乾癬性関節炎治療ガイドラインと生物学的製剤の評価指標

乾癬性関節炎治療ガイドライン

乾癬性関節炎治療ガイドライン:臨床で使う要点
🧭

最初に押さえる結論

乾癬性関節炎(PsA)は「早期診断・早期治療」と「ドメイン別の最適化」が転帰を左右するため、ガイドラインの治療目標(寛解/MDA)と評価指標を先に整えるのが近道です。

🧪

治療薬の地図

末梢関節炎ではcsDMARD(MTX優先)→不十分ならbDMARD、皮疹が強いならIL-23/IL-17系を意識、JAK阻害薬は位置づけとリスク評価が鍵になります。

🫁

見落としやすい安全性

感染症、ぶどう膜炎、炎症性腸疾患、心血管リスクなど併存症が薬剤選択を変えるため、ガイドラインは「効く薬」だけでなく「選ばない理由」を言語化する道具です。

乾癬性関節炎の診断とCASPAR分類基準の使い方

 

乾癬性関節炎(PsA)は臨床像が多彩で、皮疹が軽い・関節炎が先行するタイプでは関節リウマチ(RA)や変形性関節症(OA)などとの鑑別が遅れやすい点が臨床上の落とし穴です。

そのため「診断基準」ではなく、臨床研究で患者集団を揃える目的のCASPAR分類基準を“参考”として用い、鑑別診断を慎重に進める位置づけが明記されています。

CASPARは「炎症性の筋骨格系病変(関節・脊椎・付着部)があること」を前提に、乾癬の所見、爪乾癬、RF陰性、指趾炎、画像での関節近傍骨新生などの要素を点数化し、合計3点以上でPsAと分類します。

診断を早めるための実務ポイントとして、皮疹の有無だけに寄らず、以下をセットで観察します。

参考)https://onlinelibrary.wiley.com/doi/pdfdirect/10.1111/1346-8138.17186

  • 指趾炎(ソーセージ指/趾):滑膜炎の“紡錘状”腫脹と違う腫れ方として意識する。​
  • 付着部炎:アキレス腱付着部や足底腱膜、膝周囲、骨盤周囲など「荷重や牽引がかかる部位」の痛みとして拾う。​
  • 爪所見:点状陥凹、爪甲剝離、爪甲下角質増殖はPsAの手がかりになり得る。​

あまり知られていないが臨床で効く視点として、PsAは「付着部炎が一次病変で、滑膜炎は二次的に起こり得る」という考え方(enthesis起点の病態)が、症状の拾い方や画像選択に直結します。

この視点を共有すると、患者の訴えが「関節が痛い」ではなく「踵が痛い」「肘が伸ばしにくい」「指全体が腫れた」など“関節外に見える”症状として語られる理由が説明しやすくなります。

乾癬性関節炎の評価指標と治療目標(MDA・DAPSA・treat to target)

PsAは末梢関節炎、体軸病変、付着部炎、指趾炎、爪、皮膚といった複数ドメインが絡むため、疾患活動性を「複合評価指標」で捉えることが重要だと整理されています。

代表例として、DAPSA(疼痛VAS、患者全般評価、腫脹関節数、圧痛関節数、CRP)や、より多ドメインを含むCPDAI、PASDASなどが挙げられます。

そして治療戦略としては、寛解が理想だが現実的目標としてMDA(最小疾患活動性)やLDAを置き、目標達成を意識して治療を調整するT2T(treat to target)の考え方が示されています。

MDAは「7項目のうち5項目達成」といった形で、診察室で“患者と共有できるゴール”に変換しやすいのが利点です。

一方で、CRPが上がらない患者も多いなど、単一指標に依存しにくい疾患特性があり、症状・機能・皮膚のバランスを同時に見る価値があります。

ガイドラインの文脈でも、PsAではRAほど炎症マーカーが上がらない患者が一定数いることが述べられており、「炎症反応が低い=活動性が低い」と短絡しない姿勢が必要です。

実務上のコツは、初診(または再評価)時に“どのドメインが主戦場か”を言語化してカルテに残すことです。

例:末梢関節炎主体なのか、付着部炎主体なのか、皮疹の重みが大きいのかで、同じ「PsA」でも薬剤の選好が変わるためです。

参考)https://ard.bmj.com/content/83/6/706

この「ドメイン設計」ができると、後述の生物学的製剤/分子標的薬の選択で、説明が一気に短く明確になります。

乾癬性関節炎の治療薬と生物学的製剤(IL-17・IL-23・TNF・JAK)

EULAR 2023 updateでは、NSAIDsは軽症で短期の単独使用に限ること、経口グルココルチコイドは推奨されないことが示され、薬物療法の基本方針が明確化されています。

末梢関節炎ではcsDMARDを早期に開始し、メトトレキサート(MTX)が推奨され、目標未達ならbDMARDへ進む段階的戦略が提示されています。

また、皮膚病変が臨床的に重要な場合にはIL-23(p19/p40)やIL-17(A、A/F)を標的とする薬剤が薬剤選択を方向づける、と具体的に述べられています。

さらに、ぶどう膜炎や炎症性腸疾患(IBD)がある場合は薬剤選択を変えるべきで、単クローン抗体型TNF阻害薬が候補になり得る、といった“併存症での最適化”も推奨に含まれます。

JAK阻害薬は、主としてbDMARD不応後に位置づけられ、関連するリスク因子(安全性)を踏まえて選択する方針が示されています。

治療反応が不十分な場合のスイッチや、持続寛解時の減量(tapering)にも触れられており、長期運用の方針が一段具体化しています。

ここで“意外に見落とされがち”なのは、PsA治療が「関節だけに効けばよい」では成立しない点です。

皮疹が強い患者では、関節炎の制御が同程度でも皮膚の改善度が治療満足度や継続性を左右し、結果としてアドヒアランスが予後に影響します。

その意味で、皮膚・関節・併存症を同じ優先順位表の上に並べ、患者と合意形成すること自体が“治療技術”になります。

乾癬性関節炎のスクリーニングと早期紹介(J-EARP・PASE)

PsAは診断までの遅れが機能障害や画像変化に関係し得るため、皮膚科外来や一般診療での早期スクリーニングが重要とされています。

ガイドライン内でも、乾癬患者を対象にしたスクリーニング質問票としてPEST、ToPAS、PASE、EARPおよび日本語版のJ-EARPが紹介され、感度・特異度の検討が整理されています。

特にJ-EARPは日本人で検討され、高い感度・特異度が報告されている旨が述べられています。

スクリーニング運用の現場では、「陽性=確定」ではなく「紹介すべき患者の選別」に使うのが要点です。

質問票はコホート背景(乾癬重症度、筋骨格症状の有無、全身療法の有無)で性能が変わる点も指摘されており、スコアだけで診断を断定しない前提が必要です。

それでも陰性的中率が高いツールがあることは、見逃しを減らす設計として大きな価値があります。

臨床の工夫として、皮膚科・整形外科・リウマチ科の連携に「紹介基準の共通言語」を作ると、紹介の遅れを減らせます。

  • 例:乾癬患者で「朝のこわばり」「指趾炎疑い」「踵部痛(付着部炎疑い)」「原因不明の背部痛(体軸病変疑い)」があれば質問票を実施し、一定以上ならリウマチ医へ。​
  • 例:皮膚の活動性が軽度でも、爪所見+指趾炎/付着部炎があればPsAを強く疑う。​

乾癬性関節炎の独自視点:感染症と併存症で変わる治療順序

EULAR 2023 updateでは、薬剤選択は筋骨格病変だけでなく、皮膚病変、ぶどう膜炎、IBDなどの“筋骨格以外の臨床像”を反映させるべきだと明確に述べています。

これは裏返すと、同じ関節所見でも併存症評価が甘いと、ガイドライン上は妥当でも患者にとって不利な選択になり得る、ということです。

つまり「治療アルゴリズム」は直線ではなく、併存症で分岐する“条件付きフローチャート”として運用するのが実務的です。

意外性のある話題として、乾癬患者に対する生物学的製剤の種類が「炎症性関節炎(広い意味での関節炎)発症のタイミング」に影響し得る可能性を示した後ろ向き研究が紹介されています。

参考)乾癬の生物学的免疫製剤治療と炎症性関節炎の発症期間との関係の…

この研究では、IL-12/23阻害薬やIL-23阻害薬で炎症性関節炎の発症リスクや時期に差が出た可能性が述べられていますが、後ろ向き研究であり今後の確認が必要とされています。

臨床での使い方としては「確定的に予防できる」と患者に断言する材料ではなく、「乾癬治療薬の選択が関節にも影響し得るため、関節症状の問診を治療中も継続する」根拠として扱うのが安全です。

また、国内ガイドラインは免責事項として、最終判断は患者の価値観や希望も反映し協働して行うべきで、ガイドライン記載が添付文書の禁忌・慎重投与を免除するものではない点を明記しています。

この一文をチームで共有しておくと、感染症リスクや妊娠・授乳、ワクチン、合併症で迷ったときに「ガイドラインに書いてあるから」ではなく「患者条件で適応を再評価する」文化が作りやすくなります。

結果として、治療強化のタイミングと安全性評価が同じレイヤーで議論でき、診療の質が安定します。

必要に応じて、権威性のある日本語の参考リンク(診断・評価・国内事情の確認)。

国内の診断・病型・CASPAR・評価指標・スクリーニング質問票の位置づけまで一括で確認(一次資料PDF)

日本皮膚科学会:乾癬性関節炎診療ガイドライン2019(PDF)

必要に応じて、権威性のある参考リンク(最新推奨の原著)。

EULAR 2023 updateの治療推奨(csDMARD→bDMARD、皮膚優位時のIL-23/IL-17選好、JAKの位置づけ等)

EULAR recommendations for the management of psoriatic arthritis with pharmacological therapies: 2023 update

必要に応じて、関連論文(治療目標=T2Tの一次資料)。

PsAでの寛解/MDAなどを治療目標として扱うT2T推奨の背景

Treating axial spondyloarthritis and peripheral spondyloarthritis, especially psoriatic arthritis, to target: 2017 update

炎症性腸疾患関連関節炎と診断と治療

炎症性腸疾患関連関節炎:臨床で迷いにくくする要点
🧭

まず「末梢性」か「体軸性」か

下肢の大関節中心の腫脹・疼痛(末梢)か、運動で改善する腰痛・臀部痛(体軸)かを最初に整理すると、鑑別・検査・治療が一気に組み立てやすくなります。

🧪

「決め手の検査」はない

特別な診断基準や単独で確定できる検査はなく、病歴・身体所見・画像・炎症反応を総合評価します。HLA-B27は補助情報で、単独では診断できません。

💊

薬の選択は腸と関節を同時に見る

TNF阻害薬は腸疾患と関節症状の両方に効きうる一方、NSAIDsやIL-17阻害薬は腸症状悪化に注意が必要です。消化器内科×リウマチの連携が安全性を上げます。

炎症性腸疾患関連関節炎の症状:末梢性関節炎と体軸性関節炎

炎症性腸疾患関連関節炎は、潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患(IBD)に合併する関節炎で、現在は「脊椎関節炎(spondyloarthritis)」の枠組みで理解されます。腸の病勢と関節症状が同調するケースもあれば、必ずしも一致しないケースもあり、そこが臨床判断を難しくします(特に「痛みだけ」が先行する場合)。メディカルノートでも、下肢に症状が出やすいこと、手・背骨・仙腸関節に及ぶことがあること、腸症状より先に関節炎が現れる場合があることが整理されています。

まず押さえるべきは「末梢性関節炎」と「体軸性関節炎」の二分です。末梢性関節炎は、膝・足関節など下肢の大関節に出やすい少数関節炎(5関節未満)と、手指関節を含めて5か所以上に及ぶ多発関節炎に分けて考えると病像が明確になります。

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3649644/

一方で体軸性関節炎は、脊椎や仙腸関節が中心となり、腰痛が「運動で改善する」点が重要な問診ポイントです。重症化すると靱帯の骨化などで可動域低下が進み、日常生活動作の障害に直結するため、早期に“炎症性腰痛”の特徴を拾う必要があります。

意外と見落とされやすいのが、関節リウマチ(RA)との「見た目の近さ」と「結末の違い」です。慶應の解説では、IBDに伴う関節炎はRAと異なり通常は骨破壊を来しにくいことが述べられており、X線で侵食が乏しいのに腫脹が強い例では本疾患を疑う根拠になります。

また、末梢型はよくなったり悪くなったりする揺らぎがあり、腸炎の増悪に連動することも“しばしば”あるため、「腸が落ち着けば関節も落ち着く」タイプかどうかを、経過で確認する姿勢が重要です。

炎症性腸疾患関連関節炎の検査:CRPとMRIとHLA-B27

炎症性腸疾患関連関節炎は、診断を一発で決める特別な検査や診断基準がない点が最大の落とし穴です。メディカルノートおよび慶應KOMPASはいずれも「経過の丁寧な聴取」と「身体所見」が中心であることを明言しており、ここを省くと検査の解釈がぶれます。

実臨床では、関節炎の“炎症の存在”と“部位の特定”のために、血液検査(CRPや赤沈)と画像検査(X線やMRI)を組み合わせる流れが現実的です。

画像の使いどころは、末梢関節よりも体軸病変(特に仙腸関節炎)で価値が上がります。慶應KOMPASでも仙腸関節炎が体軸性の代表とされ、慢性(3か月以上)・緩徐発症・運動で改善・安静で改善しない腰痛/臀部痛を特徴として挙げています。これに合致する場合、単なる腰痛としてNSAIDsだけで引っ張るより、早期に仙腸関節を意識した評価(MRIを含む)に進める方が安全です。

また関節症状が先行し、まだIBDの診断がついていない場合には、便検査や大腸内視鏡が診断に使われることがある点も重要です。つまり「関節炎の診療」から「腸の精査」に橋を架ける場面が実際に起こり得ます。

HLA-B27は“使い方”が問われる検査です。メディカルノートではHLA-B27は診断の補助になるが「持っているからといって必ず診断されるものではない」とされ、慶應KOMPASでも「参考になるが、それのみで診断できず、保険適用もない」と整理されています。

さらに、メディカルノートでは海外でIBD関連関節炎にHLA-B27陽性が多い報告がある一方、日本人ではそもそもHLA-B27保有率が低く影響が明確でないと述べています。ここは「海外データの感覚」で過度に期待しない、という意味で臨床的に意外な落とし穴です。

炎症性腸疾患関連関節炎の治療:TNF阻害薬とNSAIDs

治療は「関節だけを叩く」よりも、「腸の炎症を制御して関節を落ち着かせる」発想が基本になります。メディカルノートと慶應KOMPASはいずれも、IBD治療を強化することが関節炎の改善につながりうることを述べており、腸管病変のコントロールが治療の土台です。

一方で、関節炎そのものに対する治療法は確立されていない(少なくとも記事掲載時点)とも明記されているため、エビデンスの強弱と臨床の現実を分けて説明できることが医療従事者向け記事では重要です。

薬剤ではTNF阻害薬が中心に置かれます。メディカルノートでは、TNF阻害薬が関節リウマチで有効でありIBD関連関節炎でも注目され、インフリキシマブアダリムマブ・ゴリムマブは潰瘍性大腸炎クローン病の両方で保険適用があり効果が期待される、と具体名まで挙げられています。

慶應KOMPASでも、インフリキシマブとアダリムマブが潰瘍性大腸炎・クローン病の双方で保険適用であり、関節リウマチにも効果があるためIBDに伴う関節炎にも効果が期待されると説明されています。

臨床的なポイントは「腸と関節の両適応を同時に満たす選択肢」を優先しやすい点で、消化器内科とリウマチ科でゴール(寛解導入、寛解維持、疼痛と機能)を共有しやすくなります。

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4331233/

一方、NSAIDsは“必要だが怖い”薬になりやすい領域です。メディカルノートではNSAIDsは腸症状を悪化させる可能性があるが鎮痛薬として用いられることがあると述べています。

また、日本語の医療者向け記事でも「IBD患者にNSAIDsを使うと腸の症状を悪化させる可能性がある」と注意喚起されており、短期・最小限・病勢モニタリングという運用設計が欠かせません。

参考)診療科や職種を越えた連携が進むIBD治療2回目

実務では「炎症を抑える目的の漫然投与」を避け、疼痛コントロールの位置づけを明確化し、腸管症状(下痢、血便、腹痛)をセットで確認する運用が安全です。

炎症性腸疾患関連関節炎の注意:IL-17阻害薬と腸症状増悪

IBD関連関節炎で“やってはいけない(あるいは慎重にすべき)”話題として、IL-17阻害薬があります。メディカルノートは、IL-17阻害薬が炎症性腸疾患を増悪させることがあり注意が必要と明記しており、関節症状の強さだけで薬剤選択を進める危険性を示しています。

この点は、脊椎関節炎全体の治療を知っている医療者ほど「体軸の炎症ならIL-17」という短絡が起こり得るため、IBDが背景にある場合は一段ブレーキを踏む必要があります。

なぜ注意が必要かについては、より専門的には「腸管でのIL-17の役割」と「阻害によるパラドキシカルな消化管イベント」が論じられています。BMJのレビューでは、IL-17阻害薬は乾癬・乾癬性関節炎・強直性脊椎炎などで用いられる一方、IBDでは増悪などの“paradoxical events”が問題となり承認に至らなかった経緯がまとめられています。

参考)https://ard.bmj.com/content/79/9/1132

臨床現場での落とし穴は「既にIBDがある患者」だけでなく、「下痢などの消化器症状が軽く、未診断のIBDが潜んでいる患者」にも波及する点で、問診で便通異常や血便の有無を確認する価値が上がります。

さらに、IBD関連関節炎は“腸と関節の共通病態”として理解され、サイトカイン標的治療の選択が症状の片側だけを悪化させる可能性があります。実際、IBDと脊椎関節炎が併存し得ること、両者が治療戦略に影響することは、総説でも繰り返し強調されています。pmc.ncbi.nlm.nih+1​

医療従事者向けに重要なのは、患者説明で「関節に効く薬でも腸が悪化することがある」という直感に反する点を、事前に共有しておくことです(副作用の理解不足はアドヒアランス低下につながりやすい)。

参考(病態と治療の“注意点”がまとまっている英語総説。腸管外合併症としての関節病変の位置づけを整理する部分の補強に有用)。

Management of arthropathy in inflammatory bowel diseases(IBDに合併する関節病変の分類と治療選択の概観)

炎症性腸疾患関連関節炎の独自視点:腸関節軸と微小炎症の拾い方

検索上位の解説は「症状・検査・治療薬」の枠に収まりがちですが、現場で差が出るのは“まだ病名が付いていない段階”での拾い上げです。IBD関連関節炎では、関節症状が腸症状より先に現れることがあると明記されており、整形外科・リウマチ外来が「最初の入口」になる可能性があります。

そのため、関節炎を診る側が「最近の下痢」「血便」「腹痛」「体重減少」「家族歴」など、消化器の赤旗を1分で確認するだけで、診断までの遅れを短縮できる余地があります。

もう一つの“意外な盲点”は、炎症の座が関節だけでなく付着部(enthesis)にあることです。慶應KOMPASは、反応性関節炎の説明の中で腱付着部炎(アキレス腱付着部、足底腱膜付着部など)が起こり得ることを挙げており、脊椎関節炎スペクトラムの臨床像として示唆に富みます。

IBD関連関節炎でも、関節の腫脹が目立たないのに踵痛が強い、朝の一歩目が痛い、といった訴えがある場合は「足底腱膜付着部」や「アキレス腱付着部」の炎症を疑い、単なる足底筋膜炎として片づけない視点が役立ちます。mdpi+1​

さらに近年は「腸関節軸(gut–joint axis)」として、腸内細菌叢、腸管バリア、炎症性サイトカイン、免疫細胞のトラフィッキングなどが関節炎と腸炎の両方に関わるという概念が整理されています。総説では、腸内細菌叢の乱れと代謝産物、腸管透過性(いわゆるleaky gut)を介した炎症性分子の全身波及などが論じられ、腸の状態が関節炎の土台に影響し得ることが示唆されています。

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10970477/

ここから得られる実務的示唆は、「関節が痛い=関節の問題」と決めつけず、腸管症状の微妙な変化を追うことが、関節炎の再燃予測や治療反応の評価にもつながる可能性がある点です。pmc.ncbi.nlm.nih+1​

最後に、医療連携は“理想論”ではなく治療安全性の一部です。IBDに合併する関節病変の治療は消化器内科とリウマチ科の協力が必要と総説でも述べられており、薬剤の選択(NSAIDsの扱い、分子標的薬の選び方)やモニタリング(腸症状の増悪サイン)を分担する意味があります。

慶應KOMPASでも、消化器内科と協力して診療にあたっていることが記載されており、大学病院レベルでも連携が前提になっていることが分かります。

参考(日本語で、診断が「病歴と所見の総合評価」である点、末梢性/体軸性の分け方、RAとの違いがまとまっている)。

慶應義塾大学病院KOMPAS:反応性関節炎、炎症性腸疾患に伴う関節炎

参考(日本語で、NSAIDsやIL-17阻害薬の注意、TNF阻害薬の具体名、関節症状先行など臨床で使う論点が一ページにまとまっている)。

メディカルノート:炎症性腸疾患関連関節炎

乾癬性関節炎と乾癬の臨床管理