癌研有明病院と国立がんセンターの違い
癌研有明病院と国立がんセンターの違い
国立ガンセンターとがん研有明病院には、設立母体が異なります。
国立がん研究センターは、専門的な技術と医療サービスを高レベルで、がん検診、治療などの研究を行う病院として設立されています。
一方、がん研有明病院は、悪性リンパ腫などの新しい治療技術の研究、開設の専門病院として設立されています。
国立がんセンターでは、病院の機能だけでなく、がん学研究センターで研究を行う他、教育機関も行われています。
がん研有明病院では、悪性腫瘍などの診断と治療だけでなく、学習機関での薬学、看護学の教育も行われています。
癌研有明病院の特徴と評判
癌研有明病院は1908年に癌研究会として創設された日本初のがん専門機関です。東京都江東区有明に位置し、700床の病床数と20室の手術室を備えた大規模ながん専門病院として知られています。
特に注目すべき点は、チーム医療の実践です。各分野のスペシャリストが連携し、さまざまな視点から意見を出し合うことで、透明性の高い医療を提供しています。門田守人病院長は「もはや名医や神の手の時代ではない」と述べており、専門家たちが一人一人の患者のために結集し、チームで診療するトータルケアに重点を置いています。
診療科目は非常に多岐にわたり、食道外科、胃外科、大腸外科、肝・胆・膵外科、消化器化学療法科など、臓器別の専門診療部門を多数取り揃えています。これにより、進行がんや転移がんにも対応可能な体制を整えています。
2022年の放射線治療実績を見ると、乳がん442件、頭頸部がん193件、直腸がん・肛門管がん137件など、多くの症例に対応しています。また、骨転移や脳転移などの治療も421件と多数行われており、幅広いがん治療に対応していることがわかります。
評判としては、ダイヤモンドQ編集部によるがんに強い病院ランキングで1位を獲得しており、患者数、手術数、専門医数、医療体制のすべての面で高い評価を得ています。
国立がんセンターの構成と役割
国立がん研究センター(NCC)は、がん患者の生活改善と全国的ながん治療情報を発信することを目的とする組織です。中央病院と東病院という2つの病院を有しています。
中央病院は最良で最適ながん医療を提供するため、様々な分野のスタッフを毎年補充しています。一方、東病院は増加するがん患者への対応と新しいがん医療の創出を目的として1992年に設立されました。
国立がんセンターの特徴は、病院機能だけでなく、がん学研究センターでの研究活動や教育機関としての役割も担っている点です。希少がんの専門研究を実施しており、がん検診やがん情報サービスも提供しています。
また、全国的ながん治療情報の発信拠点としての役割も重要です。継続的な医療の改良とその結果を共有するとともに、全国の人々に良質ながん医療とサービスを提供できるよう積極的な取り組みを行っています。
ダイヤモンドQ編集部のがんに強い病院ランキングでは3位にランクされており、特に専門医数/病床数の項目では7.5点と最高評価を獲得しています。
癌研有明病院と国立がんセンターの治療体制の比較
両病院の治療体制を比較すると、いくつかの共通点と相違点が見えてきます。
まず医療体制の評価では、ダイヤモンドQ編集部のランキングによると、両病院とも7.5点と最高評価を獲得しています。これは両病院が高水準の医療サービスを提供していることを示しています。
治療アプローチについては、癌研有明病院では臓器別のチーム医療を実践しており、患者に安全で高品質ながん治療を提供しています。特に「機能温存手術」の開発に熱心で、例えば胃がん治療では、胃を切除する際に味覚や食欲に関係するホルモンを分泌する部分をわずかに残すことで、術後の食生活の質を大幅に向上させる取り組みを行っています。
一方、国立がんセンターではグループ指定を受けた上で、数多くのがん治療手段を提供し、安全で最良の治療を行う環境整備に注力しています。また、希少がんの専門研究も実施しており、より幅広い治療オプションの開発に取り組んでいます。
設備面では、癌研有明病院はPET検査やダ・ヴィンチ・サージカルシステムなどの最新設備を導入しています。また、放射線治療は専門的な知識を持ったスタッフによって行われ、外照射と小線源治療の2種類の放射線治療法を提供しています。
両病院とも手術療法、放射線療法、化学療法といった標準的ながん治療に加え、臨床試験や新たな治療法の開発にも積極的に取り組んでいます。
癌研有明病院の先進的な研究と治療法
癌研有明病院では、臨床試験や診断方法の開発など、先端的な研究開発に力を入れています。新たな抗がん剤や治療法の創出に取り組み、患者のQOL(生活の質)向上を追求するトータルケアを目指しています。
特筆すべき研究分野として、肝胆膵グループによる抗がん剤曝露によるDiacylglycerol kinase α発現変化の分子メカニズムの解明や、肝細胞癌の小胞体ストレスにおける脂肪酸結合タンパク質の機能解析などが挙げられます。これらの研究は、がん治療の新たなアプローチの開発につながる可能性を秘めています。
また、「がん研パワーアッププロジェクト」と称し、放射線治療施設の拡充と健診サービスの充実を進めています。2023年1月からは健診センターにおいて、一般のレントゲンと同じ線量で放射線被ばくを最小限に抑えた「低線量CT」の稼働を開始しました。これにより、従来はできなかった大腸CT検査と上部内視鏡検査の同日検査が可能になりました。
外来化学療法部では、全科の化学療法を担当しており、血液腫瘍科や各内科、総合腫瘍科、治験を行う先端開発科と連携しています。多数の腫瘍内科医が在籍し、再発や転移の治療にも対応しています。また、副作用をコントロールする支持療法も行われており、通院での化学療法継続をサポートしています。
国立がんセンターの全国的な情報発信と教育機能
国立がん研究センター(NCC)の大きな特徴の一つは、全国的ながん治療情報の発信拠点としての役割です。がん患者の生活改善と全国的ながん治療情報を発信することを主要な目的としています。
NCCは研究機関としての機能も充実しており、がん学研究センターでの研究活動を通じて、新たながん治療法の開発や既存治療法の改良に取り組んでいます。特に希少がんに関する専門研究を実施しており、一般的な医療機関では対応が難しい症例に対しても適切な治療法を提供できるよう努めています。
教育機関としての役割も重要で、医学生や研修医、専門医を目指す医師に対して、最新のがん医療に関する教育を行っています。これにより、全国のがん医療の質の向上に貢献しています。
また、がん検診やがん情報サービスの提供も行っており、一般市民に対するがん予防や早期発見の啓発活動にも力を入れています。継続的な医療の改良とその結果を共有することで、全国の人々に良質ながん医療とサービスを提供できるよう取り組んでいます。
医療イノベーション推進センター(TRI)との連携も行っており、臨床研究・臨床試験の推進を通じて、がん治療の発展に寄与しています。このような多角的なアプローチにより、NCCは単なる治療機関を超えた、がん医療の総合的な拠点としての役割を果たしています。
癌研有明病院と国立がんセンターの受診方法と費用比較
両病院の受診方法には若干の違いがあります。まず、癌研有明病院の受診方法を見てみましょう。
癌研有明病院では、初めて受診する場合は診療予約室へ直接連絡して診療の予約を取る必要があります。予約の電話番号は03-3570-0541です。基本的に紹介状が必要となるため、現在検査を受けている医療機関で紹介状を書いてもらう必要があります。まだ検査を受けていない場合は、まず他の医療機関を先に受診することが推奨されています。
予約日には、他の医療機関で書いてもらった紹介状や保険証、おくすり手帳などを持参して病院へ行く必要があります。診療時間は9:00~16:00で、休診日は土曜・日曜・祝日・年末年始となっています。
一方、国立がんセンター(中央病院・東病院)の受診方法については、基本的に紹介状が必要です。初診は予約制となっており、電話やウェブサイトから予約を取ることができます。
費用面では、両病院とも高度専門医療を提供する特定機能病院に指定されているため、初診料や再診料、各種検査費用、治療費などは同水準と考えられます。ただし、具体的な治療費は患者の状態や治療内容によって大きく異なります。
また、両病院とも先進医療を提供している場合があり、保険適用外の治療を受ける場合は自己負担となる可能性があります。治療費について心配がある場合は、各病院の医療相談室や医事課に相談することをお勧めします。
なお、癌研有明病院では「がん研パワーアッププロジェクト」の一環として健診サービスの充実も図っており、2023年からは低線量CTによる検査も可能になっています。健診費用については別途確認が必要です。
患者視点で見る癌研有明病院と国立がんセンターの選び方
がん治療を検討する際、どちらの病院を選ぶべきか悩む方も多いでしょう。ここでは患者視点での選び方のポイントをご紹介します。
まず、がんの種類と進行度を考慮することが重要です。癌研有明病院は臓器別のチーム医療を実践しており、特に消化器系のがんや乳がんの治療実績が豊富です。一方、国立がんセンターは希少がんの専門研究も行っているため、一般的に少ない症例のがんの場合は国立がんセンターが適している可能性があります。
次に、住所や通院のしやすさも考慮すべき点です。癌研有明病院は東京都江東区有明に位置し、国立がんセンター中央病院は東京都中央区築地、東病院は千葉県柏市にあります。治療が長期にわたる場合は、通院の負担を考えて選ぶことも大切です。
また、両病院とも高度な専門医療を提供していますが、治療方針や医師との相性も重要な要素です。可能であれば、セカンドオピニオンを活用して両方の病院の意見を聞くことをお勧めします。
研究や臨床試験への参加に関心がある場合は、国立がんセンターは研究機関としての側面が強く、最新の治療法へのアクセスが得られる可能性があります。一方、癌研有明病院も臨床試験や新たな治療法の開発に積極的に取り組んでいます。
患者のQOL(生活の質)を重視する場合、癌研有明病院は「機能温存手術」などの開発に熱心で、治療後の生活の質を高める取り組みを行っています。
最終的には、主治医と相談しながら、自分の状態や希望に合った病院を選ぶことが大切です。また、両病院とも予約が取りにくい場合があるため、早めに受診の準備を進めることをお勧めします。
癌研有明病院と国立がんセンターの将来展望と最新の取り組み
両病院は常に最先端のがん医療を追求し、様々な新しい取り組みを行っています。
癌研有明病院では、「がん研パワーアッププロジェクト」と称して放射線治療施設の拡充と健診サービスの充実を進めています。2023年1月からは健診センターにおいて低線量CTの稼働を開始し、大腸CT検査と上部内視鏡検査の同日検査を可能にするなど、検診の利便性向上に取り組んでいます。
また、将来的には早期がんだけでなく、治療が難しいがんを中心に症例を増やしていく方針を示しており、さまざまながんへの対応が期待できます。新しい研究分野としては、肝胆膵グループによる抗がん剤曝露によるDiacylglycerol kinase α発現変化の分子メカニズムの解明や、肝細胞癌の小胞体ストレスにおける脂肪酸結合タンパク質の機能解析などが進められています。
一方、国立がんセンターは、全国的ながん治療情報の発信拠点としての役割をさらに強化し、希少がんの研究にも力を入れています。また、医療イノベーション推進センター(TRI)との連携を通じて、臨床研究・臨床試験の推進にも取り組んでいます。