h2ブロッカー一覧と作用機序の医療従事者ガイド

h2ブロッカー一覧の作用機序と薬剤分類

H2ブロッカーの基本情報
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作用機序

胃壁細胞のヒスタミンH2受容体を競合的に拮抗し胃酸分泌を強力に抑制

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薬理分類

ヒスタミンH2受容体拮抗薬として胃酸関連疾患の第一選択薬

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適応症

消化性潰瘍、逆流性食道炎、急性胃炎の治療に幅広く使用

h2ブロッカー主要薬剤の種類と特徴

h2ブロッカー(ヒスタミンH2受容体拮抗薬)は胃壁細胞のヒスタミンH2受容体を競合的に拮抗することで胃酸分泌を抑制する薬剤群です。現在日本で使用される主要な薬剤は以下の通りです。

参考)https://www.pharm.or.jp/words/word00059.html

薬剤名 一般名 商品名例 特徴
シメチジン cimetidine タガメット 最初のH2ブロッカー、薬物相互作用が多い
ファモチジン famotidine ガスター 副作用が少なく、OTC薬としても使用
ニザチジン nizatidine アシノン 胃運動促進作用と唾液分泌促進作用を併せ持つ
ラフチジン lafutidine プロテカジン 胃粘液増加作用により粘膜保護効果が高い
ロキサチジンアセタート roxatidine acetate アルタット 胃酸分泌抑制と胃粘膜保護の両作用

最も注目すべき特徴は、各薬剤が単なる胃酸分泌抑制を超えた独自の薬理作用を持つことです。

参考)商品一覧 : ヒスタミンH2受容体拮抗薬

h2ブロッカーのシメチジンとファモチジンの比較分析

シメチジン(タガメット)は1976年に世界初のH2ブロッカーとして登場し、消化性潰瘍治療に革命をもたらしました。胃酸分泌細胞のH2受容体を遮断して胃酸分泌を抑制しますが、シトクロムP450酵素系を阻害するため薬物相互作用が多いのが特徴です。

参考)ヒスタミンH2受容体拮抗薬 – Wikipedia

一方、ファモチジン(ガスター)はシメチジンと比較して副作用が少なく、薬物相互作用も最小限に抑えられています。ファモチジンは壁細胞のH2受容体に選択的に結合し、ヒスタミンだけでなくガストリンやアセチルコリンによる胃酸分泌も抑制します。
薬価の観点から見ると、ファモチジンの後発品は先発品と比較して約20-30%コストが削減されており、医療経済性に優れています。また、ファモチジンは一般用医薬品(OTC)としても販売されており、軽度の胃症状に対するセルフメディケーションに活用されています。

参考)医薬品-医薬品一覧-胃腸薬-H2ブロッカー薬 – 1ページ目

h2ブロッカーのニザチジン独自作用機序

ニザチジン(アシノン)は他のH2ブロッカーとは異なる特徴的な薬理作用を持ちます。従来の胃酸分泌抑制作用に加えて、トリプルアクションと呼ばれる3つの独自作用を発揮します。

参考)302 Found

まず胃運動促進作用により、胃内容物の排出を促進し、胃もたれ感の改善に寄与します。これは機能性ディスペプシアの症状改善に特に有効です。

参考)くすりのしおり : 患者向け情報

次に唾液分泌促進作用により、口腔乾燥症状の改善効果が報告されています。この作用は高齢者の服薬支援においても重要な意味を持ちます。

参考)ニザチジン (アシノンhref=”https://www.jstage.jst.go.jp/article/stomatopharyngology1989/17/1/17_1_101/_article/-char/ja/” target=”_blank” rel=”noopener”>https://www.jstage.jst.go.jp/article/stomatopharyngology1989/17/1/17_1_101/_article/-char/ja/amp;reg;) による口腔乾燥症の治療

抗男性ホルモン作用がシメチジンと比較して著明に少ないため、長期投与時の内分泌系副作用のリスクが低減されています。ニザチジンの胃酸抑制力はシメチジンの数倍強く、臨床試験では高い治療効果が確認されています。

参考)胸やけ・胃もたれがつらい…そんなときの薬『アシノン』とは?

h2ブロッカーのラフチジンとロキサチジンアセタートの胃粘膜保護作用

ラフチジン(プロテカジン)は胃酸分泌抑制作用に加えて、胃粘液増加作用という独特な薬理作用を持ちます。この作用により単なる胃酸中和ではなく、胃粘膜の積極的な保護効果を発揮します。

参考)プロテカジン錠(ラフチジン)に含まれている成分や効果、副作用…

ラフチジンは酸分泌抑制用量で胃粘液増加作用を示すため、胃酸による直接的な粘膜傷害を防ぐとともに、粘膜のバリア機能を強化します。このため消化性潰瘍の治療において、治癒促進効果が期待されます。

参考)302 Found

ロキサチジンアセタート(アルタット)は経口投与において95%以上の高い吸収率を有し、血漿中の活性本体であるロキサチジンは主として尿中に排泄されます。ロキサチジンの血清蛋白との結合率は約9%と低く、薬物相互作用のリスクが最小限に抑えられています。

参考)https://www.pmda.go.jp/drugs/2011/P201100027/470007000_16100AMZ03538000_B101_2.pdf

腎機能との関係において、ロキサチジンの血漿中からの消失は腎機能(クレアチニンクリアランス)に依存するため、腎機能低下患者では用量調整が必要です。クレアチニンクリアランス30mL/min以下では半減期が12時間以上に延長するため、慎重な投与が求められます。

参考)医療用医薬品 : アルタット (アルタット静注用75mg)

h2ブロッカー一覧における医療現場での適応外使用法

医療現場では、H2ブロッカーの適応症以外での活用も注目されています。麻酔前投薬としてのラフチジンの使用は、手術時の誤嚥性肺炎リスクを軽減する目的で行われます。これは胃内容物のpH上昇により、誤嚥時の肺組織への損傷を軽減する効果が期待されるためです。
ニザチジンの口腔乾燥症治療への応用は、唾液分泌促進作用を活用した独特な使用法です。高齢者や放射線治療後の患者における口腔乾燥症状に対して、従来の人工唾液に代わる治療選択肢として活用されています。
パーキンソン病患者における消化管運動機能障害に対するニザチジンの効果も報告されており、胃運動促進作用が消化管症状の改善に寄与する可能性が示唆されています。

参考)https://www.semanticscholar.org/paper/40843a4066fe94b83381fbd8a764be81a4888cf7

医療従事者が注意すべき点として、プロトンポンプ阻害薬(PPI)との使い分けが重要です。PPIは強力な胃酸分泌抑制作用を示しますが、H2ブロッカーは中等度の抑制作用で十分な症例や、PPI投与が困難な患者において有効な選択肢となります。特に日本人の胃酸分泌能は欧米人と比較して低いため、H2ブロッカーでも十分な治療効果が期待できる症例が多いとされています。

参考)https://midori-hp.or.jp/pharmacy-blog/web20220819