ドンペリドン先発とナウゼリン錠と薬価

ドンペリドン先発

ドンペリドン先発(ナウゼリン錠)を臨床で迷わないための要点
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まず押さえる適応と用法用量

添付文書に沿って、どの症状・背景で使う薬か、どこが“外しやすい”ポイントかを整理します。

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QT延長と相互作用が核

心疾患、高齢、併用薬(CYP3A4阻害薬など)でリスクが跳ね上がるため、処方前チェックが重要です。

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先発・後発の差は“選び方”に出る

薬価や剤形だけでなく、患者背景・服薬継続性・院内運用まで含めて最適解を作ります。

ドンペリドン先発のナウゼリン錠と効能又は効果

 

ドンペリドンは消化管運動改善剤として、悪心・嘔吐、食欲不振、腹部膨満、上腹部不快感、腹痛、胸やけ、あい気などの消化器症状を対象に位置づけられています。

添付文書(JAPIC PINS)では、成人の対象として慢性胃炎、胃下垂症、胃切除後症候群に伴う消化器症状、さらに抗悪性腫瘍剤またはレボドパ製剤投与時の消化器症状が明記されています。

一方で、臨床現場では「胃もたれ=とりあえずドンペリドン」といった短絡が起こりやすく、適応疾患・原因薬剤の整理が不十分なまま漫然投与に流れやすい点が落とし穴です。添付文書上も「有効性と安全性を十分考慮のうえ使用する」旨が重要な基本的注意として書かれており、制吐・運動改善のベネフィットが見込める病態仮説(胃内容うっ滞、薬剤性悪心など)を先に立てる運用が安全です。

また、ドンペリドンはCTZ(化学受容器引き金帯)にも作用し、抗ドパミン作用で薬効を発現するとされていますが、血液脳関門を通過しにくい性質も薬物動態として示されています。中枢移行が少ない=絶対に中枢性副作用が出ない、ではないため、小児や高齢、併用薬が多い症例では“少ないはず”の前提を捨てて観察設計を置くのが実務的です。

添付文書(JAPIC PINS)

ドンペリドン先発の用法及び用量と食前投与

添付文書では成人は通常、ドンペリドンとして1回10mgを1日3回食前に経口投与とされ、レボドパ製剤投与時には1回5~10mgを同様に1日3回食前投与と記載されています。添付文書(JAPIC PINS)小児は1日1.0~2.0mg/kgを1日3回食前に分割し、1日投与量30mgを超えないこと、さらに6才以上では1日最高用量を1.0mg/kgに制限する注意が示されています。
添付文書(JAPIC PINS)

「食前」が指定されている理由は、運動改善薬として“胃の内容排出・協調運動”の改善が主目的になる場面が多いからで、食後の症状を狙うほど投与タイミングが重要になります。添付文書の薬効薬理には胃運動促進、胃・十二指腸協調運動促進、胃排出能の正常化、下部食道括約部圧(LESP)上昇作用などが列記されており、症状の出現タイミングと投与設計(食前・食後・頓用の可否)は“患者の一日の症状曲線”に合わせて最適化しやすい薬です。

添付文書(JAPIC PINS)

ただし、処方運用では「朝昼夕食前で固定」「長期継続で惰性」という形に陥ると、後述のQT延長リスクや相互作用リスクが“積み上がるだけ”になりかねません。特に消化器症状が非特異的なとき(感染性胃腸炎初期、胆道系、腸閉塞手前、薬剤性など)には、短期での反応評価→中止・変更の意思決定をプロトコル化するだけで安全性が上がります。

添付文書(JAPIC PINS)

ドンペリドン先発のQT延長と禁忌とCYP3A4

ドンペリドンは心血管安全性が最大の論点で、添付文書でも心疾患のある患者では「QT延長があらわれるおそれがある」と明確に注意喚起されています。添付文書(JAPIC PINS)さらに「外国において重篤な心室性不整脈及び突然死が報告」され、高用量投与や高齢者でリスク増加が報告されている点も“その他の注意”として記載されています。
添付文書(JAPIC PINS)
相互作用の核はCYP3A4です。添付文書では本剤が主にCYP3A4で代謝されること、CYP3A4阻害剤(イトラコナゾール、エリスロマイシン等)で血中濃度が上昇し、エリスロマイシン併用ではQT延長が報告されていることが記載されています。添付文書(JAPIC PINS)実際に、エリスロマイシン併用試験でQT延長が観察されたデータが薬物動態・相互作用の項に掲載されており、“理屈として危ない”だけでなく、ヒトでの信号が示されている点が重要です。
添付文書(JAPIC PINS)
意外に見落とされがちなのは、制酸剤、H2受容体拮抗剤、PPIで本剤の効果が減弱し得るため投与時間を考慮する、という実務寄りの相互作用です。添付文書(JAPIC PINS)“QT延長だけ見ていればOK”ではなく、「効きが悪い→増量したい」という方向に臨床が動いたとき、結果的にリスクが増える構図を作り得るため、併用薬の目的(胃酸関連症状の治療なのか、NSAIDs胃粘膜保護なのか)も含めて整理しておくと安全です。
添付文書(JAPIC PINS)

ドンペリドン先発と後発品と薬価

医療現場の検索実務では「ドンペリドン先発=ナウゼリン(協和キリン)」という対応関係をまず押さえるのが近道で、医薬品データベース上でもドンペリドン錠の先発品としてナウゼリン錠が示されています。例えば、沢井製薬の製品ページでも、ドンペリドン錠(後発品)に対して先発品としてナウゼリン錠(同規格)が併記され、薬価情報とあわせて参照可能です。

沢井製薬:ドンペリドン錠5mg「サワイ」

ただし、先発・後発の“臨床上の本質”は、成分が同じであれば効能効果・用法用量は原則同等(承認範囲内)で、差が出やすいのは運用面(採用規格、剤形、供給、院内マスター、疑義照会の頻度、患者の識別性)です。添付文書にも、生物学的同等性試験としてナウゼリン錠10と後発品(例:EMEC 10mg)が同等性確認された旨が記載されており、少なくともBEの枠組みでは置換の根拠が示されています。

添付文書(JAPIC PINS)

薬価差は施設経営・患者負担に直結する一方、ドンペリドンは相互作用やQT延長など安全性注意点が目立つ薬でもあるため、「採用を安くまとめる」だけでなく「処方前チェックを簡素化する設計(例:併用禁忌・注意の院内アラート、疑義照会のルール)」まで含めた“トータルの安全コスト”で評価するのが医療安全の観点では合理的です。薬剤部・医療情報システムと連携して、CYP3A4阻害薬やQT延長リスク薬の併用アラートを整備すると、先発・後発どちらを選んでも安全性の底上げができます。

添付文書(JAPIC PINS)

ドンペリドン先発の独自視点:スイッチOTC否と漫然処方

意外性があり、かつ医療従事者の実務に刺さる論点として「ドンペリドンはスイッチOTC化が“否”と判断された経緯」を知っておくと、漫然処方の危うさをチーム内で共有しやすくなります。厚生労働省の資料では、妊婦が禁忌となる薬剤であること、妊娠を自覚する前に内服される可能性があること、さらに海外で重篤な心室性不整脈突然死の報告があり注意喚起されていることが、OTC化のリスク要因として整理されています。

厚生労働省:資料2-1(スイッチOTC検討)

この資料は「医療用では使ってよいが、市販薬としてはリスク管理が難しい」という線引きを示しており、裏返せば医療用で使う際には“リスク管理ができている前提”で処方されるべき薬、というメッセージにもなります。つまり、病歴(心疾患の有無)、年齢、併用薬(QT延長リスク薬、CYP3A4阻害薬)、妊娠可能性など、チェックすべき変数を確認せずに処方を継続することは、制度上も安全性上もギャップが大きい運用です。

厚生労働省:資料2-1(スイッチOTC検討)

臨床での実装アイデアとしては、長期処方になりやすい患者(慢性胃炎など)ほど「7日〜14日で一旦評価」や「継続時は併用薬棚卸し(特にマクロライドアゾール系、抗精神病薬など)」をルール化するのが有効です。添付文書でも高齢者は減量などの注意が求められ、心疾患ではQT延長リスクが明記されているため、漫然投与を“仕組みで止める”のが最も再現性が高い対策になります。

添付文書(JAPIC PINS)
意外情報(国内制度の背景・安全性の論点):https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/000788127.pdf
添付文書ベースで禁忌・用法用量・相互作用・QT延長を確認(実務で最重要):https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00060017.pdf

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