) | KOMPAS(慶應義塾大学病院)