hdlコレステロール高い100以上の病態と診断
hdlコレステロール正常値と高値の基準
HDLコレステロールの基準値は、一般的に男性40mg/dL以上、女性40mg/dL以上とされており、60mg/dL以上では心血管疾患のリスクが低いとされています 。しかし、100mg/dL以上の場合は高HDLコレステロール血症と診断され、これまでの「高ければ高いほど良い」という常識が覆される状況が明らかになっています 。
参考)https://hoken.kakaku.com/health_check/hdl_cholesterol/
近年の研究では、HDLコレステロールが100mg/dL以上になると心血管リスクが高まることが判明しており、特に90mg/dL以上の著明な高HDLコレステロール血症は動脈硬化性疾患による死亡の高リスク群である可能性が示されています 。この現象は「HDL paradox」と呼ばれ、医療従事者にとって重要な知見となっています。
参考)https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=20938
女性は男性よりもHDLコレステロール値が約10mg/dL高く、これは女性ホルモンのエストロゲンがHDLコレステロールの産生を促進するためです 。
参考)男女の検査値の違いについて[ラボ NO.435(2015.4…
hdlコレステロールが高い原因となるCETP欠損症
HDLコレステロール高値の最も重要な原因は、CETP(コレステリルエステル転送蛋白)欠損症です 。この疾患は1980年代に日本で発見された常染色体性優性遺伝の脂質代謝異常症で、血清HDLコレステロールが著明に増加する一方でLDLの質的異常を来します。
参考)コレステリルエステル転送蛋白(CETP)欠損症(平成21年度…
CETP欠損症の有病率は、ホモ接合体が数万人に一人、ヘテロ接合体が50人に一人と推定されており、特に日本人に多い疾患です 。ホモ接合体では150-250mg/dL、ヘテロ接合体では50-150mg/dLのHDLコレステロール値を呈します。
症例報告では、急性心筋梗塞を発症したCETP欠損症患者において、HDL-C 134mg/dL、CETP 1.4μg/mLと低値を示し、CETP欠損症が原因と診断された例があります 。この症例は、HDLコレステロールが100mg/dL以上の場合にCETP欠損症を考慮する必要性を示しており、CETP欠損症ではHDL-C高値が冠危険因子となる可能性があることを警告しています。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/shinzo/48/12/48_1400/_pdf/-char/ja
hdlコレステロール高い原発性胆汁性胆管炎の特徴
原発性胆汁性胆管炎(PBC)は、HDLコレステロール高値を示すもう一つの重要な疾患です 。肝臓内の細い胆管が炎症を起こす病気で、胆汁の流れが阻害されることで血中コレステロールが上昇し、特に善玉コレステロールであるHDLコレステロールが主体的に増加します 。
参考)HDLコレステロール値が高いとどうなる?健康への影響や原因を…
PBCの特徴的な症状として、目の周りに脂肪が沈着する眼瞼黄色腫が現れることがあり、これは血中コレステロール上昇の結果として生じます 。また、胆汁が滞ることでビタミンDの吸収が妨げられ、特に女性では骨粗鬆症になりやすくなります 。
参考)高松市で原発性胆汁性胆管炎(PBC)の治療なら|屋島おおはら…
原発性胆汁性胆管炎を放置すると症状は悪化し、肝硬変や肝不全などの重篤な合併症につながるリスクがあります 。現在は完治する治療法がないため、症状の緩和や進行を遅らせる治療が主体となっています。
hdlコレステロール高値と大量飲酒の関連性
慢性的な大量飲酒も、HDLコレステロール高値の重要な原因の一つです 。アルコールはCETP蛋白や活性を低下させることが明らかになっており、この機序によってHDLコレステロールが上昇します。
長期間にわたる大量飲酒は、肝機能障害を伴いながらHDLコレステロール値を異常高値まで押し上げることがあります 。医療従事者は、HDLコレステロール高値の患者において飲酒歴の詳細な聴取が重要であることを認識する必要があります。
アルコール性肝障害の進行とともに、HDLコレステロールの質的変化も生じ、本来の抗動脈硬化作用が損なわれる可能性が指摘されています。このような質の悪いHDLコレステロールが多いことが、高HDLコレステロール血症における心血管リスク上昇の一因として考えられています 。
参考)脂質異常症|中野駅前内科クリニック糖尿病・内分泌内科|中野区
hdlコレステロール100以上の治療方針と予後
HDLコレステロール100mg/dL以上の患者に対する治療方針は、基礎疾患によって大きく異なります 。CETP欠損症の場合、現在のところ特異的治療法はなく、他の冠危険因子の管理が重要となります 。
参考)コレステロール|検診結果の見方|東京千住・尚視会クリニック …
原発性胆汁性胆管炎が原因の場合、ウルソデオキシコール酸による治療が基本となり、進行抑制と症状改善を図ります 。また、食事療法・運動療法・薬物療法も併せて行う必要があります 。
近年の疫学研究では、非常に高いHDL-C値(80mg/dL以上)と全死因死亡率との間に逆説的な関連性が報告されており、特に男性でこの傾向が強いことが示されています 。このため、HDLコレステロール100mg/dL以上の患者では、冠動脈疾患・その他の危険因子の有無を確認し、原因の精密検査を行う必要があります。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9118072/
医療従事者は、HDLコレステロール高値が必ずしも心血管保護的ではないことを理解し、患者の総合的なリスク評価と個別化された治療戦略の策定が求められます 。