単眼性視力低下と鑑別
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単眼性視力低下の鑑別と救急
単眼性視力低下では、まず「急性」「片眼」「一過性か持続か」「痛みの有無」を短時間で切り分け、緊急疾患を先に除外する設計が安全です。
とくに急性の片眼性視力障害に眼痛と結膜充血が伴う場合、角膜潰瘍、急性閉塞隅角緑内障、眼内炎、重症前部ぶどう膜炎などを優先して考慮する、という整理は初療で有用です。
問診では、発症時刻(「何分で落ちたか」)、暗転/白濁/歪みのどれが主体か、片眼遮閉での自覚差、頭痛・嘔気、コンタクト装用、外傷・異物、免疫抑制や感染リスクも確認します。
ここで意外に落とし穴になるのが「片眼の障害でも両眼視では気づきにくい」ことです。視野欠損や中心暗点を健眼が補うため、患者の訴えが曖昧でも重症が隠れていることがあります。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7002722/
医療従事者向けの現場対応としては、視力(可能なら矯正視力)、瞳孔(RAPD)、眼圧、前眼部(充血・角膜混濁・前房炎症)、眼底(可能なら散瞳下)を最短ルートで確認し、所見が揃わない場合は「紹介の閾値を下げる」方針が実務的です。
参考)急性視力障害 – 17. 眼疾患 – MSDマニュアル プロ…
また、化学熱傷と網膜中心動脈閉塞症は「移送前の初期対応が重要」とされ、眼科救急として別枠で意識しておくと漏れが減ります。
参考)https://primary-care.sysmex.co.jp/speed-search/disease/index.cgi?c=disease-2amp;pk=388
単眼性視力低下と一過性黒内障
一過性黒内障は「一時的に片眼の見え方が暗くなる」発作で、数秒~数分で回復することが多い一方、背景に動脈硬化や頸動脈狭窄、血栓(塞栓)が関与し得ます。
症状が「回復する」点だけで安心されがちですが、持続する場合は網膜動脈閉塞症など不可逆障害も鑑別に上がるため、回復の有無と持続時間の聴取が実際の分岐点になります。
MSDマニュアルの表でも、一過性黒内障は「数分から数時間続く単眼失明」として整理され、頸動脈評価(例:頸動脈超音波)を考慮する流れが示されています。
臨床でのコツは、患者の表現を「真っ暗」「白っぽい霧」「カーテンが降りる」「ギザギザ」などに分解し、血管性(暗転・カーテン)か、片頭痛性/視覚性(閃輝暗点様)か、網膜疾患(歪み・小視)かを言語化して記録することです。kyo-eye+2
また、一過性黒内障は眼科単独の問題として閉じず、脳血管イベントの入口として神経内科・循環器との連携に乗せる意識が重要です。yoshida-hp+1
参考として、神経学会誌の症例報告では「一過性黒内障」に関連する視覚異常発作の記載があり、眼症状が神経・血管イベント評価につながる文脈の理解に役立ちます。
参考)https://www.neurology-jp.org/Journal/public_pdf/062090722.pdf
参考:一過性黒内障の概念(網膜の一過性虚血)と臨床像の整理
単眼性視力低下と網膜動脈閉塞症
網膜中心動脈閉塞症(CRAO)や網膜動脈分枝閉塞症は、典型的に突然発症の無痛性視力障害を呈し、時間依存性が強い「眼の脳卒中」として扱われます。
眼底では、発症直後に黄斑部(中心窩を除く)が白っぽく浮腫状を呈する所見が特徴的、と具体例付きで解説されています。
この「中心窩が赤く見える(いわゆる cherry-red spot の文脈)」は、視細胞の代謝需要が高い網膜が虚血に陥ったサインとして理解すると、研修医・救急外来でも所見の意味づけがしやすくなります。
また、大学病院の疾患説明でも、網膜中心動脈閉塞症は「突然におこる急激な高度の視力低下」「片眼性がほとんど」とされ、眼底は浮腫から時間経過で壊死へ進むことが述べられています。
参考)疾患から診療科を探す(当院で診療可能な疾患か否かは、事前にお…
現場での注意点は、「視力が改善しない片眼の見えにくさ」を一過性黒内障の延長として扱ってしまい、受診が遅れることです。
患者説明では、“一時的に戻るのが一過性黒内障、戻らないなら網膜動脈閉塞症も含めて緊急”と対比させると理解が進みやすいです。
参考:網膜動脈閉塞症の眼底所見(白っぽい浮腫状、中心窩の所見)
単眼性視力低下と視神経炎
視神経炎は、比較的急激な視力低下、視野欠損、色覚低下などを呈し、視神経系の障害として単眼性で出ることがあります。
特徴として「眼球運動痛」が挙げられ、目を動かすと痛む、という訴えがある場合は、網膜血管閉塞(無痛が多い)とは違う分岐として扱えます。
大学病院の説明でも、主な症状に視力低下・視野欠損・眼球運動痛・色覚異常が並記されており、問診票で拾える項目として実装しやすいです。
一方で、視神経炎“らしさ”に引っ張られ過ぎると、虚血性視神経症など血管性の視神経障害や、ぶどう膜炎・角膜疾患の痛みの混在を見落とすことがあります。msdmanuals+1
したがって、診察ではRAPD、眼底(乳頭所見)、必要に応じて画像や採血を含む連携(神経内科含む)へ早めに接続するのが安全です。yoshida-hp+1
なお、視神経・網膜神経節細胞の機能評価としてVEP等の電気生理検査が臨床応用される領域があることは、原因不明例の説明や専門紹介時の補助情報になります。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8377055/
参考:視神経炎の症状(眼球運動痛、中心暗点など)と治療の概説
単眼性視力低下とOCTと変視症(独自視点)
単眼性視力低下の初期対応は「失明・脳卒中を防ぐ」優先順位が核ですが、緊急疾患を除外した後に患者満足度と診断精度を大きく左右するのが、OCTで拾える黄斑病変の見落とし対策です。
中心性漿液性脈絡網膜症では、視力低下に加えて中心暗点や変視症が典型症状として挙げられており、患者は「疲れ目」「片眼だけピントが合わない」と表現することもあります。
黄斑円孔でも、視力低下、変視症、中心暗点が生じるとされ、Amsler格子のような簡便ツールで「歪み」を可視化してからOCTにつなぐと説明が通りやすいです。
意外な実務ポイントは、「視力はそれほど落ちていないのに“左右で物の大きさが違う”と訴える」ケースです。中心性漿液性脈絡網膜症の症状として“片眼ずつ見た時に物の大きさが違う”といった記載があり、問診でこれを拾うと黄斑疾患への感度が上がります。keigankai+1
救急・当直帯では眼底が十分に見えないこともあるため、「変視症・小視症・中心暗点」のセットを問診テンプレに入れ、翌日のOCT予約(または網膜専門医紹介)に確実につなげる運用が現実的です。kyo-eye+1
この“問診でOCT適応を立てる”発想は検索上位の一般向け記事では薄くなりがちですが、医療者の業務設計としては再診率と説明負担を下げる効果が期待できます。hikichi-eye+1
