視神経鞘内出血と診断とMRIとCT検査

視神経鞘内出血と診断

視神経鞘内出血:このページで掴む要点
👁️

まず疑うトリガー

視神経鞘内出血は、視神経障害の文脈(急性視力低下・RAPD・乳頭所見)で拾い上げると見落としにくい。

🧠

画像の使い分け

CT/MRIは「鑑別のため」に強力だが、出血そのものの描出には限界があり、臨床所見と組み合わせるのが現実的。

⚠️

意外な落とし穴

視神経鞘内出血“らしさ”は、うっ血(充血)などの偽陽性や、別疾患(うっ血乳頭・視神経炎・圧迫性)に紛れる。


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視神経鞘内出血の原因と機序

視神経鞘内出血は「視神経を包む鞘(視神経鞘)周囲で起きる出血」というより、臨床上は“視神経障害の背景にある出血性イベント”として扱うと整理しやすいです。

特に救急では、眼症状単独ではなく「頭部外傷」「頭蓋内圧の急上昇」「脳血管イベント」など、全身・中枢の変化と並行して評価する発想が重要になります。

法医学領域の報告では、頭部加速度損傷に関連して眼球と視神経の接合部に牽引ストレスがかかり、Zinn–Haller動脈輪の破綻による動脈性出血が生じ得る、という機序が示されています。これは「揺さぶり」だけに特異的ではなく、後方への直線加速度(例:後方転倒)でも起こり得る、という点が臨床の注意点になります。

また同報告では、視神経鞘出血は虐待疑いの文脈でも重要所見になり得る一方、画像だけでの断定が難しいことも強調されています(後述)。

意外に重要な論点として、眼底に明らかな異常を伴わない視神経鞘出血も存在し得ることが示されており、「眼底がきれい=否定」と短絡しない姿勢が必要です。視神経症状(視力低下、視野障害、RAPDなど)や病歴(頭部外傷・急激な頭痛・意識障害など)とセットで疑う力が問われます。

参考:頭部加速度損傷と視神経鞘出血の発症機序、Zinn–Haller動脈輪の破綻、CTでの限界(研究成果報告書)

https://kaken.nii.ac.jp/file/KAKENHI-PROJECT-15K19268/15K19268seika.pdf

視神経鞘内出血の症状と視力低下

視神経鞘内出血が疑われる状況では、症状を「視神経疾患としてのサイン」と「背景疾患(頭蓋内圧・外傷など)のサイン」に分けて拾うと精度が上がります。視神経側のサインとしては、急性の視力低下、視野異常、色覚異常、相対的求心性瞳孔異常(RAPD)などが重要になります。

視神経疾患の診断手順として、問診で原因の方向性を絞り、次に視神経乳頭所見とRAPDを確認する流れが有用であることが、神経内科医向けの視神経疾患解説でも明確に述べられています。現場では「視力がどの程度落ちているか」「眼球運動時痛の有無」「乳頭が腫れているか・出血があるか」といった情報が、視神経炎・虚血性視神経症・うっ血乳頭・圧迫性などの鑑別に直結します。

ここでの落とし穴は、患者が必ずしも「見えにくい」と訴えられない点です。脳血管イベントや重症外傷では意識障害が前景に立ち、眼症状は回復期に初めて表面化することがあります(=見逃しの温床)。そのため、救急や集中治療の流れの中で、可能なら早期に瞳孔所見・RAPD・眼底(難しければ代替の検査)を組み込む価値があります。

実務のチェック項目(簡潔に)

  • 👁️ 片眼か両眼か(片眼でも中枢イベントは否定できない)
  • 🔦 RAPDの有無(心因性・詐病の除外にも役立つ)
  • 🧠 頭痛、嘔吐、意識障害、外傷機転(後方転倒など)
  • 🩸 抗凝固薬・血小板薬、出血傾向(合併の可能性を上げる)

参考:視神経疾患の診断フロー、RAPD、うっ血乳頭、視神経炎・虚血性視神経症の鑑別ポイント

https://www.cosmic-jpn.co.jp/media/lecture/1565141123-495045.pdf

視神経鞘内出血のMRIとCT検査の見どころ

視神経鞘内出血は「CTやMRIを撮れば必ず見える」とは限りません。死後撮影CTを用いた検討では、視神経鞘出血を疑えた症例がある一方で、疑ったが実際は出血ではなく“視神経鞘周囲のうっ血”だった例もあり、CTのみで特定することは困難だと結論づけられています。つまり、画像は“決め手”というより、臨床像と合わせて確からしさを積むための材料として位置づけるのが安全です。

一方、臨床では画像の役割は極めて大きく、主に「鑑別」と「併発病態の把握」にあります。例えば、視神経鞘髄膜腫など圧迫性病変では造影MRI/CTで特徴的所見(tram-track signなど)が知られ、視神経炎やうっ血乳頭と誤診しないために画像所見が重要だとされています。視神経鞘内出血そのものを追うというより、「出血を起こし得る背景(頭蓋内病変、外傷、圧迫性)」を拾う、という発想が実装しやすいと思われます。

現場での“見どころ”の作り方

  • 🧠 頭部CT:くも膜下出血・頭蓋内出血・骨折など、生命に直結する所見を最優先で確認
  • 👁️ 眼窩部:視神経周囲の左右差、腫脹、周囲脂肪織の変化など「非特異でも違和感」を拾う
  • 🧲 眼窩MRI(可能なら):視神経炎・圧迫性病変・周囲炎症の評価(脂肪抑制T2、造影など施設プロトコルに依存)

「意外な情報」として重要なのは、CTで“出血らしく見える”所見が、実際はうっ血で偽陽性になり得ることです。画像で自信が持てない場合ほど、RAPDや乳頭所見、外傷機転など臨床情報の重みが増します。

参考:CTのみでの視神経鞘出血特定の困難さ、うっ血による誤認、検出限界

https://kaken.nii.ac.jp/file/KAKENHI-PROJECT-15K19268/15K19268seika.pdf

視神経鞘内出血と眼底と視神経乳頭の所見

視神経鞘内出血そのものは眼底に直接「これ」と言える単独所見を作らないこともあり得ますが、視神経が障害される状況では視神経乳頭所見が鑑別の出発点になります。視神経疾患の解説では、視神経疾患を疑うポイントとして視神経乳頭の腫れが挙げられ、さらに前眼部や眼底に所見が乏しくても急激な視力低下や視野異常があれば視神経障害を疑うべき、と整理されています。

ここで、うっ血乳頭との鑑別が臨床的に重要になります。うっ血乳頭は頭蓋内圧亢進が原因で、視神経乳頭が腫れて出血することがあり、初期は視力が保たれ得るため“眼底所見の割に見えている”というミスマッチが起きます。また、うっ血乳頭では中心陥凹が保たれる(中心陥凹が腫れにくい)という観察ポイントが示されており、視神経炎との見分けに役立ちます。

臨床の整理(眼底で見る順番)

  • 👁️ 視神経乳頭:腫脹の範囲(全周か分節状か)、中心陥凹の保存、出血の有無
  • 🩸 出血:乳頭周囲か、網膜内か、硝子体方向か(背景疾患の推定に関与)
  • 📉 経時変化:視力が保たれているのに腫脹が強い/逆に所見が軽いのに視力低下が強い、などの不整合を拾う

この領域での“意外な落とし穴”は、視神経鞘出血の有無を眼底だけで決めようとしてしまうことです。前述の通り、眼底に異常を伴わない視神経鞘出血も報告されており、眼底は「背景の推定」と「鑑別の方向づけ」に使う、と割り切った方が安全です。

参考:視神経乳頭所見の重要性、うっ血乳頭の特徴(中心陥凹の保存など)、視神経炎との鑑別

https://www.cosmic-jpn.co.jp/media/lecture/1565141123-495045.pdf

視神経鞘内出血と法医学と死後撮影CTの独自視点

検索上位の臨床解説では、視神経鞘内出血は「眼科疾患」という枠だけで語られがちですが、実務上は法医学・救急・集中治療と強く接続します。独自視点として、死後撮影CT(PMCT)を含む法医画像の観点は、臨床現場にも“見立ての幅”を提供します。

法医学の研究成果報告では、視神経鞘出血の検出はCTのみでは難しく、疑ったが実際はうっ血だった例が示されています。これは、救急CTで「視神経周囲が高吸収に見える」などの所見を見たときに、画像所見を過信せず“偽陽性の存在”を前提にコンサルトや追加検査を組み立てるべき、という教訓になります。

さらに同報告は、視神経鞘出血の機序として、後方転倒などの後方加速度による牽引ストレス→Zinn–Haller動脈輪の破綻という仮説を示しています。臨床では外傷問診が「転倒しました」程度で終わってしまうことが多いですが、後方転倒か前方転倒か、後頭部打撲か、など“加速度の向き”を一段深く聞く意味が出てきます。

現場で使える問い(問診・情報収集)

  • 🧾 受傷機転:後方転倒/前方転倒/側方転倒、後頭部打撲の有無
  • 🏥 救命処置:蘇生やICU管理の有無(眼底所見が修飾される可能性の整理)
  • 🔍 画像の読み方:出血「断定」ではなく、鑑別を広げるトリガーとして扱う

参考:死後撮影CTでの診断可能性、うっ血による誤認、機序(後方加速度・牽引・Zinn–Haller動脈輪)

https://kaken.nii.ac.jp/file/KAKENHI-PROJECT-15K19268/15K19268seika.pdf