薬局 ポイント付与と一部負担金とキャッシュレス支払い

薬局 ポイント付与と一部負担金

薬局のポイント付与「安全運用」早見

原則:独自ポイントは避ける

保険調剤の一部負担金に連動する「薬局独自カード」は原則禁止方向。まずは現場の仕組みを棚卸し。

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例外:キャッシュレス由来は当面容認

クレジット・電子マネー・QR等の決済ポイントは「当面やむを得ない」として整理されている。

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落とし穴:広告・1%超・減額

大々的な宣伝、1%超の付与、ポイントで一部負担金を減額できる運用は指導対象になり得る。

薬局 ポイント付与の原則禁止と制度上の考え方

 

保険調剤は、調剤料や薬価などが公定され、医療保険制度の枠組みで運用されるため、薬局が独自に「ポイント」という付加価値を付けて患者を誘引することは制度上ふさわしくない、という整理が示されています。

また、患者が保険薬局を選ぶ際は、ポイント等の経済的付加価値ではなく、懇切丁寧な対応や服薬指導の質などで選ばれるべきだ、という考え方も明確に言及されています。

この前提を押さえると、「ポイント付与そのもの」よりも、実務では「一部負担金の減額につながるか」「実質的に誘引になっていないか」という見え方が重要になります。

医療従事者としては、患者説明の場面で「ポイントが付くからここが得」といった誤解を生む導線が、結果として医療の選択を歪める可能性がある点に注意が必要です。

参考)保険調剤ではポイント進呈は原則禁止!例外的に付与が認められて…

特に門前薬局のように患者動線が固定されがちな環境でも、制度は「誘引の起点」を問題視し得るため、店舗内外の掲示や案内文の表現が安全管理の焦点になります。

参考)商品・サービスによってはポイントを付与できない!禁止されてい…

「患者サース」のつもりで導入した施策が、保険制度の思想(医療の中立性)に触れると、現場に説明負荷と是正負荷が一気に乗ることがあるため、最初に原則論を共有しておくのが近道です。

薬局 ポイント付与で例外になり得るキャッシュレス支払いの整理

一部負担金の支払いにおいて、クレジットカードや一定の汎用性のある電子マネー、QRコード等のキャッシュレス支払いを利用すること自体は、患者利便性や事務効率化の観点から差し支えないとされています。

そして、キャッシュレス支払いに伴って生じるポイント付与は、通知で示されたとおり「あくまで当面やむを得ないものとして認める」という位置付けです。

ここが現場で誤解されやすいのですが、「ポイントが付く=自由に設計してよい」ではなく、「決済事業者の仕組みに付随するものを、当面、例外扱いしている」にとどまります。

意外に重要なのは、患者に説明する際に「薬局が付与しているポイント」なのか「決済に付随するポイント」なのかを言語化して区別することです。

たとえばレジ前掲示で「ポイントが貯まります」とだけ書くと、患者は薬局独自施策と受け取る可能性があり、結果として“誘引の広告”と見なされる余地が生まれます。

掲示するなら「キャッシュレス支払いに伴い決済事業者のポイントが付与される場合があります」のように主語をずらし、薬局の販売促進と切り離す表現が実務上の防波堤になります。

薬局 ポイント付与が指導対象になり得る3要件(減額・1%超・広告)

実務で最も重要なのは、何が「指導」や「個別指導」につながり得るかを、運用ルールとして具体化することです。

少なくとも通知では、次のような事例が問題視され得ると整理されています。

  • ポイントを用いて一部負担金を減額できる運用(値引き相当)。
  • 一部負担金の1%を超えてポイントを付与している運用。
  • 一部負担金に対するポイント付与を大々的に宣伝・広告している運用(看板、テレビCM等の例示)。

この「1%」は見落とされやすい数値基準で、仮に決済事業者ポイントが一般的に1%でも、薬局が別の仕組みを重ねると簡単に超過します。

また「広告」は、WebサイトやSNS投稿が常に該当するかはケース次第ですが、少なくとも“患者誘引を狙った強調”という文脈に乗るとリスクが上がる、という読み替えは安全側の運用に役立ちます。

医療現場では「キャンペーンのノリ」を持ち込むほど監査耐性が落ちるため、告知の粒度(院内掲示は必要最低限)と、説明スクリプト(聞かれたら答える)を分けて設計するのが現実的です。

薬局 ポイント付与と広告表現の落とし穴(院内掲示・Web・口コミ)

「大々的に宣伝・広告」に該当し得る例として、建物外の看板やテレビコマーシャル等が挙げられています。

つまり、論点は“媒体の種類”だけでなく、“周辺住民や通行人を含む広い対象に向けた誘引”になっているか、という射程の広さです。

この観点に立つと、薬局の入口に「処方せんでポイント2倍!」の大型ポスターを掲示する行為は、たとえ意図が軽くても、外部からは誘引として認識されやすくなります。

意外な盲点は、スタッフが善意でやりがちな「口頭での積極案内」です。

患者が「支払いは何が使えますか?」と尋ねた時に、決済手段を案内するのは自然ですが、そこに「このカードだとポイントがすごく貯まりますよ」と付け足すと、選択の軸を“医療の質”から“経済的メリット”へ寄せてしまいます。

医療従事者向けの運用としては、受付・薬剤師の案内文を統一し、①決済手段の説明、②ポイントは決済事業者の制度、③当薬局としてポイント施策を行っていない、の3点を短く言えるようにしておくと事故が減ります。

また、口コミサイトやSNSで患者が「ここポイント付く」と投稿すること自体は薬局がコントロールできませんが、薬局公式がそれを引用RTしたり、Webに転載したりすると“広告の主体”が薬局側に寄って見える可能性があります。

「広がった評判を利用したくなる心理」は現場あるあるですが、医療機関・薬局の広告は一般小売と同じ発想で増幅させない、という方針が安全です。

薬局 ポイント付与を使わない患者満足の設計(独自視点)

検索上位は「ポイント付与の可否」や「禁止の根拠」に集まりがちですが、現場で本当に効くのは“ポイントに頼らない満足度”の設計です。

制度側のメッセージは「経済的付加価値ではなく、説明や服薬指導の質で選ばれるべき」という点にあり、ここを逆手に取ると、薬局の価値を言語化するチャンスになります。

つまり、ポイントをやめることは「サービス低下」ではなく、「評価軸を医療の本旨に戻す」コミュニケーションへ転換できます。

具体策としては、次のような“医療品質に直結する体験”に投資すると、ポイント以上に継続利用へつながりやすいです。

  • 服薬指導のばらつきを減らすためのチェックリスト化(副作用初期症状、相互作用、服薬アドヒアランス確認)。
  • 待ち時間の見える化(混雑時に「おおよその受け渡し時間」を伝える)。
  • 患者の不安が強い領域(抗凝固薬睡眠薬、ステロイド等)で、短い説明カードを手渡しして理解を助ける。

“意外な効き目”があるのは、キャッシュレス対応を単なる決済手段としてではなく、会計ミス削減・釣銭管理負担の軽減・締め作業短縮といった業務改善として位置付けることです。

業務が軽くなると、結果的に薬歴の質や監査の丁寧さに時間を回せるようになり、制度が求める「質で選ばれる」方向へ現場が自然に寄っていきます。

ポイントが禁止されやすい領域ほど、実は“現場体験の改善”がそのままコンプライアンス強化になる、というのが医療現場での現実的な最適解です。

指導・監査に強い運用へ落とすため、最後に院内で合意しておきたい確認項目をまとめます。

  • 当薬局は「独自ポイント」を行っていない(行う場合は制度・通知を踏まえた法令確認を実施)。
  • ポイントの話題が出た場合は「決済事業者ポイント」である旨を説明できる。
  • 院外向けの大きな掲示・強調表現をしない(誘引の疑念を避ける)。
  • ポイントで一部負担金を減額できる導線を作らない。
  • 付与率が1%を超える設計になっていないか定期点検する。

保険制度側の資料(ポイント付与の考え方、対応案の背景)がまとまっている:厚生労働省(資料)保険薬局等における一部負担金の受領に応じたポイント付与の考え方
キャッシュレス支払いとポイント付与の留意点(1%超・広告・減額が指導対象になり得る)が明記されている:厚生労働省(事務連絡)医療機関等における一部負担金のキャッシュレス支払いについて

薬局2025年76巻11月号(No.13)報酬が語る。「薬剤師のしごと」 しくみを知るとみえてくる“評価される業務”の道しるべ