ベネキサート塩酸塩β-シクロデキストリン胃粘膜血流増加

ベネキサート塩酸塩β-シクロデキストリン胃粘膜

この記事で押さえる要点
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薬効薬理を「防御機構増強」で理解

胃粘膜血流、粘膜防御、内因性プロスタグランジンなど、効き方の骨格を臨床イメージに落とし込みます。

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用法用量と“漫然投与”回避

朝食後・就寝前の投与設計、胃炎で改善乏しい場合の見直し、妊婦禁忌などの注意点を整理します。

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β-シクロデキストリン包接の意味

難溶性の改善、吸湿と包接脱離、分解生成物など、意外と見落とされがちな“製剤由来の実務ポイント”を扱います。

ベネキサート塩酸塩β-シクロデキストリン作用機序と胃粘膜血流

 

ベネキサート塩酸塩β-シクロデキストリン(一般名:ベネキサート塩酸塩 ベータデクス)は、「胃粘膜に直接作用して血流量を増加させ、種々の胃粘膜防御機能を増強する」タイプの胃炎・胃潰瘍治療薬として位置付けられています。

この“防御機構増強”は、単に胃酸を下げるのではなく、粘膜側の耐性を上げる方向に働く点が臨床説明の核になります。

薬効を裏付ける試験として、急性胃炎患者の胃体部・前庭部へ局所投与した際、内視鏡的レーザードップラー法で測定した胃粘膜血流が注入直後から有意に増加した報告が挙げられます。

また、ラットでの検討では、経口投与後の胃粘膜血流量が用量反応性に増加し、条件によっては血流増加が1時間以上持続したとされています。

さらに重要なのが、粘膜防御の“多層性”です。胃粘膜内の高分子糖蛋白質(粘液の重要要素)の増加、NSAIDsなどで減少する粘膜成分の抑制、内因性プロスタグランジンE2/I2の増加、酸(水素イオン)の逆拡散抑制など、複数の防御因子に関わるデータがまとめられています。

医師・薬剤師間の会話では「血流」「粘液」「PG」「バリア(逆拡散)」の4語で構造化すると、PPI/H2ブロッカーとの役割分担が整理しやすくなります。

ベネキサート塩酸塩β-シクロデキストリン効能効果と臨床成績

効能又は効果は、急性胃炎・慢性胃炎の急性増悪期における胃粘膜病変(びらん、出血、発赤、浮腫)の改善、および胃潰瘍です。

“症状”ではなく“内視鏡所見を含む粘膜病変の改善”が主語になっているため、患者説明でも「胃の荒れ(ただれ・出血など)の改善」という言い換えが安全です。

承認時データとして、急性胃炎・慢性胃炎の急性増悪期に対する4週投与後の有効率は81.0%(128/158)、胃潰瘍に対する8週投与後の有効率は80.2%(295/368)と記載されています。

さらに、探索的試験では、胃炎に対して1日800mg(1回400mgを1日2回)が至適用量として考えられた経緯が説明されています。

臨床現場では、「炎症期の粘膜修復を助ける薬」という理解で導入されがちですが、病変が改善しない場合に長期で漫然と使わない、という注意が明記されている点が実務上重要です。

特に、機能性ディスペプシア様の訴えが主体で内視鏡所見が乏しいケースでは、評価指標(症状か所見か)をチーム内で揃えてから処方継続を判断すると、薬剤の立ち位置がぶれにくくなります。

ベネキサート塩酸塩β-シクロデキストリン用法用量と重要な基本的注意

用法及び用量は、通常成人で1回400mg(本剤2カプセル)を1日2回、朝食後および就寝前に経口投与し、年齢・症状により適宜増減します。

「朝食後+就寝前」という設計は、日中と夜間の粘膜ストレス(食事・胃酸・胆汁逆流など)を臨床的に意識しやすく、服薬指導でも“タイミングの意味”として伝えやすい要素です。

重要な基本的注意として、胃炎に対して胃粘膜病変の改善がみられない場合、長期にわたって漫然と使用すべきでないとされています。

この一文は、処方継続の「出口戦略」を先に決める根拠になるため、薬局・病棟の薬剤師は処方監査コメントに落とし込む価値があります。

禁忌として「妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には投与しない」が明確に記載され、動物実験(ラット)で臨床用量の150倍投与により催奇形作用が報告された旨が併記されています。

同系統薬では“慎重投与”止まりのものもあるため、妊娠関連はベネキサート塩酸塩β-シクロデキストリンのチェックポイントとして、処方入力時アラートや問診票に組み込みたい項目です。

参考:PMDAの添付文書XMLで禁忌・用法用量など一次情報を確認(妊婦禁忌、効能効果、用法用量の確認に有用)

PMDA:ベネキサート塩酸塩ベータデクス 添付文書

ベネキサート塩酸塩β-シクロデキストリン副作用と安全性モニタリング

承認時の安全性評価では、副作用は708例中25例(3.53%)に認められ、主なものとして悪心・便秘などの消化管障害、肝機能異常などが挙げられています。

再審査終了時の大規模集計では、91,660例中135例(0.15%)と記載され、頻度としては低いものの、消化器症状と肝胆道系の検査値変動が中心です。

添付文書/IFの副作用表では、そう痒感・発疹、便秘・下痢、AST/ALT軽度上昇、頭痛などが整理されており、患者の訴えとして拾いやすい項目が多いのが特徴です。

参考)医療用医薬品 : ウルグート (ウルグートカプセル200mg…

医療従事者向けには「嘔気・便通変化は初期に出やすいので服薬アドヒアランスを落としやすい」「AST/ALTは“重篤”ではなくても継続時の説明コストになる」という2点をセットで共有すると、フォローが回ります。

また、慎重投与として血栓のある患者、消費性凝固障害のある患者が挙げられ、in vitroで抗プラスミン作用が報告されている点は、消化器領域の薬としては意外性があり見落とされがちです。

抗凝固療法中患者では直接の相互作用が明記されていなくても、既往・リスク背景を踏まえた「念のための観察」につなげる材料になります。

ベネキサート塩酸塩β-シクロデキストリンβ-シクロデキストリン包接と製剤学(独自視点)

ベネキサート塩酸塩β-シクロデキストリンの“β-シクロデキストリン”は、名前の飾りではなく、難溶性であるベネキサート塩酸塩を包接化合物(clathrate)として溶解性を改善する狙いで設計された背景があります。

IFには、ベネキサート塩酸塩が水に難溶性であるためβ-シクロデキストリンとの包接化合物とし、共同開発が進められた経緯が明記されています。

ここから先は、現場で役に立つ“製剤由来の落とし穴”です。苛酷試験で湿度に対して不安定で、相対湿度上昇に伴う水分増加と「包接の脱離」が認められたとされます。

つまり、PTP/ピロー開封後の保管環境が悪いと、外観変化(凝集)や品質リスクにつながり得るため、病棟の与薬カート・分包機周辺の高湿環境は地味に相性がよくありません。

さらに、保存中の分解生成物として「非包接ベネキサート塩酸塩」「β-シクロデキストリン」などが挙げられており、製剤が“包接体として成立していること”自体が品質の一部であることが読み取れます。

薬剤師の立場では、患者が「カプセルが固まった」「粉っぽい」などと訴えた際、単なる気のせいとして処理せず、保管状況(浴室近く、夏場の車内、台所)を確認して交換提案につなげると医療安全の質が上がります。

加えて溶出規格として、水を試験液とした溶出試験で20分85%以上といった情報がIFに記載されており、これも“水に難溶性だから包接で改善した”という設計思想と整合します。

製剤開発の意図を知っていると、嚥下困難で開封・懸濁を検討する場面などで、安易な剤形変更が適切かどうかの議論がしやすくなります(※実施可否は施設手順・最新添付文書に従う前提)。

参考:インタビューフォームで製剤学(溶解性、吸湿、包接脱離、分解生成物、溶出規格)を確認(保管指導や品質相談の根拠に有用)

医薬品インタビューフォーム(ベネキサート塩酸塩ベータデクス)

バイオツ アルファCD アルファシクロデキストリン錠