オプジーボの副作用
オプジーボによる間質性肺疾患の特徴と診断
オプジーボ投与患者において間質性肺疾患は最も注意すべき副作用の一つであり、発現率は約2.1%とされています 。間質性肺疾患の初期症状として、咳嗽、呼吸困難、息切れ、息苦しさ、空咳などが現れます 。
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特に注意が必要なのは、60歳以上の患者、抗がん剤治療を受けている患者、腎障害がある患者、酸素投与を受けている患者、または過去に間質性肺疾患の既往がある患者です 。これらの患者群では間質性肺疾患の発症リスクが高いため、より慎重な観察が必要となります。
オプジーボによる薬剤性肺障害で最も多く見られる画像パターンは、特発性器質化肺炎(COP)パターンで、air bronchogramを伴う浸潤影が特徴的です 。早期診断のためには、定期的な胸部CT検査と肺機能検査の実施が重要です。
興味深いことに、オプジーボ投与終了後にEGFR-TKIを投与した症例でも間質性肺疾患の発症が報告されており、7例中3例が死亡に至っています 。このため、オプジーボ治療終了後の他剤使用時にも継続的な注意が必要です。
参考)https://www.jsmo.or.jp/news/jsmo/doc/20160713_02.pdf
オプジーボによる内分泌機能障害の種類と症状
オプジーボによる内分泌障害は多岐にわたり、甲状腺機能障害、副腎機能不全、下垂体機能低下症、1型糖尿病などが報告されています 。発現頻度は甲状腺機能障害が3.9%、1型糖尿病が0.9%となっています 。
参考)https://www.ncc.go.jp/jp/ncce/info/seminar/2018/20190302/20190302_4.pdf
甲状腺機能障害では、一過性の甲状腺中毒症を呈した後に甲状腺機能低下症に移行するパターンと、徐々に甲状腺機能低下症が進行するパターンの2つがあります 。症状として疲労感、体重変化、寒気、行動変化(性欲減退、易怒性、物忘れ)、便秘などが現れます 。
副腎機能不全では、体のだるさ、意識レベルの低下、吐き気・嘔吐、食欲不振などが典型的症状として現れます 。実際の症例では、血中コルチゾール値が限りなく0に近い値まで低下し、ステロイド補充療法が必要となる場合があります 。
参考)中皮腫のオプジーボ体験記:侮るなかれ副作用−体験者Mさんの場…
下垂体機能低下症では、下垂体腫大を伴う複合型下垂体機能低下症の報告もあり、定期的な内分泌機能検査(TSH、FT3、FT4、ACTH、血中コルチゾール等)の実施が推奨されています 。
参考)https://www.bmsoncology.jp/assets/commercial/apac/bmsoncology/ja/pdf/learn-irae_hypopituitarism.pdf
オプジーボ治療における皮膚副作用の管理法
オプジーボによる皮膚障害は発疹、かゆみ、白斑から重度の皮膚症状まで幅広く報告されています。軽度の皮膚症状として、発疹(5.8%)、そう痒症(9.1%)が比較的高頻度に認められます 。
重度の皮膚障害では、全身に赤い斑点や水ぶくれ、ひどい口内炎、まぶたや眼の充血、発熱、粘膜のただれなどが現れ、時に生命に関わる場合があります 。これらの症状は皮膚や粘膜全体に広がる可能性があり、早期の適切な対応が不可欠です。
特に注意が必要なのは、オプジーボ治療終了後にBRAF阻害薬を投与した際の皮膚障害です。オプジーボ最終投与から20-28日後にBRAF阻害薬を開始した症例で、Grade 4の紅斑丘疹型薬疹や多形紅斑型薬疹が報告されています 。
皮膚障害の管理においては、症状の程度に応じてステロイド剤と抗アレルギー剤による治療が基本となります 。軽微な発疹については局所治療で対応可能ですが、重篤な症状では全身ステロイド療法が必要になる場合があります。
参考)https://kmah.jp/wp-content/uploads/2024/02/opuji-bo.pdf
オプジーボ副作用の早期発見システムと症状予測
オプジーボの副作用管理において、早期発見は治療継続と患者安全性の両面で極めて重要です。興味深い研究結果として、免疫関連有害事象(irAE)発症前の前兆症状(シグナル症状)の存在が報告されています。
発熱、疲労、倦怠感が主要なシグナル症状として同定されており、これらの非特異的症状がirAE発症の7日前から現れることが明らかになっています 。シグナル症状を認めた患者の約7割で1か月以内にirAEが発症し、特に2つ以上の症状が同時に現れた場合は全例でirAEが発現しています。
参考)オプジーボの免疫関連副作用を予測する可能性のある3つの症状
定期的な検査項目として、一般の抗がん剤とは異なる項目の確認が必要です。内分泌機能検査(TSH、FT3、FT4、ACTH、血中コルチゾール)、肝機能検査、炎症反応の評価が重要となります 。
参考)https://pharmacist.m3.com/column/case_study2/1521
画像検査では、間質性肺疾患の早期発見のため、定期的な胸部CT検査の実施が推奨されています。また、消化器症状がある場合には内視鏡検査の考慮も必要です。
オプジーボ副作用治療におけるステロイド療法の実際
オプジーボによる副作用治療の中核を担うのがステロイド療法です。多くのirAEに対してステロイド投与による治療が可能となりますが、適切な投与量と投与期間の設定が重要です 。
参考)https://www.bmsoncology.jp/assets/commercial/apac/bmsoncology/ja/pdf/learn-irae_remarks.pdf
間質性肺疾患に対しては、症状の重篤度に応じて高用量ステロイド(プレドニゾロン1-2mg/kg/日)から開始し、症状改善に伴い漸減していく方法が一般的です。大腸炎に対してもメチルプレドニゾロン2.5mg/kg/日から開始し、症状改善を見ながら漸減する治療法が有効とされています 。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jtwmu/89/2/89_38/_pdf/-char/ja
内分泌障害における治療では、副腎機能不全に対するコートリル錠の補充療法が中心となります 。甲状腺機能低下症では甲状腺ホルモン補充療法が、1型糖尿病ではインスリン療法が必要となります。
ステロイド療法の副作用管理も重要な課題となります。長期使用による感染症リスク、消化性潰瘍、骨粗鬆症、糖尿病悪化などに対する対策が必要です 。また、免疫抑制状態による腫瘍増悪の可能性も考慮に入れた治療戦略の立案が求められます。
オプジーボの副作用管理におけるステロイド療法は、早期介入と適切な用量調整により多くの場合で良好な転帰が期待できます。しかし、症状の重篤度と患者の全身状態を総合的に判断し、専門各科との連携を図ることが治療成功の鍵となります。