ザルトプロフェンの強さとロキソプロフェンとの効果・副作用の比較

ザルトプロフェンの強さ

この記事のポイント
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強さと効果

ザルトプロフェンは動物実験でロキソプロフェンより強い鎮痛効果が示されています。COX-2選択性が比較的高く、ブラジキニン阻害作用も併せ持ちます。

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副作用

消化管障害のリスクはロキソプロフェンより低いとされますが、胃不快感や胃痛などが報告されています。光線過敏症にも注意が必要です。

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意外な効果

ザルトプロフェンには、他のNSAIDsにはない「関節軟骨保護作用」の可能性が示唆されており、変形性関節症への新たなアプローチとして期待されています。

ザルトプロフェンの強さと効果:ロキソプロフェンとの比較

 

ザルトプロフェンは、非ステロイド性抗炎症薬NSAIDs)に分類される医薬品で、主に炎症を伴う痛みに対して処方されます 。特に、関節リウマチ変形性関節症腰痛症、手術後や外傷後の鎮痛などに用いられます 。では、その鎮痛効果の「強さ」はどの程度なのでしょうか。
代表的なNSAIDsであるロキソプロフェンと比較してみましょう。動物実験の段階では、ザルトプロフェンはロキソプロフェンよりも強い鎮痛効果を示したという報告があります 。これは、ザルトプロフェンが持つ独自の作用機序が関係していると考えられます。

ザルトプロフェンの主な効果は以下の通りです 。

参考)ソレトン錠(ザルトプロフェン)に含まれている成分や効果、副作…

  • 関節リウマチ、変形性関節症、腰痛症、肩関節周囲炎、頸肩腕症候群の消炎・鎮痛
  • 手術後、外傷後、抜歯後の消炎・鎮痛

これらの適応症はロキソプロフェンとほぼ同じですが、ザルトプロフェンは特にブラジキニンという発痛物質が関与する痛みに対しても効果が期待できるという特徴があります 。

ロキソプロフェンとの比較に関する参考情報。
当院で処方する鎮痛薬「NSAIDs」について解説 – 三国ゆう整形外科
このページでは、ザルトプロフェンが動物実験でロキソプロフェンより強い鎮痛効果を示したことや、ブラジキニン受容体拮抗作用について解説されています 。

ザルトプロフェンの作用機序:なぜ痛みに効くのか?

ザルトプロフェンが痛みや炎症を抑えるメカニズムは、主に2つのポイントに集約されます。
1. プロスタグランジン産生の抑制(COX-2選択的阻害)
痛みや炎症の主な原因物質の一つに「プロスタグランジン」があります 。このプロスタグランジンが作られる過程で働くのが「シクロオキシゲナーゼ(COX)」という酵素です 。COXには、常に体内に存在し胃の粘膜保護などに関わる「COX-1」と、炎症時に誘導される「COX-2」の2種類があります 。

参考)http://image.packageinsert.jp/pdf.php?mode=1amp;yjcode=1149029F1157


ザルトプロフェンは、このうちCOX-2を選択的に阻害する作用が比較的強いNSAIDsです 。そのため、炎症部位でのプロスタグランジン産生を効果的に抑制し、鎮痛・抗炎症作用を発揮します。一方で、胃粘膜保護に関わるCOX-1への影響が少ないため、従来の非選択的NSAIDsに比べて胃腸障害のリスクが低いとされています 。

2. ブラジキニン産生・遊離抑制作用
ザルトプロフェンのもう一つの大きな特徴は、「ブラジキニン」という発痛物質の作用を阻害することです 。ブラジキニンは、炎症反応の際に産生され、血管を拡張させたり、知覚神経を直接刺激して痛みを引き起こしたりします 。ザルトプロフェンは、このブラジキニンのB2受容体を介したシグナル伝達をブロックすることで、プロスタグランジンとは異なる経路で鎮痛効果を発揮します 。

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6683967/


この二重の作用機序により、ザルトプロフェンは特に炎症性疼痛に対して優れた効果を示すと考えられています。

作用機序に関する学術論文。
A comparative experimental study of analgesic activity of a novel non-steroidal anti-inflammatory molecule – zaltoprofen, and a standard drug – piroxicam, using murine models
この論文では、ザルトプロフェンがCOX-2を優先的に阻害することに加え、ブラジキニン誘発性の侵害受容反応を遮断することが述べられています 。

ザルトプロフェンの副作用と注意点

ザルトプロフェンは、COX-1への影響が少ないため、従来のNSAIDsと比較して消化管障害のリスクは低いとされています 。しかし、副作用が全くないわけではありません。医療従事者として、患者さんへ説明すべき主な副作用と注意点をまとめました。
主な副作用
報告されている主な副作用は以下の通りです 。

参考)ザルトプロフェン錠80mg「日医工」の基本情報(作用・副作用…

  • 消化器系:胃不快感、胃痛、吐き気、腹痛、食欲不振、下痢、口内炎などが最も多い副作用です 。まれに、消化性潰瘍や小腸・大腸潰瘍、出血性大腸炎といった重篤な副作用に繋がる可能性もあります 。
  • 精神神経系:眠気、めまい、頭痛などが現れることがあります 。
  • 過敏症:発疹、かゆみ、湿疹などが見られます 。
  • 光線過敏症ザルトプロフェンに特徴的な副作用として、光線過敏症があります 。日光に当たった皮膚に発疹やかゆみ、水ぶくれなどが生じるものです。服用中は、過度な紫外線への曝露を避けるよう指導が必要です。

重大な副作用
頻度は稀ですが、以下のような重篤な副作用にも注意が必要です 。

患者さんの状態を十分に観察し、初期症状を見逃さないことが重要です。特に、高齢者や腎機能、肝機能が低下している患者さんには慎重な投与が求められます 。

副作用に関する公的情報。
医療用医薬品 : ザルトプロフェン
医薬品の添付文書情報がまとめられており、詳細な副作用や相互作用について確認できます 。

ザルトプロフェンの関節軟骨保護作用という意外な効果

ザルトプロフェンは、単なる鎮痛・抗炎症作用だけでなく、他の多くのNSAIDsには見られない「関節軟骨の保護作用」を持つ可能性が示唆されており、これが独自性の高い特徴と言えます。
変形性関節症などの疾患では、関節軟骨の変性・摩耗が痛みの大きな原因となります。多くのNSAIDsは、痛みを和らげる一方で、長期的には軟骨の代謝に悪影響を与える可能性も指摘されていました。
しかし、ザルトプロフェンに関しては、炎症組織への移行性が高く 、関節軟骨の主成分であるプロテオグリカンの分解を抑制する作用が基礎研究で確認されています。これは、ザルトプロフェンが炎症を抑えるだけでなく、軟骨組織そのものを保護する働きを持つ可能性を示唆するものです。

参考)ザルトプロフェン (ペオン錠80) の炎症組織移行性


具体的には、炎症によって活性化されるマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)などの軟骨基質分解酵素の産生を抑制することが、この軟骨保護作用のメカニズムの一つとして考えられています。
この作用は、変形性関節症の進行を抑制するという観点からも非常に興味深く、単なる対症療法にとどまらない疾患修飾的な効果も期待されています。ただし、臨床的なエビデンスはまだ限定的であり、今後のさらなる研究が待たれる分野です。

関連研究論文。
ザルトプロフェン (ペオン錠80) の炎症組織移行性
ザルトプロフェンの炎症組織への高い移行性と、プロテオグリカン分解抑制に関する研究結果が記載されています 。

ザルトプロフェンと他のNSAIDsとの強さランキング

整形外科領域で処方される主要なNSAIDsの鎮痛・抗炎症作用の「強さ」を一般的なランキング形式で示すと、以下のようになります。ただし、この強さはあくまで作用の強さであり、副作用のリスクとは必ずしも比例しません。患者さん個々の状態に合わせて最適な薬剤を選択することが最も重要です。
一般的なNSAIDsの強さのイメージ

強さ 薬剤名(商品名例) 特徴
非常に強い ジクロフェナクボルタレン 鎮痛・抗炎症作用が非常に強力。その分、胃腸障害などの副作用リスクも高いとされる 。
強い インドメタシンインダシン 強力な抗炎症作用を持つが、副作用も出やすい 。
比較的強い ザルトプロフェン(ソレトン)
ロキソプロフェン(ロキソニン
ザルトプロフェンは動物実験でロキソプロフェンより強い鎮痛効果が報告されている 。COX-2選択性が比較的高く、消化管への負担はロキソプロフェンより軽いとされる 。
中程度 セレコキシブセレコックス COX-2選択的阻害薬の代表格。消化管障害のリスクが低い 。
穏やか イブプロフェンブルフェン
アセトアミノフェンカロナール)※
イブプロフェンは比較的マイルドな作用 。アセトアミノフェンはNSAIDsとは作用機序が異なり、抗炎症作用は弱いが、小児や高齢者にも使いやすい 。

※アセトアミノフェンは厳密にはNSAIDsとは分類が異なります。
ザルトプロフェンは、「比較的強い」グループに位置づけられます 。特に、COX-2への選択性とブラジキニン阻害作用を併せ持つ点で、他のNSAIDsとは一線を画す存在と言えるでしょう 。鎮痛効果と副作用のバランスを考慮する上で、非常に有用な選択肢の一つです。

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10326333/



痛み止めの強さに関する参考情報。
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