ユビキノンとユビキノールの違い
ユビキノンとは何か
ユビキノンは、コエンザイムQ10の酸化型を指す名称で、1957年にウシ心筋ミトコンドリアの電子伝達系の構成成分として発見されました。ラテン語の「ユビキタス(いたるところに存在する)」に由来し、体内のすべての組織に存在することからこの名がつけられています。ユビキノンは、ミトコンドリア内膜において電子伝達体として機能し、複合体ⅠとⅡから電子を受け取り、複合体Ⅲへ電子を伝達する役割を果たしています。
参考)ミトコンドリア呼吸鎖活性を制御するユビキノン結合性タンパク質…
一般的なコエンザイムQ10のサプリメントは、安定性が高いユビキノンの形態で提供されています。ユビキノンは電子伝達系において、エネルギー(ATP)産生に必要な電子の運搬役として働きますが、体内で機能するためには還元型のユビキノールに変換される必要があります。この変換プロセスは体内の酵素によって行われますが、加齢やストレスにより変換能力が低下することが知られています。
参考)ユビキノールプラス 60粒 次世代型CoQ10 還元型コエン…
ユビキノールの特徴と働き
ユビキノールは、コエンザイムQ10の還元型であり、体内で実際に活性を持つ形態です。健康な状態では、体内のコエンザイムQ10の約95%がユビキノールの形で存在し、残りの5%がユビキノンとして存在しています。ユビキノールは電子を豊富に持った状態であり、この電子を活性酸素に与えることで強い抗酸化作用を発揮します。
ミトコンドリアにおいて、ユビキノールは複合体ⅠおよびⅡから電子を受け取ったユビキノンが変化した形態であり、その電子を複合体Ⅲに渡すことでエネルギー産生に貢献しています。抗酸化活性としては、ユビキノールは脂溶性の抗酸化物質として、α-トコフェロール(ビタミンE)と同等の効果を持ち、リポソーム膜内で発生したフリーラジカルを効率的に消去することが示されています。ユビキノールとユビキノンは体内で絶えず相互変換を繰り返し、エネルギー産生と抗酸化の両方の機能を発揮することで、生体恒常性維持(ホメオスタシス)に寄与しています。
ユビキノンとユビキノールの吸収性の違い
ユビキノール(還元型コエンザイムQ10)の吸収性は、ユビキノン(酸化型)と比較して優れていることが複数の研究で確認されています。健常人を対象としたクロスオーバー試験では、ユビキノールの吸収性はユビキノンに比べて約3倍以上高いことが示されました。この差は、ユビキノールが体内で変換される必要がなく、そのまま吸収されて機能するためです。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11203502/
水分散型粉末の還元型コエンザイムQ10を用いた空腹時単回経口投与試験では、従来のソフトカプセル製剤よりもさらに良好な吸収性を示すことが報告されています。また、γ-シクロデキストリンで包接した「吸収型CoQ10」とビタミンCを組み合わせることで、小腸内で酸化型CoQ10が還元型に変換され、還元型CoQ10包接体では未包接体と比較して36〜54倍の吸収性向上が期待できるとされています。ユビキノンは個人差が大きく吸収性にばらつきがあるのに対し、ユビキノールは個人差が少ないという特徴も報告されています。
参考)http://www.jcam-net.jp/data/pdf/16034.pdf
ユビキノン含有食品とミトコンドリア機能
コエンザイムQ10は食品にも含まれており、肉類、魚介類、ナッツ類などに豊富に存在します。日本人が日常的に摂取する食品70品目を対象とした調査では、食品中には還元型と酸化型の両方のコエンザイムQ10が含まれ、一部の加工食品には比較的高い割合で還元型が含まれることが示されています。しかし、ヒトの体内でもコエンザイムQ10は合成されるため、ビタミンではなくビタミン様物質に分類されています。
ミトコンドリアにおけるコエンザイムQ10の総量とATP生合成活性には相関関係があり、還元型CoQ10を経口摂取した老化促進モデルマウスでは肝臓中のATP量が増加することが報告されています。これは、ミトコンドリアが還元型CoQ10で飽和していないことを示唆しており、外部からの補給が有効である可能性を示しています。コエンザイムQ10は複合体Ⅰ、Ⅱ、Ⅲの間で電子伝達を媒介し、この過程でプロトンの濃度勾配が形成され、複合体ⅤがATPを合成します。
ユビキノール摂取時の注意点と副作用
コエンザイムQ10は、適切に摂取すれば安全性が高い成分とされていますが、副作用の可能性もあります。主な副作用としては、吐き気、嘔吐、下痢などの消化器症状が報告されており、まれに腹痛、胸やけなども生じることがあります。また、めまい、光過敏、頭痛、易刺激性などの中枢神経系症状や、皮膚のかゆみ、発疹、疲労、インフルエンザ様症状が起こる場合もあります。
参考)【成分解説】コエンザイムQ10 サプリを選ぶなら「還元型」?…
薬剤との相互作用も注意が必要です。コエンザイムQ10は、抗凝固薬のワルファリンを服用している患者において、ワルファリンの有効性を低下させ、血栓のリスクを高める可能性があります。また、一部の降圧薬との相互作用で血圧を過度に下げる可能性や、化学療法薬との相互作用も報告されています。まれではありますが、コエンザイムQ10の健康食品の摂取によって薬剤性肺炎や薬剤性肝炎を発症したという被害報告もあります。授乳中の方の安全性は確立されていないため、自己判断での摂取は控えるべきとされています。
参考)コエンザイムQ10(CoQ10) – 26. その他の話題 …
加齢に伴うユビキノール濃度の変化
加齢に伴い、体内のコエンザイムQ10濃度、特にユビキノール濃度は低下することが知られています。この低下の主な原因は、高齢になると食事摂取量が減少することに加え、ユビキノールの生合成能力やユビキノンをユビキノールに変換する機能が衰えることが挙げられます。40歳を過ぎると、この変換効率は大幅に低下し、摂取したユビキノンの多くがそのまま体外に排出されてしまう可能性があります。
血中ユビキノール濃度の低下は、心不全、慢性疲労症候群など様々な疾患との関連が示されています。近年のコホート研究では、血中コエンザイムQ10濃度が高い者ほど認知症発症リスクが低いとの結果も報告されており、認知機能の維持における重要性が注目されています。中高年になるとユビキノンからユビキノールへの変換能力が低下するため、予め還元型に変換されたユビキノールの方が吸収性が良く、効果的であると考えられています。還元型コエンザイムQ10を長期摂取した高齢者においては、口腔免疫能やQOL(生活の質)の改善効果も報告されています。
参考)【楽天市場】【店内8000円以上1000円OFF】[年齢やス…
<参考リンク>
ミトコンドリアにおけるユビキノンの電子伝達機能について詳しく解説されています:
ユビキノン結合タンパク質Coq10の機能解析 – J-STAGE
コエンザイムQ10の安全性と副作用について厚生労働省の見解がまとめられています:
還元型コエンザイムQ10の認知機能改善効果に関する研究データが掲載されています: