顎関節症治療は何科と口腔外科受診

顎関節症治療は何科

顎関節症「何科」最短で迷わない要点
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原則:歯科口腔外科が入口

顎関節・咀嚼筋の評価、スプリントや運動療法など保存的治療の設計が中心。必要時は医科へ紹介して安全を担保。

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鑑別が最重要

顎関節症に似た「緊急性のある疾患」を除外してから顎関節症の診断へ。頭蓋内疾患・感染・骨折などの見落とし防止。

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画像の使い分け

円板はMRI、骨変化はCTが基本。保存療法で改善しない/悪化する場合は高次医療機関で画像+専門治療を検討。

顎関節症治療は何科の受診フローと口腔外科の役割

 

顎関節症(TMD)は、顎関節や咀嚼筋の疼痛、顎関節雑音、開口障害ないし顎運動異常を主要症候とする「包括的診断名」で、病態として咀嚼筋痛障害・顎関節痛障害・顎関節円板障害・変形性顎関節症が位置づけられています。

この枠組みで診療するなら入口は原則「歯科(顎関節を扱う一般歯科)」または「歯科口腔外科」で、初診から病態説明・疾患教育・セルフケア指導を含めた可逆的な保存療法を組み立てやすい点が強みです。

一方で、顎関節症に似た症状は他疾患でも起こり得るため、受診フロー上は「鑑別診断→顎関節症の検査・診断→基本治療→再評価」という順番を医療者側が明確にして患者不安を減らすことが重要です。

患者向けの説明では、まず「顎の痛み=すぐ手術」ではなく、顎関節症は時間経過とともに改善・治癒していくことが多く、一選択は保存的で可逆的な治療(セルフケア+専門的ケアの組み合わせ)という原則を提示すると納得されやすいです。

また、基本治療での改善は2週間〜1か月程度で期待され、長くとも3か月程度の治療で改善しない場合はMRIなどの高度画像検査や、医療連携による専門的対処へ移行する、という見通しを最初に共有すると中断が減ります。

歯科口腔外科は、疼痛誘発テスト、開口路・開口距離の評価、雑音(クリック/クレピタス)の整理、必要時の画像依頼・専門医紹介を一本化しやすく、結果として「何科を回ればよいか」を短縮できる立ち位置です。

顎関節症治療は何科で鑑別診断と危険サイン

顎関節症を疑う症状(顎関節痛、開口障害、雑音)の背後に、頭蓋内疾患、感染、骨折、腫瘍、神経障害性疼痛などが隠れている可能性があるため、最初に「緊急性を要する疾患を見落とさない」鑑別がガイド上も強調されています。

特に、外傷歴がある開口障害では顎関節の骨折(関節包内骨折を含む)を念頭に置き、単純X線で不十分ならCTが有効とされています。

感染性顎関節炎では痛みだけでなく腫脹・熱感・圧痛、関節液貯留に伴う下顎偏位や患側臼歯部の開咬などが起こり得るため、典型的な顎関節症の経過として扱わず、早めに医科/病院口腔外科へ連携する判断が必要です。

意外に見落としやすいのが「顎の痛みとして感じる放散痛」で、虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)の痛みが下顎や頸部に放散することがある点は、医療従事者として患者教育の範囲外にせず“安全確認”の観点で知っておく価値があります。

また、三叉神経痛・舌咽神経痛は顎運動や嚥下に合わせて電撃痛が起こりうるため、顎関節症の「動かすと痛い」と紛らわしく、トリガーや発作性の特徴を問診で拾うことが重要です。

さらに、破傷風は初発が開口障害(牙関緊急へ進行)になり得るため、顎関節症として経過観察にしてしまうと致命的になりうる“赤旗”として周知すべきです。

顎関節症治療は何科で診断基準と画像検査(MRI・CT)

顎関節症の診断は病態分類に基づき、疼痛誘発テストや開口距離などの系統的診察を行い、必要に応じて画像検査を組み合わせる流れが推奨されます。

雑音評価では、明確な単音の「クリック」は復位性円板障害の根拠になり、持続時間が長い摩擦音の「クレピタス」は変形性顎関節症の根拠になる、と整理されます。

開口距離は、無痛最大開口・自力最大開口・強制最大開口の差から筋原性か関節内障害かの推定に役立つとされ、たとえば無痛最大開口が小さい一方で強制最大開口が大きい場合は筋原性の開口障害を疑う、という臨床判断の型が提示されています。

画像検査の使い分けは、患者説明の質を上げるポイントです。

復位性/非復位性の顎関節円板障害は、MRIが利用できる場合は速やかにMRIで確定診断する、と診断基準に明記されています。

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10744503/

一方、変形性顎関節症はCTあるいはMRIで骨変化(erosion、osteophyteなど)を評価して確定診断する、とされ、MRI/CTを“症状があるから一律に撮る”のではなく“疑う病態と治療選択のために撮る”と説明すると納得が得やすいです。

なお、パノラマX線は鑑別疾患の除外や骨変化の概略評価に有用ですが、顎関節に斜め入射となるため下顎頭外形の読み取りに注意が必要で、必要ならCT/CBCT/MRIを二次医療機関へ依頼する流れが示されています。

この点を踏まえると、「何科」問題は実質的に「どこまでの検査と治療の設計ができるか」であり、MRI/CTへつなぐ導線を持つ歯科口腔外科(病院口腔外科を含む)がハブになりやすい、という結論になります。

患者が耳鼻科や整形外科を先に受診してしまうケースでは、症状が顎関節由来か、耳疾患・頸部由来かの切り分けが必要なので、最終的に歯科口腔外科で咬合・咀嚼筋・顎関節を一体として評価する意義を言語化しておくと紹介がスムーズです。

顎関節症治療は何科で基本治療(保存療法・スプリント・薬物・理学療法)

顎関節症の基本治療は、病態説明と疾患教育から始まり、理学療法・薬物療法・アプライアンス療法(スプリント)などの可逆的な保存療法を主体としてセルフケアも含めて行うべき、と明確に記載されています。

これは「不可逆的な咬合介入は初期から行わない」という安全設計で、実際に基本治療では咬合調整は症状悪化の可能性があるため行わない、と注意喚起されています。

臨床では“患者が望む治療=噛み合わせを削る”になりやすい場面があるため、「基本治療は生活に支障がないレベルを目標にする」「まずは可逆的治療で反応を見る」というゴール設定を先に提示するのが有効です。

理学療法の具体例として、咬筋マッサージ(血流増加や疼痛緩和)、温罨法、筋伸展訓練(ストレッチ)などが示され、実施回数や注意点(痛みが増悪する場合は受診)も書かれています。

薬物療法は基本的に痛みに対する治療で、咀嚼筋痛ではNSAIDsやアセトアミノフェンが選択肢になり得る一方、NSAIDsの副作用(消化管障害、腎障害など)に注意し、初期投与は最長7日程度を目安に効果と副作用を観察する、という運用上の考え方が提示されています。

顎関節痛では、内在性外傷に伴う炎症を背景にNSAIDsを時間投与で使うことが推奨され、ジクロフェナク等が顎運動時の顎関節痛に対して適応外使用承認され保険適用となる旨も整理されています。

スプリント(スタビリゼーションアプライアンス)は代表的アプライアンスとして、左右均等な咬合接触を付与して咀嚼筋緊張の緩和・顎関節部への過重負荷軽減を目的とし、原則は夜間就寝時に使用、24時間使用は下顎位変化などの副作用が出やすいので注意、とされています。

ここは患者が自己判断で装着時間を延ばしがちなため、医療者側が「夜間中心」「長時間連用のリスク」を最初に明言し、フォローアップ(再評価検査)とセットで運用する必要があります。

また、復位性円板障害は「円板の復位を目的とせず」説明と経過観察が基本で、雑音への恐怖で開口を制限していると予後不良になりうるため“十分な開口”を指導する、という記載は患者の行動変容に直結する重要ポイントです。

顎関節症治療は何科の独自視点:TCHと睡眠・姿勢の“暴露時間”設計

顎関節症は多因子が積み重なって個体の耐性を超えると発症する、という「閾値モデル」で説明され、環境因子・行動因子・宿主因子に加えて“時間的因子(悪化・持続因子への暴露時間)”が明示されています。

この“暴露時間”の概念を前面に出すと、患者に「何科で何をされるか」が伝わりやすく、たとえば日中の歯列接触癖(TCH)、長時間デスクワーク姿勢、睡眠時の姿勢、睡眠時ブラキシズムのような習慣が、疼痛の燃料になっている可能性を説明できます。

つまり独自視点としては、診療科選びの最適化=「最初から画像や処置に走る」ではなく、“暴露時間を減らす介入を具体的に設計できる窓口(歯科口腔外科)へ導く”ことが、結果的に受診の回り道を減らす、という考え方です。

さらに意外な落とし穴として、患者は「硬い物を噛む」「長時間咀嚼」「硬いガムの過剰咀嚼」などを“健康習慣”と誤解していることがあり、指針では硬固物や硬いガムの過剰咀嚼は発症・悪化要因になり得るため禁止を含めた生活指導を行う、と具体的に書かれています。

また、入眠障害や中途覚醒など睡眠障害がある場合は改善のための加療が必要となることを伝える、とされており、ここは歯科単独で完結しないため心療内科/睡眠医療/かかりつけ医との連携ポイントとして“何科”の話に直結します。

慢性化・難治化では心理社会学的因子の配慮や医科連携が必要となることが多い、と明記されているため、「いつまで歯科で粘るか」ではなく「いつ医科と並走するか」を診療計画に組み込むのが安全です。

(ここから参考リンク:診断・治療の根拠として使える一次資料)

顎関節症の基本治療(保存療法・薬物・アプライアンス・生活指導)、鑑別診断、紹介基準までまとまっている:顎関節症治療の指針 2020(日本顎関節学会)
顎関節円板障害・変形性顎関節症などの診断基準と、MRI/CTでの確定診断条件が確認できる:顎関節症の診断基準(2019)(日本顎関節学会)

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