胃異所性膵と内視鏡診断と鑑別と治療

胃異所性膵と内視鏡

胃異所性膵と内視鏡:押さえる要点
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粘膜下腫瘍として捉える

正常粘膜に覆われた隆起として見つかり、中心陥凹(delle)や導管開口(ニッシェ)を示すことがあります。

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EUSで主座と層を読む

胃壁のどの層が主座か、内部のエコー像がどうかで鑑別の精度が上がります。

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GISTなど鑑別と方針

無症状は経過観察が多い一方、症状・増大・悪性疑いでは組織診断や切除を検討します。

胃異所性膵の所見と粘膜下腫瘍

 

胃異所性膵(迷入膵)は、本来の膵と連続性をもたず胃壁などに膵組織が存在する状態で、内視鏡では「粘膜下腫瘍(SMT)様の隆起」として遭遇しやすい病変です。

とくに胃の出口付近(幽門前庭部)に多いとされ、正常粘膜に覆われた半球状の隆起として見えるため、健診・スクリーニング内視鏡で「たまたま見つかる」典型例が少なくありません。

X線・内視鏡で補助所見として重要なのが、SMTに特徴的な架橋ひだ(bridging fold)や、頂部の中心陥凹delle(臍状のへこみ)です。

異所性膵では頂部に導管の開口を示唆するニッシェ(小さな陥凹)を伴うことがあり、「delle+導管開口」はそれらしいサインとして覚えておくと、鑑別の初動が早くなります。

ただし、文献的にも導管開口が常に見えるわけではなく、典型所見が欠ける例が一定数あるため、「見えない=否定」と短絡しない姿勢が重要です。

箇条書きで、現場で観察しておきたいポイントをまとめます。

胃異所性膵のEUSと中心陥凹

SMTの評価ではEUS(超音波内視鏡)が「必須」とされ、病変の主座(どの層にあるか)や内部性状から確定診断に迫ることができます。

胃異所性膵は粘膜下層〜固有筋層付近に主座をとることが多く、内視鏡での見た目が似ていても、EUSで層構造と連続性を丁寧に読むことで鑑別の精度が上がります。

一方で、EUSの目的は「当てる」ことだけではなく、悪性を示唆する所見を拾い上げて次の一手(経過観察か、組織診断か、切除か)を決める点にあります。

中心陥凹(delle)があると、その部分の壁構造が乱れたり、表層に潰瘍・びらんが乗っているように見えることがあり、GISTなど他のSMTでもdelleを取り得るため、所見の“組み合わせ”で読影するのが実務的です。

臨床の工夫としては、次のような「EUSで確認したい項目」をあらかじめ固定しておくと、所見記載が安定します。

  • 病変の主座(第2~3層か、第4層か)。​
  • 内部が均一か不均一か、嚢胞様変化があるか。

    参考)https://www.jmedj.co.jp/blogs/product/product_3912

  • 周囲臓器からの圧排ではないか(胃外性圧排との鑑別)。​

胃異所性膵とGISTの鑑別

胃SMTで頻度が高いのはGISTであり、SMTを見た時点でまずGISTを念頭に置く、という考え方自体は臨床的に合理的です。

問題は、胃十二指腸領域の異所性膵が、臨床・画像上GISTと似てしまい、術前診断が難しいことがある点です。

内視鏡では異所性膵にdelleや導管開口が手掛かりになる一方、GISTでもdelle(中心陥凹)を伴う例があり、「delle=異所性膵」と単純化できないのが落とし穴です。

EUSでは、悪性GISTで中心部壊死に伴う空洞形成(無エコー)や出血による高エコースポットが特徴になり得るため、「腫瘍内部の危険サイン」を拾う姿勢が重要です。

実際の症例報告でも、術前にGIST等を鑑別に挙げつつ、画像所見から良性を考え、最小限の切除範囲を目指してLECS(腹腔鏡・内視鏡合同手術)が選択される流れが示されています。

ここは医療従事者向けに、鑑別で迷いやすい点を短く整理します。

  • 「胃SMT=GISTが多い」ため、まずGISTを外せるかが出発点になる。
  • ただし異所性膵もGISTに似て見え、術前診断が困難なことがある。

    参考)CareNet Academia

  • EUSで“層”と“内部危険サイン”を評価し、必要なら組織診断や切除戦略へ進める。

胃異所性膵の治療と経過観察

胃異所性膵は無症状のことが多く、内視鏡検査で偶然見つかるケースが多いとされます。

治療は基本的に無症状なら積極的治療を要さない一方、まれに炎症(異所性膵炎)を起こして心窩部痛や背部痛の原因になり得るため、症状がある場合は「放置しない」判断が必要です。

また、極めてまれですが、がん化の報告もあるため、臨床では定期的な内視鏡による経過観察が望ましいという整理がされています。

加えて、手術適応の考え方として、症状がある・悪性が疑われる場合には切除を検討し得る、という臨床的整理が症例報告内でも言及されています。

病変が胃内発育型で漿膜側から同定しづらい可能性がある状況では、局在を内視鏡で正確に把握し、低侵襲で過不足のない切除を狙うLECSが適応になり得る、という提案も示されています。

医療現場での運用に落とすなら、次のような分岐が現実的です。

胃異所性膵の独自視点と記載

検索上位の解説は「定義・症状・治療」に寄りがちですが、実務で差が出るのは“記載の質”です(紹介状、内視鏡レポート、カンファ提出用の要約)。

胃異所性膵は典型所見が揃えば「それらしい」と言える一方、揃わない例もあるため、確度の高い表現(例:「異所性膵を疑う」「SMTとして鑑別に挙げる」)と、再現性のある所見列挙が患者安全につながります。

SMTの一般論として、架橋ひだ(bridging fold)、delle(中心陥凹)、鉗子での硬さ・可動性評価など基本所見を落とさないことが、鑑別の入口を整える最短ルートです。

さらに、EUSが可能なら「主座の層」「内部エコーの均一性」「胃外性圧排の否定」をテンプレ化し、次回比較ができる形で残すと、経過観察の説得力が上がります。

おすすめの“そのまま使える”レポート要素(例)です。

  • 部位(幽門前庭部大彎など)とサイズ(mm)と形態(SMT様、立ち上がりなだらか)。​
  • 表面(正常粘膜調、発赤の有無)とdelle/ニッシェの有無。​
  • EUS所見(主座の層、内部均一性、嚢胞変化の有無)。​
  • 方針(経過観察の理由、再検の目安、症状出現時の受診指示)。​

胃粘膜下腫瘍の基本所見(架橋ひだ・delle・EUSの考え方、異所性膵の図示あり)。

胃粘膜下腫瘍  水谷 勝(東京都がん検診センター消化器内科)
胃粘膜下腫瘍  水谷 勝(東京都がん検診センター消化器内科)

異所性膵(迷入膵)の原因・症状・治療と、無症状時の考え方(経過観察の位置づけ)。

内視鏡専門医が解説「異所性膵(迷入膵)の原因と症状・治療法」…

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