胃瘻周囲感染と予防
胃瘻周囲感染の原因と危険因子(糖尿病・バンパー圧迫)
胃瘻周囲感染は、単に「汚いから起きる」よりも、デバイスと皮膚・胃壁の力学(圧迫)と、患者側の易感染性が重なると起きやすい合併症として捉えると理解しやすいです。
代表的な誘因は、内部ストッパー(バンパー)や固定糸が強すぎて血流障害を起こし、瘻孔周囲壊死から感染に進むパターンです。
この「圧迫由来」は、見た目が発赤でも“まず外部ストッパーの締め付けを疑う”ことで早期に軌道修正でき、抗菌薬より先に必要な介入(圧の解除)へつながります。
造設方法も感染頻度に影響しうるとされ、Pull法では口腔・咽頭の細菌がカテーテルに付着し瘻孔を通過するため、瘻孔感染が多いと考えられています。
PDNレクチャーでは、Pull法とDirect法の比較で瘻孔周囲感染がPull法で多かった報告や、Pull/Push法がIntroducer法より創部感染が多かった報告が紹介されています。
「過去にPull法で造設された」「口腔内が不良」「痰が多く誤嚥しやすい」などが重なると、周囲感染の説明がつきやすく、ケア計画(口腔ケア・スキンケア・観察強化)も立てやすくなります。
参考)https://peg.or.jp/lecture/peg/03-02.pdf
患者側の危険因子として糖尿病が高リスクとされ、PDNレクチャーでも糖尿病が独立した危険因子だった報告が紹介されています。
参考)Chapter1 PEG 6.合併症・トラブル 1.造設時 …
糖尿病がある患者では、同じ発赤でも“進行が速い・深くなる”前提で、観察頻度を上げ、滲出液の性状変化(漿液→膿性)や硬結の出現を早めに拾う運用が安全です。
参考)Chapter1 PEG 6.合併症・トラブル 4.皮膚①瘻…
胃瘻周囲感染の診断:Jainの基準と観察(発赤・浸出液・硬結)
胃瘻周囲感染は、局所所見の言語化が揃っていないと、スタッフ間で判断がぶれやすい領域です。
PDNレクチャーでは、瘻孔感染(創感染)の診断としてJainの基準(発赤・浸出液・硬結)を推奨し、膿瘍や排膿が明らかな場合、またはスコア8点以上を「感染あり」とする考え方が示されています。
この基準はベッドサイドで簡便に評価でき、経時的変化の把握にも有用とされています。
観察では、発赤だけで「感染」と決め打ちしないのがポイントです。
参考)https://www.peg.or.jp/lecture/peg/05-02.pdf
発赤が軽度でも、硬結(触れると痛い・しこり)や膿性浸出液、発熱が揃うと膿瘍の可能性が上がり、抗菌薬や切開排膿が必要になる場合がある、という注意喚起がPDNにあります。
逆に、長期に発赤が続き湿疹を伴う場合は真菌感染を疑うべき、という視点も示されており、「感染=細菌」だけではない点が臨床の落とし穴です。
また、日常管理の観察として「カテーテルが抵抗なく回転できること」「ストッパーと皮膚の間隔が1~1.5cmであることを確認しながら、瘻孔辺縁部と皮膚の状態を毎日観察する」ことが推奨されています。
この“回転・間隔・皮膚所見”をセットで記録すると、感染の早期発見だけでなく、圧迫(締めすぎ)や漏れ(スキントラブル)にも気づきやすくなります。
胃瘻周囲感染の予防:スキンケアと消毒不要・洗浄の要点
胃瘻周囲の予防は「消毒を増やす」より「清潔を保ち、刺激と漏れと圧迫を減らす」方向が基本です。
PDNのスキンケア資料では、胃瘻周囲は清拭または洗浄により清潔を保つこと、日常のスキンケアでは消毒の必要はないことが明記されています。
皮膚は無菌ではなく、消毒で“ゼロ”にする発想ではなく、汚れや分泌物をためないことが重要、という説明は現場教育にも使いやすいです。
洗浄の具体策として、ぬるま湯を湿らせたガーゼ等で毎日丁寧に汚れを除去し、乾燥して固まった粘液や血液は無理にこすらず、入浴や湿潤で除去しやすくする方法が紹介されています。
胃瘻周囲に滅菌ガーゼが必須ではないこと、ガーゼ固定の粘着テープや発汗でガーゼ下が湿潤しスキントラブル要因になりうることも示されています。
さらに、滲出液がある場合の工夫として、こより状にしたティッシュをカテーテル周囲に巻く方法(粘着テープ不要で吸収がよいとされる)が紹介されており、コストも含めて“意外と使える”小技です。
入浴・シャワーについても誤解が残りがちですが、局所と全身状態に問題がなければ、シャワーは術後1週間、入浴は術後2週間くらいから可能とされ、カテーテル露出のまま浴槽に入ってもお湯が胃内に入ることはないためフィルムで覆う必要はない、と説明されています。
洗浄後は乾いたタオルで水分を拭き自然乾燥させ、ドライヤーは皮膚ダメージやカテーテル破損につながるため使用しない、とされます。
乾燥しやすい人はスキンケア後10分以内の保湿が有効、漏れがある場合は撥水性クリームや白色ワセリンでスキントラブル予防を行う、という具体策も挙げられています。
胃瘻周囲感染の治療:抗菌薬・切開排膿と受診の目安
胃瘻周囲感染が疑われるときは、「局所の程度」+「全身所見」+「デバイス要因」を同時に評価して、治療の段階を決めます。
PDNでは、発赤に滲出液が多い、触れると痛む硬結がある場合は膿瘍の可能性があり、抗生剤投与や切開排膿が必要となる場合がある、とされています。
また、腹膜炎・膿瘍形成・壊死性筋膜炎の徴候がある場合には外科的介入を検討する、という記載があり、単なる皮膚トラブルの範囲を超えたら早めにエスカレーションする姿勢が重要です。
周術期の予防としては、PDNレクチャーで「抗菌薬を経静脈投与する」ことが対策として挙げられ、術前30分前~直前の投与がプラセボより瘻孔感染が少なかった系統的レビューの紹介があります。
ただし、術翌日以降の創部消毒は行わない、という方針も同じPDN内で示されており、「抗菌薬=予防」「皮膚は洗浄で管理」と役割分担で理解すると混乱が減ります。
現場の実装としては、局所が軽度なら洗浄・漏れ対策・圧迫解除を優先し、膿性浸出液や硬結・発熱が揃うなら医師へ早期相談して培養や抗菌薬、必要時の排膿へ進む、という分岐が安全です。
なお、真菌が疑わしい状況(湿疹を伴い長引く発赤など)では、細菌用の対応だけを続けると長期化しやすいため、専門医へコンサルトする考え方が示されています。
「抗菌薬を塗っているのに改善しない」「むしろ皮膚がただれて広がる」場合は、真菌や接触性皮膚炎、消毒やテープ刺激を含めて鑑別し、ケアの方向転換が必要になります。
胃瘻周囲感染の独自視点:記録で差がつく「ケアの再現性」
検索上位の解説は、原因・症状・処置の“知識”が中心になりがちですが、実際の現場では「誰がやっても同じ判断・同じケアになる仕組み」があるほど、周囲感染は減りやすい印象があります。
そこで独自視点として、Jainの基準(発赤・浸出液・硬結)を“記録テンプレ”に落とし込み、加えて「ストッパー間隔(1~1.5cm)」「回転可否」「漏れ(胃液・栄養剤)」「疼痛(有無)」「発熱」を毎日ワンセットで書く運用を推奨します。
PDNのスキンケア資料が示す観察項目(発赤、腫脹、熱感、疼痛、掻痒、乾燥、湿潤、滲出液など)も、離れた皮膚と比較して確認する、と書かれており、比較対象を固定すると記録の質が上がります。
具体例として、申し送りで起きがちな誤差は「赤いです」「少し滲出液があります」のような曖昧表現です。
ここを「発赤:直径○mm相当」「浸出液:漿液/膿性」「硬結:圧痛あり・直径○mm」「ストッパー間隔:○cm」「回転:可/不可」と、最低限の構造化に変えるだけで、抗菌薬開始のタイミングや、締め付け解除の必要性が一致しやすくなります。
意外な盲点は、良かれと思ってガーゼを厚く当て続け、結果としてストッパーの圧迫を強めてしまうケースで、PDNの瘻孔感染・圧迫の説明を踏まえると「ガーゼの厚み」も実は感染予防の管理項目になります。
皮膚トラブルが反復する患者では、日常ケアで「消毒しない」方針が不安視されることがありますが、PDNでは日常のスキンケアでは消毒の必要はないと明記されているため、チームで方針を統一しやすい根拠になります。
この“統一”こそが、胃瘻周囲感染の再発を減らす現場力であり、結果として患者の苦痛(疼痛・滲出液・臭気)とスタッフ負担(処置回数・緊急受診)を同時に下げます。
【参考リンク:瘻孔感染の診断(Jainの基準)、原因(圧迫・造設方法・糖尿病)、予防と周術期抗菌薬、造設後の消毒不要などの根拠】
Chapter1 PEG 6.合併症・トラブル 1.造設時 …
【参考リンク:日常のスキンケア(洗浄中心・消毒不要)、ガーゼ固定がトラブル要因になりうる点、入浴の考え方、観察(1~1.5cm・回転)】
https://www.peg.or.jp/lecture/peg/05-02.pdf

胃潰瘍の説明に適した模型,萎縮性胃炎や出血性胃潰瘍などを再現しています,胃潰瘍モデル – 3B Scientific