在宅薬学総合体制加算の算定要件と施設基準と届出

在宅薬学総合体制加算 算定要件

在宅薬学総合体制加算 算定要件の要点

算定できるのは「在宅患者の処方箋」

在宅患者訪問薬剤管理指導料など、在宅に係る指導料等を算定している患者の処方箋を受け付けて調剤した場合に加算できます。

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施設基準+届出が前提

加算1・2とも、施設基準を満たし地方厚生(支)局へ届出後に算定可能です。届出添付書類では「周知方法」や「実績内訳」まで確認されます。

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実績要件は「24回以上/年」

直近1年の在宅薬剤管理の実績(医療保険・介護保険)合計が24回以上必要です。さらに加算2は、かかりつけ薬剤師指導料等の実績や麻薬・無菌等の上位要件も求められます。

在宅薬学総合体制加算の算定要件の対象患者と算定タイミング

在宅薬学総合体制加算は、在宅患者に対する薬学的管理・指導を行うための「薬局の体制」を評価する加算で、在宅患者の処方箋を受け付けて調剤したときに算定します。算定対象になるのは、在宅患者訪問薬剤管理指導料在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料、在宅患者緊急時等共同指導料、または介護保険の居宅療養管理指導費・介護予防居宅療養管理指導費を算定している患者等の処方箋を応需した場合です。

ここで現場が迷いやすいのが「在宅っぽい患者」ではなく、「制度上、在宅の指導料等を算定している患者」である点です。つまり、薬剤師が訪問していない(または介護保険側の算定状況が不明)状態で、処方箋だけを受け取っても加算要件を満たすとは限りません。逆に、介護保険の居宅療養管理指導費で継続的に関与している患者であれば、医療保険側の在宅患者訪問薬剤管理指導料とは別ルートで「対象患者」になり得ます。

算定タイミングはシンプルで、「対象患者の処方箋の受付1回につき1回」加算される設計です。つまり、同一患者でも月に複数回処方箋を応需する状況があり得るため、算定漏れが起きると年間では大きな差が出ます。レセコン設定や薬歴のフラグ運用(対象患者の判定、在宅算定状況の確認ルール)を事前に決め、受付→監査→請求のどこで判定するかを標準化しておくと、監査対応も格段に楽になります。

在宅薬学総合体制加算の算定要件の施設基準と加算1と加算2

在宅薬学総合体制加算には「加算1」と「加算2」があり、点数は加算1が15点、加算2が50点です。加算2は上位区分として位置づけられ、加算1の要件をすべて満たしたうえで、追加の体制要件(人員・かかりつけ実績・高度管理医療機器・ターミナルまたは小児在宅への対応)を求められます。

加算1の施設基準(重要ポイント)

・在宅患者訪問薬剤管理指導を行う旨の届出をしていること

・在宅薬剤管理の実績が24回以上/年あること

・開局時間外における在宅業務に対応できる体制(在宅協力薬局との連携を含む)

・在宅業務実施体制に係る地域への周知を行っていること

・認知症・緩和医療・ターミナルケア等を含む在宅業務に関する研修や学会等への参加

・医療材料・衛生材料の供給体制

・麻薬小売業者免許の取得

加算2の追加施設基準(加算1に上乗せ)

・開局時間に2名以上の保険薬剤師が勤務(うち1名以上が常勤)し、調剤応需体制をとっていること

・直近1年のかかりつけ薬剤師指導料/かかりつけ薬剤師包括管理料の算定回数合計が24回以上/年

・高度管理医療機器等販売業の許可

・さらに「ターミナルケア体制」または「小児在宅体制」のどちらか(両方でも可)に適合

  • ターミナル側:医療用麻薬の備蓄(注射剤1品目以上を含む6品目以上)+無菌室/クリーンベンチ/安全キャネット等
  • 小児側:小児特定加算+乳幼児加算の算定回数合計が6回以上/年

ここで注意したいのは、加算2は「設備投資」だけでなく「実績要件」が同時に問われることです。クリーンベンチを導入しても、ターミナル関連の麻薬備蓄要件(注射剤含む)や運用フロー、さらに人員体制が整っていなければ届出が通りません。逆に、小児在宅側で要件を満たす方針にするなら、在宅の小児特定加算・乳幼児加算が「在宅訪問薬剤管理指導等に係るものに限る」点を踏まえ、案件発生から算定までの導線を設計する必要があります。

在宅薬学総合体制加算の算定要件の実績24回以上とカウントの落とし穴

在宅薬学総合体制加算1・2で共通して求められる「在宅薬剤管理の実績24回以上/年」は、届出添付書類でも内訳(医療保険の実績、介護保険の実績、在宅協力薬局としての連携実績など)を分けて記載する形式になっています。さらに届出上の注意として、情報通信機器を用いた場合(オンラインでの指導等)は実績に含めない点が明記されています。

実績作りでありがちな落とし穴は次のとおりです。

・オンライン実施分を「回数」に入れてしまう(届出上、除外)

・在宅協力薬局としての実績を、医療保険・介護保険の通常実績(ア・イ)に混ぜて二重計上してしまう

・「同等の業務」の扱いを理解せず、算定できない訪問を実績に入れてしまう(添付書類では“同等の業務”の定義に注意書きあり)

・実績期間の取り方を誤り、前年同月~当年同月の「直近1年」になっていない

・薬歴・実施記録はあるが、算定実績(レセプト上の実績)と一致しない

運用の現実として、在宅は突発対応(急変時の緊急訪問、共同指導、施設側の緊急調整)が多く、記録と請求がズレやすい領域です。そこで、実績管理は「人の記憶」ではなく、レセプトの算定履歴をベースに月次で集計し、月末締めの段階で“24回到達見込み”を可視化すると安全です。加算2を狙う場合は、かかりつけ薬剤師指導料等24回以上/年も同じく「年間で未達→届出維持が難しい」リスクになるため、在宅実績と並行してモニタリングするのが実務的です。

意外と見落とされやすいポイントとして、「在宅は増えているのに実績が伸びない」ケースがあります。原因の一つが、介護保険の居宅療養管理指導費の算定設計(契約・同意・ケアマネ連携の書面整備)に手間がかかり、実施していても算定に乗せきれていないことです。制度対応の整備は地味ですが、ここを詰めると在宅実績の“質”が上がり、結果として加算要件を安定して満たしやすくなります。

在宅薬学総合体制加算の算定要件の届出と周知とチェックリスト

在宅薬学総合体制加算は、施設基準を満たしているだけでは算定できず、地方厚生(支)局長への届出が前提です。届出添付書類では、共通基準として「在宅患者訪問薬剤管理指導に係る届出」「開局時間外の在宅業務対応」「自局・グループによる周知」「地域の行政機関または薬剤師会等を通じた周知」「研修の実施と外部研修受講」「医療材料・衛生材料」「麻薬小売業者免許」「在宅実績24回以上」などをチェック形式で示すよう求められます。

周知(とくに“地域での周知の方法”)は、実務で後回しにされがちですが、施設基準として明確に書類にチェック欄があり、監査でも説明責任が生じます。例えば、地域の行政機関経由で周知しているのか、薬剤師会等を通じて周知しているのか、どちら(または両方)で行っているかを説明できる状態が必要です。さらに「開局時間外に在宅業務に対応できる体制」では、単に電話転送があるだけでなく、医療用麻薬対応など在宅業務の中身まで含めた周知が想定されています。

チェックリスト(薬局内の自己点検用)

・在宅患者訪問薬剤管理指導の届出:済/未

・直近1年の在宅薬剤管理実績24回:達成/未達(オンライン分は除外)

・開局時間外の在宅業務対応:自局で対応/在宅協力薬局と連携

・周知:行政機関/薬剤師会/医療機関・訪問看護ST・福祉関係者への案内履歴

・研修:認知症・緩和・ターミナルを含む年間計画と実績

・衛生材料・医療材料:供給体制の明文化(在庫、発注、緊急時ルート)

・麻薬小売業者免許:免許番号、注射剤を含む備蓄(加算2ターミナル要件の場合)

・加算2狙いの場合:2名以上薬剤師体制、かかりつけ実績24回、高度管理医療機器販売業許可、無菌設備or小児実績6回

「届出して終わり」ではなく、要件は毎年の実績で判定される設計のため、月次点検(実績、研修、在庫、周知の更新)を業務カレンダーに落とし込むと、担当者が変わっても運用が崩れにくくなります。特に在宅の実績は、患者の状態変化や施設都合で振れやすいので、未達リスクを早めに検知できる体制が経営上の保険になります。

在宅薬学総合体制加算の算定要件の独自視点:在宅協力薬局と麻薬と無菌の現場設計

検索上位の記事は「施設基準の列挙」で終わりがちですが、実際の現場では“できる体制”を「誰が・いつ・何をもって対応できると証明するか」が最大の壁になります。特に、加算2のターミナルケア要件(麻薬備蓄+無菌設備)は、設備・在庫・手順・教育・連携の5点セットで整って初めて「継続運用」できます。

在宅協力薬局という考え方は、24時間対応や麻薬対応を「単独店舗で完結しない」ための現実的な選択肢です。届出添付書類でも、在宅協力薬局として連携した実績欄が別枠で設けられており、“連携して実績を積む”こと自体が制度上想定されています。ただし、連携は口約束では成り立ちません。具体的には、以下のような取り決めがないと、夜間緊急時に破綻します。

・緊急連絡の一次受け(当番)と二次受け(バックアップ)の順番

・医療用麻薬の在庫共有(融通の可否、譲渡・返却、帳簿管理)

・無菌調製が必要な依頼の受付基準(処方内容、緊急度、必要物品)

・搬送手段(誰が、どの温度管理で、何時までに)

・患者・家族・訪問看護ステーションへ説明する統一文言(混乱防止)

ここで「あまり知られていない実務の盲点」を一つ挙げるなら、“麻薬注射剤1品目以上”の数え方です。届出書の注意書きでは、備蓄品目数は「規格単位ごと」に数えるとされ、同一成分でも規格が違えば別品目として数える運用です。つまり、在庫の組み方を誤ると「6品目以上」の条件を満たしているつもりでも、規格の偏りで不足する可能性があります(逆に適切に組めば過剰在庫を避けられます)。

もう一つの現場視点は“無菌設備を置くこと”より、“無菌業務の教育と品質管理を回せること”です。クリーンベンチがあっても、作業手順書、清掃・環境モニタリング、記録の保存、逸脱時の対応(いつ廃棄、いつ再調製)など、医療安全の仕組みがないと継続提供は難しいのが実情です。ここは、調剤報酬上の加算のためというより、患者安全と医療者からの信頼のために整える領域で、結果として在宅の依頼が増え、実績要件も自然に満たしやすくなります。

さらに、在宅のターミナル領域では「緊急訪問」が増えやすく、緊急訪問薬剤管理指導料や共同指導の実績がカウント対象になっている点は、体制整備の追い風になります。つまり、夜間・休日対応を“負担”としてだけ捉えるのではなく、地域のニーズに応えつつ、制度上の実績にもつながる設計にしておくと、加算算定の安定性が上がります。

在宅薬学の質を上げるための参考として、介護支援専門員への情報提供や多職種連携に関しては、厚生労働省資料内で「多職種連携推進のための在宅患者訪問薬剤管理指導ガイド」を参照するよう示されており、現場の連携文書・評価シート作りのヒントになります。

介護支援専門員への情報提供・多職種連携の参考:令和6年度診療報酬改定の概要(調剤)
届出書式の具体的なチェック欄(周知方法、実績内訳、加算2の麻薬備蓄や無菌設備の記載方法)の参考:在宅薬学総合体制加算の施設基準に係る届出書添付書類