在宅患者訪問薬剤管理指導料と同時算定できないものと算定要件

在宅患者訪問薬剤管理指導料と同時算定できないもの

この記事でわかること

同時算定できないもの

「同時算定」と「同一月に算定不可」を分けて理解し、混同による請求ミスを減らします。

🧾

算定要件と落とし穴

対象患者、算定回数、距離(16km)、薬学的管理指導計画、情報提供など、否認されやすい要点を整理します。

💡

独自視点の実務ルール

在宅チーム連携・残薬・多職種共有の観点から、請求だけでなく「監査に強い記録」の作り方まで踏み込みます。

在宅患者訪問薬剤管理指導料の同時算定できないもの(重複投薬・相互作用等防止加算・外来服薬支援料1・服薬情報等提供料)

 

在宅患者訪問薬剤管理指導料は、評価の性格が近い薬学管理料と「同時算定できないもの」が明確に示されています。代表例として、重複投薬・相互作用等防止加算、外来服薬支援料1、服薬情報等提供料(1・2・3)が同時算定不可として挙げられます。

現場でありがちなミスは、「在宅で訪問して指導したから、ついでに情報提供料も…」という発想です。しかし実務上は“在宅の訪問という行為”の中で実施した内容が、別の薬学管理料の評価対象と重なりやすく、二重取りと見なされやすい構造だと理解しておくと安全です。

また、同時算定不可の扱いは「同じ処方・同じ訪問・同じ算定タイミングで、同じ患者に重ねて請求しない」という整理が基本になります。迷ったら、記録(薬歴)上で“どの評価に位置づく行為か”を先に決め、レセプト上は片方に寄せるのが監査対応として堅実です。

ポイントを箇条書きで整理します。

✅ 同時算定できないもの(例)

・重複投薬・相互作用等防止加算

・外来服薬支援料1

・服薬情報等提供料1・2・3

在宅患者訪問薬剤管理指導料の同一月に算定できないもの(服薬管理指導料・かかりつけ薬剤師指導料・かかりつけ薬剤師包括管理料)

「同時算定できない」だけでなく、「同一月に算定できない」という月単位の制限がある点が、レセプト実務の難所です。具体的には、服薬管理指導料(とその加算項目)、かかりつけ薬剤師指導料、かかりつけ薬剤師包括管理料などは、在宅患者訪問薬剤管理指導料と“同一月に”算定できない取り扱いが整理されています。

ここで重要なのは、同一月の制限は「同じ日に算定していないからOK」ではないことです。月をまたぐとルールが変わるため、月末訪問が多い薬局ほど、翌月の初回対応で“何を算定する月か”の設計が必要になります。

一方で例外的な考え方として、在宅の薬学的管理指導計画に係る疾病とは別の疾病・傷病に係る臨時処方が出た場合、外来服薬支援料1以外の薬学管理料は同一月でも算定できるケースがある、と整理されることがあります。つまり、鍵は「同一患者」でも“同一計画・同一疾患としての評価”なのか、“別疾患の臨時対応”なのかを、薬歴と計画書の文脈で説明できるかです。

✅ 同一月に算定できないもの(例)

・服薬管理指導料(と加算)

・かかりつけ薬剤師指導料

・かかりつけ薬剤師包括管理料

在宅患者訪問薬剤管理指導料の算定要件(対象患者・算定回数・16キロメートル・薬学的管理指導計画・情報提供)

同時算定以前に、そもそも在宅患者訪問薬剤管理指導料として成立するか(算定要件)を外すと、関連する請求全体が危うくなります。算定の骨格は「通院が困難で在宅で療養している患者」に対し、医師の指示に基づき、薬剤師が薬学的管理指導計画を策定して訪問し、薬歴管理・服薬指導・残薬確認などを行い、必要な情報提供を行うことです。

実務で監査・返戻につながりやすいのは、次の“境界”です。

🧩 対象患者の境界

・独歩で定期的に来局できる患者は原則として対象になりにくい(「在宅」の必要性が説明できない)

・医師や薬剤師配置が義務付けられている医療機関・施設で療養している場合は算定不可になりやすい

・他の保険医療機関/他薬局がすでに訪問薬剤管理指導を行っている場合、重複算定はできない

🧩 回数・間隔の境界

・基本は患者1人あたり月4回まで

・末期悪性腫瘍、注射による麻薬投与、中心静脈栄養法などの患者では「週2回かつ月8回まで」など上限の考え方が変わる

・月2回以上算定する場合の間隔(6日以上など)も、運用で抜けやすい

🧩 距離(16km)の境界

・薬局と患家の距離が16kmを超える場合、特殊事情がない限り算定できないという整理があり、地図上の距離確認・記録の発想が必要です。訪問依頼が来た時点で“算定可否”を事前に確認しておくと、現場の混乱が減ります。

🧩 計画と情報提供の境界

・薬学的管理指導計画は、原則として訪問前に策定し、訪問後も月1回以上の見直し等が求められる整理があり、計画書が「一度作って終わり」になりやすい点が落とし穴です。

・医師への情報提供は文書で行う整理が基本で、連携する他の医師の求めで訪問した場合には担当医にも情報提供する、といったルールの理解が重要です。

(権威性のある参考:在宅訪問の位置づけ、薬局の役割、点数や回数上限の概観がまとまっており、院内→在宅移行で必要な医療材料や多職種連携の考え方が掴めます)

厚生労働省資料:在宅患者訪問薬剤管理指導について(役割・点数・課題)

在宅患者訪問薬剤管理指導料のレセプト摘要欄と薬歴の記載(単一建物診療患者・未調剤月・月2回以上・在宅協力薬局)

同時算定の可否は、最終的に「レセプトにどう書いたか」「薬歴に何が残っているか」で判断されます。特に在宅は、単一建物診療患者の人数、未調剤月に訪問を実施した場合の扱い、月2回以上算定した場合の訪問日、在宅協力薬局が関与した場合の分担など、摘要欄の運用が複雑になりがちです。

現場で強いのは、次の“監査で聞かれやすい質問”に、薬歴と摘要欄で答えられる状態を作ることです。

🧾 監査で聞かれやすい視点

・「誰が」「いつ」「どこで」「医師のどの指示に基づき」「どの計画で」訪問したか

・残薬、保管状況、副作用疑い、相互作用確認など、在宅でしか拾えない情報が記録されているか

・医師への文書提供(要点)が“実施した事実”として残っているか

・在宅協力薬局が動いた場合、基幹薬局・協力薬局の役割分担が説明できるか

また「同一月に算定できないもの」を避けるためには、月の中での算定設計が必要です。例えば、かかりつけ薬剤師包括管理料を算定している患者が在宅移行する場合、移行月の取り扱いをどうするかを、薬局内で事前にルール化しておくと事故が減ります(“算定したいもの”から逆算して、必要な同意・計画・連携を揃えるイメージです)。

✅ 実務の小ワザ(意味のあるものだけ)

・訪問依頼の時点で「距離16km」「他薬局の介入」「施設入所の有無」をチェック項目に入れる

・薬学的管理指導計画は、変更処方や状態変化があった日に“差分”を残す(更新日が見える)

・情報提供は「文書で行った事実」と「要点」を分けて記録し、監査での説明コストを下げる

在宅患者訪問薬剤管理指導料の独自視点:同時算定できないものを減らす“在宅チーム連携”設計(多職種連携・残薬・医療材料)

検索上位の記事は「同時算定できないものの一覧」や「要件」に寄りがちですが、実務で差がつくのは“そもそも同時算定の迷いが出ない業務設計”です。つまり、請求テクニックではなく、在宅チーム連携の中で薬局が担う役割を先に定義し、記録と情報提供の流れを整えることが、結果的に否認を減らします。

厚労省資料でも、在宅では残薬管理、服薬状況と副作用等のモニタリング、医療用麻薬の管理(廃棄含む)、医療材料の供給、ケアマネ等との連携・情報共有など、薬局の役割が多面的に示されています。これらは「薬剤師が在宅に入る必然性」の根拠になり、算定の説明力にも直結します。

💡意外に効く観点(現場で見落とされやすい)

・在宅移行時、薬局側から“在宅で実現可能な処方”を提案する余地がある(輸液セット、無菌調剤、配合変化、医療材料などの観点)

・残薬調整は「患者が余っている」だけでなく、介護者の管理負担、保管環境、貼付剤の交換ミスなど“生活の設計”に踏み込むと価値が出やすい

・麻薬管理は「保管」だけでなく、廃棄まで含めた手順をチームで共有しておくとトラブルが減る(家族の心理的負担も下がる)

この“在宅の価値”が薬歴に表れると、同時算定の判断に迷ったときも「在宅患者訪問薬剤管理指導料として評価すべき中核行為は何か」が見えやすくなります。結果として、重複投薬・相互作用等防止加算や服薬情報等提供料など、他の評価と競合しやすい項目を無理に載せずに済み、返戻リスクも下がります。

(在宅での薬局の役割:医療材料、無菌調剤、情報共有の流れが具体例つきで載っており、在宅実務の説得材料になります)

厚生労働省資料:在宅医療への移行に伴い薬局が果たす役割(具体例)

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