ツムラ漢方一覧あいうえお順で医療用製剤の効能と薬価を解説

ツムラ漢方一覧あいうえお順

ツムラ漢方製剤の基本情報
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製品番号体系

1番から138番まで(欠番含む)の体系的な番号付けで管理

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薬価基準収載

2025年4月より適用の最新薬価基準で保険診療対応

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五十音順索引

あいうえお順の検索システムで迅速な製剤選択が可能

ツムラ漢方製剤の製品番号と基本情報一覧

ツムラ医療用漢方製剤は1番から138番まで体系的に番号が付けられており、医療現場での識別と処方が容易になっています。製品番号には欠番もあり、現在使用されている製剤と廃番になった製剤が明確に区別されています。

五十音順での製剤一覧は以下のような構成となっています。

あ行の代表的製剤

  • 安中散(TJ-3):体力中程度以下で胃痛、腹痛に使用
  • 葛根湯(TJ-1):発汗療法の代表的処方
  • 温経湯(TJ-106):婦人科疾患に広く応用

か行の代表的製剤

  • 桂枝湯(TJ-45):薬価6.70円/g、表虚証に対する基本処方
  • 桂枝人参湯(TJ-82):薬価21.80円/g、胃腸虚弱を伴う表証
  • 桂枝茯苓丸(TJ-25):婦人科三大処方の一つ

製品番号の色分けシステムも特徴的で、処方箋や薬袋での視認性を高めています。製剤によって1包あたりの用量が異なり、標準的な7.5g/日(1包2.5g)以外に、9.0g/日(1包3.0g)の製剤も存在します。

特殊製剤として、501番の紫雲膏(外用剤)、3020番のコウジン末、3023番のブシ末などの生薬製剤も薬価基準に収載されています。

ツムラ漢方の効能別分類と臨床応用基準

ツムラ漢方製剤の効能効果は、伝統的な漢方理論に基づきながら現代医学的エビデンスも考慮した記載となっています。体力や体質による適応判定が重要で、以下のような分類があります。

体力充実タイプの製剤

  • 大柴胡湯(TJ-8):比較的体力があり、便秘傾向のある実証
  • 当帰芍薬散(TJ-23):体力虚弱で冷え症の虚証との対比
  • 桃核承気湯(TJ-33):下腹部痛があって便秘しがちな実証

体力中程度の製剤

  • 小柴胡湯(TJ-9):胸脇苦満を目標とする半表半裏証
  • 四物湯(TJ-71):皮膚が枯燥し色つやの悪い血虚証
  • 補中益気湯(TJ-41):消化器症状を伴う気虚証

体力虚弱タイプの製剤

  • 十全大補湯(TJ-48):病後の体力低下、疲労倦怠に使用
  • 人参養栄湯(TJ-108):貧血、手足の冷えを伴う虚証
  • 牛車腎気丸(TJ-107):下肢痛、腰痛、排尿困難など

効能効果の記載では「次の諸症」として複数の適応症が列挙されており、一つの処方で多様な症状に対応できる漢方の特徴を表しています。例えば桂枝茯苓丸(TJ-25)では、子宮内膜炎、月経不順、更年期障害、冷え症、痔疾患など幅広い適応が記載されています。

現代医学的な疾患名と漢方的な証候が併記されているため、西洋医学的診断を基礎としながら漢方的な体質判定を行って処方選択することが求められます。

ツムラ漢方の薬価基準と保険診療での活用法

2025年4月より適用されている最新の薬価基準では、漢方製剤・生薬は先発医薬品、後発医薬品の区別がないという特徴があります。薬価基準の規格単位は1gで統一されており、処方時の計算が簡便になっています。

主要製剤の薬価例(1gあたり)

  • 葛根湯:計算基準に基づく薬価設定
  • 桂枝湯:6.70円(7.5g処方で50.25円)
  • 桂枝人参湯:21.80円(7.5g処方で163.50円)
  • 桂枝茯苓丸:14.10円(7.5g処方で105.75円)
  • 桂枝茯苓丸加薏苡仁:16.40円(7.5g処方で123.00円)

薬価には製剤の複雑さと生薬の価格が反映されており、構成生薬数が多い処方や希少生薬を含む処方ほど高価格となる傾向があります。啓脾湯(TJ-128)のように31.10円/gという高薬価の製剤もあり、処方時にはコスト面での配慮も必要です。

保険診療での算定においては、投与日数制限や併用禁忌薬との相互作用チェックが重要です。また、重篤な副作用として間質性肺炎のリスクがある製剤については、患者への十分な説明と定期的な観察が義務付けられています。

経済性の観点から、同様の効能を持つ複数の選択肢がある場合は、薬価の違いも考慮した処方選択が求められます。ただし、漢方では個々の患者の証に最も適合する処方を選択することが最優先であり、薬価のみで判断すべきではありません。

ツムラ漢方の生薬成分と作用機序の理解

ツムラ漢方製剤の作用機序を理解するためには、構成生薬の薬理作用と相互作用を把握することが重要です。各生薬は特定の薬効成分を含有し、それらが複合的に作用して処方全体の効果を発現します。

主要生薬の薬効成分と作用

  • 葛根(カッコン):イソフラボノイド、発汗解熱作用
  • 芍薬(シャクヤク):モノテルペノイド、鎮痛・鎮痙作用
  • 大黄(ダイオウ):アントラキノン類、瀉下作用
  • 人参(ニンジン):サポニン、強壮・健胃作用
  • 麻黄(マオウ):アルカロイド、気管支拡張・発汗作用

生薬の基原(原植物)も作用に影響し、同じ名称でも産地や採取時期により成分含量が異なります。例えば人参はウコギ科オタネニンジンの根で、サポニン、ポリアセチレン類、多糖類などを含有し、強壮・健胃・免疫調節作用を示します。

漢方名から作用を推測する方法

漢方名に使われる漢字からある程度の作用を推測できます。

  • 「中」:お腹を表し、消化器系疾患に使用(安中散、小建中湯など)
  • 「補」:気を補う意味で、虚証向けの処方(補中益気湯、十全大補湯など)
  • 「湯」:煎じ薬の意味で、急性期に使用されることが多い
  • 「散」「丸」:比較的緩やかな作用で慢性期に適用

動物性生薬も特徴的で、牛黄(ゴオウ)は牛の胆石、鹿茸(ロクジョウ)は鹿の角を使用し、滋養強壮効果が期待されます。これらの生薬は高価であることが多く、製剤の薬価にも反映されています。

現代薬理学的な研究により、多くの生薬成分の作用機序が解明されており、エビデンスに基づいた処方選択が可能になっています。

ツムラ漢方処方時の体質診断と副作用管理システム

ツムラ漢方製剤の適切な処方には、患者の体質を正確に把握する証の判定が不可欠です。現代医学的診断に加えて、漢方独特の診察法による総合的な評価が求められます。

体質判定の要点

  • 体力の程度:充実・中程度・虚弱の3段階評価
  • 体型と顔色:がっしり型・やせ型、赤ら顔・青白い顔色
  • 腹診所見:腹力、腹直筋緊張、心下痞硬、胸脇苦満の有無
  • 脈診・舌診:脈の強弱・速度、舌の色・苔の状態
  • 自覚症状:冷え・のぼせ、食欲、便通、睡眠状態

例えば桂枝茯苓丸(TJ-25)の適応は「体格はしっかりしていて赤ら顔が多く、腹部は大体充実、下腹部に抵抗のあるもの」と具体的に記載されており、この条件に合致しない患者への投与は効果が期待できません。

重要な副作用と管理システム

ツムラ漢方製剤では間質性肺炎が最も重篤な副作用として警告されています。特に以下の製剤で注意が必要です。

  • 小柴胡湯系統の処方
  • 黄芩を含む処方
  • 麻黄を含む処方

副作用の早期発見のため、以下の症状に注意します。

  • 咳嗽、呼吸困難、発熱
  • 胸部X線異常、胸部CT異常
  • 肺音の異常

患者教育として、これらの症状が現れた場合は直ちに服用を中止し、医療機関に連絡するよう指導することが義務付けられています。

また、麻黄を含む製剤では心血管系への影響、大黄を含む製剤では下痢や電解質異常のリスクがあり、患者の基礎疾患や併用薬との相互作用を十分に検討する必要があります。

定期的な検査による安全性確認と、患者・家族への適切な情報提供により、漢方治療の安全性と有効性を両立させることが現代の漢方診療における重要な課題となっています。