直接経口抗凝固薬と種類・使い分け・出血対策

直接経口抗凝固薬の基礎知識と適応

プラザキサは腎排泄率80%で減量が必須です。

この記事の3つのポイント
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DOACは4種類あり作用機序が異なる

ダビガトランは直接トロンビン阻害薬、リバーロキサバン・アピキサバン・エドキサバンは第Xa因子阻害薬として分類され、各薬剤で腎排泄率や服用回数が異なります。

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腎機能に応じた減量基準を遵守

クレアチニンクリアランス30mL/min未満では多くのDOACが禁忌となり、50mL/min以下でも減量が必要な薬剤があるため、定期的な腎機能評価が不可欠です。

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出血時の中和薬と周術期管理

ダビガトランには特異的中和剤イダルシズマブがあり、周術期には手術前日朝まで投与し術後48時間以内に再開する原則を理解することが重要です。

直接経口抗凝固薬の作用機序と分類

 

直接経口抗凝固薬(DOAC)は、凝固カスケードに直接作用することで抗凝固効果を発揮する薬剤群です。ワルファリンビタミンKを介して間接的に複数の凝固因子の産生を抑制するのに対し、DOACは特定の凝固因子に直接結合して阻害します。

これが「直接」という名称の由来です。

現在、日本で使用可能なDOACは4種類あります。作用機序から大きく2つに分類され、ダビガトランプラザキサ)は活性化Ⅱ因子(トロンビン)を直接阻害します。一方、リバーロキサバンイグザレルト)、アピキサバンエリキュース)、エドキサバンリクシアナ)の3剤は活性化第Ⅹa因子を直接阻害する薬剤です。

つまり標的が2種類ということですね。

DOACの登場により、抗凝固療法は大きく変化しました。ワルファリンでは必須だったプロトロンビン時間-国際標準比(PT-INR)の定期的モニタリングが不要になり、納豆などビタミンK含有食品の摂取制限も解除されました。服用開始後、数時間で効果が発現し、半減期も約11~14時間と短いため、効果の発現と消失が速やかです。

各薬剤の服用回数にも違いがあります。ダビガトランとアピキサバンは1日2回投与、リバーロキサバンとエドキサバンは1日1回投与です。患者のライフスタイルや服薬アドヒアランスに応じて選択できるのが利点と言えます。

直接経口抗凝固薬の主な適応疾患

DOACの主要な適応は非弁膜症性心房細動(NVAF)における脳卒中および全身性塞栓症の発症抑制です。心房細動患者では心房内に血栓が形成されやすく、これが脳に飛んで脳塞栓を引き起こすリスクが一般人口の約5倍に上昇します。CHADS2スコアやCHA2DS2-VAScスコアで評価した血栓塞栓症リスクが1点以上の場合、抗凝固療法の開始が推奨されます。

ここで重要なのが「非弁膜症性」という条件です。中等度以上の僧帽弁狭窄症や機械弁置換後の患者は、DOACの有効性・安全性が確立していないため、現在もワルファリンの適応となります。生体弁置換後の患者は非弁膜症性として扱われ、DOACの使用が可能です。

静脈血栓塞栓症(VTE)もDOACの重要な適応です。深部静脈血栓症(DVT)や肺血栓塞栓症(PE)の治療と再発抑制に用いられます。従来はヘパリンからワルファリンへの切り替えが標準でしたが、DOACの登場により治療プロトコルが簡素化されました。ただし、リバーロキサバンとアピキサバンは単剤で初期治療から開始できますが、ダビガトランとエドキサバンは5~10日間の非経口抗凝固薬投与後に切り替える必要があります。

初期治療の違いに注意が必要です。

整形外科領域では、股関節または膝関節置換術後の静脈血栓塞栓症の発症抑制にも使用されます。手術という血栓リスクの高い状況下で、予防的に投与することで術後の重篤な合併症を防ぎます。

日本医科大学の「直接経口抗凝固薬(DOAC)の特徴と使い分け」では、各薬剤の薬理学的特性と臨床試験結果が詳細に解説されています

直接経口抗凝固薬とワルファリンの使い分け基準

DOACとワルファリンの選択は、患者の腎機能、弁膜症の有無、費用負担能力などを総合的に判断して行います。

腎機能がクレアチニンクリアランス(CCr)30mL/min未満の高度腎機能障害患者や透析患者では、DOACは原則禁忌です。DOACは薬剤によって程度は異なりますが、いずれも腎排泄の影響を受けます。ダビガトランの腎排泄率は約80%と最も高く、エドキサバン50%、リバーロキサバン35%、アピキサバン26%と続きます。腎機能低下時には血中濃度が上昇し、出血リスクが高まるため注意が必要です。

高度腎不全ではワルファリンも禁忌とされていますが、透析患者に対しては脳梗塞再発予防などの目的で慎重に使用されることがあります。

この点がDOACとの大きな違いです。

機械弁置換後や中等度以上の僧帽弁狭窄症を有する患者では、DOACの有効性が証明されていないため、ワルファリンを選択します。「弁膜症性心房細動」と診断される場合は、必然的にワルファリンとなります。

費用面でも大きな差があります。ワルファリンは1日薬価が約40円(3割負担で月360円程度)ですが、DOACは1日薬価が約530円で、年間では19万円以上の差が生じます。高額療養費制度の対象となりますが、患者の経済的負担を考慮する必要があります。

年間で約18万円の差は大きいですね。

一方、ワルファリンでは定期的なPT-INR測定のための通院が必要で、血液検査費用や交通費、時間的負担が発生します。食事制限によるQOL低下も考慮すべき点です。総合的な医療費を比較すると、出血性合併症や血栓塞栓症の発症による入院医療費まで含めた長期的視点が重要になります。

左心補助人工心臓(LVAD)使用中の患者では、血栓症イベントのリスクが高いため、原則としてアスピリンとワルファリンの併用が推奨されます。DOACへの変更はエビデンスが不足しており、推奨されていません。

直接経口抗凝固薬の各薬剤の特徴比較

4種類のDOACにはそれぞれ異なる特徴があり、患者背景に応じた選択が求められます。

ダビガトラン(プラザキサ)は唯一のトロンビン阻害薬で、腎排泄率80%と最も高いのが特徴です。通常量は150mg 1日2回ですが、70歳以上、CCr 30~50mL/min、消化管出血の既往がある患者では110mg 1日2回に減量します。特異的中和剤イダルシズマブ(プリズバインド)が使用可能な唯一のDOACであり、緊急手術時や重篤な出血時の対応が容易です。ただし、消化管出血の発生率が他剤よりやや高いという報告があります。

リバーロキサバン(イグザレルト)は1日1回投与で服薬アドヒアランスが良好です。NVAFでは15mg 1日1回(CCr 15~50mL/minでは10mg 1日1回)、VTE治療では初期3週間は15mg 1日2回、その後15mg 1日1回と投与法が異なります。食事の影響を受けるため、15mg以上は食後投与が推奨されます。消化管出血のリスクが他剤と比較してやや高いとする報告もあります。

アピキサバン(エリキュース)は出血性合併症が最も少ないことが大規模試験ARISTOTLE試験で示されました。5mg 1日2回が標準用量ですが、以下の3項目のうち2項目以上を満たす場合は2.5mg 1日2回に減量します:年齢80歳以上、体重60kg以下、血清クレアチニン1.5mg/dL以上。腎排泄率26%と最も低く、腎機能低下例でも比較的安全に使用できます。

これは覚えやすい基準です。

エドキサバン(リクシアナ)も1日1回投与で、60mg 1日1回が標準用量です。体重60kg以下、CCr 15~50mL/min、P糖タンパク阻害薬併用のいずれかに該当する場合は30mg 1日1回に減量します。ENGAGE AF-TIMI 48試験では、ワルファリンと比較して脳卒中・全身性塞栓症を有意に抑制し、大出血も有意に少ないという良好な成績を示しました。

各薬剤の選択では、患者の腎機能、年齢、体重、併用薬、服薬回数の希望、出血リスク、消化管疾患の既往などを総合的に評価します。1日2回投与が困難な認知機能低下例では1日1回製剤を、腎機能低下例では腎排泄率の低いアピキサバンを、緊急時対応を重視する場合はダビガトランを選択するといった、個別化された処方設計が求められます。

直接経口抗凝固薬の腎機能別投与量調整の実際

DOACの適正使用において、腎機能評価は最も重要な要素の一つです。不適切な投与量は出血リスクの増大や血栓塞栓症の発症につながるため、厳密な管理が必要です。

腎機能の評価にはクレアチニンクリアランス(CCr)を用います。Cockcroft-Gault式による推算CCrが一般的で、計算式は「CCr(mL/min)=(140−年齢)×体重(kg)÷(72×血清クレアチニン(mg/dL))× 0.85(女性の場合)」です。推算糸球体濾過量(eGFR)ではなくCCrを使用する点に注意が必要です。

CCr 15mL/min未満では、リバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバンは全て禁忌です。ダビガトランはCCr 30mL/min未満が禁忌となります。つまり、最も腎機能低下に弱いのがダビガトランということになります。

CCr 30~50mL/minの範囲では、各薬剤で対応が異なります。ダビガトランは110mg 1日2回への減量が必須、エドキサバンは30mg 1日1回への減量が必要です。リバーロキサバンはNVAFでは10mg 1日1回に減量しますが、VTE治療では15mg 1日1回のまま継続します。アピキサバンは、この腎機能だけでは減量基準を満たさず、年齢や体重との組み合わせで判断します。

減量基準の違いに要注意です。

高齢者では生理的な腎機能低下が進行しているため、定期的な腎機能評価が不可欠です。日本循環器学会のガイドラインでは、安定期でも少なくとも年1回、できれば6カ月ごとの腎機能チェックが推奨されています。急性疾患による脱水や、NSAIDsなどの腎機能に影響を与える薬剤の併用開始時には、より頻繁な評価が必要です。

体重変動も重要な評価項目です。特にエドキサバンとアピキサバンでは体重が減量基準に含まれるため、定期的な体重測定と記録が求められます。入院中の食欲不振や悪性腫瘍の進行による体重減少時には、投与量の見直しを検討します。

併用薬による相互作用も考慮が必要です。P糖タンパク阻害薬(ベラパミルキニジンクラリスロマイシンなど)やCYP3A4阻害薬(アゾール系抗真菌薬、HIVプロテアーゼ阻害薬など)との併用では、DOACの血中濃度が上昇します。エドキサバンではP糖タンパク阻害薬併用が減量基準の一つとされており、クラリスロマイシン投与開始時には30mg 1日1回への減量を検討します。

過少投与のリスクも見逃せません。減量基準を満たさない患者に減量製剤を投与すると、抗凝固効果が不十分となり、脳梗塞や全身性塞栓症のリスクが上昇します。国内外の観察研究では、不適切な減量投与が行われている症例が一定数存在し、血栓塞栓症の発症率が高いことが報告されています。

直接経口抗凝固薬の出血リスク管理と中和薬

抗凝固療法の最大の副作用は出血です。DOACは頭蓋内出血のリスクがワルファリンより低いものの、消化管出血などの出血性合併症は一定頻度で発生します。

出血リスクの評価にはHAS-BLEDスコアが広く用いられます。高血圧(収縮期血圧160mmHg以上)、腎機能障害・肝機能障害、脳卒中の既往、出血の既往または出血傾向、不安定なINR(ワルファリン使用時)、高齢(65歳以上)、薬剤(抗血小板薬やNSAIDs併用)・アルコール多飲の7項目を評価し、3点以上で高出血リスクと判定します。

しかし、高出血リスクだからといって抗凝固療法を控えるべきではありません。むしろ、血栓塞栓症予防の利益が出血リスクを上回る場合が多く、適切なモニタリングと患者教育を強化しながら治療を継続することが推奨されます。

患者教育では、出血の徴候(黒色便、血尿、鼻出血、歯肉出血、皮下出血、頭痛など)を早期に認識して受診するよう指導します。転倒リスクのある高齢者では、環境整備や運動療法による転倒予防も重要な介入です。

出血時の一般的対応としては、まず抗凝固薬の休薬、外科的処置を含めた止血操作、輸液によるバイタル安定化、出血性脳卒中では十分な降圧を行います。軽度の出血であれば休薬と経過観察で対応可能ですが、中等度から重篤な出血では中和剤の使用を検討します。

ダビガトランには特異的中和剤イダルシズマブ(プリズバインド)があります。ヒト化モノクローナル抗体断片で、ダビガトランに結合して速やかに抗凝固作用を中和します。5g(2.5g×2本)を静脈内投与することで、数分以内に抗凝固効果を90%以上中和でき、効果は24時間持続します。

緊急手術や生命を脅かす出血時に有用です。

第Xa因子阻害薬には非特異的中和剤アンデキサネット アルファが海外で承認されています。日本でも承認申請が進んでおり、近い将来使用可能になる見込みです。それまでは、プロトロンビン複合体濃縮製剤(PCC)や活性化第Ⅶ因子製剤などの非特異的止血薬が代替手段となります。

中和剤が利用可能になりました。

重要な注意点として、中和剤投与後は血栓塞栓症のリスクが上昇します。イダルシズマブ投与後の血栓塞栓症発症率は約5%との報告があり、止血が確認された後は可及的速やかに抗凝固療法を再開する必要があります。再開のタイミングは出血の重症度、部位、止血状況、血栓塞栓症リスクを総合的に判断して決定します。

直接経口抗凝固薬の周術期管理の実際

待機的手術を予定する患者でDOACを服用している場合、適切な休薬と再開のタイミングが重要です。

手術の出血リスク評価が第一歩です。低出血リスク手術(白内障手術、抜歯、体表の小手術など)では、DOACを継続したまま手術を行うことが可能な場合もあります。一方、高出血リスク手術(開頭術、脊椎手術、大血管手術、前立腺生検など)では、十分な休薬期間が必要です。

標準的な休薬期間は、DOACの半減期と腎機能に基づいて設定します。一般的には手術前日朝まで内服を継続し、それ以降休薬します。1日2回投与のダビガトランとアピキサバンでは、手術前日朝の服用を最後とし、前日夕以降は休薬します。1日1回投与のリバーロキサバンとエドキサバンでは、手術前日朝の服用を最後とします。

腎機能が低下している患者では、薬剤の消失が遅延するため、より長い休薬期間が必要です。CCr 30~50mL/minでは手術2日前から、CCr 15~30mL/minでは手術3~4日前からの休薬を考慮します。特にダビガトランは腎排泄率が高いため、腎機能低下例では慎重な対応が求められます。

ワルファリンと異なり、DOACではヘパリン置換(ブリッジング療法)は通常不要です。DOACの半減期が短く、休薬後速やかに抗凝固作用が消失するためです。ヘパリン置換を行うと、かえって出血リスクが増大する可能性があります。

術後の再開タイミングは、止血状況と血栓塞栓症リスクのバランスで判断します。原則として術後24~48時間以内の再開が推奨されますが、完全な止血が得られていることが前提です。出血リスクが高い手術では術後48~72時間以降の再開を検討します。

術後48時間以内が原則です。

緊急手術の場合、最終服用からの時間を確認します。DOACの効果は半減期の2~3倍(約24~36時間)でほぼ消失するため、最終服用から24時間以上経過していれば、抗凝固作用は大幅に減弱しています。それより短い場合は、可能であれば中和剤の使用を検討します。ダビガトラン服用中であればイダルシズマブ投与が有効です。

術前のDOAC血中濃度測定は、通常のルーチン検査では行われません。特殊な凝固検査(トロンビン時間、抗Xa活性など)で評価可能ですが、結果が得られるまでに時間がかかるため、緊急時には実用的ではありません。最終服用時刻と腎機能から推定した消失時間に基づいて判断します。

消化器内視鏡検査も同様の考え方で管理します。観察のみの上部消化管内視鏡検査は低リスクで、DOAC継続下でも実施可能です。大腸ポリープ切除や内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)などの処置を伴う場合は、手技前日までの休薬と、術後の止血確認後の再開が推奨されます。

済生会福岡総合病院の「経口抗血栓薬術前休薬指針」では、各抗血栓薬の具体的な休薬期間と再開時期が一覧表で示されています

抗血小板薬を併用している患者では、両薬剤の休薬タイミングを調整します。アスピリン単剤であれば継続可能な手術も多いですが、P2Y12阻害薬(クロピドグレル、プラスグレルなど)との併用例では、出血リスクが高まるため、個別に判断が必要です。冠動脈ステント留置後1年以内などの高血栓リスク患者では、循環器専門医と連携して総合的な周術期管理計画を立てます。

歯科処置では、通常の抜歯程度であればDOAC継続下で実施可能です。局所止血法(圧迫止血、縫合、トランサミン含嗽など)を徹底することで、休薬による血栓塞栓症リスクを回避できます。ただし、多数歯抜歯や顎骨手術などの侵襲的処置では、休薬を検討します。

直接経口抗凝固薬の服薬管理とアドヒアランス向上策

DOACは半減期が短く、1回の服用忘れでも抗凝固効果が減弱します。そのため、服薬アドヒアランスの維持が治療成功の鍵となります。

服用忘れへの対応は、薬剤によって異なります。1日2回投与のダビガトランとアピキサバンでは、気づいた時点で直ちに1回分を服用し、その後は通常通り1日2回服用を継続します。次の服用時刻まで6時間以上空いていれば問題ありませんが、6時間未満の場合は1回スキップして次回から再開します。絶対に2回分をまとめて服用してはいけません。

1日1回投与のリバーロキサバンとエドキサバンも、気づいた時点で直ちに1回分を服用し、翌日から通常通り再開します。同様に、2回分を同時に服用することは禁忌です。

服薬タイミングの工夫も重要です。1日2回投与では朝食後と夕食後、1日1回投与では毎日決まった時間(就寝前や朝食後など)に服用する習慣をつけます。リバーロキサバン15mg以上は食事の影響を受けるため、必ず食後に服用するよう指導します。他の薬剤は食事との関係はありませんが、服薬忘れ防止のため食後服用を推奨することが多いです。

服薬忘れ防止策として、お薬カレンダーや服薬管理アプリの活用が有効です。特に認知機能低下のある高齢者では、家族や訪問看護師による服薬確認が重要になります。一包化調剤も有用ですが、ダビガトランは吸湿性が高く、カプセルから取り出すと安定性が低下するため、一包化には適しません。

副作用モニタリングでは、出血徴候の早期発見が最優先です。黒色便、血尿、鼻出血が続く、歯磨き時の出血が止まりにくい、皮下出血が増えた、などの症状があれば直ちに受診するよう患者教育を徹底します。突然の激しい頭痛は頭蓋内出血の可能性があり、緊急対応が必要です。

患者教育の際には、薬剤カードの携帯を推奨します。救急搬送時や他院受診時に、DOAC服用中であることを医療者に伝えることで、適切な対応が可能になります。特にダビガトラン服用者は中和剤が使用可能であることを伝えることが重要です。

アドヒアランス低下の要因として、経済的負担、副作用への不安、服薬の複雑さ、効果実感の乏しさなどがあります。定期的な面談で服薬状況を確認し、問題点を早期に把握して対処することが求められます。

医療従事者は定期的な腎機能評価、体重測定、併用薬の確認を行い、投与量の適正性を継続的に評価します。高齢者では脱水による急性腎障害のリスクが高いため、夏季や下痢・嘔吐時には特に注意が必要です。NSAIDsの併用開始時にも腎機能悪化のリスクがあるため、処方変更時には必ず腎機能を再評価します。

薬剤師による服薬指導では、具体的な服用方法、飲み忘れ時の対応、出血徴候のチェックポイント、併用注意薬、受診時の申告事項などを、パンフレットやビデオ教材も活用しながら丁寧に説明します。理解度を確認するため、患者に説明内容を復唱してもらう「ティーチバック法」も効果的です。

多職種連携も重要です。医師、薬剤師、看護師、訪問看護師、ケアマネジャーなどが情報共有し、包括的な服薬支援体制を構築します。在宅療養中の患者では、訪問時の服薬状況確認、残薬チェック、副作用症状の観察などを通じて、安全な抗凝固療法の継続を支援します。

定期受診の重要性も強調します。DOACは採血不要というメリットがありますが、それは「受診不要」を意味しません。少なくとも3~6カ月ごとの定期受診で、腎機能、肝機能、血算、体重などを評価し、投与量の適正性を確認することが推奨されます。特に高齢者や慢性腎臓病患者では、より頻繁な評価が必要です。

第一三共の循環器情報サイト「静脈血栓塞栓症 抗凝固薬の服薬指導」では、患者への具体的な説明ポイントがまとめられています

DOACの適正使用は、医療従事者の知識とスキル、患者の理解と協力、多職種の連携によって初めて達成されます。一人ひとりの患者背景に応じた個別化医療を実践し、血栓塞栓症予防と出血リスク最小化のバランスを取りながら、安全で効果的な抗凝固療法を提供することが、私たち医療従事者の使命です。


レジデントノート 2022年7月号 Vol.24 No.6 サラリとわかる!抗血栓薬の使い方