NMDA受容体拮抗薬一覧と特徴・副作用・適応症

NMDA受容体拮抗薬とは作用機序と臨床応用

軽度認知症にメマンチンは保険適応外です

この記事の3ポイント要約
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NMDA受容体拮抗薬の種類と特徴

メマンチン、ケタミン、イフェンプロジル、アマンタジンなど複数の薬剤が存在し、それぞれ認知症治療、麻酔、脳循環改善、パーキンソン病治療など異なる適応症を持つ

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副作用と相互作用の注意点

めまい、便秘、頭痛などの一般的副作用に加え、NMDA受容体拮抗作用を持つ薬剤同士の併用で作用増強のリスクがあり、腎機能低下患者では投与量調整が必須

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適応と使い分けの原則

メマンチンは中等度~高度アルツハイマー型認知症に適応があり、コリンエステラーゼ阻害薬との併用が可能だが、軽度認知症への使用は適応外となる

NMDA受容体拮抗薬の基本的な作用機序

NMDA受容体拮抗薬は、脳内の興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸の受容体のひとつであるNMDA(N-メチル-D-アスパラギン酸)受容体に結合し、その過剰な活性化を抑制する薬剤群です。グルタミン酸は通常、記憶や学習に重要な役割を果たしていますが、過剰に放出されるとNMDA受容体を過剰に刺激し、カルシウムイオンが神経細胞内に大量に流入します。

このカルシウムイオンの過剰な流入が、神経細胞の損傷や死滅を引き起こすのです。つまり、グルタミン酸が増えすぎると神経細胞を守れなくなります。NMDA受容体拮抗薬は、NMDA受容体に結合して「ふた」のような役割を果たし、カルシウムイオンの流入をブロックすることで、神経細胞を保護します。

アルツハイマー型認知症では、神経細胞が障害されることによってグルタミン酸が異常に放出される状態が続きます。NMDA受容体拮抗薬を使用することで、この過剰な神経興奮を抑制し、認知機能の低下を遅らせる効果が期待できるのです。

正常な神経伝達は維持しながら、病的な過剰活性化だけを抑制するという特性が、NMDA受容体拮抗薬の大きな特徴といえます。脳内の情報伝達のノイズを減らすことで、記憶や学習機能の改善を見込むことができます。またNMDA受容体拮抗薬は神経細胞を保護する作用も持つため、認知症の進行抑制も期待されています。

日本緩和医療学会ガイドラインでは、NMDA受容体拮抗薬の作用機序と臨床応用について詳細に解説されています(鎮痛補助薬に関する項目)

NMDA受容体拮抗薬の種類一覧と各薬剤の特徴

NMDA受容体拮抗薬には複数の種類があり、それぞれ異なる適応症と特性を持っています。医療現場で最も頻繁に使用されるのは、メマンチン塩酸塩(商品名:メマリー)です。中等度および高度アルツハイマー型認知症における認知症症状の進行抑制に適応を持ち、2011年に日本で承認されました。メマンチンは1日1回20mgの維持量で投与され、コリンエステラーゼ阻害薬との併用が可能な唯一の抗認知症薬という特徴があります。

ケタミン塩酸塩は主に全身麻酔薬として使用されていますが、NMDA受容体拮抗作用により帯状疱疹後神経痛や幻肢痛などの神経障害性疼痛にも効果を示します。麻酔領域では呼吸抑制が少なく、血行動態を比較的安定させながら鎮静と鎮痛を提供できる点が評価されています。ただし幻覚などの精神症状が副作用として出現する可能性があるため、使用には注意が必要です。

イフェンプロジル酒石酸塩(商品名:セロクラール)は脳循環代謝改善薬として承認されており、脳梗塞後の意欲低下や自発性低下の改善に使用されます。鎮痛補助薬として保険適応外で使用されることもありますが、NMDA受容体拮抗作用により痛覚過敏を抑制する効果が期待されています。

アマンタジン塩酸塩はパーキンソン症候群、脳梗塞後遺症に伴う意欲低下・自発性低下の改善、A型インフルエンザウイルス感染症という3つの適応を持つユニークな薬剤です。脳内でドパミン放出を促進させる作用があり、パーキンソン病治療で重要な役割を果たしています。

これらの薬剤はすべてNMDA受容体拮抗作用を有するため、併用する場合は相互に作用を増強させるおそれがあります。デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物(鎮咳薬)もNMDA受容体拮抗作用を持つため、メマンチンなどとの併用には注意が必要です。

KEGG医薬品データベースではNMDA受容体拮抗薬の商品一覧と薬価情報が確認できます

NMDA受容体拮抗薬メマンチンの適応と使用方法

メマンチンは中等度および高度アルツハイマー型認知症における認知症症状の進行抑制に適応を持ちます。

軽度認知症への使用は保険適応外です。

この適応範囲は重要なポイントで、軽度のアルツハイマー型認知症患者にメマンチンを処方すると、保険請求が通らない可能性があります。

投与開始時は、通常成人にメマンチン塩酸塩として1日1回5mgから開始します。その後1週間に5mgずつ段階的に増量し、最終的に維持量として1日1回20mgを経口投与するのが標準的な用法です。この漸増方式により、めまいや傾眠などの副作用を最小限に抑えることができます。

メマンチンの大きな特徴は、コリンエステラーゼ阻害薬(ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン)との併用が認められている点です。作用機序が異なるため、併用することで認知症の進行抑制により高い効果が期待できます。ドネペジルと併用する場合は、1日1回同時に経口投与できるというメリットもあります。

ただし、メマンチンは腎臓から排泄される薬剤であり、腎機能の影響を大きく受けます。高度に腎機能が障害されている患者では投与量を減量する必要があり、クレアチニンクリアランス値に応じた用量調整が求められます。透析を必要とするような重篤な腎障害のある患者には投与禁忌です。

使用場面としては、易怒性や暴言、介護への抵抗、夜間の徘徊など、活発な行動障害・精神症状(BPSD)を示すアルツハイマー型認知症患者にメマンチンを第一選択とすることが推奨されています。逆に「おとなしいタイプ」の認知症患者では、コリンエステラーゼ阻害薬を先行させることが多いです。

血中半減期が長いことから、短期間の服薬中断でも効果が落ちにくいという特性があり、服薬コンプライアンスがあまり良くない患者にも使いやすい薬剤といえます。

日経メディカルの連載記事では、メマンチンを使うべき症例と至適用量について詳しく解説されています

NMDA受容体拮抗薬の副作用と安全性管理

NMDA受容体拮抗薬の副作用プロファイルは、薬剤によって大きく異なります。メマンチンの主な副作用としては、消化器症状(便秘、食欲不振、下痢、吐き気)と精神神経系症状(めまい、頭痛、傾眠)が報告されています。投与開始初期にめまいや傾眠が認められることがあり、これらの症状により転倒リスクが高まる可能性があるため注意が必要です。

重大な副作用としては、1%未満のまれな頻度でけいれんが報告されています。同じく1%未満ながら、精神症状として激越(感情が激しく高ぶった状態)、攻撃性、幻覚、混乱などが出現することがあります。これは認知症患者にとって大きな問題となるため、症状の変化を注意深く観察する必要があります。

肝機能障害も頻度は稀ですが報告されており、倦怠感、食欲不振、発熱、黄疸などがみられた場合は速やかに医師や薬剤師に連絡する必要があります。メマンチン400mg服用(通常の20倍量)で不穏、幻視、痙攣、傾眠、昏迷、意識消失などが、2,000mg服用で昏睡、複視、激越が報告されており、過量投与には特に注意が必要です。

ケタミンでは幻覚や解離性症状などの精神症状がより高頻度で出現します。そのためベンゾジアゼピン誘導体を併用することで、この幻覚症状を抑制する対策が取られることがあります。ケタミンは頭蓋内圧や眼圧を上昇させる可能性があるとされていましたが、最新のエビデンスでは調節呼吸下の鎮静患者ではこれらの変動はほとんどないとされています。

アマンタジンでは、精神神経系の副作用に加えて、網状皮斑と呼ばれる特徴的な皮膚症状が出現することがあります。また、心不全のある患者では症状を悪化させる可能性があるため慎重投与が必要です。

副作用のリスクを最小限にするために、投与開始時は少量から始めて徐々に増量する漸増法が重要です。また高齢者では一般に生理機能が低下しているため、より慎重な投与が求められます。患者の腎機能、肝機能、併用薬剤を総合的に評価し、個別化した投与計画を立てることが安全性管理の基本となります。

NMDA受容体拮抗薬の相互作用と併用注意

NMDA受容体拮抗薬同士の併用には特に注意が必要です。メマンチン、アマンタジンデキストロメトルファンケタミンなど、すべてNMDA受容体拮抗作用を有する薬剤を併用すると、相互に作用を増強させるおそれがあります。両薬剤ともNMDA受容体拮抗作用を持つため、過剰な受容体ブロックにより副作用リスクが高まる可能性があるのです。

尿アルカリ化を起こす薬剤(アセタゾラミドなど)とメマンチンを併用すると、メマンチンの腎排泄が減少し、血中濃度が上昇する可能性があります。メマンチンは尿中に未変化体として排泄される割合が高いため、尿pHが上昇すると再吸収が増加し、体内に蓄積しやすくなります。このような相互作用により、めまいや傾眠などの副作用が強く出る可能性があるため、併用時は患者の状態を注意深く観察する必要があります。

ドパミン作動薬レボドパ等)とメマンチンを併用すると、メマンチンのNMDA受容体拮抗作用がドパミン遊離を促進させる可能性があります。これによりドパミン作動薬の効果が増強される可能性があるため、用量調整が必要になる場合があります。

コリンエステラーゼ阻害薬とメマンチンの併用は認められていますが、効果的な併用のためには適切なタイミングと用量管理が重要です。コリンエステラーゼ阻害薬同士の併用は現在認められていないため、ドネペジルガランタミンリバスチグミンのうち1剤を選択し、必要に応じてメマンチンを追加するという形になります。

併用療法の実施にあたっては、各薬剤の特徴を考慮することが大切です。まず単剤療法で開始し、効果がないか不十分、効果減弱、あるいは副作用で継続できなくなった場合に、他の抗認知症薬への切り替えやメマンチンの追加を検討するというステップが推奨されています。

抗精神病薬との併用については、認知症のBPSD(行動・心理症状)に対して抗精神病薬は適応外使用であり、慎重な判断が求められます。BPSDに対する向精神薬使用ガイドラインでは、非薬物的介入を優先し、やむを得ず薬物療法を行う場合は家族や介護者に十分説明し、理解を得る必要があるとされています。

抗コリン作用を持つ薬剤とコリンエステラーゼ阻害薬の併用は、相互に作用を打ち消し合い、患者へのベネフィット低下や副作用の増加につながる可能性があるため避けるべきです。過活動膀胱治療薬や抗ヒスタミン薬など、抗コリン作用を持つ薬剤は日常的に処方される機会が多いため、処方監査時に注意が必要です。

NMDA受容体拮抗薬の臨床での選択基準と独自視点

実臨床でのNMDA受容体拮抗薬の選択は、疾患の種類、重症度、患者の背景因子、併存疾患などを総合的に判断して決定します。アルツハイマー型認知症の薬物療法では、認知症の重症度と行動障害の有無が選択の重要な指標となります。

軽度から中等度のアルツハイマー型認知症で、活発な周辺症状が目立たない「おとなしいタイプ」では、コリンエステラーゼ阻害薬を第一選択とするのが基本です。この段階では脳内のアセチルコリンを増やす戦略が有効だからです。一方、易怒性や暴言、介護への抵抗など、活発な行動障害を示す患者では、メマンチンを第一選択とすることが推奨されます。

中等度から高度のアルツハイマー型認知症では、メマンチンが適応を持つ唯一のNMDA受容体拮抗薬です。高度ADに適応を持つのはドネペジルとメマンチンのみであり、この段階ではこの2剤の併用療法も選択肢となります。併用により単剤よりも高い効果が期待できるという報告がありますが、「併用することの有効性はあっても、それほど大きな効果ではない」という評価もあり、費用対効果も考慮した判断が必要です。

レビー小体型認知症にはドネペジルが保険適用を受けていますが、メマンチンの使用は適応外となります。レビー小体型認知症は薬剤過敏性があり、慎重な投与が必要で、メマンチンでは過鎮静や幻覚の悪化に注意が必要とされています。血管性認知症や前頭側頭型認知症に対しても、メマンチンの効果はほとんど期待できません。

独自の視点として、服薬アドヒアランスの問題を抱える患者へのアプローチが挙げられます。メマンチンは血中半減期が長く、短期間の服薬中断でも効果が落ちにくいという特性があるため、服薬コンプライアンスがあまり良くない患者に適した選択といえます。在宅医療や介護施設では、服薬管理が困難なケースも多く、このような薬物動態学的特性は実臨床で大きなメリットとなります。

また腎機能低下患者が増加している高齢者医療の現場では、メマンチンの腎排泄性という特徴を常に念頭に置く必要があります。クレアチニンクリアランスが30mL/min未満の高度腎機能障害患者では投与量を1日1回10mgに減量するなど、個別化医療の実践が求められます。一方、肝機能障害患者では用量調整の必要がないという点は、肝硬変などの併存疾患を持つ患者での使用を容易にします。

がん性疼痛や神経障害性疼痛の分野では、ケタミンの少量持続投与が注目されています。50~250mg/日の持続皮下注入法または持続静注法で、モルヒネが効きにくい痛みに対する有効性が報告されています。ただし保険適応の問題があるため、使用にあたっては患者や家族への十分な説明と同意が必要です。

パーキンソン病治療におけるアマンタジンの位置づけも独特です。レボドパなどのドパミン補充療法の効果を増強する役割があり、特にジスキネジア(不随意運動)の軽減効果が期待されています。初期治療でレボドパ単剤では効果不十分な場合や、長期治療による効果減弱時の追加薬として選択されることがあります。

今後の展望として、抗アミロイドβ抗体薬(レカネマブ、ドナネマブ)の登場により、アルツハイマー型認知症治療の戦略が大きく変わりつつあります。これらの新薬は軽度認知障害や軽度認知症の段階で疾患修飾効果を示すため、メマンチンなどの従来薬との使い分けや併用の在り方が今後の研究課題となっています。疾患の早期段階で病態の進行を抑え、中等度以降でメマンチンやコリンエステラーゼ阻害薬による症状コントロールを行うという、段階的治療戦略の確立が期待されています。

日経メディカルの川畑信也医師による抗認知症薬の使い分けに関する連載では、実臨床での詳細な選択基準が解説されています

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