セロトニン5-HT3受容体拮抗薬とは作用機序・副作用・適応

セロトニン5-HT3受容体拮抗薬とは

遅発性悪心・嘔吐にも第1世代薬は効果不十分です。

この記事の3ポイント要約
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5-HT3受容体拮抗薬の基本

抗がん剤投与時の悪心・嘔吐を抑制する制吐薬で、セロトニン5-HT3受容体を選択的に阻害して嘔吐中枢への刺激を遮断します

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副作用と相互作用

便秘やQT延長が主な副作用で、SSRI等のセロトニン作用薬との併用でセロトニン症候群のリスクが増大します

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第1世代と第2世代の違い

パロノセトロンは半減期約40時間で遅発性悪心・嘔吐にも有効、グラニセトロン等第1世代は半減期約9時間です

セロトニン5-HT3受容体拮抗薬の基本的な作用機序

 

セロトニン5-HT3受容体拮抗薬は、抗がん剤投与に伴う悪心・嘔吐の予防と治療において中心的な役割を果たす薬剤群です。抗がん剤を投与すると、消化管の腸クロム親和性細胞からセロトニンが大量に放出されます。このセロトニンが求心性迷走神経末端や延髄のCTZ(化学受容器引金帯)に存在する5-HT3受容体に結合すると、嘔吐中枢が刺激されて悪心や嘔吐が引き起こされます。

本剤は、これらの5-HT3受容体を選択的に遮断することで、嘔吐中枢への刺激伝達を阻害します。結果として、抗がん剤による急性期(投与後24時間以内)や遅発期(投与後24~120時間)の悪心・嘔吐を抑制する効果を発揮します。その作用は主に末梢神経と中枢神経の両方に及ぶため、包括的な制吐効果が得られるのです。

作用機序が明確です。

また、5-HT3受容体拮抗薬は抗がん剤誘発性の悪心・嘔吐以外にも、放射線照射後の消化器症状、術後悪心・嘔吐(PONV)、過敏性腸症候群の下痢型など、複数の適応を持つ薬剤も存在します。特に術後悪心・嘔吐については、2021年に日本でも保険適応が認められたことで、周術期管理における選択肢が大幅に広がりました。海外では20年前からPONV予防のゴールドスタンダードとされてきた薬剤が、ようやく日本でも使用できるようになったのです。

5-HT3受容体拮抗薬は、セロトニン受容体の中でも5-HT3受容体に対して高い選択性を持つため、他のセロトニン受容体への影響が少なく、比較的副作用プロファイルが良好な薬剤群と考えられています。この選択性の高さが、制吐療法における使いやすさにつながっているのです。

日経メディカル処方薬事典には、5-HT3受容体拮抗薬の詳細な作用機序と薬効分類が解説されています

セロトニン5-HT3受容体拮抗薬の種類と使い分け

現在、日本で使用可能な5-HT3受容体拮抗薬は、大きく第1世代と第2世代に分類されます。第1世代にはグラニセトロン、オンダンセトロン、ラモセトロンなどがあり、第2世代にはパロノセトロンがあります。これらの薬剤の最も重要な違いは、血中半減期と遅発性悪心・嘔吐に対する効果です。

グラニセトロンの半減期は約9時間、オンダンセトロンも同程度ですが、パロノセトロンの半減期は約40時間と非常に長いのが特徴です。

つまり4倍以上の差があります。

この半減期の長さが、遅発性悪心・嘔吐(抗がん剤投与後2~5日目)に対する優れた効果につながっています。急性期の悪心・嘔吐には両世代とも同等の効果を示しますが、遅発期まで含めた全体的な制吐効果では第2世代のパロノセトロンが優位性を示すことが複数の臨床試験で確認されています。

半減期の差は明確です。

催吐性リスクに応じた使い分けも重要です。高度催吐性リスク抗がん剤(シスプラチン等)に対しては、5-HT3受容体拮抗薬とNK1受容体拮抗薬、デキサメタゾンの3剤併用療法が標準となっています。中等度催吐性リスク抗がん剤に対しては、基本的に5-HT3受容体拮抗薬とデキサメタゾンの2剤併用療法が推奨されます。ただし、催吐性が高いカルボプラチン(AUC≧4)の場合は、NK1受容体拮抗薬の追加も検討されます。

興味深いことに、パロノセトロンを使用する場合は、中等度催吐性リスク抗がん剤に対してデキサメタゾンの投与期間を1日のみに短縮できることが示されています。これは「Steroid Sparing(ステロイド節約)」と呼ばれる戦略で、ステロイド関連の副作用を軽減できる可能性があります。長期的なステロイド使用を避けたい症例では、パロノセトロンの選択が有利になる場合があるのです。

過敏性腸症候群の下痢型に対しては、ラモセトロンが適応を持っています。男性には5μg、女性には2.5μgと性別によって用量が異なる点が特徴的です。これは女性で便秘の副作用発現率が高いためで、2015年に女性への適応が追加されました。1日1回の経口投与で、下痢や腹痛などの症状を改善します。

日医工の制吐療法解説には、催吐性リスク分類に応じた使い分けが詳しく記載されています

セロトニン5-HT3受容体拮抗薬の主な副作用

5-HT3受容体拮抗薬は比較的忍容性が良好な薬剤群ですが、いくつかの重要な副作用が報告されています。最も頻度の高い副作用は便秘で、パロノセトロンの臨床試験では17.4%(97/557例)に認められました。はがきの短辺が約10cmですが、便秘の程度はそれよりも深刻な場合があります。これは5-HT3受容体が消化管運動の調節にも関与しているためで、受容体を遮断することで腸管蠕動が抑制されることが原因です。

便秘が高頻度です。

QT延長も注意すべき副作用の一つです。パロノセトロンの臨床試験では、心電図QT補正間隔延長が2.7%(15/557例)に認められました。全ての5-HT3受容体拮抗薬がQT間隔延長と関連しているため、QT延長のリスク因子を持つ患者(電解質異常、心疾患の既往、QT延長を起こす他の薬剤との併用など)では、心電図モニタリングを含めた慎重な観察が必要です。特に低カリウム血症や低マグネシウム血症がある場合は、トルサード・ド・ポアントなどの致死的不整脈のリスクが高まります。

その他の副作用として、頭痛(3.2%)、ALT増加(4.3%)、AST増加(2.9%)などの肝機能異常、しゃっくり、血管障害などが報告されています。頻度は非常に稀ですが、アナフィラキシーも報告されており、皮膚のかゆみ、蕁麻疹、声のかすれ、息苦しさ、動悸などの症状が現れた場合は、直ちに医師や薬剤師に連絡する必要があります。このような症状は、通常、投与開始後数分から数時間以内に発現することが多いです。

便秘が続くことで、腹部膨満感や硬便が生じ、まれに腸閉塞(イレウス)に至る可能性もあります。特に過敏性腸症候群の治療でラモセトロンを使用する場合は、もともと便秘傾向がない下痢型であっても、薬剤による便秘のリスクを患者に十分説明しておく必要があります。便秘の予防や早期対応として、水分摂取の励行や食物繊維の摂取、必要に応じて緩下剤の併用を検討することが推奨されます。

副作用の発現には個人差があるため、投与開始後は定期的な副作用モニタリングが重要です。特に高齢者、腎機能障害患者、肝機能障害患者では、薬物動態が変化する可能性があるため、より慎重な観察が求められます。

JAPIC医薬品医療機器情報提供ホームページには、パロノセトロンの詳細な副作用情報が掲載されています

セロトニン5-HT3受容体拮抗薬の重要な相互作用

2014年8月に添付文書が改訂され、5-HT3受容体拮抗薬とセロトニン作用薬との相互作用について「併用注意」の項が新設されました。海外において、5-HT3受容体拮抗薬とセロトニン作用薬との併用により、セロトニン症候群が疑われる副作用症例が報告されたためです。これは医療従事者にとって見落としてはならない重要な安全性情報です。

併用注意薬には、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)、MAO阻害薬などの抗うつ薬が含まれます。これらの薬剤は、シナプス間隙のセロトニン濃度を上昇させる作用を持つため、5-HT3受容体拮抗薬と併用すると、セロトニン作用が増強される恐れがあります。セロトニン症候群の症状には、興奮、錯乱、発汗、下痢、発熱、高血圧、振戦、ミオクローヌスなどがあり、重症例では致命的となる可能性があります。

併用注意が必須です。

トラマドールなどのオピオイド鎮痛薬もセロトニン作用を持つため、併用時には注意が必要です。興味深いことに、5-HT3受容体拮抗薬との併用により、トラマドールの鎮痛作用が減弱するとの報告もあります。がん患者では、化学療法に伴う悪心・嘔吐の管理と疼痛管理を同時に行うことが多いため、この相互作用は臨床上重要な意味を持ちます。鎮痛効果が不十分な場合は、オピオイドの増量や変更を検討する必要があるかもしれません。

アポモルヒネとの併用については、特に強い警告がなされています。海外において、5-HT3受容体拮抗薬との併用により、重度の血圧低下、失神/意識消失、徐脈、けいれん発作が発現したとの報告があります。アポモルヒネはパーキンソン病の突発的な症状悪化(オフ症状)に対する緊急治療薬として使用されるため、パーキンソン病患者が化学療法を受ける場合や術後管理を受ける場合には、この相互作用を念頭に置いた薬剤選択が必要です。

相互作用を確認する具体的な手順として、患者の服薬歴を詳細に聴取し、特に抗うつ薬、鎮痛薬、パーキンソン病治療薬の有無を確認することが重要です。併用が避けられない場合は、セロトニン症候群の初期症状(不安、焦燥、発汗、振戦など)について患者教育を行い、異常が認められた場合は速やかに医療機関に連絡するよう指導します。また、電子カルテのアラート機能や薬剤師による処方監査を活用することで、見落としリスクを低減できます。

日医工の使用上の注意改訂情報には、セロトニン作用薬との相互作用の詳細が記載されています

セロトニン5-HT3受容体拮抗薬の実臨床における独自視点

実臨床において、5-HT3受容体拮抗薬の効果を最大限に引き出すためには、投与タイミングの最適化が極めて重要です。抗がん剤投与に伴う悪心・嘔吐に対しては、抗がん剤投与前に5-HT3受容体拮抗薬の投与を完了させることが推奨されています。これは、セロトニンが放出される前に受容体を遮断しておくことで、予防的効果が最大化されるためです。投与タイミングを誤ると、十分な制吐効果が得られない可能性があります。

デキサメタゾンとの併用タイミングも重要なポイントです。デキサメタゾンは効果発現まで約2時間を要するため、麻酔導入時の投与が推奨されています。一方、5-HT3受容体拮抗薬は手術終了時やその終了直前に投与することが一般的です。術後悪心・嘔吐(PONV)の予防においては、リスク評価に基づいて予防的投与を検討します。PONVの発生頻度は約25~30%とされていますが、高リスク患者では80%にも達するため、適切なリスク層別化が必要です。

タイミングが鍵です。

制吐療法の効果判定も見落とされがちな重要事項です。急性期(投与後24時間以内)と遅発期(投与後24~120時間)で評価を分けて行う必要があります。急性期のコントロールは良好でも、遅発期に悪心・嘔吐が出現する患者は少なくありません。このような場合、次回サイクルからは第2世代のパロノセトロンへの変更や、NK1受容体拮抗薬の追加を検討する必要があります。患者ごとの悪心・嘔吐パターンを把握し、個別化した制吐療法を提供することが、QOL向上につながります。

意外と見落とされがちなのが、便秘による悪心の可能性です。がん患者は抗がん剤の副作用、オピオイドの使用、活動量の低下など、様々な原因で便秘をきたしやすい状態にあります。5-HT3受容体拮抗薬による便秘がこれに加わると、便秘そのものが悪心・嘔吐の原因となることがあります。制吐薬を追加しても症状が改善しない場合は、便秘の評価と対処を優先すべきです。排便状況の確認は、悪心・嘔吐マネジメントの基本となります。

患者教育の観点からは、5-HT3受容体拮抗薬が「悪心・嘔吐を予防する薬」であることを明確に伝えることが重要です。多くの患者は、悪心が出現してから薬を服用すれば良いと考えがちですが、予防的投与が最も効果的です。また、便秘などの副作用についても事前に説明し、早期発見・早期対処につなげることで、治療継続率の向上が期待できます。医療チーム全体で患者の症状モニタリングと支持療法の最適化に取り組む姿勢が、がん化学療法の成功には不可欠です。

日本癌治療学会の制吐療法ガイドラインには、催吐性リスク分類と推奨レジメンが詳細に記載されています

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