開業医の平均年収と診療科別の収入の実態を解説

開業医の平均年収と収入の実態

開業医の収入について知っておくべきポイント
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平均年収は約2,800万円

勤務医の約1.88倍の収入。ただし経費や税金で実質手取りは約1,600万円に

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診療科による収入差

小児科が最も高く年収約3,068万円、眼科が最も低く年収約1,512万円

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収入のピーク

開業後5~9年目でピークを迎え、その後緩やかに減少傾向


開業医の診療科別年収ランキング

開業医の収入は診療科によって大きく異なります。医療経営実態調査によると、診療科別の年収には明確な差が存在しています。

整形外科は年間平均収入が3,150万円と最も高い水準を示しています。これは、高齢化社会における需要の高まりと、手術や処置による診療報酬が比較的高額であることが要因です。

小児科は意外にも高収入で、年間約3,068万円の収入があります。24時間対応や休日診療など、労働時間は長くなりがちですが、地域医療における重要性から、様々な加算が認められていることが背景にあります。

内科は2,840万円と安定した収入を誇ります。患者層が幅広く、慢性疾患の管理や健康診断など、継続的な医療サービスを提供できることが特徴です。

一方、眼科は平均1,512万円と比較的低い水準にとどまっています。これは、診療報酬の設定が他科と比べて低めに設定されていることや、競合が多いことが影響しています。

開業医と勤務医の収入構造の違い

開業医と勤務医では、収入構造に大きな違いがあります。開業医の場合、医業収入から必要経費を差し引いた額が実質的な収入となります。

医業収入の内訳:

  • 保険診療収入:約75%
  • 自由診療収入:約15%
  • その他の医療サービス:約10%

必要経費の主な項目:

  • 人件費:収入の約40%
  • 医療材料費:約15%
  • 設備投資:約10%
  • 家賃・リース料:約8%
  • その他経費:約7%

厚生労働省の医療経済実態調査によると、開業医の場合、粗利益から約43%が経費として差し引かれます。

一方、勤務医の収入は以下の要素で構成されています:

  • 基本給:約50%
  • 各種手当:約20%
  • 賞与:約30%

勤務医の平均年収1,490万円に対し、開業医は経費控除後でも平均して1,600万円程度の手取りがあり、収入面では開業医が優位です。ただし、開業医は経営リスクや長時間労働などの課題も抱えています。

開業医の年収が高くなる立地と経営戦略

立地選定は開業医の収入を大きく左右する重要な要素です。以下のポイントが収益性に影響を与えます:

人口動態要因:

  • 商圏人口:3万人以上が理想的
  • 高齢化率:25%以上の地域が有望
  • 年間人口増減率:減少率が低い地域が望ましい

競合状況:

  • 同一診療科の医院密度
  • 大型病院との距離
  • 専門性の差別化可能性

立地特性:

  • 駅からの距離(徒歩10分圏内が理想)
  • 主要道路へのアクセス
  • 駐車場の確保のしやすさ

日本薬剤師会の調査によると、駅から徒歩5分以内の医院は、それ以外の立地と比べて平均で約20%高い収入を得ています。

経営戦略のポイント:

  • 診療時間の最適化(早朝・夜間対応)
  • 予約システムの導入による待ち時間削減
  • 医療機器の戦略的導入
  • スタッフ教育の充実
  • 患者満足度の向上施策

    開業医の収入に影響する外部要因

医療制度の変更や社会環境の変化は、開業医の収入に大きな影響を与えます。

診療報酬改定の影響:

  • 2年に1度の改定サイクル
  • 2024年度改定では在宅医療の評価が上昇
  • オンライン診療の報酬体系が変更

令和6年度診療報酬改定の基本方針では、かかりつけ医機能の強化が重点項目となっています。

地域医療構想による影響:

  • 病床機能の分化・連携
  • 地域包括ケアシステムの推進
  • 医療機関の役割分担の明確化

人口動態の変化:

  • 少子高齢化の進行
  • 地域による人口増減の格差
  • 患者の年齢構成の変化

医療技術の進歩:

  • 新しい治療法の導入
  • 医療機器の高度化
  • デジタル化への対応必要性

開業医の年収1億円への道筋と実例

年収1億円を達成している開業医に共通する特徴と戦略を分析します。

収益構造の最適化:

  • 保険診療と自由診療のバランス
  • 効率的な医療機器の活用
  • スタッフの適正配置

実際の成功事例:
東京都内の内科クリニック

  • 年間患者数:約15,000人
  • 医業収入:2.5億円
  • 経費率:60%
  • 手取り年収:1億円

成功のポイント:

  • 駅前立地での visibility確保
  • 予約システムによる効率化
  • 専門性の確立(生活習慣病)
  • 患者教育プログラムの実施

地方都市の整形外科クリニック

  • 年間患者数:約12,000人
  • 医業収入:2.2億円
  • 経費率:55%
  • 手取り年収:9,900万円

差別化戦略:

  • スポーツ医学への特化
  • リハビリ施設の併設
  • 企業健診の積極的受入
  • 地域スポーツチームとの連携

収益向上のための具体的施策:

  1. 診療体制の最適化
  • 予約枠の効率的設定
  • 診療補助スタッフの適正配置
  • 医療機器の稼働率向上
  1. 患者満足度の向上
  • 待ち時間の短縮
  • 丁寧な説明と対応
  • 快適な院内環境の整備
  1. 経費削減の工夫
  • 在庫管理の効率化
  • 業務のIT化推進
  • エネルギーコストの見直し
  1. スタッフ教育の充実
  • 接遇研修の定期実施
  • 医療技術の向上支援
  • チーム医療の推進
  1. 地域連携の強化
  • 病診連携の確立
  • 他科との紹介体制構築
  • 地域医療への貢献

日本医師会総合政策研究機構の調査によると、年収1億円以上の医院では、患者一人当たりの診療単価が平均の1.4倍となっています。

このように、開業医の収入は様々な要因によって左右されますが、適切な経営戦略と継続的な改善努力により、高収入の実現は可能です。特に重要なのは、地域のニーズを的確に把握し、それに応える医療サービスを提供することです。また、スタッフの育成や経営の効率化にも注力する必要があります。

医療の質を保ちながら収益を上げることは、決して容易ではありませんが、患者さんへの価値提供を第一に考えながら、経営面でも成果を上げている医院は確実に存在しています。