トランサミン後発品の適切な選択と処方上の注意事項解説

トランサミン後発品の選択指針

トランサミン後発品の重要ポイント
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後発品の種類と特徴

プレタスミン、ニコルダ、ケイサミンなど複数の後発品が存在し、主成分は同等だが製法に違いがある

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保険適用と変更手続き

先発品から後発品への変更は医師確認不要だが、逆は医師確認と追加費用が必要

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在庫不足への対応

特にトランサミン散の供給不足が深刻で、錠剤粉砕などの代替手段が必要

トランサミン後発品の種類と成分比較

トランサミンの後発品は複数のメーカーから発売されており、主要な製品として以下のものがあります。

  • トラネキサム酸プレタ
  • ニコルダ
  • プレタスミン
  • ケイサミン
  • リカバリン
  • ヘキサトロン

これらの後発品は、主要成分であるトラネキサム酸の含有量は先発品のトランサミンと同じ250mg(錠剤の場合)となっています。添付文書に記載される有効成分とその量は表記通りで先発品と変わりありませんが、製法や主要成分以外の基剤などに違いがある可能性があります。

トラネキサム酸は人工的に作られたアミノ酸で、炎症を引き起こすプラスミンという酵素の働きを抑える効果があります。この作用により、止血、抗炎症、抗アレルギー効果を発揮し、シミの予防効果も期待できます。

先発品のトランサミン錠250mgと比較すると、市販薬のトランシーノEXはトラネキサム酸の配合量が187.5mgと少なく、代わりにビタミンCやビタミンB6などが含有されています。医療用医薬品であるトランサミンは1日最大2000mgまで摂取可能で、市販薬の750mgと比較してより高い効果が期待できます。

トランサミン後発品の保険適用と薬局での変更手続き

保険制度改定により、先発品の処方箋を調剤薬局に持ち込んだ場合、医師への確認なしに後発品への変更が可能となりました。これは国民医療費の抑制目的で、ジェネリック薬使用が推奨されているためです。

しかし、逆に後発品を先発品に変更する場合は医師の確認が必要となり、処方をした医師への問い合わせが必要で別途費用がかかってしまいます。このため、今まで飲み続けてきた先発品を希望する患者は、処方箋をもらう時に後発品でないか確認することが重要です。

調剤薬局では、先発品での処方箋であれば希望に応じてその場で後発品への変更が可能です。薬剤師は患者に対して後発品の選択肢を提示し、適切な説明を行う責任があります。

保険適用に関しては、トランサミンは血管炎などの出血性疾患やじんましんなどのアレルギー性疾患、湿疹などの炎症疾患、扁桃炎、口内炎などの治療の場合にのみ保険適用で処方されます。美容目的の処方の場合は全額自己負担の自由診療となります。

トランサミン後発品の副作用と安全性評価

トランサミンおよびその後発品は小児から高齢者まで幅広い年齢層に使用されており、大きな副作用の少ない比較的安全な薬とされています。しかし、医薬品である以上、副作用のリスクは存在します。

主な副作用として以下が報告されています。

消化器症状(0.1~1%未満)

  • 食欲不振
  • 悪心・嘔吐
  • 下痢
  • 胸やけ

皮膚症状(0.1%未満)

  • かゆみ
  • 発疹

その他

  • 眠気

重大な副作用として、頻度は不明ですが人工透析をしている患者にけいれんが表れることがあると報告されています。この発生頻度は稀ですが、該当する患者には特に注意が必要です。

トランサミンには止血作用があるため、血液が固まりやすくなることによって生じる脳梗塞心筋梗塞の患者は使用できません。また、低用量ピルとの併用についても、血栓リスクが高まる可能性があるため注意が必要です。

風邪薬や歯科で処方される止血剤にはトラネキサム酸成分を含むものがあり、これらとの併用でトラネキサム酸の過量投与になる可能性もあります。普段服用している薬がある患者には、必ず医師や薬剤師に伝えるよう指導することが重要です。

トランサミン後発品の在庫不足問題と対応策

現在、トラネキサム酸製剤の在庫不足が長期間続いており、特にトランサミン散の在庫はどこの卸でも欠品状態が続いています。この問題は医療現場に深刻な影響を与えており、代替薬が存在しないため対応に苦慮している状況です。

トランサミン散は風邪薬として普通に処方されており、特に小児では咽頭炎に頻繁に処方されています。大人であればロキソニンなどで咽頭痛を鎮めることができますが、小児ではトランサミン散やトランサミンシロップを用いる以外に選択肢が限られています。

この在庫不足への対応策として、錠剤を粉砕して散剤の代替とする方法が取られています。トランサミン散の成人用量は「トラネキサム酸として、通常成人1日750〜2,000mgを3〜4回に分割経口投与する」とされており、これを基準に錠剤からの換算を行います。

小児への投与量については、トランサミンシロップの添付文書に詳細な年齢別用量が記載されており。

  • ~1歳:75〜200mg(散剤換算:0.15~0.4g)
  • 2~3歳:150〜350mg(散剤換算:0.3~0.7g)
  • 4~6歳:250〜650mg(散剤換算:0.5〜1.3g)
  • 7~14歳:400〜1,000mg(散剤換算:0.8~2g)
  • 15歳~:750〜2,000mg(散剤換算:1.5~4g)

これらの用量を参考に、適切な代替調剤を行うことが重要です。

トランサミン後発品の臨床効果比較と独自の選択基準

トランサミン後発品の臨床効果については、主要成分と含有量が同等であることから、基本的に先発品と変わらない効果が期待できます。しかし、製法や添加剤の違いにより、患者によっては効果や副作用の現れ方に微細な差が生じる可能性があります。

シミ・肝斑治療においては、1日3回継続服用した場合、効果が実感できるまでに2〜6週間ほどかかるとされており、これは先発品・後発品ともに同様の期間を要します。継続的な服用が重要であり、即効性を期待するものではありません。

独自の選択基準として以下の点を考慮することが推奨されます:

🔍 患者の既往歴と併用薬の確認

透析患者、血栓症リスクのある患者、低用量ピル服用者など、特別な注意が必要な患者群を把握し、適切な製品選択と用量調整を行う。

💰 経済的負担の考慮

後発品の価格差を患者に説明し、長期投与が必要な肝斑治療では特に経済的メリットを重視した選択を提案する。

📋 製剤特性の理解

散剤、錠剤、シロップなど、患者の年齢や嚥下能力に応じた最適な剤形を選択し、在庫状況も含めて総合的に判断する。

🏥 医療機関の方針との整合性

院内採用薬との整合性を保ち、入院・外来での継続性を考慮した処方を心がける。

これらの基準に基づいて、個々の患者に最適なトランサミン後発品の選択を行うことで、より質の高い医療提供が可能となります。特に在庫不足が続く現状では、複数の後発品に関する知識を持ち、柔軟な対応ができる準備が重要です。