毛髪胃石 症状 と診断治療
毛髪胃石 症状 の特徴と腹部所見
毛髪胃石は摂取された毛髪が胃液や粘液の作用で固形化した胃石であり、多くは無症候か非特異的な症状から始まる点が臨床上の落とし穴になります。 症状が出現する場合、食後膨満感や心窩部痛、悪心・嘔吐、食欲不振、体重減少など、慢性の上部消化管症状として現れることが多いと報告されています。
本邦58例の集計では初発症状として腹部腫瘤触知が69%、腹痛が64%、悪心・嘔吐が38%とされ、触知可能な腹部腫瘤は重要な身体所見です。 腹部は平坦でも心窩部に弾性硬で可動性のある腫瘤を触れることがあり、若年女性の慢性腹痛や腫瘤では毛髪胃石を鑑別に挙げる必要があります。
参考)松下 ER ランチ・カンファレンス: Tric…
毛髪塊が増大し幽門部や十二指腸、小腸へ伸長すると、嘔吐の増悪や腹部膨隆、けいれん様腹痛など、機械的腸閉塞を疑う急性腹症として発症することもあります。 3歳女児で腹痛・嘔吐から発症し、十二指腸から小腸へ進展した毛髪胃石により小腸閉塞を呈した最年少例の報告もあり、小児領域でも決して例外ではありません。
参考)https://cir.nii.ac.jp/crid/1390845702301418240
毛髪胃石 症状 とラプンツェル症候群・腸閉塞
毛髪胃石が胃を越えて十二指腸や小腸まで尾状に伸びた状態はラプンツェル症候群と呼ばれ、腸閉塞や腸重積など重篤な合併症を引き起こします。 小腸内に落下した毛髪塊によりイレウスをきたした15歳女児例では、拡張した小腸ガス像とニボー形成、腹部全体の膨隆を認め、回腸内毛髪塊と胃内毛髪胃石が同時に確認されています。
小児例では腹痛・嘔吐で胃腸炎と誤診されることがあり、腹部CTで十二指腸や小腸内にair densityを含む網目状構造物を認めた時点で毛髪胃石による腸閉塞を疑う必要があります。 自閉スペクトラム症児に発症した毛髪胃石では、小腸憩室と組み合わさり腸重積症の原因となった極めて稀な報告もあり、精神発達障害と構造異常が重なると症状がより複雑化します。
合併症としては胃潰瘍、消化管出血、穿孔、腸閉塞、腸重積、代謝性アルカローシスなどが報告されており、嘔吐の持続に伴う脱水・電解質異常が急速に進行する例もあります。 若年女性の原因不明の鉄欠乏性貧血や体重減少が、実は長期間持続した毛髪胃石に伴う慢性的出血・摂食障害の結果であった症例もあり、症状の時間軸を丁寧に聴取することが重要です。
参考)https://www.igaku-shoin.co.jp/prd/gm3408/11.pdf
毛髪胃石 症状 と診断アプローチ・画像所見
胃石全般は無症状で偶然発見されることもありますが、症状出現時には上部消化管内視鏡による直接観察が診断の決め手となります。 毛髪胃石は不整で毛羽立った表面をもち、黄緑から灰黒色まで多様な色調を示し、生検で毛髪が確認されれば診断は確定します。
画像診断では、腹部単純X線で拡張した小腸ガス像やニボー形成、多量の胃内容物を認め、イレウス像として捉えられることが多いです。 腹部CTでは胃内あるいは腸管内にair densityを含む網目状の腫瘤として描出され、内部不均一な低〜等吸収域に点状の気泡が混在する所見が特徴的です。
超音波検査では、内部に多重反射を伴う高エコー腫瘤として描出され、音響陰影を伴うことがありますが、肥厚粘膜や腫瘍との鑑別にはCTや内視鏡が有用です。 鑑別診断としては、植物胃石(特に柿胃石)、薬物胃石、胃腫瘍、胃ポリープ、異物誤嚥、膵仮性嚢胞などが挙げられ、構成成分や既往歴(胃切除後、慢性便秘、特定薬剤の内服歴など)を確認する必要があります。
参考)胃石 – 01. 消化管疾患 – MSDマニュアル プロフェ…
高度の閉塞症状がなく鋭利な異物やボタン電池誤嚥が疑われない場合には、24時間程度の経過観察が可能とされていますが、毛髪胃石は自然排出が極めて稀であり、早期に専門医へ紹介すべき病態です。 また、術中胃切開時に電気メスによる可燃性ガスへの引火で小爆発を起こした報告もあり、ガス貯留が疑われる症例ではエネルギーデバイス使用に注意が必要という外科的観点の“意外なリスク”も知られています。
毛髪胃石 症状 と治療戦略・内視鏡治療と手術
治療選択は毛髪胃石の大きさ・部位・合併症の有無によって決まり、他の胃石と異なり薬物的溶解療法の効果はほとんど期待できません。 小さい毛髪胃石では、上部消化管内視鏡下にスネアやバスケットを用いて分割・回収しえた報告が少数ながら存在し、保存的治療で自然排泄したきわめて稀な例も記載されています。
しかし、過去の本邦報告では多くが内視鏡的摘出困難であり、巨大例やラプンツェル症候群、腸閉塞・穿孔合併例では開腹あるいは腹腔鏡下での摘出術が標準的です。 胃内のみの毛髪胃石であっても、小腸内に同時に毛髪塊が存在する例があり、術中は胃だけでなく小腸全長の触診・観察を行うことが再手術回避のポイントです。
参考)https://www.jsgs.or.jp/journal/abstract/034030254_j.html
術前には、嘔吐に伴う脱水・電解質異常(特に低クロール性代謝性アルカローシス)を是正し、低栄養や貧血の評価・補正を行う必要があります。 術後経過は概して良好とされますが、抜毛症や食毛症が持続していれば再発リスクが残存するため、退院前から精神科へのコンサルトと家族を含めた行動療法指導を組み込むことが推奨されます。
参考)https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.18888/sh.0000001354
化学的溶解療法としてコーラを用いた柿胃石溶解の報告が知られていますが、毛髪胃石に対する有効性は乏しく、むしろ胃内容量の増加や誤嚥リスクを高める可能性があるため、安易な適用は避けるべきです。 一方で、手術侵襲を最小限にするため、臍部小切開による小腸切開・毛髪塊摘出を行い良好な経過を得た小児例もあり、小児外科領域では整容性と侵襲度のバランスを考慮したアプローチが取られています。
参考)https://ameblo.jp/iizukablood/entry-12058480278.html
毛髪胃石 症状 と精神疾患・行動特徴からの早期察知(独自視点)
毛髪胃石の背景には抜毛症や食毛症などの精神・行動異常が高頻度に存在し、20歳未満の若年女性に多いことが一貫した特徴です。 しかし、頭部の脱毛が明らかでない症例も報告されており、髪を主に側頭部や後頭部から抜く、ウィッグや髪型で巧妙に隠すなど、周囲から気づかれにくいパターンも少なくありません。
医療従事者が外来・病棟で日常的に観察できる“ささやかなサイン”として、以下のような行動が挙げられます。
- 診察待ち時間に髪を指先でこすったり、口元まで頻繁に持っていく。
- 枕カバーや衣服に付着する毛髪量が明らかに多いのに、患者本人は気に留めていない。
- 爪噛みや唇いじりなど他の反復行動が同時に見られる。
- 学校・家庭でのストレスイベント(受験、いじめ、家族不和)に言及しつつ、表情が乏しい。
こうした観察所見は、問診票や身体診察だけでは拾いきれない精神的負荷の“行動的マーカー”となりうるため、腹部症状を訴える若年女性や発達障害児を診る際には、意識的に視線を向けることが重要です。 特に、原因不明の慢性腹痛・嘔吐に対し検査が反復されているにもかかわらず明らかな器質的異常が見つからないケースでは、「髪を口に運ぶ習慣はないか」「無意識に髪を抜いてしまうことがあるか」といった具体的な質問を穏やかに投げかけることで、隠れていた行動が明らかになることがあります。
精神科的には、毛髪胃石は自己攻撃性やストレスコーピングの破綻が身体化した一形態と捉えられ、認知行動療法や家族療法を含む長期的フォローが求められます。 医療従事者にとっては、毛髪胃石 症状を「消化管異物・外科疾患」としてだけではなく、「精神症状の身体的表現」として理解し、多職種連携で介入する視点が再発予防の鍵となります。
毛髪胃石の定義・分類・症状・診断・治療のプロフェッショナル向け総説として有用です(病態と症状・診断部分の参考)。
本邦における毛髪胃石症例集計と症状・合併症・治療の詳細がまとまった症例報告で、疫学・症状頻度の参考になります。
小児の毛髪胃石による腸閉塞症状やCT所見、小切開手術の実際が分かる症例報告です(小児症状と外科治療部分の参考)。