ザルチロン注の一覧:効能・副作用・薬価

ザルチロン注一覧

ザルチロン注の基本情報
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基本情報

サリチル酸ナトリウム・コンドロイチン硫酸エステルナトリウム配合の鎮痛・消炎剤

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適応症

症候性神経痛・腰痛症に対する静脈内投与薬

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薬価

61円/管(10mL1管)の後発医薬品

ザルチロン注の基本情報と成分詳細

ザルチロン注は東和薬品が製造販売する処方箋医薬品で、YJコード1149501A1092を持つ鎮痛・消炎剤です。本剤は後発医薬品(ジェネリック医薬品)として位置づけられており、薬価は61円/管と経済的な選択肢となっています。

有効成分として、1管(10mL)中に以下が含まれています。

  • 日局サリチル酸ナトリウム 400mg
  • コンドロイチン硫酸エステルナトリウム 200mg

添加剤には亜硫酸水素ナトリウム5mg、等張化剤(塩化ナトリウム)、pH調節剤(水酸化ナトリウム、塩酸)が含まれており、製剤の安定性と投与時の安全性を確保しています。

製剤の性状は無色から微黄褐色のやや粘性を帯びた澄明な水溶液で、pH5.6-7.0、浸透圧比は約2(生理食塩液に対する比)となっています。室温保存で有効期間は3年と、比較的安定した製剤特性を有しています。

薬効分類番号1149の鎮痛・消炎剤に分類され、KEGG DRUGデータベースではD04011として登録されています。承認番号は20900AMZ00094で、1997年7月に販売が開始された歴史のある薬剤です。

ザルチロン注の効能・効果と作用機序

ザルチロン注の効能・効果は症候性神経痛と腰痛症に限定されており、これらの疾患に対する特異的な治療薬として位置づけられています。

サリチル酸ナトリウムの作用機序

サリチル酸ナトリウムは、プロスタグランジン生合成の律速酵素であるシクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害し、プロスタグランジンの産生を抑制することにより、抗炎症作用、解熱作用、鎮痛作用を発現します。構成型COX(COX-1)と誘導型COX(COX-2)に対する選択性はなく、非選択的なCOX阻害薬として作用します。

コンドロイチン硫酸エステルナトリウムの作用

コンドロイチン硫酸は生体内の結合織に分布しているグリコサミノグリカンの一種で、結合織の主成分であるコラーゲン線維を安定にさせる作用を持ちます。さらに興味深いことに、鎮痛効果についても中枢性の作用を有し、速効的に中枢における疼痛感受の閾値を高めるとされています。

相乗効果の実証

動物実験データによると、サリチル酸ナトリウムとコンドロイチン硫酸エステルナトリウムを配合することにより、その鎮痛作用は増強されることが確認されています。酢酸Writhing法(マウス)、Randall-Selitto法(ラット)及び圧刺激法(マウス)により検討した結果、単独使用時よりも有意に高い鎮痛効果が示されました。

臨床試験における有効率は以下の通りです。

  • 老人性神経痛:41/53例(77.4%)
  • 神経痛(坐骨・肋間):19/21例(90.5%)
  • 外傷性神経痛:6/9例(66.7%)
  • 五十肩:19/21例(90.5%)
  • 関節痛:9/9例(100%)
  • 腰痛症:27/35例(77.1%)
  • 筋肉疼痛:3/4例(75.0%)
  • 術後癒着疼痛:3/3例(100%)
  • 急・慢性リウマチ:21/26例(80.8%)

全体として148/181例(81.8%)の有効率を示しており、高い治療効果が確認されています。

ザルチロン注の用法・用量と投与上の注意

ザルチロン注の標準的な用法・用量は、通常成人には1回10mLを1日1回、3分間以上かけて緩徐に静脈内投与することとされています。年齢や症状により適宜増減が可能ですが、投与速度については特に注意が必要です。

投与条件の重要性

本剤は「鎮痛剤の経口投与が不可能な場合」または「急速に病状を改善する必要がある場合」のみに使用することが明記されています。これは静脈内投与という侵襲的な投与経路であることを考慮した制限であり、経口薬での治療が困難な患者や、緊急性を要する疼痛管理において選択される薬剤です。

緩徐投与の理由

3分間以上かけての緩徐投与が推奨される理由は、急速投与による血管痛や全身への急激な薬物負荷を避けるためです。実際に副作用として血管痛、しびれ感、発赤、そう痒感、腫脹等の注射部位反応が報告されており、適切な投与速度の維持が患者の安全性確保に直結します。

特殊患者への配慮

高齢者では生理機能が低下していることが多いため、患者の状態を観察しながら慎重に投与する必要があります。また、腎機能障害や肝機能障害患者では代謝・排泄機能の低下により薬物の蓄積が懸念されるため、用量調節や投与間隔の延長を検討する必要があります。

投与時のモニタリング

投与中および投与後は以下の項目について十分な観察が必要です。

  • 血管痛や注射部位の局所反応
  • 全身の過敏症状(発疹、浮腫等)
  • 消化器症状(胃痛、嘔気等)
  • 血液学的異常(白血球減少、血小板減少等)
  • 肝機能・腎機能の変化

ザルチロン注の副作用と禁忌事項

ザルチロン注の副作用は頻度不明ながら、多岐にわたる臓器・系統に影響を及ぼす可能性が報告されています。

重要な禁忌事項

絶対禁忌として以下が挙げられています。

  • 本剤成分または含有成分に対して過敏症の既往歴を有する患者
  • 15歳未満の水痘患者
  • 15歳未満のインフルエンザ患者

特に小児への投与制限は、サリチル酸系製剤とライ症候群との関連性を示す疫学調査報告に基づくものです。米国における調査結果を踏まえ、やむを得ず投与する場合には慎重な投与と十分な観察が必要とされています。

系統別副作用の詳細

過敏症では発疹、浮腫、鼻炎様症状、結膜炎等が現れる可能性があります。血液系では白血球減少、血小板減少、貧血等の重篤な副作用が報告されており、定期的な血液検査による監視が推奨されます。

精神神経系では耳鳴、難聴、めまい等のサリチル酸特有の症状が出現する可能性があります。これらは用量依存性があり、高用量や長期投与時により注意が必要です。

肝臓では黄疸、AST・ALT・Al-Pの上昇が、腎臓では腎障害が報告されており、投与前後での肝腎機能評価が重要です。

消化器系では胃痛、食欲不振、嘔気、嘔吐、消化管出血等が現れる可能性があり、特に消化性潰瘍の既往がある患者では慎重な投与が必要です。

薬物相互作用

クマリン系抗凝血剤(ワルファリン)との併用では、血漿蛋白結合の競合により抗凝血剤の作用が増強され、出血時間の延長や消化管出血のリスクが高まります。併用時はクマリン系抗凝血剤の減量を検討し、凝固能の慎重な監視が必要です。

糖尿病用剤(インスリン製剤、トルブタミド等)との併用では、同様の機序により糖尿病用剤の作用が増強され、低血糖のリスクが増大します。併用時は血糖値の頻回な監視と糖尿病用剤の用量調節が推奨されます。

ザルチロン注と同成分薬剤の市場比較と選択指針

コンドロイチン硫酸エステルナトリウム・サリチル酸ナトリウム配合製剤として、現在日本市場では複数の製品が販売されています。

主要製品の比較

市場には以下の製品が存在します。

  • カシワドール静注(ネオクリティケア製薬):78円/管(先発品相当)
  • ザルチロン注(東和薬品):61円/管(後発品)
  • ヤスラミン配合静注(ニプロ):61円/管(後発品)

薬価の観点から見ると、後発医薬品であるザルチロン注とヤスラミン配合静注は同価格で、先発品相当のカシワドール静注より17円安価となっています。医療経済性を考慮した場合、後発医薬品の選択は医療費削減に寄与します。

製剤特性の比較

基本的な有効成分の含量は各製品で統一されており、1管(10mL)中にサリチル酸ナトリウム400mg、コンドロイチン硫酸エステルナトリウム200mgが含まれています。添加剤についても大きな差異はなく、臨床効果に実質的な違いはないと考えられます。

製薬会社の特徴

東和薬品は日本の代表的なジェネリック医薬品メーカーの一つで、品質管理と安定供給において高い信頼性を有しています。医療関係者向けの情報提供体制も充実しており、添付文書の電子化や製剤写真の提供等、臨床現場での利便性を考慮したサービスを展開しています。

臨床選択の指針

薬剤選択においては以下の要因を総合的に判断することが重要です。

  • 医療経済性(薬価の違い)
  • 供給安定性(メーカーの信頼性)
  • 院内採用方針(統一性の観点)
  • 患者の治療歴(過去の使用経験)

同一成分・同一規格の製剤であるため、基本的には経済性と供給安定性を重視した選択が合理的です。特に在宅医療や訪問診療において使用する場合は、安定した供給体制を持つメーカーの製品を選択することが治療継続性の観点から重要となります。

また、医療機関においては薬事委員会での検討を通じて、コスト効率性と医療の質を両立させた採用品目の決定が求められます。ザルチロン注はその優れた費用対効果により、多くの医療機関で採用されている現状があり、臨床現場での実績も豊富に蓄積されています。