回帰性リウマチ治療
回帰性リウマチ治療の基本と関節リウマチ移行
回帰性リウマチ(palindromic rheumatism: PR)は、関節の腫れ・痛み・赤み・熱感といった関節炎を周期的に繰り返す病態で、発作は数時間でピークに達したのち数日〜1週間程度で消失し、発作のない期間が数日〜数か月続くのが典型です。
慶應義塾大学病院 KOMPAS(回帰性リウマチ)にも同様の経過が整理されています。
長期経過では自然治癒が一定割合ある一方、典型的な関節リウマチ(RA)へ移行する患者が一定数存在し、KOMPASではRA移行が20〜60%と記載されています。
この「移行する可能性がある可逆性の反復発作」という二面性が、PR治療の難しさです。発作が短く終わるため“その場しのぎ”になりやすい一方で、移行リスクが高い集団では「将来の関節破壊を防ぐ視点」での介入判断が必要になります。
治療の土台は、発作時の疼痛・炎症を抑える対症療法です。KOMPASでは発作時にNSAIDsが一定程度有効とされる一方、十分な効果が得られないこともある点が明記されています。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/e3db6d0ab853d02ff5e3f0eaf68596eae4deb7eb
また、ステロイド内服は症例によって有効だが、発作が短期間で軽快すること・基本的に関節破壊が目立たないこと・副作用を踏まえると適応はごく一部に限られる、と慎重な位置づけです。
さらに本質的な課題として、「繰り返す発作を予防する最良の治療法は現時点で知られていない」「抗リウマチ薬(DMARD)の効果も明らかではないが、症例によって期待できる場合がある」という“エビデンスの薄さ”が、日常診療の迷いどころになります。
ここで重要なのが、PRを“単なる反復性の関節痛”として扱わず、RA前駆(あるいは早期RAの一部)としての側面を常に意識することです。例えば専門クリニックの解説では、回帰性リウマチを関節リウマチの初期段階と捉え、抗CCP抗体陽性・RF高値・CRP/ESR陽性・関節エコーで炎症所見がある場合はRAとして治療介入の対象になり得る、という整理が提示されています。
参考)302 Found
この考え方は、PRという診断名に安心して経過観察のみを続けるのではなく、「移行のサインが出た時点で治療のギアを上げる」実務に直結します。
回帰性リウマチ治療と抗CCP抗体とリウマトイド因子
抗CCP抗体(ACPA)は、PRからRAへ移行するリスク評価の中心指標です。古典的な追跡研究でも、PR患者のうちRAへ進展した群の多くでベースラインの抗CCP抗体が認められ、RFよりも予測性能が良い、という報告があります(Russellら)。
国内向けの臨床解説でも、PR患者の検査所見としてRFが発作時に約半数で陽性となり得ること、RF陽性例は発作の程度・頻度が重いことが多いこと、そしてRF陽性はRA移行が約3倍という報告があることが示されています。
つまり、PRの“治療強度を上げるかどうか”は、症状だけでなく血清学的リスクで判断するのが合理的です。
一方で、抗CCP抗体は「RAの確定診断」ではなく「確率を大きく上げる」検査である点を、医療従事者として患者説明に落とし込む必要があります。国内クリニックの解説では、抗CCP抗体はRAに対して特異度95〜98%とされ、早期には陽性率が低いこともあり得る、という実務的な注意点がまとめられています。抗CCP抗体陽性(築地リウマチ膠原病クリニック)。
参考)抗CCP抗体陽性
PRで抗CCP抗体が陽性の場合、「今は発作が引くから大丈夫」ではなく、①関節腫脹の持続の有無、②エコー所見、③発作間隔の短縮、④喫煙歴なども含め、RA移行の“時間軸”を見積もる説明が重要です(後述)。acrabstracts+1
患者側は“検査陽性=すぐにRA確定”と受け取りやすいため、「陽性は将来リスクの強いサインであり、フォローと予防的な方針検討が必要」という言い換えが、不要な不安を減らしつつアドヒアランスを上げます。
抗CCP抗体の“高力価”がより強いリスクを示す可能性も示唆されています。学会抄録レベルですが、PR患者の進展群で抗CCP陽性率や抗CCP力価が高いことが報告されており、力価も層別化に使い得る、という視点は臨床で意外に盲点になりがちです。ACR Meeting Abstracts(PR進展因子)。
参考)In Palindromic Rheumatism, Old…
ただし抄録情報は詳細が限定されるため、実際の運用では「抗CCP陽性かどうか」「RF陽性かどうか」「臨床的に持続性関節炎の芽があるか」をまず押さえ、次に力価や他因子を補助情報として扱うのが安全です。acrabstracts+1
回帰性リウマチ治療と関節エコーとCRPとESR
PRの診断・治療方針で見落とされやすいのが、「非発作時に患者が元気で、診察所見も乏しい」という特性です。KOMPASでも、非発作時の全身状態は良好で通常は障害が残らない、とされており、受診時に“何もない”ことがむしろ典型になり得ます。
この構造上、採血(CRP/ESR)が正常、触診で腫脹が乏しい、という理由だけで「炎症はない」と判断しやすいのが落とし穴です。
そこで関節エコーが意味を持ちます。KOMPASでは発作時に関節エコーで滑膜炎が確認されることがあるとされ、さらに国内解説では「身体診察や採血で炎症がおさまっていても関節エコーで炎症所見がある場合は、関節リウマチとして治療介入の対象となる」という踏み込んだ記載があります。
実務では、エコーを「診断のための検査」だけでなく、「治療強度を決める検査」に位置づけると整理しやすくなります。具体的には、抗CCP抗体陽性で発作頻回、または発作間隔が短くなっている患者に対し、エコーで滑膜肥厚や血流シグナルを確認できるかは、治療を“RA準拠(DMARDを含む)”へ寄せる重要な根拠になります。ard.bmj+1
逆に、抗CCP陰性で発作が年数回、間欠期にエコー所見も乏しい場合は、NSAIDs中心で「発作時に短期介入し、間欠期は筋力低下を防ぐ」方針が患者の負担と利益のバランスが取りやすいでしょう(生活指導は後述)。
CRP/ESRは、発作時に上がることはあっても“決め手”にならない点が重要です。KOMPASでは、発作時に白血球増多、軽度〜中等度の赤沈亢進、CRP上昇などがみられ得るが明確な診断に至るものではない、と整理されています。
したがって、採血だけで「PRらしい/RAらしい」を確定するのではなく、臨床経過(発作の短さ・可逆性)+血清学(抗CCP/RF)+画像(エコー)をセットで積み上げるのが、医療従事者向けに再現性の高い戦略です。jstage.jst+1
回帰性リウマチ治療とNSAIDsとステロイドとDMARD
発作時治療は、まずNSAIDsで疼痛と炎症を抑え、発作の自然軽快を待つ、という設計が基本になります。
ただしNSAIDsは“効けば十分”ではなく、「効かない」「発作が頻回」「日常生活が崩れる」場合に次の手を考える必要があります。実臨床の解説でも、NSAIDsで経過をみつつ、効果不十分や発作頻度が多い場合は抗リウマチ薬(DMARD)を使用することがある、とされています。
ステロイドは、KOMPASが述べるように症例によって有効だが適応は限定的という整理が妥当で、特に“発作が終われば漫然と続けない”という原則は、後述する日本医事新報の記載とも整合します。
実務で役立つのは、短期ステロイドの「目的」を明確にすることです。すなわち、(1) 強い痛みで睡眠や歩行が破綻している、(2) NSAIDs禁忌や副作用で使用困難、(3) 発作が長引いて機能障害が大きい、といった状況で、短期で炎症を“落とし切る”ための選択肢として位置づけます。jmedj+1
日本医事新報の「私の治療」では、発作時はNSAIDs中心、効果不十分なら一時的なグルココルチコイド投与(関節内・筋肉内・経口)を試みることがある一方、発作が終息すれば漫然と継続せず速やかに中止すると明記されています。回帰性リウマチ[私の治療](日本医事新報社)。
参考)https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=25209
この“切れ味よく止める”原則は、PRが基本的に可逆性であること、そしてステロイド毒性が累積し得ることを考えると、医療安全の観点からも強調すべきポイントです。jmedj+1
DMARDについては、PRに特化した確立ガイドラインが乏しく「経験則」と「RAへの移行リスク」をどう統合するかが鍵になります。KOMPASでも「抗リウマチ薬の効果は明らかではないが、症例によっては期待できる」と留保付きで述べています。
ここで“あまり知られていないが臨床的に重要”なのは、PRを対象にした薬剤介入研究が近年ようやく前向きに組まれ始めている点です。例えば、PR(自己抗体陽性など高リスク群)で、アバタセプト(ABA)とヒドロキシクロロキン(HCQ)を比較しRA進展抑制を評価する試験デザインが報告されています(EULAR抄録)。ABATACEPT versus hydroxychloroquine…(Ann Rheum Dis, EULAR abstract)。
さらに報道ベースではありますが、自己抗体陽性の最近発症PRにおいてABAがHCQよりRA進展抑制で優れた可能性が示された、とする記事もあり、今後「PRのうち誰を“前臨床RA”として扱うか」が治療選択に反映されていく可能性があります。Medscape(PRでのABA vs HCQ)。
参考)Abatacept Beats HCQ in Halting…
なお、日本国内でHCQは適応や運用が国・時期で異なるため、PRにそのまま当てはめて推奨するのではなく、施設の採用状況と規制・適応を確認したうえで、RAガイドラインの枠組み(csDMARD→bDMARD/tsDMARD等)も参照しながら意思決定するのが現実的です。ryumachi-jp+1
回帰性リウマチ治療の独自視点:発作間隔と喫煙と歯周病
検索上位の解説は「症状」「検査」「薬物療法」に寄りがちですが、臨床現場で意外に効くのが、患者が自分で握れる“発作トラッキング”の導入です。PRは発作が不定期で、薬剤効果の評価も難しいとKOMPASに明記されているため、発作日・持続時間・関節部位・誘因(睡眠不足、感染、過負荷など)を簡便に記録してもらうだけで、フォローの質が上がります。
さらに、進展リスクの観点では「発作間隔が短い」ことが危険信号になり得る、という報告があり、抄録ながら“発作間隔<1か月”が進展予測因子に入った解析も提示されています。
DEVELOPMENT OF SCORES FOR RISK STRATIFICATION(Ann Rheum Dis, abstract)。
つまり、薬の話だけでなく「最近、発作の間隔が詰まっていないか」を定量的に拾うこと自体が、治療方針(検査追加、エコー、RA準拠治療への移行)のトリガーになります。
生活因子としては、確実な予防策はないとしつつも、喫煙や肥満がリウマチ発症のリスクであること、歯周病原因菌が関与する可能性があることが指摘されています。
この“歯周病”は患者教育の導入に使いやすい割に、PR外来では見落とされがちです。歯科受診や口腔衛生の改善は低リスクで実行可能性が高く、「炎症を増幅させる因子を減らす」という行動目標に落とせます。
また、喫煙歴は進展因子の候補として解析に含まれている報告もあり、禁煙支援は“全身管理”ではなく“リウマチ移行リスク管理”として提示できるのがポイントです。ard.bmj+1
加えて、発作時に患部を無理に動かすと炎症が悪化し得る一方、動かさないと筋力低下や関節可動域低下につながるため、「過負荷を避けつつ適度に動かす」という生活指導はPRでも重要です。
ここを丁寧に説明すると、患者は「痛いから完全安静」か「良くなったから無理してOK」の二択から抜け出せます。結果として、発作時の疼痛コントロール、間欠期の機能維持、そしてRAへ移行した場合の治療アドヒアランスにも好影響が出やすくなります。
(検査の実務に関する権威性のある日本語参考)抗CCP抗体の感度・特異度や早期での解釈、無症状陽性者の発症率など、臨床説明に使える具体値がまとまっています。
(診療情報としての権威性のある日本語参考)回帰性リウマチの症状・検査・治療・生活上の注意が体系的に整理され、医療者の説明設計にも使えます。
回帰性リウマチ(慶應義塾大学病院KOMPAS)

ワイズ製薬 強心薬(センソ配合)15日分|動悸・息切れ・不眠に悩む方へ【第2類医薬品】