医師の賠償責任保険を比較 保険料や特徴、加入について

医師の賠償責任保険を比較

医師賠償責任保険の主なポイント

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保険料の差

年齢や経験年数によって最適な保険会社が異なります

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補償内容の違い

支払限度額や特約内容を確認することが重要です

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加入手続きの簡便さ

オンライン申込可能な保険もあり、利便性に差があります

医師賠償責任保険は、医療行為によって患者に損害を与えてしまった場合に備える保険です。近年、医療訴訟の増加に伴い、多くの医師がリスク対策として加入を検討しています。この記事では、主要な医師賠償責任保険の保険料や補償内容を比較し、医師のキャリアステージに応じた最適な選択肢を紹介します。

医師の賠償責任保険の種類と基本知識

医師賠償責任保険には主に3種類あります。

  1. 日本医師会医師賠償責任保険:日本医師会が運営する保険で、会員である開業医は自動的に加入します。判定機構が医師の責任を公正に判断し、高額賠償にも対応できる経済的保証を提供します。
  2. 病院賠償責任保険:病院やクリニックの開設者を対象とした保険です。医師や医療スタッフの医療行為が原因で患者に死亡や後遺症が発生した場合の損害賠償責任を補償します。
  3. 医師賠償責任保険(勤務医向け):勤務医個人が加入する保険で、医療上の過失により患者に障害が発生し、損害賠償請求を受けた場合に補償します。

医師賠償責任保険は任意加入ですが、訴訟リスクが高まる現代では、自身を守るための重要な防衛策となっています。特に勤務医が個人で加入するケースが増えている背景には、病院経営の厳しさから勤務医包括担保特約に加入しない病院が増えていることや、複数の医療機関でアルバイトする医師が増えていることが挙げられます。

医師の賠償責任保険の保険料を徹底比較

各団体が提供する医師賠償責任保険の保険料を比較してみましょう。保険料は主に補償限度額によって異なります。

1億円の補償限度額の場合の年間保険料比較

加入先 31歳以上 30歳以下 研修医
日本医師会 64,000円 39,000円 15,000円
民間医局 41,660円 41,660円 41,660円
各種学会 40,660円 40,660円 40,660円

2億円の補償限度額の場合の年間保険料比較

加入先 保険料
日本医師会 設定なし
民間医局 47,710円
各種学会 51,570円

3億円の補償限度額の場合の年間保険料比較

加入先 保険料
日本医師会 基本保険+特約保険20,000円
民間医局 53,360円
各種学会 62,480円

この比較から、年齢や経験年数によって最適な選択肢が異なることがわかります。30歳以下または卒後5年以内の若手医師は日本医師会の保険が最も経済的です。一方、31歳以上または卒後6年以上の医師には、民間医局の保険が総合的にお得と言えるでしょう。

医師の賠償責任保険の補償内容と特約の違い

保険料だけでなく、補償内容や特約の違いも重要な選択基準です。

日本医師会の医師賠償責任保険

  • 免責金額(自己負担額):0円(医師協同組合で別途4,000円程度)
  • 特徴:会員であれば自動加入、減免措置あり(卒後5年目まで30歳以下→15,000円、31歳以上→36,000円)
  • 特約:3億円の補償には別途特約保険(+20,000円)が必要

民間医局の医師賠償責任保険

  • 免責金額:0円(保険料に含まれる)
  • 特徴:常勤・非常勤を問わず、複数施設での勤務も補償対象
  • 特約:嘱託医等の医師活動賠償責任補償が自動セット
  • 団体割引:20%OFF適用
  • 申込方法:ネットで完結(印鑑や書類郵送不要)

各種学会の医師賠償責任保険

  • 特徴:所属学会によって内容が異なる
  • 特約:産業医・嘱託医特約は別途加入(+5,000円程度)

補償内容を比較すると、民間医局の保険は免責金額0円の特約や嘱託医活動の補償が自動セットされており、総合的な補償範囲が広いことがわかります。また、オンライン申込が可能で手続きの手間が少ないのも大きなメリットです。

医師の賠償責任保険の選び方と年齢別おすすめプラン

医師賠償責任保険を選ぶ際のポイントは、年齢、経験年数、勤務形態、必要な補償額です。年齢や経験年数別におすすめのプランをまとめました。

研修医・若手医師(30歳以下または卒後5年以内)

  • おすすめ:日本医師会の医師賠償責任保険
  • 理由:保険料が最も安く(15,000円)、基本的な補償が充実している
  • 注意点:日本医師会への入会が必要

中堅・ベテラン医師(31歳以上または卒後6年以上)

  • おすすめ:民間医局の医師賠償責任保険
  • 理由:保険料が比較的安く、補償内容が充実している
  • 特徴:複数施設での勤務も補償、手続きが簡便

高額補償を希望する医師(支払限度額2億円以上)

  • おすすめ:民間医局の医師賠償責任保険
  • 理由:2億円の補償で47,710円と、学会の提供する保険(51,570円)より安い
  • 特徴:3億円の補償でも53,360円と、学会の提供する保険(62,480円)より安い

勤務形態によっても最適な選択肢は変わります。複数の医療機関でアルバイトをしている場合は、すべての勤務先をカバーする民間医局の保険が便利です。一方、単一の医療機関で勤務している場合は、その病院の勤務医包括担保特約の有無を確認することも重要です。

医師の賠償責任保険と訴訟リスクの最新動向

医療訴訟は年々増加傾向にあり、医師個人が訴訟対象となるケースも増えています。最高裁判所のデータによると、医療訴訟の新受件数は増加傾向にあり、これに比例して医師賠償責任保険の需要も高まっています。

訴訟リスクが高まる背景には、以下のような要因があります。

  1. 患者の権利意識の向上
  2. 医療情報へのアクセスの容易さ
  3. 医療の高度化・複雑化による期待値の上昇
  4. SNSなどによる医療トラブルの可視化

このような状況下で、医師個人が訴訟リスクに備える必要性は高まっています。特に注目すべき点として、病院が勤務医包括担保特約に加入しなくなっているケースが増えていることが挙げられます。2000年頃までは多くの病院がこの特約の保険料を支払い、医師個人の訴訟リスクも負担していましたが、病院経営の厳しさから、この特約に加入しない病院が増えています。

また、働き方改革の影響で複数の医療機関でアルバイトする医師が増加しており、そのような場合に対応できる個人向け医師賠償責任保険の需要も高まっています。

医師の賠償責任保険に関するよくある質問と回答

医師賠償責任保険に関するよくある質問とその回答をまとめました。

Q1: 勤務医が個人で医師賠償責任保険に加入する必要はありますか?

A1: 勤務先の病院が勤務医包括担保特約に加入しているかどうかを確認しましょう。加入していない場合や、複数の医療機関でアルバイトをしている場合は、個人で加入することをおすすめします。

Q2: 医師賠償責任保険は確定申告で経費として計上できますか?

A2: 給与所得者(勤務医)の場合、一般的に必要経費として計上することはできません。ただし、医師が勤務医以外に自分で会社(労働衛生コンサルタント事務所等)を運営していて、産業医業務を事務所として請け負っている場合などは、青色申告することで必要経費とすることが可能な場合があります。

Q3: 美容医療も補償対象になりますか?

A3: 多くの医師賠償責任保険では、美容のみを目的とする医療行為は補償対象外となっています。美容医療を行う場合は、専門の保険に加入する必要があります。

Q4: 保険料は毎年変わりますか?

A4: 保険料は保険会社の判断や医療訴訟の状況などによって変動する可能性があります。毎年の更新時に確認することをおすすめします。

Q5: 学会や大学同窓会の保険と民間医局の保険はどちらがおすすめですか?

A5: 保険料や補償内容を比較すると、31歳以上または卒後6年以上の医師には民間医局の保険がおすすめです。申込みから更新までネット上で完結でき、免責金額0円や嘱託医活動の補償が自動セットされているなどのメリットがあります。

医師賠償責任保険は、医師としてのキャリアを守るための重要な防衛策です。自身の年齢、経験年数、勤務形態に合わせて最適な保険を選ぶことで、安心して医療に従事することができます。定期的に保険内容を見直し、自身のニーズに合った保険に加入することをおすすめします。

医師の賠償責任保険と産業医・嘱託医活動の関係性

近年、働き方改革の推進により、産業医や学校医などの嘱託医としての活動を行う医師が増えています。こうした活動も医師賠償責任保険の対象になるのか、確認しておく必要があります。

産業医・嘱託医活動に関する補償は、保険によって扱いが異なります。

  • 日本医師会の医師賠償責任保険:基本的に医療行為に関する補償が中心で、産業医・嘱託医活動については別途確認が必要です。
  • 民間医局の医師賠償責任保険:2025年現在、「嘱託医等の医師活動賠償責任補償」が自動でセットされています。これにより、産業医や学校医としての活動中に発生した賠償責任も補償対象となります。
  • 各種学会の医師賠償責任保険:多くの場合、産業医・嘱託医特約は別途加入(年間約5,000円)が必要です。

産業医・嘱託医活動では、健康診断結果の見落としや不適切な就業判定など、通常の診療とは異なるリスクが存在します。例えば、うつ病の兆候を見逃して過重労働を容認したことで従業員が自殺した場合など、重大な賠償責任を問われる可能性もあります。

このような背景から、産業医・嘱託医活動を行う医師は、その活動も補償対象となる保険を選ぶことが重要です。民間医局の医師賠償責任保険は、この点で優位性があると言えるでしょう。

初期研修医以外は、民間医局の保険は民間医局が最安でおすすめ。

医師賠償責任保険の保険料を比較

医師賠償責任保険は、団体加入保険が団体割引で保険料が20%引きになるため、お得。

  • 民間医局の保険
  • 日本医師会の保険
  • 日本医学会(日本外科学会、循環器内科学会など)の保険

民間医局などの、ネット登録だけで加入できる団体保険が登場してからは、個人加入保険は割高で、特に加入者側にメリットがありません。

民間医局の保険料

  • 民間医局への登録が必要(ウェブ登録可能)
  • 保険料に年齢による区別なし。研修医からベテラン医師まで全て同じ保険料
  • 1事故につき、5,000万円~3億円までの4プランあり
  • 保険料は業界最安。2億円プランで月額・約3,900円

プラン数と保険料の安さ、加入条件の易しさが特徴。研修医以外の一般勤務医は保険料が最安。

>>>民間医局の評判と登録

日本医師会の保険料

  • 日本医師会への加入が必要(有料・現在の医師の加入は50%ほど)
  • 保険料は、医師会の会費に含まれ、研修医、30歳以下の一般勤務医、30際以上の一般勤務医で金額が異なる。
  • 1事故につき1億円補償の1プランのみ。日医医賠責特約保険加入で補償を3億円に増額可能。
  • 保険料。支払い時には、免責金額100万円(自己負担金)
    • 研修医の保険料…医師会費・年15,000円(月1,250円)
    • 30歳以上…月約5,666円。免責金額は100万円。

医師会に入会=保険加入となっています。

研修医は最安で加入できますが、免責金額100万円がネック。保険が支払われたときにも100万円は自分で負担する必要があります。

>>>日本医師会医師賠償責任保険制度

日本医学会の保険料

  • 特定の日本医学会会員のみ加入可能
  • 保険料は、年齢に限らず保険料は同じ。
  • 1事故につき1億円、2億円、3億円の3プランあり。
  • 補償金額1億円、2億円、3億円の3プランあり。免責額なし。
    • 1億円プラン…40,660円(月約3,388円)
    • 2億円プラン…51,570円(月約4,294円)
    • 3億円プラン…62,400円(月約5,200円)

株式会社カイトーが取り扱っています。特定学会員のみ加入できるという点がネック。保険料は民間医局についで安いです。

対象の日本医学会は、以下の通り。

  • 日本脳神経外科学会
  • 日本整形外科学会
  • 日本眼科医会
  • 日本胸部外科学会
  • 日本神経学会
  • 日本糖尿病学会
  • 日本消化器内視鏡学会
  • 日本外科学会
  • 日本循環器学会
  • 日本消化器病学会
  • 日本産科婦人科学会

>>>医師賠償責任保険 | 株式会社カイトー

医師保険の補償金額はどのくらいが良い?

もちろん、補償額は多い方が良いに決まっていますが、保険料金との兼ね合いもあります。加入者がもっとも多いのは、1事故2億円の補償タイプ。全体の59%が2億円プランを選択されているようですね。

医療事故や医療紛争は、完全に避けることはできません。日医でも民間でも構わないのですが、医師賠償責任保険に加入しておくことが賢明と言えるでしょう。

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