ステロイド薬一覧と分類・使い分け

ステロイド薬一覧と分類

ステロイド薬の主要分類
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外用ステロイド

皮膚疾患に対する局所治療薬として5段階の強度分類

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全身投与薬

経口薬・注射薬による全身性抗炎症・免疫抑制作用

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吸入ステロイド

喘息・COPDに対する気道局所への直接投与

外用ステロイド強度分類と選択指針

外用ステロイド薬は抗炎症作用の強さにより5群に分類されており、適切な選択が治療効果と安全性の両立に重要です。

最強群(Ⅰ群/Strongest):

これらは最も強力な抗炎症作用を持ち、重篤な皮膚疾患や他の治療で効果不十分な場合に限定使用されます。

非常に強い群(Ⅱ群/Very Strong):

  • フルメタ(モメタゾンフランカルボン酸エステル)
  • アンテベート(ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル)
  • トプシム(フルオシノニド)
  • リンデロンDP(ベタメタゾンジプロピオン酸エステル)
  • マイザー(ジフルプレドナート)
  • ビスダーム(アムシノニド)
  • ネリゾナ(ジフルコルトロン吉草酸エステル)
  • パンデル(ヒドロコルチゾン酪酸エステル)

強い群(Ⅲ群/Strong):

  • エクラー(デプロドンプロピオン酸エステル)
  • メサデルム(デキサメタゾンプロピオン酸エステル)
  • ベトネベート(ベタメタゾン吉草酸エステル)
  • リンデロンV(ベタメタゾン吉草酸エステル)
  • リドメックス(プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル)

部位別使用原則として、顔面や陰部などの皮膚が薄い部位では弱い群を、手掌や足底などの角質が厚い部位では強い群を選択することが基本となります。

経口・注射用ステロイド種類と薬価情報

全身投与用ステロイド薬は、作用時間と抗炎症力により使い分けが行われます。

経口製剤の主要薬剤:

プレドニゾロンは中間型作用を持ち、多くの炎症性疾患・自己免疫疾患の標準治療薬として位置づけられています。半減期が12-36時間で、朝1回投与により生理的コルチゾール分泌リズムに近い投与が可能です。

注射製剤の特徴:

  • ソル・メドロール静注用(メチルプレドニゾロンコハク酸エステル)
    • 40mg:279円/瓶
    • 125mg:605円/瓶
    • 500mg:1668円/瓶
    • 1000mg:2907円/瓶
  • 水溶性プレドニン注射液
    • 10mg:205円/管
    • 20mg:281円/管
    • 50mg:550円/管

    急性期の重篤な炎症状態や、消化管からの吸収が期待できない場合に静脈内投与が選択されます。メチルプレドニゾロンは中枢神経系への移行性が良好で、多発性硬化症の急性増悪時のパルス療法にも使用されます。

    吸入ステロイド薬選択とデバイス特性

    気管支喘息COPDの長期管理において、吸入ステロイド薬は第一選択薬として位置づけられています。全身への影響を最小限に抑えながら、気道局所に直接薬剤を送達できる利点があります。

    主要な吸入ステロイド成分:

    • ブデソニド(パルミコート)
    • フルチカゾンプロピオン酸エステル(フルタイド)
    • ベクロメタゾンプロピオン酸エステル(キュバール)
    • シクレソニド(オルベスコ)

    デバイス別特徴と選択基準:

    1. 定量噴霧式吸入器(pMDI): 薬剤放出と吸入タイミングの協調が必要
    2. ドライパウダー吸入器(DPI): 吸気流速に依存、高齢者では注意が必要
    3. ソフトミスト吸入器: 噴霧粒子が細かく、肺内沈着率が高い
    4. ネブライザー: 重症患者や協調困難例に適用

    患者の年齢、理解度、吸気能力、併存疾患を総合的に評価し、最適なデバイスを選択することが治療成功の鍵となります。

    ステロイド薬副作用対策と監視項目

    ステロイド薬の副作用は投与経路、用量、期間により異なるため、系統的な監視と予防策が不可欠です。

    全身投与時の主要副作用:

    外用薬特有の副作用:

    • 皮膚萎縮・毛細血管拡張
    • ステロイド座瘡
    • 色素沈着・脱色
    • 細菌・真菌感染の増悪

    吸入薬の局所副作用:

    • 口腔カンジダ症(使用後うがいで予防可能)
    • 嗄声(声帯への薬剤付着)
    • 咽頭刺激感

    副作用の早期発見には、定期的な検査項目設定が重要です。血糖値、血圧、骨密度、眼圧測定を含む包括的なモニタリング体制の構築が求められます。

    診療現場でのステロイド薬使い分け戦略

    実際の診療現場では、疾患の重症度、患者背景、治療目標を総合的に判断したステロイド薬の選択が求められます。

    急性期管理の戦略:

    重症の急性炎症状態では、初期に十分な抗炎症作用を得ることが重要です。この際、「hit hard and early」の概念に基づき、短期間で強力なステロイド投与を行い、その後速やかに漸減する手法が効果的です。

    慢性疾患管理の考え方:

    長期管理が必要な疾患では、最小有効量(minimum effective dose)での維持療法が基本となります。特に関節リウマチ炎症性腸疾患では、他の免疫抑制薬との併用によりステロイド薬の減量・中止を目指す治療戦略が重要です。

    小児への応用時の特殊性:

    小児では成長への影響を最小限に抑えるため、隔日投与法や局所投与の積極的活用が推奨されます。また、ワクチン接種スケジュールとの調整も重要な考慮事項です。

    高齢者での注意点:

    加齢に伴う生理機能の低下により、副作用のリスクが増大します。特に骨粗鬆症、感染症、精神症状への細心の注意が必要で、多職種連携による包括的な管理体制が不可欠です。

    この戦略的アプローチにより、ステロイド薬の持つ強力な治療効果を最大限に活用しながら、副作用リスクを最小限に抑制した安全で効果的な治療が実現できます。

    副腎皮質ステロイド薬の薬価情報 – KEGG MEDICUS
    吸入ステロイド薬の詳細解説 – 薬剤師向け専門サイト