乾癬性関節炎 治療 ガイドライン
乾癬性関節炎 治療 ガイドラインの診断と分類(CASPAR)
乾癬性関節炎(PsA)は乾癬に関節症状を伴う慢性炎症性疾患で、診断と治療が遅れると不可逆的な関節の変形・破壊を来しQOLを大きく損なうため、早期診断と早期治療が強調されています。
乾癬性関節炎診療ガイドライン2019(日本皮膚科学会PDF)
一方でPsAは臨床像が多彩で、皮膚科・整形外科・内科リウマチのいずれの入口からも「疑う力」と連携が必要、とガイドライン自体が明記しています。
乾癬性関節炎診療ガイドライン2019(日本皮膚科学会PDF)
分類・研究目的の基準として代表的なのがCASPAR分類基準で、「炎症性筋骨格系疾患(関節・脊椎・付着部)」を前提に、乾癬(現存/既往/家族歴)、爪病変、RF陰性、指趾炎、画像上の骨新生などを点数化して用います(感度・特異度も提示)。
乾癬性関節炎診療ガイドライン2019(日本皮膚科学会PDF)
ただしCASPARは「診断基準ではなく分類基準」であり、基準を満たさないPsA(偽陰性)や、満たしてもPsAでない(偽陽性)があり得る点は、実臨床の落とし穴として押さえておく必要があります。
乾癬性関節炎診療ガイドライン2019(日本皮膚科学会PDF)
また、乾癬が先行する例が多い一方で、一定割合で関節症状が先行または同時発症するため、「皮疹が軽い/目立たない」ケースでも、DIP関節、指趾炎、付着部炎、爪の異常など“PsAらしさ”を拾うことが重要です。
乾癬性関節炎診療ガイドライン2019(日本皮膚科学会PDF)
鑑別としてはOA(変形性関節症)や痛風、RAなどが現実的に多く、乾癬患者の関節痛の背景は混在し得るため、関節症状を見たら「PsA単独か、PsA+OAか」まで含めて考えると外来の意思決定がスムーズになります。
乾癬性関節炎診療ガイドライン2019(日本皮膚科学会PDF)
乾癬性関節炎 治療 ガイドラインの重症度と評価指標(DAPSA・MDA)
PsAは「末梢関節炎」「体軸病変」「付着部炎」「指趾炎」「爪病変」「皮膚乾癬」など複数ドメインが絡み合う疾患で、ガイドラインでは活動性・重症度の評価に複合指標を用いる意義が詳述されています。
乾癬性関節炎診療ガイドライン2019(日本皮膚科学会PDF)
実務上扱いやすい代表がDAPSAで、疼痛VAS、患者全般評価、腫脹関節数(66関節)、圧痛関節数(68関節)、CRPから構成され、末梢関節炎中心の活動性把握に向きます。
乾癬性関節炎診療ガイドライン2019(日本皮膚科学会PDF)
一方で、DAPSAだけでは付着部炎・指趾炎・皮膚病変などを取りこぼしやすいので、病像に応じてCPDAIやPASDAS、MDA(minimal disease activity)なども視野に入れ、外来の時間制約下でも「何を測るべき患者か」を最初に決めるのが現実的です。
乾癬性関節炎診療ガイドライン2019(日本皮膚科学会PDF)
「意外に見落とされやすい」点として、PsAでは炎症マーカーが必ずしも上がらず、CRPや血沈が正常でも活動性が高い患者がいるため、採血だけで安心しない設計が必要です。
乾癬性関節炎診療ガイドライン2019(日本皮膚科学会PDF)
また、RAのDAS28をそのまま流用すると、PsAで罹患しやすいDIP関節や足部の評価が抜けやすいという構造的な弱点があり、評価指標の選択が治療強度の判断に影響します。
乾癬性関節炎診療ガイドライン2019(日本皮膚科学会PDF)
治療目標の考え方としては、疾患活動性を定期的に評価して寛解または低疾患活動性を目指す「Treat to Target(T2T)」が提示され、治療を固定化せず調整する前提が重要です。
乾癬性関節炎診療ガイドライン2019(日本皮膚科学会PDF)
実臨床では、皮膚のコントロールが良いのに付着部炎だけが残る、逆に関節は落ち着いているのに爪や頭皮が難治、など「ドメインごとの不一致」が起こるため、単一指標だけで“治療成功”と判定しない姿勢が安全です。
乾癬性関節炎診療ガイドライン2019(日本皮膚科学会PDF)
乾癬性関節炎 治療 ガイドラインの薬物療法(NSAID・MTX・生物学的製剤・JAK阻害薬)
国内の「乾癬性関節炎診療ガイドライン2019」は、臨床設問(CQ)形式で、NSAID、MTX、SASP、ステロイド、PDE4阻害薬、JAK阻害薬、生物学的製剤(TNF阻害、IL-12/23、IL-23、IL-17など)まで幅広く扱い、国内事情も踏まえた推奨を提示しています。
さらに、乾癬領域では「生物学的製剤の使用ガイダンス(2022年版)」が、安全性・施設要件・感染対策・ワクチンなど実務寄りの詳細を提供しており、関節症状を伴うケース(乾癬性関節炎/関節症性乾癬)にも言及があります。
海外の最新潮流として、EULARの2023アップデートでは、NSAID単独療法は「軽症かつ短期」に限る、経口グルココルチコイドは推奨しない、末梢関節炎ではcsDMARDを迅速に開始しMTXが好ましい、といった骨格が示されています。
EULAR recommendations 2023 update(Ann Rheum Dis)
同推奨では、治療目標が未達ならbDMARDを開始し、作用機序に優劣をつけない一方、皮膚症状が強い場合はIL-23/IL-17系を意識する、ぶどう膜炎や炎症性腸疾患がある場合は単クローン抗体のTNF阻害薬を考慮するなど、「併存症で薬を寄せる」考え方が整理されています。
EULAR recommendations 2023 update(Ann Rheum Dis)
また、JAK阻害薬は主にbDMARD不応後に位置づけ、リスク因子を踏まえて選ぶ、とされ、薬剤選択は有効性だけでなく安全性の層別化が前提になっています。
EULAR recommendations 2023 update(Ann Rheum Dis)
実臨床向けの整理として、下記のように「病態ドメイン×薬剤クラス」を最初に頭の中でマッピングしておくと、ガイドラインを参照する時間を短縮できます。
・🟦 末梢関節炎:csDMARD(MTX等)→ 目標未達でbDMARD/tsDMARD(病態・併存症で選択)EULAR recommendations 2023 update
・🟩 皮膚症状が強い:IL-23p19、IL-23p40、IL-17A、IL-17A/Fなどを意識(皮膚の改善で満足度が変わる)EULAR recommendations 2023 update
・🟨 ぶどう膜炎/炎症性腸疾患:単クローン抗体TNF阻害薬を意識(合併症を悪化させない選択)EULAR recommendations 2023 update
「意外な実務ポイント」として、乾癬領域の生物学的製剤ガイダンスでは、薬剤選択の要素に“患者利便性(通院間隔、自己注射、維持治療の場)”や“患者負担(コスト)”まで明記されており、治療継続率を上げるのは薬効だけではないことが言語化されています。
同ガイダンスでは、関節症状は日常生活に支障が出る前に関節破壊を抑制する重要性が強調され、末梢関節炎の一つの具体基準(腫脹関節数3以上かつ疼痛関節数3以上)まで書かれているため、紹介状や診療録の記載項目の標準化に使えます。
乾癬性関節炎 治療 ガイドラインの併存症と安全対策(結核・HBV・感染症)
生物学的製剤やJAK阻害薬を扱ううえで、薬剤選択と同等以上に重要なのが「スクリーニングとモニタリングの設計」で、乾癬の生物学的製剤ガイダンス(2022年版)は、感染症対策をかなり具体的に提示しています。
特に結核については、問診・胸部画像(X線/CT)・IGRAなどを用いた総合判定、潜在性結核が疑われる場合のINH予防内服を含むフローが示され、実臨床の“抜け”を減らすチェックリストとして使えます。
またHBVに関して、HBs抗原だけでなくHBs抗体・HBc抗体も測定し、既往感染でも再活性化があり得るためHBV-DNAのモニタリングを行う、という運用が明確に書かれており、紹介元・紹介先で情報を揃えるのに役立ちます。
「意外に実装が難しい」点として、発熱・咳・呼吸困難が出たときの一次対応(薬剤の一旦中止、画像、培養、β-Dグルカン、PCP評価など)をフローチャートで提示しているため、院内の救急・当直体制とすり合わせた“共通手順”として整備しやすいのが特徴です。
IL-17阻害薬では表在性カンジダ症が特徴的副作用として挙げられ、口腔内の違和感の問診や必要時の真菌検査、口腔衛生指導など“診察室でできる予防”が明記されている点は、外来の質改善ネタとして有用です。
併存症については、PsA/乾癬が慢性の全身性炎症として、メタボリック症候群、心血管イベント、ぶどう膜炎、炎症性腸疾患などが問題になり得ることがガイドラインで整理されており、薬剤選択(例:IBD合併ならIL-17は慎重など)に直結します。
乾癬性関節炎診療ガイドライン2019(日本皮膚科学会PDF)
ここは「皮膚科は皮膚だけ」「整形は関節だけ」になりやすいポイントなので、診療録テンプレに併存症チェック(糖尿病、脂質、血圧、喫煙、既往感染、眼症状、消化器症状など)を固定で入れるだけでも、ガイドライン準拠の診療に近づきます。
乾癬性関節炎診療ガイドライン2019(日本皮膚科学会PDF)
乾癬性関節炎 治療 ガイドラインの独自視点:診療連携と「診断遅延6か月」を減らす設計
乾癬性関節炎では、症状出現から診断までの遅れが画像所見の変化や機能障害と関連し、早期診断・早期治療が予後を改善し得ることがガイドライン内で繰り返し示されています。
乾癬性関節炎診療ガイドライン2019(日本皮膚科学会PDF)
つまり「良い薬を知っている」だけでは不十分で、現場でのボトルネックは“拾い上げ”と“紹介”の速度です。
乾癬性関節炎診療ガイドライン2019(日本皮膚科学会PDF)
そこで独自視点として、診療フローに小さく仕組みを入れると、ガイドラインの意図(早期診断)を実現しやすくなります。
✅ 外来オペ改善アイデア(そのまま運用に落とせる形)
・📝 乾癬外来の問診票に「朝のこわばり」「指全体の腫れ(指趾炎)」「踵の痛み(付着部炎)」「腰背部痛(体軸)」「爪の変化」を固定項目で追加(Yes/No)。
乾癬性関節炎診療ガイドライン2019(日本皮膚科学会PDF)
・📏 診察では「腫脹関節数」「疼痛関節数」を最低限だけでも数値化し、紹介状にも同じ2項目を必ず入れる(治療強化の議論が一気に早くなる)。
・🔁 生物学的製剤/JAK阻害薬の前に必要な検査(結核、HBVなど)を「チェックリスト化」して、オーダー漏れをゼロにする(導入までの日数短縮=患者満足度に直結)。
さらに、EULAR推奨が強調するTreat-to-Targetは「評価→調整」を回すことが核心なので、診療間隔・評価指標・変更基準(例:一定期間で目標未達なら次段階へ)を施設内で統一すると、医師が変わっても治療がぶれにくくなります。
EULAR recommendations 2023 update(Ann Rheum Dis)
この“運用の標準化”は検索上位記事にはあまり出てきませんが、医療従事者向けブログとしては現場に刺さりやすい論点で、ガイドライン遵守と業務効率を同時に上げられるテーマです。
有用:国内ガイドラインの目次(CQ一覧)で、薬物療法~非薬物療法~妊娠授乳まで論点を俯瞰できる
有用:生物学的製剤の導入前後のスクリーニング、結核/HBV、感染時フローなど「安全対策の実務」がまとまっている
https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/xoops/files/guideline/kansen2022.pdf

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